ありふれない狂戦士で世界最凶   作:黒い兎♪

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捜索

明朝、北門に到着すると、愛子と優香達六人の生徒達が姿があった。

 

「なんとなくそんな気はしてたんだよなー」

 

「……なんとなく想像つくが、一応、聞こう。何してんだ?」

 

ハジメが半目になり愛子に問いかける。

一瞬、気圧されたようにビクッとする愛子だったが、毅然とした態度とした態度を取るハジメと向き合った。少し離れた場所で話していた、優花、妙子、奈々、そして、淳史、昇、明人も凶夜達が来た事に気付いて愛子の傍に寄ってくる。

 

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね?人数は多い方がいいです」

 

「却下だ。行きたきゃ勝手に行けばいい。が、一緒断る」

 

「な、何故ですか?」

 

「単純に足の速さが違う。先生達に合わせてチンタラ進んでられないんだ」

 

ハジメの言葉に優花は周囲を見回し、そして首を傾げて訝しそうな表情にになる。どう見ても優花達は移動手段(馬)があるが、ハジメ達はそれが見当たらない。

 

「足の速さが違うって…ねぇ、南雲。まさか、馬に乗るより、走った方が速いとか言うんじゃないわよね?私等の事はどうでもいいからって、流石に、それは断りの言葉として適当過ぎない?仮に、本当にそうだとしたら……昨日の威圧感といい人間止めてると思うのって感じなんだけど」

 

事実、生身でも普通に馬より速く、持久力もあるので否定できない。人外という評価は極めて正しい。

そしてハジメはこれ見よがしに溜息を吐いた。そして、説明するのは面倒くさいと"宝物庫"からシュタイフを取り出す。

突然、虚空から大型のバイクが出現し、ギョッとなる愛子達。

ハジメが別に適当に言い訳した訳でもないと説明してバイク好きの昇の反応におざなりに返して出発しようとするが愛子が食い下がる。

理由は二つ。

一つは昨夜のハジメと凶夜の発言の真偽を探るためだ。”クラスメイトに殺されかけた"という愛子にとって看過できないその言葉が、本当のハジメの勘違いではなく真実なのか、そして真実だとすればハジメは相手に心当たりはないのか。捜索が終わった後、もう一度ハジメ達に会えるか分からない以上、このときを逃すわけには行かなかったのだ。

もう一つは、現在、行方不明になっている清水幸利のことだ。八方手を尽くして情報を集めているが、近隣の村や町でもそれらしい人物を見かけたという情報が上がってきていない。しかし【北の山脈地帯】に関しては、碌な情報を収集していなかったと思い当たったのだ。事件にしろ自発的失踪にしろ、【北の山脈地帯】に行くとは考えられなかったのでは当然ではある。なのでこれを機に自ら赴いて、ハジメ達の捜索対象を捜しながら清水の手がかりもないな調べようと思ったのである。

ちなみに優花達がいるのは半ば偶然である。

愛子がハジメ達の待ち伏せをするために朝早く出かける時に優花に出会い、愛子を問い詰め、親愛隊のみんなを叩き起こし、捜索隊に加わってもらった。騎士達には置き手紙を置いてきた。

愛子は、ハジメに身を寄せると小声で決意を伝える。

 

「南雲君、先生は先生として、どうしても詳しい話を聞かなければなりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまで離れませんし、逃げれば追いかけます。南雲君達にとって、それは面倒なことではないですか?移動時間とか捜索の合間とかで構いませんから、時間を貰えませんか?そうすれば南雲君の言う通りこの町でお別れできますよ?……一先ずは」

 

ハジメは、愛子の瞳に決意の光が輝いているのを見る。愛子の行動力は理解している。誤魔化したり、逃げたりすれば、それこそ言葉通りに追いかけてくるだろうと思う。ウィルの生存の可能性を考えるなら、押し問答してる時間も惜しい。

 

「分かったよ。同行を許そう。と言っても話せる事なんて殆どないけどな……」

 

「構いません。ちゃんと南雲君の口から聞いておきたいだけですから」

 

「はぁ、全く、先生はブレないな。どこでも、何があっても先生か」

 

当然です!とむんっ!と胸を張る愛子。どうやら交渉が上手くいって優花達もホッとしている。

ユエとシアがハジメが折れた事に驚きを感じて話し掛ける。そしてハジメの言葉に愛子を見る目が変わり少し敬意をが含まれている。

スフォもハジメが折れた事が意外に感じたのか相棒の凶夜に聞く。

 

「とても良い先生なんですね?」

 

「まぁな、不良の俺にでも平等に生徒として扱うくらいだからなー、こと"生徒"に関しては妥協しない人だなー」

 

「ふふ」

 

ハジメも凶夜も同郷の人間であることや、クラスメイトであるカテゴリーに何の価値も見出していなかったとしても、数少ない敬意を払うべき貴重な大人の一人ではあるとは思っているのだ。

 

「でも、このバイクじゃ乗れても三人でしょ?どうするの?」

 

