カム達の先導を受けて霧の中を進む凶夜達一行。
「うぅ〜、まだお尻がヒリヒリしますぅ〜」
泣き言をいいながお尻をさすっているのはシアだ。先程からハジメに恨みがましい視線を送っている。
「そんな目で見るな、鬱陶しい。こっちだって頭がまだ痛いんだ」
ハジメは凶夜に恨みがましい視線を向けている。
「ハハハ、そら痛くしねーと、お仕置きにならんだろ」
「鬱陶しいってあんまりですよぉ〜」
「お前だって隣にいたヤツを盾にして逃げるとか……人の事言えないだろう」
「うっ、ユエさんの教育の賜物ですぅ…」
「……シアはワシが育てた」
「つっこまないからな」
そんな和気あいあいと雑談していると一行は遂に大樹の元へたどり着いた。大樹を見てハジメの第一声が、
「…なんだこりゃ」
という驚き半分疑問半分といった感じのものだった。
大樹は見事に……枯れていたのだ。
大きさに関しては想像以上に大きい。明らかに周囲の木々とは異なる異常なまでの大きさだ。
「大樹はフェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちる事はない。枯れたまま変化なくずっとあるそうです」
凶夜達がカムの説明を聞きながら大樹の根元まで歩み寄った。そこには石版が建てられている。
「これは…オスカーの…」
「同じ紋様だなー」
石版には七角形とその頂点の位置に七つの紋様が刻まれていた。
ハジメは確認のため、オルクスの指輪を取り出す。指輪の紋様と石版の紋様の一つが同じだったのだ。
「やっぱりここが大迷宮の入り口みたいだな…だが…どうやって入ればいいんだ?」
ハジメ達が色々試している時、石版を見ていたユエが声を上げる。
「ハジメ、凶夜……これ見て」
「ん?なにかあったか?」
「なんだー?」
ユエが見ていたのは石版の裏側でそこには小さな窪みが空いていた。
「これは…」
ハジメがオルクスの指輪を嵌めてみる。すると…石版が淡く輝きだした。しばらく輝く石版を全員で見ていると、次第に光が集まり代わりに何か文字が浮き出始めた。そこにはこう書かれていた。
--四つ証
--再生の力
--紡がれた絆の道標
--全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう
「ハジメ、どういう意味だコレ」
「分からん」
「……四つの証は……たぶん、他の迷宮の証?」
「なるほど、じゃあ再生の力と紡がれた絆の道標は?」
頭を捻る凶夜やハジメにシアが答える
「う〜ん、紡がれた絆の道標は亜人族の協力を得られるかどうかとかじゃないですか?」
「それっぽいな」
「……あとは再生の力……私?か……凶夜?」
ユエが固有魔法"自動再生"か"不滅"を連想し、二人とも指を薄く切って"自動再生"や"不滅"を発動させながら石版や大樹に触るが何も反応がない。
「むぅ……違うみたい」
「…ん〜、枯れ木に…再生の力….最低四つの証…もしかして、迷宮を半分以上攻略した上で、再生に関する神代魔法を手に入れて来いって事じゃないか?」
「おーそれっぽい感じの考え!それじゃねーか?」
目の前枯れている大樹を"再生"する必要があるのでは?と推測するハジメ。凶夜やユエもそうかもと納得する。
「はぁ〜、ちくしょう、今すぐ攻略は無理って事か、面倒臭いが他の迷宮から当たるしかないか」
ここまで来て後回しにしなければならないことに歯噛みするハジメ。ユエも残念そうだ。ぐだぐだと悩んでいても仕方ないと気持ちを切り替えて先に三つの証を手に入れようと決意する。
立ち上がったハジメはハウリア族に集合をかけた。
「今、書いた通り、俺たちは先に他の大迷宮の攻略を目指すことにする。大樹の元へ案内するまで守るという約束もこれで完了した。お前たちならフェアベルゲンの庇護なしでもこの樹海で生きていけるだろう。そういうわけでここでお別れだ」
そしてシアをチラッと凶夜はスフォに視線を送る。別れの言葉残すなら今だと。そしてその合図を受け取ったシアとスフォは一歩踏み出て
「お「とうさ--」」
「ボス!お話があります!」
「…あれぇ、父様?今私達のターンでは…」
シアの呼びかけをさらりと無視しカムが一歩前にでた。ビシッと直立不動の姿勢だ。
「あ〜、なんだ?」
とりあえず「父様?父様?」と呼び掛けているシアを無視する方向で、ハジメはカムに聞き返した。スフォは既に諦めて凶夜の隣にいる。
「ボス、我々もボスのお供をさせてください!」
カムが一族の総意を声高に叫び、「なんだ、この状況?」と思いつつもハジメはきっちり返答した。
