あべこべ世界の貧民街に生まれ変わったので、ギャングのボスを目指す   作:山崎春のパン祭り

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ある作品に影響されて書きました。
続きを書きたい欲はありますが、見切り発車なので、なんか続き思いついたら書きます。
なお、この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。麻薬が作品上に登場しますが、賛美や犯罪を増長させる意図はなく、絶対にマネしないでください。


シーズン1
第1話ーShit Holeー


 

 

 合衆国西海岸に位置するカリフィア州、エンジェル郡南にあるフリーダム市(City of Freedom)は貧富の格差が激しく、犯罪率が合衆国で最も高い。

 また現在の合衆国のストリート・ギャングは、ほぼすべてがここから生まれたと言われ、別名マザー・オブ・ギャングスターと呼ばれている。

 そのため貧民街では黒人4、ヒスパニック3、アジア2、白人1の割合でひしめき合ってるこの街で、30歳まで生きられたら長生きと、毎日必ずどこかで銃撃戦が起こり、どこかで誰かが死んでいる。

 

 合衆国は、どこかの国が核兵器を隠し持っていると、世界平和の為に民主主義の輸出に忙しく。

 州と郡は完全にここを放棄し、むしろ逆に犯罪者を送り込み、いっそう流刑地にしようとする傾向がある。

 そして、最後の頼みの綱であるフリーダム市警察(FCPD)は、とっくに腐敗し、賄賂、人種差別、不法逮捕、容疑者の虐待に怠慢になりながら勤しんでいた。

 そんな、国にも、神にすら見放された都市の貧民街に転生して早15年。俺は今日も他人の不幸を糧に、なんとか生き長らえている。

 

 

 

 

 「おい、ジョージ。ジョージ・ミナト」

 

 貧民街のストリートの側に止まっている車中内で、女の声でのファック・ザ・ポリスのギャングスタ・ラップが流れ、この世界ではN.W.Aも女性なんだと感想を持っていたところ、隣から自分の名前を呼ばれたので、声の主を見る。

 

 「ああ、なんだ? デミ」

 

 運転席に座り、タバコを口に咥えていたデミ・マルタ()・ヒメノは、20歳のアジア系とヒスパニック系のハーフで、目は大きく鼻も高い女優顔の美しい女である。

 赤と黒が混ざったショートボブの髪、首には十字架のチョーカー、上はヘソ出しの白のタンクトップに、下ホットパンツ姿。

 そして、体のいたる所にタトゥーがあり、特に目立ったのは、彼女の右腕にあるハートマークに囲まれた『R.I.P Francesca Life Goes On』と書いてある。

 フランチェスカ。孤児だった自分によくご飯をくれて、裏の世界の事について色々教えてくてた良いやつだったよ。2年前のあの抗争さえなければ……。

 

 「……なに、見てんだ? お前」

 「フランチェスカの事について、思い出してたんだ」

 

 フランチェスカ。その名前を出すと、デミの顔に悲痛の色が見えた。と同時にしまったと思った。

 

 「ああ、お前にとってあいつは、母親見たいなもんだんもな」

 「デミにとっては、親友だよね」

 「ああ、そうだな」

 

 二人の間に沈黙が流れた。

 

 「っつ、いつまで感傷に浸ってもしかたねよ、死人は生き返らねぇんだから」

 「うん」

 

 デミは、俺が座る助手席の外を見つめ何かに気づく。

 

 「おい、客だ。客が来たぜ」

 

 俺も、助手席の外を見ると、40代のアジア系の女性がゆっくりとこちらに、近づいてきた。

 

 「デミ」

 「おう、言われなくても分かってるよ」

 

 デミは、サイドブレーキに置いてあるグロックをそのまま握る、グロックはトリガー・セイフティなため、セーフティを外す必要はない。

 こういうのは、何事も用心が大事である。お客様は神様とよく言われるが、それは精神が普通の人のみが適応される。

 俺たちが扱っているお客様は、むしろ悪魔と言っても過言ではない。例え相手が徒手空拳だとしても警戒するべきだ。

 

 窓ガラスを数回ノックされ、俺は窓を半分開けた。

 

 「なんだ?」

 「スノーはあるか? 3gほしい。」

 

 スノー(雪)。それはここでのコカインの隠語だ。

 

