メインストリートを歩いていくと一本の大剣が描かれた看板を発見する。【ホルアド】の町でもみた冒険者ギルドの看板だ。規模は二回りほど小さいが…
ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込む。
ギルドの中は荒くれ者達のというイメージから薄汚れた所だろうと思っていたが中は意外に清潔さが保たれた場所だった。入り口正面にはカウンターがあり、左手には飲食店になっている様だ。
ハジメ達が入ると冒険者達が当然の様に注目してくる。最初こそささやかな注目だったがユエ、シア、スフォに目がいくと「ほぅ」という反応や見惚れてしまう者が出てくる。
テンプレの如くちょっかいかけてくることのない冒険者達に足止めされなくて幸いと思い凶夜とハジメはカウンターへと向かう。
カウンターには魅力的に微笑むオバチャンがいた。ちょっと残念と思ってる凶夜に後ろから「凶夜さん?」という声が聞こえるが聞こえない。ハジメも同じ事を思ってたらしくユエとシアの視線が刺さってる。そんな二人の内心を知ってか知らずか、オバチャンは優しく迎えてくれた。
「とびっきり綺麗な花を持ってるのに、まだ足りなかったのかい?残念だったね、美人の受付じゃなくて」
…オバチャンは読心術を使えるのかすごいな。と感心してるとハジメが言い訳していて女の勘を舐めるんじゃないよと言われている。そして話は流れ、素材の買取の時冒険者だと得するという事を聞いて、ハジメと凶夜だけ冒険者登録だけしておくことにしてステータスプレートを渡す。
「可愛い子三人もいるのに文無しで何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させるんじゃないよ?」
オバチャンがカッコいい。ハジメ達は有り難く厚意を受け取っておく事にした。ステータスプレートをもらいそこには天職ランの横に職業欄が新しく追加されており"冒険者"と表示されておりその横には青色の点がついている。
青の点は冒険者ランクで上に行くにつれて赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。
ちなみに戦闘系天職を持たない者で上がれる限界は黒だ。
「男なら黒や金を目指しなよ?お嬢さん達にカッコ悪いところ見せない様にね」
「ああ、そうするよ。買取りはここでいいのか?」
構わないよ。とオバチャンは買取り品の査定までできるらしい、優秀だ。
そしてオバチャンの目は驚愕に晒される。
「こっこれは!」
隅から隅まで丹念に確かめ、息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔をあげハジメをみる。
「とんでもないものを持ってきたね--樹海の魔物だね?」
「ああ、そうだ」
ハジメはここでも何か考えていたのかユエとシアに睨まれている。また、テンプレモノのシナリオでも考えていたのだろう。オバチャンにも懲りないねぇと呆れられている。何度かやり取りして査定が終わり、お金を受け取る。そして門番に聞いた地図がもらえる話を聞くとオバチャンが手渡す。
「ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」
中々に精巧で有用な情報が記載されてた地図であった。無料のものとは思えない出来だった。
「こんな立派な地図を無料でいいのか?」
「構わないよ。私が趣味で書いてるだけだからね」
オバチャンの優秀さがヤバかった。なんでこんな辺境のギルドで受付をやってんの?とツッコむレベルである。
「それより、お金はあるんだから少しはいい所泊まんなよ。治安が悪いわけじゃないけど、その三人ならそんな事関係なく暴走する男連中が出そうだからね」
オバチャンは最後まで気配りの出来るいい人だった。ハジメは「そうするよ」と返事をし入り口に向かって踵を返した。凶夜達はオバチャンに一礼してからハジメに追従する。
ハジメ達が地図を見て決めたのは"マサカの宿"という宿屋だ。紹介文によれば、料理が美味しく、防犯もしっかりしており、何よりお風呂に入れるという。
宿の中は一階は食堂になってる様で凶夜達が入ると、やはり後ろの三人に視線が集まる。カウンターにつくと十五歳くらいの女の子が元気に挨拶しながら現れた。
「いらっしゃいませ!ようこそ"マサカの宿"へ!本日はお泊まりですか?それともお食事だけですか?」
「宿泊だ、このガイドブックを見てきたんだが記載されている通りでいいか?」
オバチャン特製地図を見て合点がいったように頷く女の子。
「キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊の予定ですか?」
ハジメはなんか遠くを見ているから代わりに答える。
「一泊でいい。食事付きで、風呂も頼む」
女の子がお風呂の時間帯や食事付きの値段をいい部屋割りを聞いてくる。二人部屋と三人部屋が空いていてちょうどいいなと凶夜が思っていると、ハジメが二人部屋一つと三人部屋一つと言う。男二人、女三人で別れようと考えている時ユエが爆弾を落とす。
「……私とハジメが二人部屋。他は三人部屋」
「ちょっ、二人で何するつもりなんですか?」
「……なにって……ナニ?」
宿の女の子は顔を赤くしてチラチラ、ハジメとユエを見ていて、男連中は嫉妬の目で見ている。
「だ、だったらユエさんこそ別室に行って下さい!」
「……ほぅ、それで?」
ユエは指先を突き付けてくるシアに冷たい視線を向け、シアはキッと睨み返すと大声で宣言した。
「そ、それでハジメさんに私の処女を貰ってもらいますぅ!」
静寂が舞い降りる。この宣言に凶夜も笑えず顔をヒクヒク、スフォは口をアングリ開けてそれを手で隠してる。
それを無視してユエとシアがまだやり取りをしていると…
ゴチンッ!ゴチンッ!