優花のもっともな事実を指摘する。ハジメはシュタイフを”宝物庫"にしまうと、代わりに魔力駆動四輪"ブリーゼ"を取り出した。

軍用車のハマーを彷彿させる重厚で凶悪なフォルムに、一見して分かる外付けの武装が搭載されていて更に凶悪さを増している。

ブリーゼにはハジメやユエ、シア、愛子、クラスメイト達が乗り凶夜とスフォはシュタイフに乗り道中を走っていた。愛子はどちらかというと変化の大きかったハジメをどうにかしようと色々話をしている様子だった。

 

【北の山脈地帯】に着くとハジメはブリーゼを”宝物庫"に戻すと、代わりにとあるものを取り出した。

それは全長三十センチ程の鳥型の模型と小さな石が嵌め込まれた指輪だった。模型の方は灰色で頭部に当たる部分には水晶が埋め込まれている。

ハジメは指輪を嵌めると、同型の模型を四機取り出し、空中へ放り投げた。偽の鳥達はそのまま浮遊する。

四機の鳥達はその場を旋回すると山の方へ滑るように飛んで行った。

 

「あの、あれは…」

 

鳥の模型を遠くに見ながら代表して愛子が聞く。

それに対するハジメの答えは"無人偵察機"というものだった。

--重力制御式無人偵察機 "オルニス"

ミレディから強奪した鉱物から新しい鉱物を作りそれから遠隔操作できるようにしたり、オルニスが写した光景をハジメの魔眼石に写すことができる。

今回は捜索範囲が広いので上空から確認できる範囲だけでもオルニスで確認しておくのは有用だろうと取り出したのである。

凶夜達はウィルと冒険者が通ってたであろう山道を進む。

魔物の目撃情報があったのは山道の中腹より少し上、六合目から七合目の当たりだ。ならば、ウィル達冒険者パーティーもその辺りを調査したはずと昨日の夜、凶夜と話し合いそこまではハイペースで行くと決めていたのでオルニスをその辺りに先行させながら、山道を進んだ。

おおよそ、一時間と少しくらいで六合目に到着した凶夜達は一度そこで立ち止まる。理由はそろそろ当たりに痕跡がないか詳しく調べる必要があったのと……

予想以上に愛子達の体力がなく、休む必要があったからである。まぁ、凶夜達の移動スピードが速すぎるため、愛子達は慣れない道を殆ど全力疾走しながらの登山となり、気付けば体力を消耗し過ぎていた。

 

「はぁはぁ、きゅ、休憩ですか……けほっ、はぁはぁ」

 

「ぜぇー、ぜぇー、大丈夫ですか…愛ちゃん先生、ぜぇーぜぇー」

 

「うぇっぷ、もう休んでいいのか?はぁはぁ、いいよな?休むぞ?」

 

「ゲホゲホ、南雲達は化け物か…」

 

山道から逸れて山の中を進む凶夜達、やがて川のせせらぎが聞こえてきた。シアのウサミミが嬉しそうにピッコピッコと跳ねている。

そうして、凶夜達がたどり着いた川は、小川と呼ぶには少し大きな規模のものだった。周りに魔物の気配はない。取り敢えず息を抜いて、凶夜達は川岸の岩に腰掛けつつ、今後の捜索方針を話し合った。

途中、ユエが「少しだけ」と靴を脱いで川に足を付けて楽しむわがままをしたのだが、愛子達が未だ来てすらいないので大目に見るハジメ。ついでにシアも便乗した。スフォは岩に座りながら太ももに尻尾を持ってきて凶夜の肩を叩く。それを見た凶夜はそれに頭を乗せて寝転ぶ。最近お気に入りの枕だ。スフォのフサフサの尻尾と柔らかく心地いい暖かさがあり、とても気に入っている。そんな凶夜の頭を優しく撫でるのがスフォのお気に入りだ。

と、そこへようやく息を整えた愛子達がやって来た。置いてあった事に不満があるのかジト目でをしている。

が、男子陣が素足のユエやシアを見て「おぉ!?」と歓声を上げると目を輝かせる。ユエ達も男子陣の視線に気付き川を上がった。

愛子達は川岸で腰を下ろして水分補給に勤しむ。そしてハジメは淳史達を睨んでいた。ユエ達を見る目が鬱陶しかったんだろう。

 

「ふふ、南雲君は、本当にユエさんとシアさんを大事にしてるんですね、北野君はスフォさんを大事にしてるんでしたよね」

 

愛子が微笑ましそうにそんな事を言う。

凶夜は何も反応せず、ハジメは肩を竦める。そんなハジメにユエが膝に乗り後ろからは寂しくなったシアが抱きつく。それを見て女子陣はキャーキャー、男子陣を歯軋りをしてる。

だか、ハジメの表情も次の瞬間には一気に険しくなる。

 

「……これは」

 

「ん……なにか見つけた?」

 

「お?ヒットかー」

 

