もうすぐお気に入りが50人に達しそうでビックリ。
頑張っていくのでよろしくです。
死屍累々。
そんな言葉がピッタリな光景が【ライセン大峡谷】に広がっていた。処刑場と恐れられるこの場所でこんな事できるのは……
ハジメ、凶夜、ユエ、シア、スフォの五人である。凶夜達はブルックの町を出たあと、かつて通った【ライセン大峡谷】の入り口にたどり着いた。そして現在、そこから更に進み【オルクス大迷宮】の転移陣が隠されてる洞窟も通り過ぎて二日進んだところまできている。
【ライセン大峡谷】では懲りもしない魔物達がこぞって襲ってくる。
各々の倒し方で一撃で倒し、谷底に跋扈する地獄の猛者達が完全に雑魚扱いだった。大迷宮を示す何かがないか探しながら、片手間で皆殺しにしていく。
「はぁ〜、ライセンのどこかにあるってだけじゃあ、やっぱ大雑把過ぎるよなぁ」
「まぁ、他の迷宮でヒントが貰えるかもしれねーだろ?見つかりゃラッキーぐらいでいいんじゃね?」
洞窟などがあれば調べようと、注意深く観察してるが、それらしい場所が見つからず、ついつい愚痴をこぼすハジメに、軽く行こうぜと凶夜が言う。
「まぁ、それはそうなんだけどな……」
「ん……でも魔物が鬱陶しい」
「あ〜、ユエさんには好ましくない場所ですものね〜」
「私も身体強化と"コテツ"でどうにかなってますけど支援魔法が使えないのは辛いです」
そんな風に方をこぼし、魔物の多さに辟易しつつも、更に走り続ける事三日。
その日も収穫なく日が暮れて、空に月が登り、ハジメ特製のアーティファクトテントや調理器具で食事を取り、そろそろ寝ようかというときにシアが外にでる。訝しむハジメに澄まし顔でシアが言う。
「ちょっと、お花摘みに」
「谷底に花はないぞ?」
「ハ・ジ・メ・さ〜ん」
デリカシーのないハジメに睨むシア。ハジメはもちろん今が谷底と分かっているので「悪い悪い」と全く悪く思ってない顔で苦笑いする。
そんなハジメに怒りながらテントの外に出ていったシアは、しばらくすると……
「ハ、ハジメさ〜ん!ユエさ〜ん!凶夜さ〜ん!スフォ〜!大変ですぅ!こっちに来てくださぁ〜い!」
魔物を呼び寄せる可能性も忘れたかの様に大声をあげた。何事かと外に飛び出す。シアの声のした方に行くと巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かる様に倒れており、一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。そこでシアがブンブンと手を振っている。その表情は信じられないモノを見た!っという興奮に彩られていた。
はしゃぎながら「こっち、こっちですぅ!」とハジメとユエの手を引っ張り、岩の隙間に連れて行くのを凶夜とスフォが着いて行く。岩の隙間は案外広く壁側の奥が窪んでおりそこをシアが指をさしている。
そこに全員が視線を向けると、そこにあるモノを見て「は?」と思わず呆けた声を出し目を瞬かせた。
そこには壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。
--おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪--
!や♪が妙に凝っている所がなんとも腹立たしい。
ハジメやユエが何だ、これと言っているがおそらく大迷宮の入り口なのだろう。シアが偶然見つけたと言っている。
ハジメがユエと凶夜に本物かどうか尋ねる。そして二人とも本物だろうと答えてハジメが根拠を聞く。
「…ミレディ」
「オスカーの手記にあった名前だろー?ミレディって」
「やっぱそこだよな」
ライセンの名は有名だがファーストネームの方は知られていない。だからこそ、大迷宮の可能性は高いのだが……
「何でこんなに、チャラいんだよ」
【オルクス大迷宮】での死闘を思い出し、他の迷宮も一筋縄ではいかないんだろうと思っていたのだが、この軽さは否応なく脱力させるものだった。
「でも、入り口らしい場所は見当たりませんね?奥も行き止まりですし………」
「シアさん、そんなに勝手に動き回っては……」
シアは「入り口はどこでしょう?」と当たりをキョロキョロ見渡したり、奥の壁をペシペシ叩いたりしている。そんなシアにスフォが「危ないですよ」と言おうとした瞬間、
ガコンッ!