「却下」
「何故です!?」
ハジメに素気なく断られても、なお、食い下がろうとするカム達。しまいには「許可を得られなくても勝手に付いていきます!」ともいい始めた。このままだと本当に付いてきそうなのでハジメは仕方なく条件を出した。
「じゃあ、あれだ。お前等はここで鍛錬してろ。次に樹海に来た時に、使える様だったら部下として考えなくもない」
「…その言葉に偽りはありませんか?」
ないないと答えるハジメに嘘だったら新宗教の教祖の如く祭り上げると脅しをかけるカムに頬を引き攣らせるハジメ。ユエがぽんぽんとハジメを慰める。やはり、色んな意味でハジメはやりすぎたのだ。
樹海の境界でカム達の見送りを受けたハジメ、ユエ、シア、スフォ、凶夜は再びシュタイフに乗り込んで平原を疾走していた。位置取り的にはユエ、ハジメ、シアで別のシュタイフに凶夜、スフォの順番である。以前、【ライセン大峡谷】の谷底で乗せた時よりシアやスフォの密着度が増している気がするがハジメと凶夜はあえて無視する。
シアは次の行き先を聞いておらず、ハジメに目的地を聞く。
次の目的地は【ライセン大峡谷】だ。現在確認されている七大迷宮は【ハルツィナ樹海】を除けば、【グリューエン大砂漠の大火山】と【オルクス大迷宮】である。オルクスは攻略済みなので、自然、目的地は【大火山】だろうと思っていた、シアに気づいたハジメが意図を話す。
「一応、ライセンにも大迷宮があると言われてるからな。どうせ【大火山】を目指して西大陸に行くなら、東西に伸びているライセンを通りながら行けば見つかるかもしれないだろ?」
「つ、ついでで【ライセン大峡谷】を通るのですか…」
「ちなみにスフォは凶夜から既に聞いているはずだぞ」
と聞いていなかった仲間外れがシアだけということをつげるハジメにシアはハジメに気になっていたことを聞く。
「凶夜さんはユエさんみたいな存在がいないのにスフォの思いになんで答えないんでしょうね?」
「あ〜、どうしたらいいか分かんねぇんじゃないか?」
「というと?」
ハジメは凶夜について語る。シアの問いに答えるために。ユエも興味があるのか顔を少しこちらに向けている。
「まぁ、あいつの過去を詳しく言うつもりは無いけどあいつの中には敵しかいない時期があって素直に好意を向けられるって事自体に慣れてないんだよ。だから戸惑ってるって表現が一番しっくりくるか」
それにと続ける。
「あいつの中の敵、味方、大切な者の線引きはとてつもなく厳しい。そして知ってる通り、敵には容赦ないけど、大切な者まで入れると激甘になる、この短時間でスフォはそこまで入り掛けてるところまでいってると俺は思う。まぁ、時間次第じゃないか?」
「ほぇ〜」
「あと、お前なぁ、少しは自分の力を自覚しろよ。今のお前なら谷底の魔物もその辺の魔物も変わらねぇよ。ライセンが恐れられてるのは放出した魔力が分解される場所だからだぞ?身体強化に特化したお前ならなんの影響も受けずに十全に動けるんだ。むしろ独壇場だろうが」
「……師として情けない」
「うぅ〜、面目ないですぅ」
ユエにも呆れた表現を向けられ視線を泳がせるシア。気まずくなって話題を逸らそうとする。
「で、では今日はライセン大峡谷に行くとして野営ですか?それともこのまま、近場の街か村に行きますか?」
「出来れば食糧とか調味料とか揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいから町がいいな。」
町に向かう事を"念話"で凶夜にも伝える。そろそろちゃんとした飯を食いたくないか?と言ったら喰いぎみで行くと答える凶夜。
それに今後、町で買い物なり宿泊などするなら金銭が必要になる。素材ならいくらでも持ってるので換金してお金に変えておきたかった。
そのあとシアが余計なことを口走り首輪をつけられていた。
数時間ほど走りそろそろ日が暮れるというころ町が見えてきた。そしてハジメとユエは目を合わして何か通じ合って二人の世界を作っている。そこにシアがすすり泣きして無視されている。
「いつも、ああなんですか?」
ハジメとユエの二人だけの空間をみてスフォが凶夜に聞く。凶夜は苦笑いしながらシュタイフを走らせながら答える。
「隙があればいつもああだ。シアには頑張ってくれーとしか言えないなー」
「シアさんはいつも良くも悪くも真っ直ぐですから心配いらないと思ってますよ?私は」
「まぁ、ハジメ達は町に来たことが嬉しいんだろ、戻って来たーって感じがするからな、あと……悪いんだがスフォにもあの首輪はつけて欲しいんだ」