ハジメがどこか遠くを見るようにもう茫洋とした目をして呟くのを聞き、ユエと凶夜が確認する。その様子に、愛子達も何事かと目を瞬かせた。

 

「川の上流に……これは盾か?それに、鞄も……まだ新しいみたいだ。当たりかもしれない。全員いくぞ」

 

「……ん」 

 

「はいです!」

 

「了ー解」 

 

「分かりました」

 

凶夜達が阿吽の呼吸で立ち上がり出発の準備を始めた。

愛子達はもう少し休んでいたかったのだが、無理を言ってついて来た上、何か手がかりを見つけた様子となれば動かないわけにはいかない。再び猛スピードで上流に登っていく凶夜達に必死になって追随した。

凶夜達の到着した場所には、ハジメがオルニスで確認した通り金属製のラウンドシールドや鞄が散乱していた。ただし、ラウンドシールドはひしゃげて曲がっており、鞄の紐は半ばで引きちぎられた状態で、だ。

凶夜達は注意深く周囲を見回す。すると近くの木の皮が剥げているのを発見した。高さは大体二メートル位の位置だ何か擦れた拍子に皮が剥がれた、そんな風に見える。高さからして人間の仕業ではないだろう。

ハジメはシアに全力のウサミミ探査を指示し、凶夜にも感知系の能力を使うように指示する。そして自分も感知系の能力を全開にして、傷のある木の向こう側へと踏み込んでいた。

先に進むと、次々と争いの形跡が発見できた。中には折れた剣や血が飛び散った跡もあった。それらを発見する度に、愛子達の表情が強張っていく。

そんな愛子や優花達を尻目に、しばらくの間、点在する争いの形跡を追っていくとシアが前方に光るものを見つける。

 

「ハジメさん、これペンダントでしょうか?」

 

「ん?遺留品かもな。確かめよう」

 

ただのペンダントではなくロケットだということに気が付く。留金を外して中を見ると、女性の写真が入っていた。おそらく誰かの恋人か妻といったところか。一応、回収しておく。

その後も、遺品と呼ぶべきものが散見され、身元特定に繋がりそうなものだけ回収していく。

どれくらい探索したのか、既に日は傾き、そろそろ野営の準備に入らなければならない時間に差し掛かっていた。

未だ、野生の動物以外で生命反応がない。ウィル達を襲った魔物との遭遇を警戒していたのだが、それ以外の魔物のすら感知されなかった。

 

「ハジメ、流石におかしくねーか?」

 

「そうだな……まて、オルニスに反応があった、そこに向かうぞ」

 

「OK、相棒」

 

そこは、先程休憩した小川よりも大きな川だった。上流に小さな滝が見え、水量が多く流れもそれなりに激しい。本来は麓に向かって流れていたのであろうが、現在、その川は途中で大きく抉られており、小さな支流が出来ていた。まるで横合いからレーザーかなにかに抉り飛ばされたかのようだ。そんな印象を受けたのは、抉れた部分は直線的であったのと、周囲の木々や地面が炭化していたからである。更に、何か大きな衝撃を受けたように、何本もの木が半ばからへし折られて、何十メートルも遠くに横倒しになっていた。川辺のぬかるんだ場所には、三十センチ以上ある大きな足跡も残されている。

 

「ここで本格的な戦闘があったようだな……」

 

ハジメが考えを巡らせ、上流に向かうか下流に向かうか迷う。そしてオルニスを上流に飛ばして、自分達は下流に向かう。ここまで、上流に向かって追い立てられるように逃げて来た筈のウィル達がこれだけ激しい戦闘をした跡、これ以上町から離れるという判断が出来ると思えない。しかも、魔物の足跡が川縁にあるということは、川の中に逃げ込んだ可能性が高いと考えそれを凶夜に共有する。

 

「そうだな、多分それで合ってると思う。だが魔物が消えた理由が説明出来てない、警戒は絶対に解かない方がいい」

 

ハジメと凶夜の推測に賛同して下流に向かって川辺を下っていった。

すると、今度は、先ほどとは比べ物にならない立派な滝に出くわした。凶夜達は、軽快に滝横の崖をひょいひょいと降りていき滝壺付近に着地する。

と、そこでハジメや凶夜の"気配察知"に反応が出る。

 

「!これは…」

 

「運がいいな…」

 

「……ハジメ?凶夜?」

 

ユエがすぐさま反応して問いかける。目を閉じて集中するハジメ。おもむろに目を開けて驚いた声を上げる

 

「マジかよ。気配察知にかかった。感覚からいって人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」

 

「生きてる人がいるって事ですか!」

 

シアの驚きを含んだ確認の言葉にハジメは頷いた。人数を問うユエに「一人だ」と答えるハジメ。

愛子達も一様に驚いている様だ。それも当然だろう。ウィル達が消息を絶ってから五日は経っているのである。もし、彼等のうちの一人なら奇跡だ。凶夜の言う通り運が良かったのであろう。

 

 




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