ありふれない狂戦士で世界最凶   作:黒い兎♪

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最高評価下さった妲己さんありがとうございます!

お気に入りに入れてくれている人達にも感謝です

今回はオリ成分が強いです。お気をつけて


凶夜の気持ち

汚物の如く流された凶夜達は、激流で満たされた地下トンネルの様な場所を猛スピードで流されていた。息継ぎできるような場所もなく、ひたすら水中を進む。なんとか、壁に激突して意識を失うような下手だけは打たないように必死に体をコントロールしていた。

とその時、凶夜達の視界が自分達を追い越していく影を幾つも捉えた。それは魚だった。どうやら流された場所は、他の川や湖とも繋がっている地下水脈らしい。ただ、流されているだけの凶夜達とは違い、激流の中を逞しく泳いでいるので、どんどん凶夜達を追い越していく。

そんな中、凶夜が何かに気付く。それは、スフォの体に力が入っておらずただ流されている様にしか見えなかった。そういえば、ミレディに捨て台詞を吐く時に泳げないと言いかけていた事を思い出し、スフォが溺れていることに気が付く。どうにかスフォの元に行こうとするが激流すぎてやはり、思うように体が動かせずにただ流されてしまう。この激流がどこに行き着くかわからないが、終わるまでスフォが壁に激突しない様に、スフォが無事な事を祈る事しか出来ない自分にどうしようもなく腹が立つと同時にスフォの命が失われてしまう、言われない恐怖が凶夜を襲った。それはどんな事より恐ろしい様に思えた。

 

町と町をつなぐ街道を一台の馬車と数頭の馬がのんびり進んでいた。もちろん、馬上には人が乗っている。冒険者風の出で立ちをしている男が三人と女が一人だ。馬車の方には、御者台には十五くらいの女の子と化け物………もとい巨漢の漢女が乗っていた。

 

「ソーナちゃぁ〜ん、もうすぐ泉があるから、そこで休憩にするわよぉ〜」

 

「了解です、クリスタベルさん」

 

クリスタベルと呼ばれた漢女は、凶夜がハジメにスフォの事を相談していた時にユエ、シア、スフォの三人がお世話になった服飾店の店長である。

そして、そのクリスタベルの隣に座る少女は"マサカの宿"の看板娘ソーナ・マサカである。

この二人、現在、冒険者の護衛を付けながら、隣町からブルックへの帰還中なのである。クリスタベルは、その巨漢から鬼強いので服飾関係の素材を自分で取りに行くことが多い。今回も仕入れ等のため一時、町を出たのだ。それに便乗しますしたのがソーナである。隣町の親戚が大怪我を負ったと聞き、宿を離れられない両親に代わって見舞いの品を届けに行ったのだ。冒険者達はブルックの町の冒険者であり、任務帰りなのでついでに護衛しているのである。

ブルックの町まであと一日といったところ。クリスタベル達は、街道の傍にある泉でお昼休みを取ることににた。

泉に到着したクリスタベル達が、馬に水を飲ませながら自分達も泉の畔で昼食の準備をする。ソーナが水を汲みに泉の傍までやってきた。そしていざ水を汲もうと入れ物を泉に浸けた、その瞬間、泉の中央が泡立ち一気に噴きで始めた。

悲鳴をあげ尻もちをつくソーナに、クリスタベルが一瞬で駆け寄り庇う様に他の冒険者達の元へ戻る。その間にも噴き上がる水の勢いは増していき、十メートル以上はありそうな水柱となった。

この泉は休憩場所として有名だがこんな現象は報告されたことがなかった。それ故にクリスタベル、ソーナ、冒険者達は口を開き、巨大な水柱を見上げた。すると、

 

「どぅわぁあああー!」

 

「んっーーーーー!!」

 

「うおぁあああー!」

 

「「………」」

 

噴き上がる水の勢いそのままに三人が悲鳴をあげながら飛び出してきた。飛び出してきた五人の人間は、悲鳴をあげながら十メートル近くまで吹き飛ばされると、そのまま、クリスタベル達の対岸に落下した。

 

「な、なんなのいったい」

 

ソーナの呟きが他のクリスタベル達の気持ちを代弁していた。

 

「ゲホッ、ガホッ。〜〜っ、ひでぇ目にあった。あいつ、いつか絶対破壊してやる。皆んな無事か?」

 

「ケホッケホッ……ん、大丈夫」

 

「ガホッ、ガホッ。ッ!!!スフォ!!」

 

