ありふれない狂戦士で世界最凶   作:黒い兎♪

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最高評価をつけてくださったブラッドフリーダムエルスさんありがとうございます!
とても恐縮でござる!!


ライセン大迷宮 6

ミレディ・ゴーレムをトドメを刺したシアを褒めるハジメやユエ。そしてハジメがシアに優しい眼差しを向け、ユエがシアの頭を撫でてシアが泣いてる間、スフォは抱っこされたままでいる。

 

「スフォさん?そろそろ降りてくれません?立てるでしょー?」

 

「嫌です。頑張ったんです。ご褒美を貰ってもいいじゃないですか?」

 

「一瞬だろうが、降りろ」

 

言葉は荒くも優しく下ろす、凶夜。その一瞬でも凶夜はスフォに見惚れる程の美しさがあった。勿論全力で応えるためにスフォが頑張った結果なのだが、凶夜の目に焼き付いてはなれない。

 

「凶夜さん?どうしました?」

 

「いや?なんでもねーよ……よくやった」

 

スフォの頭を撫でて褒める凶夜。目を潤ませるスフォ、シアみたく大泣きはしないが初めての大迷宮、しかも得意な支援魔法が封じられる領域での戦いだったのだ。内心は不安で仕方なかった。そんな事を見越してかのようなこの優しい扱われ方に思わず涙ぐむ。

 

「あのぉ〜。いい雰囲気のところ悪いんだけどぉ〜。そろそろヤバいんで、ちょっといいかなぁ〜?」

 

物凄く聞き覚えのある声。今日夜達がハッとしてミレディ・ゴーレムを見ると、消えたはずの眼の光がいつの間にか戻ってる事に気が付いた。咄嗟に距離を取る凶夜達。そして、核を砕いたはずなのにと警戒心をあらわにする。

 

「ちょっと、ちょっと、大丈夫だってぇ〜。試練はクリア!あんた達の勝ち!欠片に残った力で少しだけ話す時間を取っただけだよぉ〜。もう数分も保たないから」

 

その言葉を証明するかのように、ミレディ・ゴーレムはピクリとも動かず、眼に宿った光は弱々しく儚げに点滅をしている。今にも消えてしまいそうだ。どうやら数分しか保たないというのは本当らしい。

ハジメが”クソ野郎共"を殺してくれて言う話は聞かないと機先を制すように言うとミレディもそんなつもりはないと答える。

ミレディは力尽きかけているのか、次第に言葉が不鮮明に、途切れ途切れになっていく。だが、そんな事を気にすることもなくハジメが疑問を口にする。

 

「他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんど分かってねぇんだよ」

 

「あぁ、そうなんだ。……そっか、迷宮の場所が分からなくなるくらい…長い時間が経ったんだね。……場所…場所はね……」

 

いよいよミレディ・ゴーレムの声が力を失い始める。どこか感情的な響きさえ含まれてる声に、ユエとシア、スフォが神妙な顔をする。長い時を、使命、あるいは願いのために、意志が宿る器を入れ替えてまで生きた者への敬意を、瞳に宿した。凶夜は黙って見ている。

ミレディはポツリポツリと残りと七大迷宮の所在を語っていく。

 

「以上だよ。……頑張ってね」

 

「随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

ハジメの言う通り、今のミレディは、迷宮のウザイ言葉を用意したり、人を逆撫でする口調とは無縁の、誠実さや真面目さを感じさせた。戦闘前にハジメや凶夜に目的を聞いた時に見せた、おそらく彼女の素顔が出ているのだろう。消滅を前に取り繕う必要がなくなったのかも知れない。

 

「あはは。こめんね〜。でもさ……あのクソ野郎共って…ホントに嫌な奴らでさ……嫌らしい事ばっかしてくるんだよね。…だから、少しでも…慣れておいて欲しくてね…」

 

「おい、こら。狂った神の事なんざ興味ないって言っただろうが。なに、勝手に戦う事を前提で話してんだよ」

 

ハジメは不機嫌そうな声に、ミレディは意外なほど真剣さと確信を宿した言葉で返した。

 

「…戦うよ。君が君である限り……必ず…君は、神殺しを成す」

 

「…意味わかんねぇよ。そりゃあ、俺の道を阻むなら殺るかも知れないが…」

 