「ふきゃ!?」
シアの触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側に姿を消した。
「「「「………」」」」
奇しくも迷宮の入り口を見つけ、看板の信憑性が増した。ライセン大迷宮はここにある様だ。シアが消えた回転扉を見ていたハジメとユエが溜息を吐いてからシアと同じように手をかけて扉の向こうに消えて行く。
「俺たちも行くかー」
「そうですね。シアさんも心配ですし」
とハジメとユエの後を追いかけるように凶夜とスフォも回転扉に手を掛けた。
扉の仕掛けが作動し扉の向こう側へと送る。中は真っ暗で、扉はグルリと回り元の位置でピタリと止まる。
と、次の瞬間ヒュヒュヒュ!っと無数の風切り音がしたと同時に凶夜達に何かが飛来した。それは矢だった。侵入者を排除せんと無数に飛んできている。
マチェットで斬り払おうとしたところスフォが前に出て小刀で撃ち落として行く。金属音が鳴り響き一本残らず叩き落とすと静寂が戻る。
と、同時に周りの壁がぼんやり辺りを照らし出す。凶夜達のいる場所は十メートル四方の部屋で、奥へと整備された道が伸びていた。そして中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子の字でとある言葉が彫られていた。
"ビビった?ねぇ、ビビっちゃった?チビってたりして。 ニヤニヤ"
"それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ"
「うぜーな」
「……」
凶夜が思った事を素直に口にする。スフォも黙っているが同じ気持ちだろう。わざわざ"ニヤニヤ"や"ぶふっ"の部分を強調して深く彫られているのが余計に腹立たしい。
「ハジメ達はーっと」
周りを見渡す凶夜とスフォ、そして後ろにいることに気付き振り返るとシアが縫い付けられていた。ギリギリで避けてはいたのだろう怪我はしてないが足元が濡れていた。そういえばお花摘みに行っていたことを思い出す凶夜。スフォは義姉妹の情けない姿に片手で顔を覆っている。シアの着替えを取り出し手早く着替えて、シアの準備も整い、いざ迷宮攻略へ!と意気込もうといた時、シアの目に中央の石版が目に入った。
しばらく無言だったシアがドリュッケンで渾身の一撃を石版に叩き込んでいる。よほど腹を据えていたのか何度も振り下ろしていた。
すると、砕けた石版の跡、地面の部分に何か文字が彫られてあり、そこには……
"ざんね〜ん♪この石版は一定時間経つと自動修復するよぉ〜、プークスクス!!"
「ムキィーーー!!」
シアが遂にマジギレして更に激しくドリュッケンを振るい始めた。部屋全体が小規模に揺れ、途轍もない衝撃音が何度も響き渡る。
「ミレディ・ライセンは"解放者"云々関係なく人類の敵だな」
「……激しく同意」
「同じく」
「同意します」
どうやら【ライセン大迷宮】は【オルクス大迷宮】とは別の意味で一筋縄ではいかないらしい。
シアが発狂して数時間。
たったそれだけの時間で、その推測が嫌になるくらい当たっていた事を、凶夜達は思い知らされていた。
まずまともに魔法が使えない。谷底より遥かに強力な分解作用が働いているからだ。魔法特化のユエにとっては特に負担のかかる場所である。スフォの支援魔法も”幻惑"も使えないので亜人族特有の身体能力と身体強化でなんとかしてる状態である。
ハジメにも多大な影響が出ている。"空力"や風爪"といった体の外部に魔力を形成、放出するタイプの固有魔法は全て使えなくなっており、頼みの"纏雷"も出力が大幅に低下しており、そのためドンナー&シュラークの威力が半分以下に落ちている。
よってこの大迷宮は身体強化がなにより重要になってくる。ハジメ達の中では、まさにシアと近接が一番強い凶夜の出番となるのだが……
「殺ルですよぉ……絶対、隠れ家を見つけてめちゃくちゃに荒らして殺ルですよぉ」
「………」
シアはドリュッケンを肩に担ぎ、据わった目で獲物を探すように周囲を見渡していた。凶夜は目つきの悪い人相が更に何倍も目つきが悪くなっておりその目はシアの同様、据わっている。
それはそれはもう深く深〜くキレている。言葉のイントネーションも所々おかしい事になっている。その理由は、ミレディ・ライセンの意地の悪さを考えれば容易に想像がつくだろう。
ハジメ、ユエ、スフォもシアや凶夜の気持ちがわかるので、なんとも言えない。現在それなりに歩みを進めて来た凶夜達だが、ここに至るまで様々なトラップやウザイ言葉の彫刻に遭遇してきた。底意地の悪すぎるトラップが仕掛けられてないか注意深く周囲を観察しながら進む。
すると、複雑怪奇な空間に出た。
そこは階段や通路、奥へと続く入り口が何の規制性もなくごちゃごちゃにつながっており、一階から伸びる階段が三階に繋がっている。かと思えば三階からスロープとなって一階の通路に繋がってたり、二階から伸びる階段がただの壁だったり本当にめちゃくちゃだった。
「こりゃまた、ある意味迷宮らしいと言えばらしい場所だな」
「……ん、迷いそう」
「ふん、流石は腹の奥底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心をあらわしてるんですよぉ!」
「……気持ちはわかるから、そろそろ落ち着けよ」
「…………」
「凶夜さんも、そろそろ喋りましょう?」
未だ怒り心頭のシアと凶夜。それに呆れ半分同情半分の視線を向けつつ、「さて、どう進んだものか」と思案するが、結局マーキングとマッピングしながら地道に進む事にした。
長い通路を進んでいると、突然、
ガコンッ
という音を響かせハジメの足の床のブロックの一つを踏み抜いた。そのブロックだけハジメの体重により沈んでいる。
その瞬間、
シャァァアア!!