なんとか水面に上がり、悪態を吐きながら他の四人の心配をするハジメ。しかし、返ってきたのはユエの返答と凶夜の慌てた声だった。

そして、凶夜はまた泉の中に飛び込んで行く。

 

「スフォがどうかしたのか?……シア?おい、シア!どこだ!」

 

「シア……どこ?」

 

呼びかけるが周囲に反応はない。ハジメは急いで水中を見ると案の定水の底に沈んで行くシアと、シアから少し離れた所にスフォも沈んでいて、そっちには既に凶夜が向かっている。

凶夜はハジメがシアを助けてるのを見てからスフォを抱き上げ、地面を蹴りスフォを引っ張り上げる。

仰向けにしたスフォは目を閉じて、顔面蒼白で、呼吸と心臓が停止していた。凶夜は素早く気動を確保をし人工呼吸を躊躇わず行い、心肺蘇生を試みる。確か、心肺停止から五分までなら助かる確率が高かったはずと思いながらも心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す。繰り返す事数回目、スフォが息を吹き返す。

 

「死ぬなよ!スフォ!!伝えてない事があるぞ!絶対死なせないからな!」

 

「ケホッ!ケホッ!……凶夜…さん」

 

「スフォ!」

 

意識が戻りスフォが凶夜の顔を確認して名前を呼ぶ。凶夜はそれだけでスフォに抱きつき「よかった!よかった!」と言い続けている。スフォは自分の状況を朧げに把握し、凶夜が助けてくれた事を理解して凶夜の背中をポンポンとあやす様に叩く。

 

「もう、大丈夫ですよ。凶夜さん、ありがとうございます」

 

「念のため、回復魔法とか使わなくていいか?ホントに大丈夫か?」

 

「そうですね。回復を〝天恵〟」

 

スフォは回復魔法を念のため使用し、凶夜に大丈夫なアピールをするため腕を曲げグッと力を入れてニッコリと笑う。

 

「ほら、もう、大丈夫ですよ?だから安心してください、ね?」

 

「よかった…溺れてたのは気付けたんだがどうしようもなくて…」

 

抱きついて離れない凶夜の顔が見えないが少し震えてる事が分かり、心配させた身だがここまで心配をしてくれていることに喜びを感じるスフォ。そしてガバッとスフォの肩を掴み少し距離をあける凶夜。だが肩から手は離さない。凶夜の様子がやはりおかしく、心配をかけ過ぎたのか?と思うが少し違う様子だったので凶夜に尋ねる。

 

「凶夜さん?どうしたんですか?」

 

「スフォ、これからもこんな何が起こるか分からない旅だ」

 

「それは終わった話ですよ、凶夜さん。それでも私は凶夜さんについていきます」

 

「今回のスフォが死ぬかも知れないと思った瞬間、連れてこなきゃよかったと思った。守れない俺を殺したくなるくらいに」

 

「そんなに大切に思っていただけてるんですね!もう、特別な位置にいるかもしれませんね?」

 

スフォは軽く冗談のつもりでいつもの様に凶夜を揶揄いながらアプローチするために言っただけだったのだが思わぬ返事が帰ってきた。

 

「ああ、特別だ」

 

物凄く柔らかく溶けた様な優しい表情をスフォに向け『特別』という言葉を使う。凶夜の中には敵、味方、大切な者の三つだけだったのだがスフォが特別と言う位置を今回の迷宮攻略で作り上げたのだ。凶夜はハジメと話しをしてからずっと考えていた。特別とは何かを。そして、ある事に気が付いた、スフォのいない未来が想像できないのだ。何度も何度も考えてもスフォが隣にいる未来しか想像できない。ハジメに言われた様に他の男の元へ行くスフォも想像してみたがどうしようもなく、嫌だと思う自分を凶夜は驚いていた。そして今回の迷宮攻略でスフォが頑張る姿を見て思ったのだ。スフォはもう凶夜の中で『特別』なのだと。言われてみれば、ハジメと話した時からもう、その位置にはいたのだろう、でないと耳元で話しかけられるだけであんなに動揺しない。

今回もどうしようもない激流に流されている時もスフォか心配で仕方なかった。正直ハジメよりもだ。ハジメは自身でなんとかするだろうという信頼はある。もちろんスフォにもそれはあるのだが凶夜自身の手で守りたい、守って行きたいと心の底から思ったのだ。

 

「ふぇ?」

 

「特別だ。誰にも渡したくない。俺の隣にいて欲しい。ずっとだ」

 

