ありふれない狂戦士で世界最凶   作:黒い兎♪

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見切り発車でここまでこれてることにビックリ。
ストックもまだあるし…あとはモチベがどこまで続くか……


戦闘訓練

ハウリア族の話は結局ハジメの奴隷だという事になって見逃してもらう事になった。また、ハジメや凶夜、ユエが直接魔力を操れる事や固有魔法まで使えると知って大きい溜息をついて長老衆で決定した。

 

「はぁ〜、ハウリア族、忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子南雲ハジメの身内とみなす。資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は自己責任とする……以上だ、なにかあるか?」

 

「いや、何度も言うが俺等は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな、文句はねぇよ」

 

「ならば、早々に立ち去ってくれるか、ようやく現れた口伝の資格者を歓迎出来ないのは心苦しいが……」

 

「気にしないでくれ、相当無茶を言ってる自覚はある。むしろ理性的な判断をしてくれてありがたいくらいだよ。」

 

ハジメなら言葉にアルフレリックは苦笑いをし、他の長老達は渋い表情か疲れた表情をしている。さっさとどっかに行ってくれ!という雰囲気である。凶夜達はシア達ハウリア族を促して立ち上がった。

しかし、未だ現実を認識しきれたないのか呆然としたまま立ち上がる気配がない。

 

「おーい、いつまで呆けてるんだ、いくぞー」

 

凶夜の掛け声にハッとした我を取り戻したシア達はあたふたと立ち上がりさっさっと出て行くハジメ達について行く。アルフレリック達も門まで送ってくれるのか後ろからついてくる。

門に向かいながらシアがハジメに色々尋ねてユエに何か言われている。そしてハジメに抱きついて肩にぐりぐりと顔を押し付けている。ユエは何か思うところがあるのか何もせず反対側のハジメの手を握る。そんな三人を見てニヤニヤしている凶夜にスフォがススッと近寄り腕を組んでくる。

 

「感謝するならハジメにしてくれ、俺は今回何もしてない」

 

「いえ、いえ、私達を絶望から救ってくれました。帝国兵からも死からも、ありがとうございます。本当にありがとうございます」

 

腕は組んでるが顔は下を向いて少し声が震えてる事から涙ぐんでるのだろう。逆の手でスフォの頭を優しく撫でる。自分達のせいで家族が危機に陥り、シアの"未来視"で助けてくれる未来が見えていたとはいえとても不安だったのだろう。約束を取り付けても今回はダメだとスフォも思っていた。冷静なスフォは好条件のフェアベルゲンに乗り換えられ、捨てられる未来しか見えていなかった。それでも殴られた時には心配してくれて安心させてくれるような笑顔も見せてくれて終始、ハウリア族達に気を使っていたのは凶夜だ。今もこうして頭を撫でて慰めてくれている。凶夜からは見えないが薔薇色に頬を染めている。スフォの高鳴る胸の鼓動、それは家族が助かった事によるものなのか、それとも……

ハウリア族達もようやく命拾いした事に実感したようで互いに抱きしめ合ったり、手を叩き合ったりして、喜びを分かち合っている。それをなんとも複雑そうな表情で見ているのは長老衆である。そして更に遠巻きから不快感や憎悪の視線を向けてくる者も多くいる。

凶夜達はここを出ても暫くは面倒事に巻き込まれるだろうなと苦笑いする。

 

 

 

 

「さてお前達には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

フェアベルゲンを追い出された追い出されたあと近くに拠点を作り、一息ついた時ハジメの第一声がこれだった。拠点といっても、フェアベルゲンの霧を晴らす水晶フェアドレン水晶を盗んできた物を使って結界を作ったモノだが。困惑する一族を代表してシアが尋ねる。

 

「えっと、ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

「そのままの意味だ。どうせこれから十日間は大樹にたどり着けないんだろ?なら、その時間を有効活用して、負け犬根性の染みついたお前等を、一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