左右の壁な隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。右の壁からは首の高さで、左の壁からは腰の高さで前方から迫ってくる。
「回避!」
ハジメは咄嗟に避けつつ叫ぶ。ユエはしゃがむ事で避けて、シアとスフォも何とか避けている。最後列にいた凶夜が動く。
「シャラクセェ!!!!」
両マチェットを抜き、強引に叩き斬る。斬るというかノコギリ状の刃物を壊した。地味に"狂界突破"を使っている。そして少しはスッキリしたという表情をしてる。しばらく注意して辺りを見渡して、どうやら今ので終わりらしい。ホッと息を吐き後ろを振り返ろうとし、猛烈に悪寒を感じるハジメに凶夜。
ハジメはユエとシアを抱え、凶夜はスフォを抱え、そのまま前に飛び出す。直後、今までいた場所に頭上からギロチンの如く無数の刃物が射出され、スッと床に食い込んだ。先程のノコギリと一緒と同じで高速振動している。
「…完全な物理トラップか。魔眼石じゃあ、感知できないわけだ」
ハジメは魔法のトラップを警戒しすぎていて、魔眼石が有ればトラップに引っ掛かることはないと先入観を持ってしまっていた。シアがハジメにわーきゃー言ってるがユエの「お漏らしウサギ」に反応している間に凶夜はハジメに提案する。
「ハジメ、アレ出してくれ」
「アレか!物理には物理で行くか」
凶夜が言っているアレとは物理近接武器の籠手"オルトロス"殴る蹴るも得意な凶夜の二つ目の武器だ。マチェットをしまい、オルトロスを装着する凶夜。
凶夜達は通路の先にある空間に出た。その部屋には三つの奥へと続く道がある。とりあえず"マーキング"だけしておき、階下へ続く階段がある左の通路を選んだ。
「うぅ〜、なんだか嫌な予感がしますぅ」
階段の中程まで進んだ頃、シアがそんな事を言い出した。
「お前変なフラグ立てるなよ。そういうこと言うと、大抵、直後に何か『ガコン』…ほら見ろ」
「わ、私のせいじゃないですぅ!?」
「……フラグウサギめっ」
嫌な音が響くとかなりの傾斜の階段の段差がなくなり、スロープ状になったのだ。しかもご丁寧に地面に空いた穴からタールのようなよく滑る液体が一気に溢れ出した。
「スフォ!掴まれ」
咄嗟にマチェットを抜き地面に突き刺し固定、空いた手でスフォの手を掴む。スフォも手に掴まり、滑らずに済む。余裕ができてハジメ達を見るとちょうどシアがハジメの顔面にM字開脚の状態で突っ込んでいる所だった。そしてそのまま滑り落ちて行くハジメ達。
「えぇー」
「どうしましょう?」
「まぁ、追うしかねーな。しっかりと掴まってろよ!」
マチェットを抜き去りハジメ達を滑りながら追う。スピードが増さないように途中、途中でマチェットでブレーキをかけながら滑り降りていくと果てには道がなくハジメ達の姿も見当たらない。道の果てで止まりとりあえず落ちてないか下を見ると……
カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ
そんな音を立てながら十センチほどのサソリがおびただしい数、蠢いていた。見なきゃ良かったと思いながらハジメ達を探す。
「ハジメー?どこだー?」
「ここだ!」
ハジメがいた場所はポッカリと空いた横穴で少し距離があり、少し助走をつけないと届かない位置にあり、どうしようかと考える。スフォが風魔法を使うか聞いてきたがここではあまり長くは持たないだろうから強行突破する事にした。
「スフォ、全力で抱きついてろ」
「喜んで!」
凶夜が行ったのは"狂界突破"で身体能力を上げ尚且つ、魔力でも身体強化を行い、ジャンプ。がそれでも届かないので一瞬の"空力"を全力で蹴る、そして横穴に突撃するような形で無事ハジメ達と合流する。【ライセン大迷宮】の中でも体内で発動する"不滅"は有効でこんな無理矢理な事が出来る。スフォの意見を却下したのは大事な場面で支援魔法を使ってほしいという考えもあり、スフォもそれを言われずとも感じ取っていた。
ちなみに天井にある文字をハジメに教えられてなんとも言えない気持ちになった凶夜とスフォだった。
読んで頂きありがとうございます。
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