ありふれない狂戦士で世界最凶   作:黒い兎♪

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【ライセン大迷宮】を攻略した後、ミレディ・ライセンに便所の汚物の如く地下水脈に流された凶夜達。その際に元々泳げないスフォと何かを見て溺れたシアに凶夜とハジメがそれぞれ人工呼吸をし、凶夜がスフォに告白し見事、凶夜の『特別』となり優しいキスを交わしたスフォ。

シアは何度も繰り返される口づけ(人工呼吸)に、意識を取り戻すなり、人外の身体能力をフルに生かして、ハジメに襲いかかったのだ。それはもう、むちゅ〜と深いキスを交わしたのである。

当然、その後、ハジメに引っぺがされて泉に投げ捨てられるのだが……シアにとってはファーストキスの大切な思い出なのである。

その日から三人部屋と二人部屋を取るのは変わらなかったが、三人部屋のはハジメ、ユエ、シア、二人部屋には凶夜、スフォという部屋割りとなった。これを言い出したのはユエでシアにハジメとの同室を許可されたのだ。そして凶夜はスフォに美味しく頂かれた。ユエがスフォに色々、教えていたらしく凶夜はその誘惑に耐えきれなかった。というより、耐える理由も別になかった。次の日には三人に「昨夜はお楽しみでしたね」と揶揄われる始末。

これにより、ソーナちゃんの好奇心とか妄想とかがさらに深まり、やたらと高い潜入スキルを持つ宿屋の看板娘が爆誕するのだが……これはまた別の話。

 

カラン、カランと、そんな音を立てながら冒険者ギルド【ブルック支部】の扉が開く。入ってきたのは五人の人影。ここ数日ですっかり有名人になった凶夜、ハジメ、ユエ、シア、スフォである。

ギルド内はいつもの雰囲気で、ハジメ達に気が付くと片手を上げて挨拶してくる者、相変わらずユエ達三人に見惚れ、ハジメと凶夜は羨望と嫉妬の視線を受けるがそこに陰湿な者はいない。

ブルックに滞在して一週間、その間にユエ達を手に入れようと決闘騒ぎを起こした者は数知れず、ユエ達が無理と分かると外堀を埋めようとハジメや凶夜から攻略してやろうという輩がそれなりにいたのである。もちろん、ハジメはそんな面倒事をまともに受ける訳がない。最終的には「決闘しろ!」というセリフの"け"の字で発砲し黙らしていた。凶夜は一人一人丁寧に実力を分からせ、もう二度とそんな事をする気が起きない様にしてなんなら決闘を挑んでいない奴のストッパーになる様に教育していた。

そんな訳でこの町ではユエとハジメが色々な由縁で”スマッシュ・ラヴァーズ"というパーティ名が浸透しており自分の二つ名と共に知ったハジメは遠い目をしていたのは記憶に新しい。凶夜に至っては二つ名が"鬼"と懐かしいモノをつけられて苦笑いしていた。

 

「おや?今日は五人全員一緒かい?」

 

凶夜達がカウンターに近付くと、いつも通り、受付のおばちゃん…もといキャサリンがおり、先に声をかけた。キャサリンの声に意外さが含まれているのはここに来る時は五人全員で来るということがなかったからだ。

 

「ああ。明日にでも町を出るんで、あんたには色々世話になったし、一応挨拶を、とな。ついでに目的地関連で依頼が有れば受けていこうと思ってな」

 

世話になったというのは重力魔法と生成魔法の組み合わせを試行錯誤するために広い部屋が必要だったため、キャサリンに聞いたところギルドの一室を無償で貸してくれたからだ。

ちなみに他の四人は郊外で重力魔法の鍛錬である。

寂しくなるねぇとキャサリンが言うがハジメが七割が変態、二割が阿呆とかなんとかと苦々しい表情で話している。

そんなハジメにキャサリンも苦笑いだ。

 

「で?どこに行くんだい?」

 

「フューレンだ」

 

雑談しながらも仕事をキッチリこなすキャサリン。さっそくフューレン関連の依頼がないか探し始める。

【フューレン】とは、中立商業都市のことだ。凶夜達の次の目的地は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるので、一度やってみようという話になったのである。なお、【グリューエン大火山】の次は砂漠を超えた更に西にある【メルジーネ海底遺跡】が目的地だ。

 

「う〜ん、おや?ちょうどいいのがあるよ。隊商の護衛だね。ちょうど空きが二人分あるよ……どうだい?受けるかい?」

 

キャサリンに出された内容を確認する。確かに、依頼内容は隊商の護衛のようだ。中規模な隊商の様で十五人程の護衛を求めてるらしい。ユエ、シア、スフォは冒険者登録してないので、凶夜とハジメでちょうどだ。

 

「連れはOKなのか?」

 

「ああ、問題ないよ。荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。ましてや、ユエちゃん、シアちゃん、スフォちゃんは結構な実力者だ。二人分の料金でもう三人分優秀な冒険者を雇える様なもんだよ。断る理由もないさね」