それと……とミレディは真剣な声のまま眼の光を今まで黙って聞いていた凶夜に向けて忠告をする。

 

「…守る為に戦うのなら……赤い天使に…気を付けて……アイツだけは別格……だから…」

 

「…?忠告は感謝する、頭の隅には入れておく」

 

若干困惑するハジメとミレディの忠告に対して真摯に向き合う凶夜。その様子を楽しげな笑い声を漏らす。

 

「ふふ……それでいい……君たちは君たちの思った通りに生きればいい……君達の選択が…………この世界にとっての……最良だから……」

 

いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は青白い光に包まれていた。その光は蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと昇っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても神秘的な光景である。

その時、おもむろにユエがミレディの傍へと寄っていった。既に、ほとんどの光を失っている眼をジッと見つめる。

 

「なにかな?」

 

囁くようなミレディの声。それに同じく、囁くようにユエが一言消えゆく偉大な"解放者"に言葉を送った。

 

「……お疲れ様。よく頑張りました」

 

「………」

 

それは労いの言葉だった。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。

ミレディにとっても以外な言葉だったのらだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。やがて穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

 

「……ありがとね」

 

「……ん」

 

ちなみにユエとミレディが最後の言葉をかわす、その後ろでハジメが余計な事を言いそうになりシアがそれを事前に察知し羽交締めにした挙句、口を塞いでいた。凶夜も余計な事を口走るつもりは毛頭無かったのだがスフォに睨まれており、余計に固く口を閉ざしていた。

 

「…さて、時間の……ようだね。……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを………」

 

オスカーと同じ言葉を凶夜達に贈り、”解放者"の一人、ミレディ・ライセンは淡い光となって天へと消えていった。

辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにユエとシア、スフォの三人が光の軌跡を追って天を見上げる。

 

「最初は、性根が捻じ曲がった最悪な人だと思ってたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

 

「……ん」

 

「そうですね、彼女は彼女なりに頑張ったんでしょうね」

 

どこかしんみりとした雰囲気で言葉を交わす中、凶夜はこそっとハジメに言う。

 

「どう思う?逆に胡散臭ぇと思うんだが?」

 

黙っていたと思ったらそんな事を考えていたようで、その言葉を優秀なキツネミミが捉える。

 

「凶夜さん?ちょっと酷いですよ?彼女は一生懸命頑張ったんですから、空気を読んで下さい」

 

「いや、だってなぁ?……ハジメもなんか言ってくれー」

 

「とっとと行くぞ。それと断言するがアイツの性根の悪さも素だと思うぞ?あの意地悪さは、演技ってレベルじゃねぇよ」

 

「ちょっと、ハジメさん。そんな死人にムチ打つ様なことを。酷いですよ。全く空気が読めないのはハジメさんもです」

 

「……ハジメ、KY?」

 

ユエまで…と呟くハジメに、ハジメもそう思うよな!?と仲間ができてちょっと嬉しそうな凶夜。

そんな雑談をしているといつの間にか壁の一角が光を放っている事に気が付いた凶夜達。気を取り直して、その場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに五人で飛び乗った。その途端、足場の浮遊ブロックがスィーっと動き出し五人を光る壁まで運んでいく。

 

「…」

 

「わわっ、勝手に動いてますよ?これ。便利ですね」

 

「……サービス?」

 

「やっぱり…」

 

「まだ、言ってるんですか?凶夜さん」

 

勝手に運んでくれる浮遊ブロックにシアは驚き、ユエは首をかしげる。ハジメと凶夜は何故か嫌そうな表情でスフォは凶夜に呆れた様な視線を送っている。光る壁の前まで進み、手前でピタリと止まる。すると、見計らったかの様に発光を薄れさせていき、スッとその発光していた部分の壁が抜き取られた。奥には光沢のある白い壁で出来た通路が続いている。

凶夜達が乗った浮遊ブロックは、通路を滑るように移動していく。どうやらミレディ・ライセンの隠れ家まで連れて行ってくれる様だ。そうして進んだ先にはオスカーの隠れ家と同じ紋様が刻まれていた。凶夜達が近付くとやはりタイミングよく壁がスライドし奥へと誘う。

そして、くぐり抜けた先には…

 