「ひぅ!」
「はきゅ!」
鉄拳が叩き込まれる音と二人の少女の悲鳴が響き渡った。二人にゲンコツを叩き込んだのはもちろんハジメである。
「周りに迷惑だろうが。あと何より俺が恥ずいわ。男二人部屋、女三人部屋だ」
ゲンコツを落とした後、ハジメはクルリとカウンターの女の子に向きなおり言う。
「まさかの男の人同士で!?アブノーマルだわ!」
女の子はトリップしていた。代わりに父親らしき人が受付をして部屋の鍵を貰い、そのまま逃げる様に三階の部屋に向かった。そして数時間して夕食の時間になり、ユエ達と合流し一階の食堂に向かう。
そして、席に着くと上手い食事を食べ、男二人で風呂に入り、何事もなく就寝につく。風呂の途中で、宿屋の女の子が覗きに来るというハプニングはあったがとにかく何もなく一泊出来た。
朝食を取ってるとハジメが少女三人に旅に必要な買い出しを頼んだ。チェックアウトは昼なのでもう少し部屋で済ませておきたい用事があり、凶夜はハジメに相談があるそうだった。
「用事ってなんですか?」
シアが疑問を素直に口にする。
「まぁ、作りたいものがある、のと、凶夜の相談が用事ちゃ用事だな」
「凶夜さんの相談はハジメさんにしか出来ない事なんですか?私で良ければ相談にのりますよ?」
とスフォが提案したが凶夜がそれを断る。
「悪いなー、男同士で聞きたいことがあんだよ」
ユエ、シア、スフォが買い物に出た後部屋ではハジメが錬成を行なっていた。どうやらシアの鉄槌とスフォの小刀を作っている様だった。錬成を行いながらハジメは問う。
「で?相談てのは?」
「まどろっこしいのは俺も嫌いだから率直にきく。…………男女関係の好きって感情はどんなだ?」
ブフッと予想外のことを相談されてビックリするハジメ、思わず凶夜の顔を見るが至って真剣な顔をしているのを見て真剣な表情に戻る。
「スフォのことか?」
「ああ、告白もされてんのに答えねーままってのは男らしくねーと思うけど、俺は俺がスフォに抱いてる感情が男女の好きなのか仲間として好きなのかがまだ理解できねー。からユエっていう特別のいるハジメに聞くのが手っ取り早いと思った」
告白されている事は初めて知ったがあんなに分かりやすくアプローチされていて気付かない訳ないかと思いつつもハジメは答えていく。
「凶夜の中での仲間の線引きが厳しいのは俺も知ってる。じゃあ、スフォは今どの位置だ?」
「正直に言うと大切な者の位置にはいると思う、だから聞いてんだ。好きってどんな気持ちだ?」
「ん〜どう言えば良いのかねぇ。俺とスフォが死にかけててどちらかしか助けれないとしたらどっちを助ける?」
「どっちも無理矢理助ける」
即答で無理難題に無茶で答える凶夜。それを予想してたのか「ハハ」と笑いながら続けるハジメ、もちろん錬成の手は止めずに。
「その答えが即答できるくらいにスフォは大切な位置にいるんだなぁ、じゃあ次の質問だ。スフォの隣に別の男がいて幸せそうな表情をしてるのはどう感じる?」
「……どうって」
「俺は嫌だね。ユエの隣は俺のモンだ、そして俺の隣もユエのモンだ。それが想像できるか、出来ずに自分の手で幸せにしたい、笑っていたい、もらいたいって思うのが好きって感じじゃないか?」
これで答えになったか?とチラリと凶夜の方を見るとニヤリと笑い錬成に集中し始めるハジメ。
そこにいる凶夜の顔はまだ難しそうに考えているがハジメには答えが出ている様にみえた。
