凶夜達と併走しながらシアが「ウサミミがぁ〜」とウサミミをペタリと折りたたみ、両手で押さえながら涙目になっている。
「だから耳を塞げって言ったんだ」
「ええ?なんですか?聞こえないですよぉ」
「……ホント、なんて残念ウサギ……」
そんな言葉を投げかけるハジメ達に凶夜とスフォは苦笑いしている。
再び落ちて来るゴーレム騎士達を対処しながら、駆け抜ける事、五分。遂に通路の終わりが見えた。通路の先は巨大な空間になっている様だ。道自体はは途切れており、十メートルほど先に正方形の足場が見える。
「飛ぶぞ!」
ハジメの掛け声に頷く全員。背後からは依然とゴーレム騎士達が降ってきている。それらを迎撃しつつ凶夜達は通路端から勢いよく飛び出した。凶夜達は眼下の正方形ブロックに飛び移ろうとした。
が、思った通りにいかないのがこの大迷宮の特徴。なんと放物線を描いて跳んだ凶夜達の目の前で正方形のブロックがスィーと移動し始めた。
「なにぃ!?」
「クソ迷宮がぁ!」
この迷宮に来て何度目かの叫びを上げるハジメと凶夜。このままでは落下する。チラリと見たがそこは相当深い。直後、ユエとスフォの声が響いた。
「「"来翔"!」」
発動した風系統の魔法により上昇気流が発生し凶夜達の跳躍距離を伸ばす。二人を持ってしても一瞬の効果しかなかったが十分であった。ハジメは義手のスパイクで固定し、ぶら下がったハジメにユエとシアがしがみ付く。凶夜は身体強化された握力でぶら下がり、もう片手でスフォを掴む。
「ナ、ナイスだ、ユエ、スフォ」
「ユエさん、スフォ、流石ですぅ!」
「……ん、もっと褒めて」
「ありがとうな、ユエ、スフォ」
「役に立ててよかったです」
墜落せずに済んだ事に思わず笑みを浮かべ、ユエとスフォを賞賛する。ユエとスフォも少し得意げな雰囲気だ。
だが、そんな和やかな雰囲気も空飛ぶゴーレム騎士達によって遮られた。なんと、ゴーレム騎士達は宙を飛んでいるのである。おそらく重力を操作して落下方向を決めているのだろう。凄まじい勢いで未だぶら下がったままの凶夜達に接近する。
「みんな、登れ!」
ハジメは指示を出すとドンナーを抜くと迫り来るゴーレム騎士達に連続して発砲した。ユエとシアがハジメの体を伝ってブロックの上に登りきり、凶夜がスフォを片手で持ち上げ登らせ、自身も腕力でブロックに登る。ハジメも倒立する勢いで体を跳ね上げブロックの上に移動した。
直後、凶夜が達がぶら下がってた場所にゴーレム騎士達が大剣を突き刺す。技後の硬直に銃撃でゴーレム騎士達を落としていくハジメ。
「あはは、常識ってなんでしょうね?全部浮いてますよ?」
シアの言う通り、周囲の全ては浮遊していた。
凶夜達が入ったこの場所は超巨大な球状の空間だった。そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動している。完全に重力を無視した空間である。だが、凶夜達は重力を感じていている。
そんな空間をゴーレム騎士達が縦横無尽に飛び回っていた。やはり、落下方向を調節しているのか方向転換が急である。この空間に近付くにつれて細やかな動きが可能になった事を考えると、おそらく……
「ここにゴーレムを操ってるヤツがいるってことかな?」
ハジメの推測に他の全員が頷く。そして表情を引き締める。ゴーレム騎士達は凶夜達の周りを旋回するだけで何故か、襲ってこない。ここが終着点なのか、まだ続きがあるのかは分からない。だが間違いなく最奥に近い場所ではあるはずだ。ゴーレム騎士達の能力上昇とこの特異な空間がハジメの推測に説得力を持たせる。
と、次の瞬間、シアの焦燥に満ちた声が響く
「逃げてくださいぃ!」
「「「「!?」」」」
なにが?と問い返すこともなく、シアの警告に瞬時に反応し、弾かれた様に飛び退いた。数メートル離れた所に他のブロックが通りかかったので、それを目指して現在いるブロックを離れる。