何故と聞くウサミミ達にハジメは自分達が居なくなった後のことを話しハウリア族達は黙り込む。ハジメは言う。「強くなればいい」とウサミミ達は答える「私達は兎人族で他の亜人のような強靭な肉体も技能もない」と、そしてハジメは昔は無能と言われていた事を話す。淡々と語るハジメにしかし、その内容があまりにも壮絶でハウリア族達の全身に悪寒が走る。

 

「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束のある内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのならそれでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は、助けるつもりはないからな」

 

それでどうする?と目で問う。ハウリア族達はすぐには答えられない。黙り込み顔を見合わせるハウリア族、しかしそんな彼等を尻目に先程から決然とした表情を浮かべていたシアとスフォが立ち上がった。

 

「やります。私に戦い方を教えてください!もう、弱いままは嫌です!」

 

「私にもお願い致します。もう守られるだけは嫌なのです!」

 

これ以上ない程の想いを込めた宣言。不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐ見つめるシアとスフォ。その様子を見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて一人また一人と立ち上がっていく。全員が立ち上がったのを確認して、カムが代表して一歩前に進み出た。

 

「ハジメ殿……宜しく頼みます」

 

言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲いくる理不尽と戦う意志が。

ハジメはハウリア族達を、ユエはシアを、凶夜はスフォの担当となり、スフォはハジメが"宝物庫"から出された小刀を持っている。

 

「お、お願い致します」

 

「おーう、まあ、死に物狂いでがんばろーや」

 

まずスフォの得意な事と固有魔法を聞いてから訓練を始めようとし、スフォを座らせ、自分も座る。

 

「得意な事と固有魔法ですか?」

 

「そうだ、隠密と索敵は言っちゃ悪いが兎人族の強みだ、狐人族のお前の強みじゃない。だからお前の得意な事と固有魔法で訓練方法を決める」

 

「得意なのは支援魔法ですかね、固有魔法は"幻惑"といって幻を見せる魔法です」

 

「幻を見せるどんなのだ?」

 

とりあえず固有魔法に興味を持って使ってみろと言いスフォが”幻惑"を使うのを待つがスフォは目を閉じて座ったまま動かない。だが、気配だけが動く凶夜の後ろを取るような動きだ。

 

「なるほどな、相手の周囲に幻を見せたり自分の姿を透明にも見せる事もできるって訳か、やり方によっては強いな、もういいぞ」

 

と言いながらスフォの方を見る、凶夜。スフォは"幻惑"を解除し少し拗ねた様子だ。もっと凶夜が驚くと思ったのだろう。拗ねた感じで聞いてくる。

 

「私もこれでも隠密には自信あるんですよ?で、私をどういう風に強くしてくれるんですか?」

 

そんなスフォの反応をスルーしてスフォに続けて質問していく。スフォも強くなるためと割り切り淡々と答えていく。

 

「支援魔法も得意なんだろ?」

 

「?はい」

 

「どんな支援魔法だ」

 

「筋力を上げたり、敏捷を上げたり、色々出来ますね」

 

「じゃあ、自分でどんな戦い方が最善だと思う?」

 

「それは……後ろで味方をサポートする戦い方?とかですかね、直接的な魔法ではありませんし、"幻惑"も相手を惑わすだけですし」

 

「それで『自分が』強くなれるのか?」

 

それは……と黙り込むスフォ。そんなスフォを尻目に立ち上がり訓練方法が決まったとニヤリと笑う。そんな凶夜に悪寒を覚えてしまう。

 

「模擬戦しまくるぞ」

 

悪寒は的中してしまうのだった。立って構えろっと言う、凶夜に凶夜の考えが分からず悲痛な叫びと共に聞き返す。何故か分からない、支援魔法は仲間を支援してナンボだ。"幻惑"も相手に使うが直接的な攻撃ではない。てっきり支援魔法と"幻惑"を伸ばしていく訓練方法を考えてくれるモノだと思っていたのに問答無用でマチェットで斬り掛かってくる凶夜。

 

「何故模擬戦なんですか!?」

 

「自分で考えろ」

 

冷たく返す凶夜。これでも十分手加減はしている。スフォが捉えきれるギリギリの身体能力で斬り掛かっているのだ。凶夜なら考えている方法でスフォが伸びていくなら、なかなか曲者に育つだろなーと思っている。