「やっほー、さつきぶり!ミレディちゃんだよ!」

 

ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

 

「「「……」」」

 

「ほれ、みろ。こんなこったろうと思ったよ」

 

「なー、演出が過剰だったし、胡散臭いと思った」

 

ハジメは色々考えていたみたいだが浮遊ブロックが移動した時には凶夜もミレディが生きていると確信した。

黙り込んで顔を俯かせるユエとシア、スフォに、ミレディは非常に軽い感じで話しかける。

 

「あれぇ?あれぇ?テンション低いよぉ〜?もっと驚いてもいいんだよぉ〜?あっ、それとも驚きすぎて言葉が出ないとか?だったら、ドッキリ大成功ぉ〜だね☆」

 

ミニ・ミレディは語尾にキラッ!と星を瞬かせながら、凶夜達の眼前までやってくる。未だに、ユエとシア、スフォは顔を俯かせ表情が見えない。凶夜とハジメはこの先の展開が読めるので一歩下がる。

ユエがボソリと呟いてミニ・ミレディとの問答が始まる。

 

「……さっきのは?」

 

「ん〜?さっき?あぁ、もしかして消えちゃったと思った?ないな〜い!そんな事あるわけないよぉ〜!」

 

「でも、光が昇って消えていきましたよね?」

 

「ふふふ、中々良かったでしょう?あの"演出"!やだ、ミレディちゃん役者の才能まであるなんて!恐ろしい子!」

 

「"演出"ですか…?」

 

「そう!中々作るのに苦労したんだよぉ〜?そ・れ・にぃ、あの演技いかにもって感じでよかったよねぇ〜?」

 

テンションが上がりまくっているミニ・ミレディにユエは手を前に突き出し、シアはドリュッケンを構え、スフォはコテツを抜いた。流石に「あれ?やり過ぎた?」と動きを止める。

ゆらゆらと揺れながら迫ってくる少女三人に、ミニ・ミレディは頭をカクカクと動かし、言葉に迷う素振りを見せると意を決した様に言った。

 

「テヘ、ペロ☆」

 

「……死ね」

 

「「死んで下さい」」

 

「ま、待って!ちょっと待って!このボディは貧弱なのぉ!これ壊れたら本気でマズイからぁ!落ち着いてぇ!謝るからぁ!」

 

しばらくの間、ドタバタ、ドカンッバキッ、いやぁーなど破壊音や悲鳴が聞こえていたが、ハジメは一切無視して部屋の観察をしている。凶夜はあくまでもお仕置きの一環であるのでしばらく好きにさせてから止めようと思って少女達のわちゃわちゃを眺めていた。

ハジメはおもむろに魔法陣に歩み寄ると勝手に調べ始めた。それを見たミニ・ミレディが慌ててハジメの元へやってくる。後ろからは少女三人が無表情で迫ってきている。凶夜もそれを追いかける。

 

「君ぃ〜、勝手にいじっちゃダメよぉ」

 

「……ハジメどいて、そいつ殺さない」

 

「退いてください、ハジメさん。そいつは殺ります。今、ここで」

 

「ハジメさん?退いてくれますよね?」

 

「いい加減遊んでないで貰うもん貰うぞー」

 

「そうだな、凶夜の言う通り、やる事やるぞ」

 

凶夜とハジメが若干呆れた声で注意する。ハジメの後ろでワーワー言ってるミニ・ミレディの顔面を義手でアイアンクローするハジメ。そのまま、力を入れていきミニ・ミレディの頭部がメキメキという音が響き出した。

そして、ミニ・ミレディを脅して神代魔法をあっさりと手に入れる。

 

「やっぱり重力操作の魔法か」

 

「そうだよ〜ん。ミレディちゃんの魔法は一応重力魔法。上手く使ってね。…って言いたいところだけど君達とウサギちゃんは適性ないねぇ〜。もうびっくりするレベルでないね!」

 

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

 

ミニ・ミレディの言う通り、凶夜とハジメ、シアは重力魔法の知識を刻まれてもまともに使える気がしなかった。ユエが生成魔法を使えないと同じ様に適性がないのだ。

 

「まぁ、人相悪い君とウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は…生成魔法が使えるんだから、それでなんとかしなよ。キツネちゃんは適性微妙だね。修練をすればある程度は使えるんじゃないかな?金髪ちゃんは適性バッチリだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