直後、凄まじい轟音と共に隕石が落下してきたのかと錯覚する様な衝撃が今までいたブロックを直撃し、木っ端微塵に爆砕した。赤熱化したなにかが落下してきて、ブロックを破壊しその勢いのままに通り過ぎていったのだ。
ハジメ、凶夜の頬に冷や汗が流れる。シアが警告してなければ直撃していた。シアが警告を出した直後、感知が出来てない訳ではなかった。だが、落下速度が速すぎて感知してからの回避が間に合ったとは思えない。
「シア、助かったぜ、ありがとよ」
「……ん、お手柄」
「サンキュー、助かった」
「ありがとうございます。シアさん」
「えへへ、"未来視"が発動して良かったです。代わりに魔力をごっそりと持っていかれましたけど……」
"未来視"はシアが仮定した選択の結果として未来が見えるというものだが、もう一つ、自動発動する場合がある。今回の様に死を伴う様な大きな危険に対しては直接・間接問わず見えるのだ。
つまり直撃していると少なくともシアは死んでいたかもしれないのだ。凶夜達は通過して行った隕石モドキの方を見た。ブロックの縁から下を覗く。と、下の方で何かが動いたかと思うと猛烈な勢いで上昇してきた。それは凶夜達の頭上に出ると、その場に留まりギンッと光る眼光を持って睥睨してきた。
「おいおい、マジかよ」
「……すごく……大きい」
「お、親玉って感じですね」
「やりがいがありそうだなー!」
「私、有効打ないんですって…」
三者三様の感想を言う凶夜達、ユエの発言はスルーするとして。
凶夜達の目の前に現れたのは、宙に浮かぶ超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのまま、全長二十メートルくらいはある。右手は赤熱化しており、先程ブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手は鎖が巻き付いていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。
凶夜達が巨大ゴーレムに身構えていると、周囲のゴーレム騎士達が凶夜達を囲む様に並び出した。整列したゴーレム騎士達は大剣を胸の前で立てて構える。まるで、王の前に整列しているように。
包囲された凶夜達も緊張感が高まる。辺りに静寂が満ちて、一触即発の状況。
そんな張り詰めた空気を破ったのは……
「やほ〜。はじめまして〜。みんな大好きミレディ・ライセンちゃんだよぉ〜」
そんな、巨大ゴーレムのふざけた挨拶だった。
凶悪な装備に全身甲冑を固めた鋭い眼光の巨大ゴーレムからやたら軽い挨拶をされ、ポカンとする凶夜達。
そんな硬直する五人に、巨大ゴーレムは不機嫌そうな声を上げた。声質は女性のものだ。
「あのねぇ〜、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ?全く、これだから最近の若者は…もっと常識的になりたまえよ」
実にイラッとする話し方である。しかも巨大ゴーレムはやたら人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言うように肩を竦める仕草までした。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。"ミレディ・ライセン"を名乗っていることから本人の可能性もあるが、彼女は死んでいるはずだし、人間だったはずだ。
ハジメはとりあえずその辺りを探ってみることにした。
「そいつは悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人だろ?目論見通り驚いてやったんだから、許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな」
「あれぇ〜、こんな状況なのに物凄く偉そうなんだけど、こいつぅ」
探りではなく、ド直球だった。この反応は予想外だったのか巨大ゴーレムは若干戸惑った様な様子を見せる。が直ぐに持ち直して人間なら絶対ニヤニヤしているであろう容易に想像できる声で凶夜達に話しかけた。