 「500ドル(約6万円)だ」

 

 俺がそう言うと、女は五、六年前はさぞ美しかったであろう顔を歪ませ、まるでコーヒーの様な黄色い歯を見せた。

 

 「そ、そんな!? 前は300ドル(約3万6千円)だったじゃないか!?」

 「上がったんだだよ。分かるだろ?」

 「た、頼む! まけてくれ! せめて、400、いや450でも良いから!」

 

 ほら、来た。

 

 「良いか? 俺たちは下っ端であくまで、売っているだけであって、仕入れも売れ値も上が決めてんだよ。出来るわけないだろう?」

 「で、でも!? たった3gなんだろ? ちょっとぐらいまけても良いじゃないか?」

 「じゃあ、聞くが、そのたった3gに躍起になっているのは誰だよ?」

 

 女は言葉が詰まった。そして、突然俺の髪を掴もうとする。しかし、それよりも先に目の前をデミのグロックが横切った。

 

 「おい、落ち着け。男見てぇな事言ってんじゃねぇよ。払えなぇなら帰れ(yo,calm the fucking down dude.don't fucking acting like a fucking man. if you can’t fucking pay, go the fuck home)」

 

 ファッキンを接続詞にして、男見てぇな事と相変わらず慣れない言葉だが、この世界では正常である。

 

 「あ、ああ。ごめん。すぐに帰るよ。兄ちゃんも悪かった」

 

 手を上げる女の謝罪に俺は、頷いた。そして、彼女は去っていたのを見て、デミは、背もたれに体を預け、ため息を吐いた。

 

 「デミ。今のは男性蔑視だよ」

 「うるせー……おい、ジョージ」

 

 軽口を叩く俺に、デミは優しく俺の頭を叩いた後、一転して硬さをおびる声になった。

 

 「なんだ?」

 「お前は、吸うなよ」

 「言われなくても、分かってるよ。毎日あんなの見て、誰が吸いたんだよ」

 「なら良い」

 「てか、それを言うとデミも、タバコを止めろよな」

 「やだね」

 

 そう言って、デミはタバコを大きく吸い煙をためて、俺に吐いてきた。

 

 「うわ、くっせえー、俺が受動喫煙で、肺がんになったらどうすんだよ」

 

 言った後、またしまったと思った。

 

 「カブロン(バカヤロー)。そんなもんになる前にどうせ、……誰も生きて居ねえぇよ」

 

 フランチェスカが死んだ後、デミの命を軽視する発言は、より一層酷くなり、諦観していた。

 母は監獄で刺されて死に、父は病死し、姉は喧嘩で殴り殺され、その上親友の死は、彼女に一時期自殺を考えさせた。

 それはこの街に生まれ育ったある種の、宿命なのかもしれない。

 

 「大丈夫。俺は絶対に死なないよ」

 

 俺がついた明確の嘘に、デミは目を涙で濡らした。

 この街に生まれた以上、出て行けなければ、他殺か自殺以外の選択肢はない。それが速いか遅いかだけである。

 

 「本当か……? 嘘をつくなよ」

 

 デミは、自分の額を俺の額にくっつけて、目を見据えてくる。突然近づく可愛らしい顔に、一瞬心臓がドキッとした。

 

 「嘘じゃない」

 「家族も親友死んだ私には、もうお前しかいない。私はお前がまだ生きていたから、自殺を思い留まったんだ。もし、お前が死んだら、私は死ぬよ」

 

 暗く、底が見ないデミの目は、明確に俺を捉えていた。

 

 「ああ、分かってる。俺たちは一蓮托生だ。もし、デミが死んだら、俺も死ぬよ」

 「……うん。嬉しい」

 

 デミが死んだ場合に、自分に自殺する勇気なんて無いのに……。つくづく自分はクズだと思う。

 

 「あ、曲のフックが来たぜ! イェー! イェー! ファックザポリス! イェー! イェー! ファックザポリス!」

 「う、うん」

 

 リズムに乗って頭を振るデミに、俺は苦笑いした。

 

 まるでさっきまで何もなかった様に別の話をするデミに、俺は驚かない。

 デミがああなるのは、フランチェスカの死後、基本俺の死が話題になった時だけだ。それさえ気をつければ、いつも通り口が汚く、よくふざける洒脱な良いお姉さんである。

 