怒涛の愛の言葉を並べていく凶夜にスフォは顔を真っ赤にしてパニックに陥る。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!特別ってあの特別ですよね!?男女の関係ですよ?わかってますか!?凶夜さん、ハジメさんでいうユエさんの位置ですよ!?」

 

「分かってる。俺の隣にいて欲しいし、スフォの隣には俺が居たい。他の男には渡さない」

 

スフォの目を見て全く逸らさずに答える凶夜に顔を真っ赤にしながら黙り込んでしまうスフォ。【ライセン大迷宮】に行く前になるべく早くに答えを出すとは言っていたがここまで早いとも思ってなかったスフォ。凶夜の中に特別がない事がなんとなく分かっていたのでそれを凶夜が作るのに時間がかかるとスフォは思っていたのだ。だからいざこうも真っ直ぐ特別と言われると嬉しいが恥ずかしい、自分が凶夜にふさわしくないかとかぐるぐると考え込んでしまっていた。そんな、スフォに優しい声が降り注ぐ

 

「スフォ?顔を上げてくれ」

 

「はい?んむっ」

 

凶夜に言われた通り顔を上げると凶夜の顔が目の前にあり、唇と唇が重なり合っている。凶夜からキスのやり直しだった。人工呼吸の時はスフォは気を失っていて知らないから凶夜はやり直したかったし、スフォがなんとなく何を考えてるか察してやはり自分からするべきだと思いこの行為に至った。数秒唇を重なり合わせてから離し、凶夜はスフォの目を覗き込みながら告げる。

 

「もう一度言うぞ?スフォ。お前は俺の特別だ。大切な人以外の評価なんてどうでも良いんだろ?なら、俺が特別だって言ってるんだからそれで良いんだよ」

 

「……はい…」

 

いつか、シアに言った言葉を言われて考えていた事が吹っ飛び、唇の感触と自分が最愛の人の特別になれたという嬉しさが込み上げてきて衝動的に凶夜に抱きつく。凶夜もそれを愛おしそうに抱きしめる。

 

「あのぉ〜、そろそろいいか?」

 

「……今だけ…シアは頑張ったし……でも…」

 

「スフォはキスして貰えたんですねぇ!私は自分からなのに……でも義姉妹が結ばれて良かったですぅ!」

 

今までの行為を途中から見ていたハジメは相棒のいい雰囲気を壊すか迷ってでも進まない事が分かり空気を読まず声をかける。ユエは何かを考え込んでいて、シアはハジメとキスしたが自分から襲ったのでキスを凶夜側からして貰った義姉妹に嫉妬しつつ、直ぐにスフォの想いが届いた事を純粋に喜んだ。

見られている事を知らなかった凶夜は冷静になっていき自分がどんなに第三者から見て恥ずかしい事をしていたかを思い出して、顔が少し赤くなりながら誤魔化す、スフォは凶夜に抱きついたまま、キツネミミをピコピコ、尻尾をフリフリしており、とても嬉しそうだ。ハジメは凶夜がいつもハジメとユエを見ながらニヤニヤしている凶夜の顔をこれでもかというほどマネするみたいにニヤニヤしている。

 

「ゴホンッ!で?ここはどこなんだ?」

 

咳払いをしつつ空気を変えるために話題を逸らすが、スフォがとても幸せそうな表情で凶夜に抱きついているため空気が締まらない。

そんな凶夜にハジメは後ろに向かって指を差す。なんだ?と思いながらも指を差した方向を見ると化け物がいた。クリスタベルを見てソーナを見てもう一度クリスタベルを見る。そしてハジメに視線が戻る。見なかったことにしたらしい。たが、クリスタベル達の方から近付いてきて、どうしようと思ったところ、シアが「あっ、店長さん」と知り合いらしい振る舞いをするので話しに応じる事になった。

結果、自分達のある場所が、【ブルックの町】から一日程の場所にあるということが判明し、凶夜達も町に寄っていくことにした。クリスタベルが馬車に便乗させてくれるというのでその行為に甘える事にする。濡れた服を着替え、道中、色々話をしながら、暖かな日差しの中馬の足音をBGMに進んで行く。

新たな仲間と共に、二つ目の迷宮の攻略を成し遂げた。

その感慨に浸りつつ、自分の中に特別な存在が出来たことに喜びを感じながら凶夜はスフォと共に馬車の荷台でこれからも色々あるだろう旅を思い、笑うのだった。

 




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