「ん〜?ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ〜?なにを以て人間だなんて……」
「オスカーの手記にお前のことが少し書いてあった。人間の女として出てきたぞ?というか阿呆な問答はする気はない。簡潔にと言っただろう。どうせ、立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。たから、その前に吐くもん吐け」
ハジメは巨大ゴーレムと数度会話し神代魔法の事やオスカーの迷宮を攻略した話をしまた、巨大ゴーレムが本物のミレディ・ライセンという事を聞き出していた。そしてミレディが一つ質問を投げかけてきた。
「目的は何?何のために神代魔法を求める?」
嘘偽りは許さないという意志が込められた声音で、先程まで見せていたふざけた雰囲気など微塵もなく問うミレディ。
ハジメは、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐ見返しながら嘘偽りない言葉を返した。故郷に帰りたいと、この世界のために命をかけるつもりもないと。
「そっちは?」
今度は凶夜に問いかける。
「俺はハジメみたいな、目的なんてもんはない……ただ、大切な人を守るため、失わないために強くなりたい。それだけだ」
ミレディ・ゴーレムは凶夜達を順に巡らしていき、「そっか」と頷いた。そしてミレディ・ゴーレムの軽薄な空気が戻りハジメがミレディの神代魔法の事を聞く。ミレディ・ゴーレムは答える。
「教えてあ〜げない!」
「死ね」
ハジメが問答無用にオルカンからロケット弾をぶっ放した。火花の尾を引く破壊の嵐が真っ直ぐにミレディ・ゴーレムへと突き進み直撃する。凄絶な爆音が空間全体を振動させながら響き渡る。
シアが「先手必勝ですぅ!」とか言ってユエにツッコミをもらっている。もうもうと舞う煙の中から赤熱化した右手が現れると横薙ぎに振るわれ煙が吹き散らされる。
煙の中か現れたミレディ・ゴーレムの両腕の前腕部の一部が砕かれながらも大した応えた様子もなく、近くを通ったブロックを砕き前腕部を再修復する。
「先制攻撃とはやってくれるねぇ〜。私は強いけどぉ〜、死なない様に頑張ってねぇ〜」
そう言いながら左腕のモーニングスターが凶夜達に射出した。予備動作なくいきなりモーニングスターが飛び出してきたのだ。おそらく、ゴーレム達と同じく重力を調整して"落下"させたのだろう。
凶夜達は近くの浮遊ブロックに跳躍してモーニングスターを躱す。モーニングスターはそのまま凶夜達のいたブロックを破壊して宙を泳ぐ様にミレディ・ゴーレムの元へ戻る。
「やるぞ!ミレディを破壊する!」
全員がハジメの掛け声に答える。
ハジメの掛け声と共に【ライセン大迷宮】最後の戦いが始まった。
大剣を掲げて待機状態だったゴーレム騎士達が一斉に襲いかかってくる。
ユエはクルリと身を翻しながらジャラジャラ下げた水筒の一つを前に出し、横薙ぎにする。極限まで圧縮された水がウォーターカッターとなってゴーレム騎士達を横断した。
「あはは、やるねぇ〜。でも総数五十体の無限に再生する騎士達と私。果たして同時な捌けるかなぁ〜」
嫌味ったらしい口調でミレディ・ゴーレムがモーニングスターを射出する。シアは上にあった三角錐のブロックに飛び乗る。ハジメはモーニングスターにドンナーを連射した。モーニングスターの軌道がそれハジメから大きく逸れる。
同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。
「見え透いてるよぉ〜」
その言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。横へ"落ちた"のだろう。
「見え透いてるぞ!」