 

「そうか、ん〜どうすっかな?」

 

ハジメは意見を求める様に後ろに視線を向けた。正直な話、魔力駆動車があるので配達系の任務の方が馬車より何倍も早くフューレンに着くことができる。

 

「……急ぐ旅じゃない」

 

「そうですねぇ〜たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません」 

 

「まぁ、他に依頼がないなら、慌てることもないだろー。ゆっくりいこうぜ、相棒」

 

「何事も経験しとくといいかもしれませんしね」

 

「……そうだな、急いても仕方ないしたまにはいいか…」

 

ハジメは他の全員の意見を聞き「ふむ」と頷くとキャサリンに依頼を受けること伝える。

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面に行っとくれ」

 

「了解した」

 

「了ー解」

 

ハジメと凶夜が依頼を受け取るのを確認すると、キャサリンが後ろの少女三人に目を向けた。

 

「あんた達も体に気を付けて元気におやりよ?この子達に泣かされたら、いつでも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」

 

「……ん、お世話になった。ありがとう」

 

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有り難うございました!」

 

「キャサリンさん、お世話になりました。有り難うございました」

 

人情味あふれる言葉にユエ、シア、スフォも頬が緩む。

 

「あんた達もこんないい子達を泣かせんじゃないよ?」

 

「…ったく世話好きな人だな。言われなくても承知してるよ」

 

「ハハハ、忠告感謝するよ。世話になったな」

 

キャサリンの言葉に苦笑いで返すハジメと感謝の言葉を贈る凶夜。そんなハジメに、キャサリンが一通の手紙を差し出す。疑問顔で受け取るハジメ。

 

「あんた達、色々厄介なモノ抱えてそうだからね。町の連中が迷惑掛けた詫びの様なモノだよ。他の町でギルドで揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

 

数度の会話のやり取りがあり素直に受け取るハジメ。

その後、クリスタベルのところにも行った。ハジメは断固拒否したが少女三人がどうしてもといい仕方なく付き添った。

のだが、最後にハジメを襲ったクリスタベルに恐怖のあまり全力で撃退しようとするハジメを四人で止めるという出来事が起きた。

最後の晩と聞きソーナが風呂場に乱入、そして部屋に突撃し、母親にブチギレられ亀甲縛りで一晩中、宿前に吊るされるという話も割愛である。

そして翌朝。

そんな愉快な町ブルックの人々の事を思い出にしながら正面門にやってきた凶夜達を迎えたのは隊商のまとめ役と護衛依頼を受けた冒険者だった。どうやら凶夜達が最後だったようで、まとめ役と冒険者十三人がやってきた一行を見てざわついていた。

ユエ、シア、スフォの登場に喜ぶ者、股間を両手で隠す者、様々な反応だ。ハジメと凶夜が嫌そうな顔で近付くと隊商のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

「君達が最後な護衛かね?」

 

「ああ、これが依頼書だ」

 

ハジメ、凶夜が依頼書を見せる。それを見て納得してまとめ役は自己紹介を始める。

 

「私の名はモットー・ユンケル。この隊商のリーダーをしている。キャサリンさんから優秀な冒険者だと聞いている。道中の護衛は期待してるよ」

 

ハジメがもっとユンケル?という呟きに凶夜が笑っている。日本のある栄養ドリンクを思い出させる名前にハジメは同情の眼を向ける。

 

「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちはユエとシア」

 

「俺は凶夜だ。こっちはスフォ」

 

「それは頼もしいな……ところでその兎人族と狐人族……売るつもりはないかね?それなりの値段をつけさせてもらうが」

 

「凶夜」

 

ハジメが凶夜の名前を呼びやろうとした事を止める。凶夜は溜息を吐き、スフォを構いにいく。何のやり取りが行われたのか分からないモットー。凶夜のやろうとしたことは自分の『特別』を売らないかと言われムカツイたので、マチェットをモットーの首に突きつけるつもりだったのだが、これから護衛する人と不和を起こすわけにもいかないのでハジメが止めたのだ。そして数度会話してハジメは言う。

 

「たとえ、どこぞの神が欲しても手放す気はないな。凶夜もだ。……理解してもらえたか?」

 

「……あぁ、それはもう。仕方ないな。ここは引き下がろう。…だがその気になった時は是非、我がユンケル商会をご贔屓にお願いしますよ」

 

ハジメの発言は相当危険なものだった。下手をすれば聖教教会から異端の烙印を押されかねない発言だ。一応、魔人族は違う神を信仰しているし、歴史的に最高神である"エヒト"以外に崇められた神は存在するので、直接聖教教会にケンカを売る言葉ではない。

だが、それでもギリギリの発言である事に変わりなく、それ故にハジメはシアを凶夜はスフォを手放すつもりがないと心底理解させられた。それでも商人の性なのか、最後は口調を改めて顧客に対するように関係を繋いでおこうとする。