 

ミニ・ミレディの幾分真面目な解説に凶夜とハジメは肩を竦め、スフォは微妙と言われ使い道を考え込み、ユエは頷き、シアは打ちひしがれていた。

それを尻目にハジメは更に要求を突きつける。

 

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ。それから、お前の持ってる便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱石類も全部よこせ」 

 

「……君、セリフが完全に強盗のそれと同じだからね?」

 

ミニ・ミレディは懐をゴソゴソと探ると一つの指輪を取り出し、それをハジメに投げる。それを受け取るハジメ。更にミニ・ミレディは虚空に大量の鉱石類を大量に取り出す。おそらく”宝物庫"を持ってるのだろう。

 

「それ、”宝物庫"だろう?だったらそれごと寄越せよ。どうせ中にアーティファクト入ってんだろうが」

 

「あのねぇ〜、これ以上渡す物はないよ。”宝物庫"も他のアーティファクトも迷宮の修繕とか維持管理に必要な物なんだから」

 

「知るか、寄越せ」

 

「あっ、こらダメだったら」

 

ハジメは色々説明を受けてたうえで「分かった、じゃあ寄越せ」ともう強盗でしかない。

 

「ええ〜い、あげないって言ってるでしょ!もう、帰れ!」

 

ミニ・ミレディは踵を返し壁際まで走り寄り、浮遊ブロックを浮かせると天井付近まで逃げた。それでもジリジリ寄っていくハジメをそろそろ止めようと凶夜が動き出そうとした頃にミレディがいつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイッと下に引っ張る。

 

「「「「「?」」」」」

 

一瞬「なにしてるんだ?」という表情をする凶夜達。だが、その耳に嫌というほど聞いてきたあの音が再び聞こえた。

 

ガコン!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

そう、トラップの作動音だ。

その音が響き渡った瞬間、四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。斜め方向へ鉄砲水の様に噴き出す大量の水は、瞬く間に部屋を激流で満たす。同時に部屋の中央の床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流がその穴に向かって一気に流れ込む。

 

「てめぇ!これはっ!」

 

「クソがっ!そういう意味かよ!」

 

ハジメ、凶夜が何かに気が付き、屈辱に顔を歪める。

白い部屋、窪んだ中央の穴、そこに流れ込む渦巻く大量の水……そう、まるで便所である!

 

「嫌なものは、水に流すに限るね☆」

 

イラッとした雰囲気そのままに、ユエが魔法を使おうとするとミニ・ミレディが重力魔法で上から数倍の重力で押さえつけられる。

 

「それじゃあねぇ〜。迷宮攻略頑張りなよぉ〜」

 

「ごぽっ…てめぇ、俺たちゃ汚物か!いつか破壊してやるからなぁ!」

 

「ケホッ……許さない」

 

「殺ってやるですぅ!ふがっ」

 

「ガポッ……ぜってぇ、ぶっ壊してやらぁ!覚悟してろよ!」

 

「ゴポポッ、私、泳げな…ごぽっ」

 

約一名以外そう、捨て台詞を吐きながら、なすすべなく激流に呑まれ穴へと吸い込まれていく、ハジメだけ最後の最後に何か投げたようだが。全員が穴に吸い込まれると水は綺麗になくなり元の部屋の様相を取り戻す。

 

「ふぃ〜、濃い連中だったねぇ〜。さてさて、迷宮のやらゴーレムの修繕やら、しばらくは忙しくなりそうだね。……ん?なんだろ、あれ」

 

ミニ・ミレディはそう独りごちる。その視線の先には壁に突き刺さるナイフとそれにぶら下がる黒い物体。そのフォルムには見覚えがある。

 

「へっ!?これって、まさかッ!?」

 

黒い物体、それはハジメお手製の手榴弾である。穴に落ちる寸前せめてもの仕返しに投擲してたのだ。

わたわたとするミニ・ミレディだったが、すでに遅し。白い部屋がカッと一瞬の閃光に満たされ、ついでに激しい衝撃に襲われた。

迷宮の最奥に「ひにゃああー!!」という少女の悲鳴が響き渡った。その後、修繕が更に大変になり泣きべそを掻く小さなゴーレムがいたとかいないとか………

 




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