今は気付いてないが気付いてからが本番だなっと思っていた凶夜だった。

ハウリア族達がハジメに洗脳に近い精神魔改造を受けて樹海を転げ回る事約十日。訓練の最終日を迎えた日。スフォと凶夜の訓練も佳境に入っていた。

 

「我流 断罪」

 

「技を使うのは反則ではないですか!?」

 

「避けれてるのに何を言ったんだか」

 

「"剛化三重"、"敏化三重"支援魔法を重ねがけして、しかも魔力で身体能力を強化してる状態です!」

 

言いながら支援魔法を自分に重ね掛けしていき、小刀で凶夜に斬り掛かってくる。その斬り掛かってくる瞬間に”幻惑"を使い小刀を数本に見せどの小刀が本物かどうか分からなくしながら凶夜に迫る。無機物に"幻惑"を使われてたら"気配察知"でもどれが本物か分からない。後ろに飛び退き小刀達をかわす。

 

「まだですよ!"敏化十重"!!」

 

飛び退いた凶夜に一瞬で詰め寄るスフォに驚きを隠せない、思わず笑顔が出てくる。訓練の筈の模擬戦が楽しい戦闘になってきたのだ。 

 

「笑いましたね!約束守ってもらいますよ!」

 

と言いながら小刀を凶夜の腹に向かって突き刺す。凶夜は十日前の事を思い出していた。支援魔法が得意ならサポート出来る"幻惑"も使えるならなおさらサポート向きだろうと思っていたのだが支援魔法が自分に掛かられるなら身体能力が元々高い亜人族の強みも生かせたオールラウンダーになれると思い、この十日間模擬戦ばかり行っていたのだ。元々、身体強化が魔力で出来るのなら支援魔法でも出来るだろうと確信があり、しかも直接魔力を操れるスフォならほぼノータイムで支援魔法がかけられる。その事に気付くまでスフォは二日目で気付きそこから一気に伸びた。そして一つ凶夜と約束した。

 

『戦闘であなたを楽しませたら私を旅に連れて行ってください』 

 

だから思わず笑った時にはしまったとも思っていた。腹に迫る小刀が凶夜に刺さろうとした瞬間、小刀が弾かれる。

 

「思わず笑ったが、減点だ。狙うなら首とかせめて、致命傷になる場所に刀を振え。筋力も増大できるお前なら両断も出来るだろうから刺すより斬る事を意識しろ」

 

「うぅ、いけると思ったのに。でも、笑いましたよね!?ね!?」

 

嬉しさでキツネミミをピコピコ、尻尾をフリフリしている。とても可愛らしい。何故、凶夜が約束したのか、一言でいうなら絆されたというべきなんだろう。こうも素直に好意を向けてくれる事に慣れていない凶夜は少しずつだがスフォなら心惹かれているのだろう。凶夜はまだ気付いてないが……そして、約束に勝ったのはスフォだった。凶夜は最初は手加減していたが後半からは技を使う程には本気で相手していた。"狂化"は論外として"空力"や"剛脚"といった技能は余す事なく使っていたのにあそこまで凶夜に迫ったのだ。それだけスフォが強くなった証拠だった。

そしてスフォが何か決意を秘めた瞳で近付いてくる。

 

「凶夜さん。改めて私を旅に連れて行って下さい」

 

「危険だらけの旅だぞ?」

 

「あなたを楽しませるだけの実力は持ってます。これからもつよくなります」

 

「俺はハジメの望みを叶えるために付いて行ってるだけだぞ?」

 

「それでもいいんです。私は凶夜さんを支えたいんです」

 

スフォの目を見て何かを悟る凶夜は後ろを向き歩き出す。

 

「そろそろ、他も終わってる頃だろう。行くぞ、ああーハジメになんて言おう」

 

「ふふっ、宜しくお願い致しますね♪あ、それと………男女の関係の意味合いで凶夜さんを本気で好きですよ。私」

 

「はっ?なんでそうなる?そういうのはハジメじゃないか?俺は何もしてないぞ」

 