「凶夜さんからのプレゼントでしたら是非」
「そうじゃないんだけどなぁー」
そろそろ町の方からも視認出来そうなのでシュタイフをしまい徒歩に切り替える凶夜達、そこでシアと同じ首輪を出してもらい、スフォに渡すが受け取ってくれない。
「スフォ?」
「プレゼントなら是非」
意図が分かったのか、はぁ〜と溜息を吐いてスフォの首に黒を基調としたデザインで目立たないが水晶が付けられている、その首輪をスフォに付けてあげる凶夜。
「これで満足か?」
「はい!」
「スフォはこれでいいんですか!?」
首輪に満足しているスフォにツッコミを入れるシア。
道中、ブチブチと文句を垂れ流していたがスルーして遂に町の門まで辿り着いた。門の脇の小屋は詰所だったらしく、武装した男が出てきた。
「止まってくれ、ステータスプレートとこの町に来た目的は?」
規定通りの質問なのだろう。男はどこかやる気なさげである。凶夜はステータスプレートを出し、ハジメは門番の質問に答えながらステータスプレートを出した。
「食糧の補給がメインだ。旅の途中でな」
そのあと門番にステータスプレートやユエ、シア、スフォの三人に見惚れるなど少々のゴタゴタはあったがなんとか誤魔化し、門番にギルドで地図を貰えると情報を仕入れ、ようやく街の中に入れる。
門のところで見たがこの町の名前は【ブルック】というらしい。町中はそれなりに活気があった。露店も結構出ており、呼び込み声や白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえる。
ハジメやユエ、凶夜とスフォも楽しそうに目元を和らげている。しかし、シアだけ先程から涙目でハジメを睨んでいた。
「どうしたんだ、せっかくの町なのに」
「これです!この首輪!これのせいで奴隷に勘違いされたじゃないですか…スフォもなんで怒らないんですか!?」
「なんでと言われましても…」
シアが怒っていたのはそういうことだ。旅の仲間だと思っていたのに意図的に奴隷扱い受けさせられたことが相当ショックだったようだ。
ちなみにシアとスフォに渡している首輪は念話石と特定石を組み込んでおり、その名の通り念話と場所を特定すると時に役立つ。
そんな様子のシアに頭をカリカリ掻きながら目を合わせるハジメ。
「お前は白髪で珍しい兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も立たず目を付けられるぞ、スフォもそれで凶夜の奴隷ということにしたんだ。あとはってなにクネクネしてるんだ?」
言い訳があるなら言ってみろ!みたいに睨んでいたシアだが話を聞いてるうちに頬を赤らめイヤンイヤンし始めた。
調子に乗ってハジメの言ったことを盛るシアにユエの黄金右ストレートが突き刺さる。倒れるシア。
「……調子に乗っちゃだめ」
「……ずみまぜん、ユエざん」
ハジメは話を続ける。
「人間のテリトリーでは奴隷という身分がお前を守ってるだよ。それ無しじゃあ、トラブルホイホイだからなら、お前らは」
「それは……わかりますけど……」
だがやはり納得し難い様で、シアは不満そうな表情だ。そんなシアにスフォが言う。
「シアさんは誰に評価を貰いたいんですか?」
「え?」
「その他諸々の人に評価されるより大切な人に大切にされるのが一番じゃないですか?違います?」
「………そう、そうですね。そうですよね。」
「……ん。不本意だけど……シアは私が認めた相手……小さいこと気にしちゃダメ」
「スフォ…ユエさん、えへへ。ありがとうございますぅ。」
シアは、スフォの言葉に照れた様に微笑みながらチラッとハジメを見る。何かの言葉を期待するように。ハジメは仕方ないという風に肩を竦めて言葉を紡ぐ。
「まぁ、奴隷じゃないとばれて襲われても見捨てたりはしないさ」
「町中の人が敵になってもですか?」
愚問だ。という風に答えていくハジメと照れながら問いかけるシアを尻目にスフォもこちらを見てくる。何を言って欲しいかも分かる。けど恥ずかしくて「だぁぁー!」と言ってからヤケクソに発言する。
「スフォを見捨てたりしねーよ!守ってやる!これでいいか!?」
「例え、神が相手でも?」
「何が相手でもだ!」
「ふふ、好きですよ。凶夜さん」
ふんっとそっぽを向く凶夜にススッと近寄り、幸せだという雰囲気を出すスフォに敵わないと思う凶夜。
読んで頂きありがとうございます。
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