 それから、次々に来る客をさばいて居ると、デミは1ブロック先に居る二人の20代のヒスパニック系女性を観察していた。

 

 「おい、ジョージ。あれ」

 

 彼女の真剣な声に、俺も彼女らを観察すると、明らかにヤクを売っている。

 

 「ああ」

 

 助手席のグローブボックスからベレッタM9を取り出て服の下に隠す。

 デミはエンジンをつけて、ゆっくり車を動かし、彼女らに近づき、運転席側の窓を開けた。

 

 「おい、お前ら。肝が据わってるな? おい。ここがエンジェルサグス(Angel thugs)のシマだと知って、そんな事してんのか?」

 

 俺たち下っ端には、自分の安い生命を張って、こいつらの様に無断で人のシマでブツを売るを輩を、教育するのも仕事の一部である。

 

 「は? エンジェルサグス? なにそれ、聞いた事がねぇな。なー?」

 

 二人は見合って、明らかに小馬鹿にして笑いあっていた。

 確かにエンジェルサグスは、最近出来た50人程度の小さなストリート・ギャングであるが、それでも、周囲のストリート・ギャングには、好意や敵意はさておき認識されいる。

 と言う事は、このバカどもは……

 

 「お前ら、この街のやつらじゃねぇな?」

 「そうだが?」

 

 どこか、こちらを舐めて居る連中は半笑いで聞いてくる。

 

 「私は、オトナ、だから、あと一度しか警告しない。今すぐブツのを売るのをやめて、この街から出ていけ。分かったか?」

 「と、オスガキを連れた子籠もりしている、オトナのパパに言われてもね」

 

 前世では、男なのに女の娘と呼ばれたに相当する物なのだろう。

 舐めたれたら終わりのこの世界では、絶対に舐められては行けない。デミのこめかみからプチンと、何かが切れる音が聞こえた。

 

 わー、くわばら、くわばら。心の中にそう呟きながら、俺はベレッタM9を服の中に隠しながら、ドア開けて外に出た。

 狙うに丁度いい場所を立つ。幸いこのバカどもは、子供だからとこちらを警戒する事はなかった。

 セーフティを外しながら、ベレッタM9を外に晒して、運転席から少し離れた所に居る一人に照準を合わせる。そして、相手が反応する前に、躊躇する事なく引き金を引いた。1回、2回。乾いた音がストリートに反響した。

 

 周囲の人々は銃声を聞いて、すぐさま続々遮蔽物に急いで隠れ始める。

 

 二人のもう一人は、一瞬何かが理解出来ずにいたが、すぐに背後に手を回して、隠していた自分の銃を取り出そうとした。が、その前に「サプライズ! マザーファッカー」と、微笑むデミのグロックで、その知能が足りない脳漿を地面に晒すことになった。

 

 俺はデミと自分の薬莢を地面から拾い、車に戻る。

 またセーフティをかけて、ベレッタM9を助手席のグローブボックスに戻した。

 自分の手を見る。この世界に生まれて15年。既に6人以上は殺した血に濡れた手。

 前世の価値観では考えられない、この命が軽い街の底なし沼にどっぷりハマった、既に人を殺して何の感慨も持たない。成れの果て……

 

 「はっ! 思い知ったか!? 舐めやがって!」

 

 デミは、アクセルを踏みしめ、車を急発進させて、声高らかに叫んだ。

 

 「はっはっはっ! そうだな! ざまあみろ!」

 

 人を殺した後笑っている俺は、きっともう手遅れで、どこか壊れているかもしれない。

 

………

……

 

 そうして、犬の吠える音と銃声が常時なり響くこの街では、今日も誰かが日常的に死んでいた。

 自分の家であるトレーラーハウスまでの、移り変わっていく帰路の風景を眺めながら、車内からは2PacのLife Goes Onが流れ、俺はまたフランチェスカの事を思い出していた……

 




ファザーファッカーとマザーファッカーはどっちらも意味に変わりはないのと、マザーファッカーは女性には使えないと言う事もないので、結局変えませんでした。
あと勝手な理由の一つとして、自分だけかもしれませんが、ファザーファッカーはどうしても言って見てみると違和感があって言いにくいんですよね。
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