あらかた買い物を終えてユエ達が宿に戻るとちょうど作業を終えたハジメと難しい顔のまま唸っている凶夜がいた。ハジメが「おかえり」と言おうとするとシアが衣服を新調していた。
それをさらりと流しすことにして、町がなんだか騒がしかったがなんかあったのか?とか聞いてユエ達は何もなかったと受け答えしてる間も凶夜は難しい顔をしている。ユエ達が帰ってきたことに気付いていない様子だった。それに気付いたスフォが気配を消して後ろから忍び寄り耳元で凶夜を呼びかける
「凶夜さん?ただいま戻りましたよ〜?」
カバッと耳を押さえて飛び退く凶夜にスフォはもちろん、ハジメ以外はとても驚愕していた。凶夜の顔を見ると林檎の様に赤く口をパクパクしている。ハジメは「ククク」っと笑いを堪えている。
「いつの間に帰ってきてたんだ!?」
「ですから、数分前ですよ?どうしたんですか?凶夜さん、少しおかしいですよ?熱でもありますか?」
「熱はない!大丈夫だ」
そうですか…と納得するスフォ。ハジメが助け舟を出してやるかとシアとスフォに話し掛ける。
「さて、シア。こいつはお前にだ。スフォもこれを」
そう言ってハジメはシアに直径四十センチ長さ五十センチ程の機械的な円柱状の物体を渡し、スフォには長さ六十センチ程の小刀を渡した。
「な、なんですか?これ?物凄く重いんですけど……」
「私のは本当に持ってるのか不安になるくらい軽いですね……」
「そりゃあ、お前用の戦鎚に、スフォ専用の小刀だからな」
そして先にシアの戦鎚"ドリュッケン"の説明が入りそれが終わるとスフォ専用の小刀"コテツ"について説明を行っていく。
まず鞘に入れたまま魔力を流すと電磁加速しながら抜刀でき、また抜刀状態で魔力を込めると"風爪"が発動し飛ぶ斬撃となる。そして"コテツ"自身が支援魔法の錫杖の代わりとなり、より早く支援魔法が出せるように改良されている。まさにスフォ専用の小刀だ。
「今の俺にはこれくらいが限界だが、随時改良していくつもりだ。これから何があるか分からないからな。ユエや凶夜のシゴキに受けたとはいえ、まだ十日。まだまだ危なかっしい。その武器はお前達の力を最大限活かせる様に考えて作ったんだ。使いこなしてくれよ?仲間になった以上勝手に死ぬなよ?」
「ふふ、大丈夫です。まだまだ強くなって、どこまでも着いていきますからね!」
「ありがとうございます。ハジメさん。私もまだまだ強くなって凶夜さん達に着いていきます」
宿のチェクアウトを済ませて外に出ると太陽は天頂近くに昇り燦々と輝いている。ハジメが振り返りユエとシアに頷くと二人を連れて歩いていく。それに着いて行こうとスフォが歩き始めるが凶夜が止まったままだ。それを疑問に思い名前を呼びかける。
「凶夜さん?」
「スフォ、まだ俺なりに考えてる最中だ。だけどそれ程遠くない内に答えを出すから、すまないがそれまで待っててくれ」
スフォの目を見てしっかりと告げる凶夜。最初は何のことだか分からなかったが察しがつくと頬を薄ピンクに染めて言葉を紡ぐ。
「はい。待ってますよ。いつまでも答えが出るまで待ってます」
行こうとスフォを促してハジメ達を追いかける。スフォも凶夜の少し後ろを歩き追従する。
旅の再開だ。
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