NEXT TIME 仮面ライダーヒリュウ、ファースト   作:祝井

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 スピンオフ短編第三弾です。



「ゲーム・ウィズ・進路2018」

 

 金曜日の放課後。ちょっと大きめのゲームセンター、アミューズメント幻夢。そこに二つ並んだドレミファビートの筐体で競い合っている高校生が二人。

 

 今回の勝負は新曲『タイムキングダム』。難易度は"鬼"。

 

 二人は隣を気にすることなく曲に合わせてボタンを押し、レバーを引く。キメワザを発動してフィニッシュ。さて、結果は──

 

〈PERFECT!〉〈GREAT!〉

 

「よしフルコンッ!」

 

「あと少しだったんだけどな……流石だな」

 

 その言葉を聞いて少し嬉しそうにしている高校生は鼓屋ツトム、ツトムを称賛した高校生は遠藤タクヤといった。

 

「次回は"神"だな」

 

「お前も毎度よく幻夢特有のクソ難易度に挑もうとするよな」

 

「まぁフルコンはできないけど楽しいし。それに鬼だからな」

 

「まだ弟子になれることが確約されてるだけだろ」

 

 それに音ゲーと鬼って特に関係無いだろ、とタクヤは言おうと思ったが心の中に留めておいた。反射神経を鍛えるために必要なのかもしれないし。多分。

 

「まぁな。……もう一戦やるか?」

 

 今回は新曲の攻略も兼ねていたが、ツトムは『義心暗鬼』、タクヤは『Climax High』が元々好みだ。それをやるのもいいだろう。

 

「……やるならノックアウトファイターかメダルゲームだな。ビート二連続は集中できる自信が無い」

 

「じゃあメダルやるか」

 

 付き合わせていたのは自分なので素直に引き下がると、ツトムとタクヤは預けておいたメダルを引き出しにカウンターへ向かう。

 

 店員から受験大丈夫なのか、と言わんばかりの視線を貰った以外は特に何も無くメダルゲームを始める。

 

「……なぁ」

 

「ん?」

 

「俺進路どうすればいいかな」

 

「流石にこの時期でそれ言ってるのはヤバいぞ」

 

 この時期にゲーセンに来てる時点でヤバいぞ、とツッコみ返す人間はこの場にいなかった。飛流なら返していた。

 

「やりたいことが特に無いっていうかさ」

 

「特にお前はお姉さんの看病に人生かけてたもんだからな」

 

「そこまで立派じゃない」

 

 そう卑下すんなよ、とツトムはタクヤの肩を片手で軽く叩く。もう片手はメダルをタイミングよく投入している。

 

「でも良かったよ、お姉さんの病気が完治して」

 

「……姉ちゃんについてはお前らにも感謝してる」

 

「どーも。一番その感謝を受けるべきは飛流だけど、とりあえず」

 

 彼に切れないものは無いとまで言われる天才外科医・鏡飛彩。彼の手術によって難病を完治した息子を持つ飯田。

 

 飛流は飯田と近所付き合いがあり、その繋がりで飛彩を紹介してもらったのだ。

 

「鏡先生に診てもらおうって言ったのもあいつだったな」

 

「それは初耳だ」

 

「初めて言うからな。……んで、進路どうすんの」

 

「ここで話題戻すかお前」

 

「そもそもその話題を持ちかけたのはお前」

 

「……だったな。お前はどう思う」

 

 うーん、と唸りながらタイミングよくメダルを投入する手は止めず。

 

「あ」

 

「どうした」

 

 画面に『大当たり』と出てファンファーレが鳴り響く中でツトムは手を叩く。

 

「ダンスはどうなんだ」

 

「……ダンス?」

 

 特にピンと来ていないタクヤに急いでツトムはまくし立てる。

 

「ほら、ドレミファダンシングでも結構良い点数取ってるしさ、去年の文化祭とかのクラス発表のダンスすごいカッコ良かったし」

 

「……そういえば昔、近所のお兄さんに教えてもらったような」

 

「ユキヒロさんだったりして」

 

「あのひ──義兄さん、運動神経悪いから」

 

 つまりそれは無いよというわけである。

 

「なんて酷い言われ様」

 

「その人は結構前に沢芽市に引っ越した記憶がある」

 

「沢芽といえばビートライダーズだな。その人もダンスの方面に行ったのかもな」

 

「…………ダンスかぁ」

 

「お、結構興味あり?」

 

 うーん、と唸るのはタクヤの番だった。

 

「さては金の方面を心配してるな?」

「……ああ」

 

 タクヤの家は親が共働きの一般家庭だ。しかし、姉の通院などもあって無闇に大金は使えないという状況である。

 

「ユキヒロさん家に出して貰えばいいんじゃないか?」

 

「……それはあっちに悪い」

 

「ユキヒロさんはお前の進路を出来る限り支援したいって言ってたぞ」

 

「今日は初耳が多いな……」

 

 やっぱり言ってなかったのか、と二人の未だに修復途中な関係に苦笑するツトム。

 

「まぁ、とりあえずその方面で考えてみたらどう」

 

「……ああ、そ──」

 

 時が止まる。どこからかフィーニスが現れ、二人のポケットからはみ出ているアナザーウォッチを摘み上げた。

 

「……響鬼に電王か」

 

 両方とも鬼だな、と取り留めのないことを考えながら出口へ向かう。

 

「さて、次は聖都大学附属病院だ──」

 

 フィーニスが消え、時が動き出す。

 

「──うしてみる」

 

「じゃあ帰ったらちゃんと調べろよ? 思いついたが吉日とも言うし」

 

「ああ」

 

 頷いて、タクヤはメダルを入れようとして──止めた。

 

「……なぁツトム」

 

「やるか、ドレミファダンシング」

 

 ツトムは笑い、メダルをかき集める。先程よりも二割くらい増えていた。

 

「……ありがとう」

 

 タクヤも少し減ったメダルをかき集めて席を立つ。

 

「うーん、後は飛流だけだな……」

 

「アイツ俺よりも希望薄くないか?」

 

「いかんせん成績が高いからどこにも行けなくも無いのが難しいところだ」

 

「だな」

 

 その後、タクヤはドレミファダンシングでツトムを感嘆させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛流が失踪したことを告げられたのは、その帰りだった。

 





 ヒリュウ起の回で言及され、結の回でちょっとだけ出てきた元アナザーライダーな二人の話です。時系列は起の回と同時刻くらいです。
 執筆当時、私も受験生だったのでその悩みがモロに出てますね。
 それにしても年齢不詳のキャラ(遠藤タクヤ)をよく高校生にしたよね私……
 演者さんが舞台斬月に出演していたらしいので鎧武系の小ネタを入れたりしてます。他にも元アナザーライダーの方々の話を盛り込めたので満足です。
 ちなみにこの作品は2020年11月に執筆されました。

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