「凶夜さんは私の好意に気付いているんでしょう?理由は色々ありますよ?言います?」

 

「いや、いい、やめてくれ」

 

 

そろそろハジメのハウリア族の訓練も終わる頃だろうと、ハジメのところに向かう凶夜の腕に抱きつき上機嫌でくっ付くスフォを凶夜はもう振り解かない。

 

「おう、凶夜。模擬戦は終わったのか?」

 

「あぁーその事なんだが…」

 

とスフォの事を言おうとしていると少し不機嫌なユエと上機嫌のシアが現れる。そんなシアが凶夜に気付かずハジメに上機嫌のまま話しかける。

 

「ハジメさん、ハジメさん!聞いてください!私遂にユエさんに勝ちましたよ!」

 

大勝利ですよ!ハジメさんにも見せたかったなぁ〜とか調子に乗って身振り手振りで大はしゃぎしてるシアにユエのジャンピングビンタを食らい吹き飛びドシャッと音を立てて地面に倒れ込んだ。

 

「で?どうだった?」

 

とユエに勝負より内容を聞くハジメにユエがシアの魔法適性身体能力の事を言い化け物レベルと称す、そして訓練次第でまだ伸びると言う。それは驚きだと凶夜とハジメは内心唖然としながらシアを見る。泣きべそをかきながら頬をさすってる姿からは想像できない。

 

「そっちは?」

 

こちらにも内容を聞きにくる、一度スフォの方を見てから事実を伝える。

 

「魔法適性は支援魔法、風系統魔法、結界魔法、回復魔法に適性がある。これはユエにも見てもらったから確実だ。それに亜人特有の身体能力の高さ、身体強化はおそらくシアには及ばない。だが支援魔法を使えば俺達の六、七割は身体能力も追いつくし、支援魔法ほまだまだ伸びそうだ。完璧な化け物オールラウンダーだよ」

 

「それはまた…」

 

珍しくど直球な凶夜の褒め言葉に頬を赤く染めているスフォを見るハジメ。スフォと凶夜の距離がどことなく近いのは気のせいではないのだろうがそこには何もツッコまず、真剣な表情でウサミミをピンっと立てながら歩み寄ってくるシアに目を向けるハジメ。

そして、ハジメに旅に連れて行ってください!とお願いして即答で断ると言われるシア。そして、好きと言う気持ちを言う。ハジメはどこでフラグを立てた?とか言っている。そしてユエが出てたっぷりと溜めて「シアを連れて行こう」と言う。色々、問答した後にハジメは頭をガシガシ掻き。

 

「…………はぁ〜、勝手にしろ、物好きめ」

 

やがてため息を吐きながら実質上の敗北宣言だ。そして、凶夜はハジメに頭を下げて言う。

 

「…あぁーハジメ?すまないんだが俺からも我儘だ。スフォもこの旅に連れて行く」

 

「なんだ、お前も勝負して負けたのか?」

 

「まぁ、そんなとこだ。完璧な俺の我儘だ。面倒は見るつもりだが……」

 

「いいんじゃないのか?」

 

「へ?」

 

てっきり反対されるつもりで説得しようとしていた凶夜だがハジメからあっさりと許可がでる。キョトンとした顔でハジメの顔を見上げる。

 

「いいのか…?」

 

「お前は自分の事を殺し過ぎだ。俺の為なのはありがたいが、でも俺はそんなにヤワに見えるか?お前に守られないほど弱く見えるか?地球にいた頃からずっと言おうと思ってたがお前はもっと我儘になっていい」

 

凶夜がハジメの事を大事に思っていると同時にハジメも凶夜の事を大切に思っているのだ、自分の都合で振り回してるのは自覚している。そんな中ハジメとユエにも気を使いながら旅をしていた凶夜にハジメはもっと我儘を言って欲しかった。たぶん地球にいる凶夜の叔父さんや叔母さんもそう思ってると付け足しそっぽを向くハジメ。それに向かって礼を言う。

 

「ありがとう…相棒」

 

「気にすんな…相棒」




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