ハジメが凶夜の後を追って隊商の方に戻る。そして冒険者達が何か言っている事が聞こえたのだろう、頭を抱えている。

そんなハジメにシアが絡んでいた。凶夜はスフォのキツネミミをモフモフしてから怒られていた。

 

「凶夜さん?これから護衛する人を脅そうとしてどうするんですか?」

 

「いや、だって……」

 

「だってではありません。特別扱いはとても嬉しいですが、脅すのはダメですよ?ハジメさんみたいに言葉で撃退しなくては、敵意を見せてない相手に武力で抑えるのはいい方法とは言えません」

 

「……はーい」

 

「でも、私のために怒ってくれてありがとうございますね」

 

項垂れる凶夜の頭をヨシヨシするスフォ。

早朝の正門前で、多数の人間がいる中で背中に幸せそうなウサミミ美少女をはりつけ、右手には金髪紅眼のこれまた美少女を纏わりつかせる男南雲ハジメ。

幸せそうな表情で頭を撫でているキツネミミ美少女と頭を撫でられている北野凶夜。

隊商の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚の様な眼差しでその光景を見つめる。凶夜やハジメに突き刺さる視線や言葉は自業自得である。

ブルックの町から【中立商業都市フューレン】まで約六日の距離である。

日の出前に出発し日が沈む前に野営の準備に入る。それを繰り返す事三回、道程は後半分である。ここまで特に何事もなく順調に進んだ。野営中に冒険者のセオリーなどを聞いてたりしていた。

現在、冒険者達は凶夜達が用意してシアとスフォが料理したシチューもどきを食べていた。冒険者達が携帯食を食べている時にハジメが”宝物庫"から出した食材で温かい料理を食べているのが居心地が悪くなりシアが提案して今に至る。

そしてシアとユエがハジメにあーんをされている時、凶夜にもスフォがアーンをしてあげていたり……冒険者達は「末永く爆発してください!」と思うのだった。

それから二日、残す道があと一日に迫った頃、遂にのどかな旅路を壊す無粋な襲撃者が現れた。

最初に気がついたのはシアだ。街道沿いの森の方にウサミミを向けピコピコ動かすと一気に表情を引き締めて警告を発した。

 

「敵襲です!数は百以上!森の中から来ます!」

 

そんな警告を聞いて冒険者達に緊張が走る。

護衛隊のリーダーである、ガリティマは苦い表情をする。隊商の護衛は十五人、ユエとシア、スフォを入れて十八人だ。隊商を無傷で守るのは難しい。単純に物量で押しつぶされるからだ。

 

「迷ってんなら、俺らがやろうか?」

 

「えっ?」

 

まるで、ちょっと買い物に行ってこようかとでも言うように気軽い口調で信じられない提案したのは他の誰でもないハジメである。ガリティマはハジメの提案の意味を掴みあぐねて、つい間抜けな声で聞き返した。

 

「だから、俺らで殲滅しちまうけど?って言ってんだよ」

 

「い、いや、それは確かに隊商を無傷で守るのは難しいのだが……えっと出来るのか?この辺りの魔物は強い訳ではないが数か……」

 

「数なんて問題ない。すぐ終わらせる。ユエがな」

 

ハジメはそう言って、すぐ横に佇むユエの肩をポンッと手を置いた。ユエも、特に気負った様子もなく「んっ」と答えた。その後ろから凶夜も提案する。

 

「スフォの支援魔法もやらせるしいいんじゃねーか?」

 

そう言ってハジメが行ったように、横に佇むスフォの肩をポンッと手を置く。スフォも頼られて嬉しそうに「はい」と笑顔で答える。

そしてガリティマは初撃は任せると言い冒険者達に指示を送っていた。

ハジメはユエに詠唱をしとけと言いユエは詠唱?と言っている。凶夜もハジメの言葉でスフォに詠唱の話をする。

 

「詠唱?ですね、分かりました。ユエさん、いきますよ?」

 

「ん……」

 

「彼の者に、力を分け与えよ"魔譲"。魔法の威力を上げる支援魔法です。思いっ切りやってください」

 

そしてユエの詠唱?が始まり雷で出来た龍が現れた。それは東洋の龍だ。

 

「な、なんだあれ」

 

誰が呟いた言葉だったのか。

そして、天よりもたらされる裁きの如く、ユエの細い指に合わせて、天すら呑み込むと詠われた雷龍は魔物達へとその顎門を開き襲いかかった。

ゴォカァアアア!!!

雷龍が地面に降り注ぐとたちまち魔物達は消滅していき最後には炭化した大地がそこに残った。

 

「ん……やり過ぎ、けどスフォの支援魔法も効きすぎた……」

 

「そう…みたいですね、なんかすみません」

 

そのあと冒険者達がユエの魔法でパニックになりつつもガリティマがなだめ落ち着きを取り戻し、ユエの魔法の詮索が始まったが秘密と答える。冒険者の暗黙のルールで根掘り葉掘りは聞かないらしい。

隊商の人々の畏敬を含んだ視線をチラチラ受けながら、一行は歩み出した。

 




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