そんな言葉と共にミレディの移動した所に先回りしていた凶夜がミレディ・ゴーレムをぶん殴る。咄嗟に左腕でガードするミレディ・ゴーレム。凄まじい衝撃音と共に左腕が大きくひしゃげる。しかし、それがどうしたと言わんばかりに左腕を横薙ぎにした。
「人間の力とは思えないねぇ〜」
「人間がゴーレムになってるやつに言われたかねーよ!」
嫌味に嫌味を返しながら一瞬の"空力"を発動し眼下のブロックに移動する。ハジメとユエの元にユエ一人では捌けない程のゴーレム騎士達が殺到する。ハジメは”宝物庫"からガトリング砲"メツェライ"を出しユエと背中合わせになり、毎分一万二千発の死を撒き散らす化け物を解き放った。
六砲身のバレルが回転しながら掃射される。躱した者、反撃をするため回り込んだ者達は水のレーザーにより横断される。
瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒して空間の底面へ墜落した。
「ちょっ、なにそれぇ!聞いた事も見た事もないんですけどぉ!」
ミレディ・ゴーレムの驚愕の叫びを無視してハジメが叫ぶ。
「ミレディの核は心臓と同じ位置だ!あれを破壊するぞ!」
「んなっ!何で、わかったのぉ!」
再度、驚愕の声を上げるミレディ。ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が分かり、全員の眼光も鋭くなる。
ハジメが一気に跳躍する事でシアとユエが動き出す。
凶夜は有効打がないスフォに少し話をして跳躍しその場を離れる。
「……分かりました」
歯噛みしながら凶夜の言ったことに頷くスフォ。
その間にミレディ・ゴーレムの右手のヒートナックルとシアのドリュッケンが凄まじい轟音を響かせながら衝突していた。
「こぉののの!」
突破できないミレディ・ゴーレムの拳にシアは雄叫びを上げ力を込めるが、やはりゴーレムの膂力には敵わず、しかも突如爆発し衝撃を撒き散らしながら振り切られた拳によって盛大に吹き飛ばされる。
「きゃああ!」
悲鳴を上げるシア。衝撃に痺れる体はいう事を聞かず、あわや、このまま墜落するかと思われた、直後、事態を予測していたユエが横合いから抱き止め"来翔"で軌道修正し近くのブロックに着地した。
「中々のコンビネーションだねぇ〜」
「だろ?」
「!?」
余裕の声を上げていたミレディ・ゴーレム。そこへ予想外に近い位置からの声に驚愕し、ミレディ・ゴーレムが慌てて声をした方向に視線を向けると、そこには、いつの間にか懐に潜り込み、電磁加速式対物ライフル"シュラーゲン"をミレディ・ゴーレムの心臓部に突き付けているハジメがいた。
「いつの間ッ--」
ミレディの言葉はシュラーゲンの発する轟音に遮られた。
ゼロ距離で放たれた殺意の塊はミレディ・ゴーレムを吹き飛ばすと共に胸部の走行を木っ端微塵に破壊した。
胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ・ゴーレム。ハジメも反動で後方に飛ばされるがアンカーを発射し近くの浮遊ブロックに着地する。そしてミレディ・ゴーレムの様子を見る。
ユエとシアもハジメの近くの浮遊ブロックに飛び乗ってくる。
凶夜とスフォは少し離れた場所で様子を見ている。
ミレディ・ゴーレムが何事もなかった様に近くの浮遊ブロックを手元に移動させながら、感心を含んだ声音でハジメ達に話しかけてきた。
「いやぁ〜、大したもんだねぇ。ちょっとヒヤッとしたよぉ」
シュラーゲンが最大の威力だと危なかった。この場所に迷宮を作った自分は偉いとミレディが自画自賛してるが、そんな事を気にせず凶夜とハジメは胸部の装甲の奥に漆黒の装甲があり、それには傷一つ付いていない。ハジメと凶夜には見覚えのある材質だった。
アザンチウム鉱石、ハジメの装備にいくつかと凶夜のマチェット、オルトロスに使われてる材料で世界最高硬度と靭性を誇る鉱石だ。
「面倒だなー。クソが」
第二ラウンドが始まる。
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