NEXT TIME 仮面ライダーヒリュウ、ファースト 作:祝井
「この本によれば。ちょっと頭が良いだけの普通の高校生、加古川飛流。彼に再びアナザーライダーとなる未来は待っていなかった。……事実、そのはずだった」
ウォズはいつものように手元の本を読んでいたが、すぐさま閉じた。赤レンガの壁に背を預けてまた語り始める。
「しかし並行世界からタイムジャッカー・フィーニスが襲来、彼の記憶を取り戻させてしまう。彼が変身したアナザージオウIIは幸いにも我が魔王とツクヨミ君が撃退したが、その背後で私とゲイツ君はライダーの力を奪われてしまった。
フィーニスの狙いを推察した私達は、二手に分かれてその野望を阻止しようと動き出す。その中で私達はアーマードライダー龍玄、ナックル、グリドンと共闘し、アナザーライダーを撃破。そしてその直後に加古川飛流が現れ、今に至る。彼は敵か、味方か──
おっと、そろそろ彼が起きるようです」
ガレージの壁から背中を離し、少し錆びた扉へとゆっくり向かっていった。
○○○
「ッ……ここは……」
飛流の目に飛び込んできたのは知らない天井だった。木材ではなくレンガだった。若干硬い弾力を身体全体で感じ、ベッドに寝かされていることを察する。おそらく折りたたみ式だろうか。
「よく成功したもんだ」
アナザーオーズの力で目眩しをして、アナザーエグゼイドの力でワープする。咄嗟に思いついた作戦だった。
どうにか逃走には成功したものの、アナザーエグゼイドウォッチ内の位置データを咄嗟に選んでワープしたために、現在地はわからない。更にアナザーウォッチを同時に三つも使ったからか、無防備に気絶してしまった。
拘束もなくベッドに寝させてもらっているため、フィーニスに捕まったわけではないだろう。アナザーウォッチが無いのは気になるところだが。
と、毛布に包まれたまま思考していると扉が開く。ノックぐらいしてくれ、と目を擦る。ゆっくり上半身を上げると、そこにはウォズがいた。片手には欠けたドーナツが握られている。
「おはよう、元我が魔王」
「お前の我が魔王は常磐ソウゴただ一人だろ」
ノック無しと皮肉には皮肉で返しておく。効くかは知らないが。
「……確かに君を我が魔王と思ったことは一度もないけどね」
そこはさておいて、とウォズはドーナツを丸呑みしてから話題を変える。
「君には色々と聞きたいことがある」
「奇遇だな、俺もだ」
「なら食後にじっくりと話すことにしよう」
今すぐ話した方がいいだろ、と飛流は反論しようと思ったが、急に空腹を自覚したのでやめておいた。
その代わりに今最低限知っておくべきことを尋ねることにする。
「ここはどこだ」
「とあるガレージとだけ言っておこうかな」
「いやそういうことじゃなくて市町村的な」
「何?」
怪訝そうに眉を少し上げたウォズは「沢芽市だ」と付け加えた。
「沢芽市……」
タクヤから以前聞いたことのある地名だった。ストリートダンスの盛んな土地であり、タクヤの幼馴染が引っ越した地。
そんなところとフィーニスの計画がどう関係しているのだろうか。飛流は首を捻った。
「……とにかく、腹ごしらえとしようじゃないか。着いてきてくれるかな」
ああ、と返事をしてゆっくり起き上がる。まだ身体は気怠かった。
「腹ごしらえって言うからすぐに食べるもんだと思ってたが」
「文句はあるかな?」
「無い」
ウォズに連れられて飛流が来たのはコンビニだった。買うものは決まっているらしく、ウォズはメモと棚を交互に見ながら買い物カゴにプラスチックの容器を重ねていく。
何か買ってきなよ、と目線で指示された飛流は適当なおにぎりを二つカゴに放り込んだ。成長期の男子にしては少し物足りないと思われる量を見て、ウォズは飛流をちらりと見るだけだった。
「……で、どうしてそんな悩んでるんだ」
弁当の棚の前で顎を手に当てて悩むポーズをするウォズ。彼に渡されたメモを飛流は読んでみる。
ナックル、焼肉。グリドン、そうめん。龍玄、カレー。ゲイツ君、からあげ。
ゲイツ以外は見知らぬ名前だった。カゴを覗いてみると焼肉弁当とそうめんとカレーライスは入っていた。ということは、と飛流は目線を上げる。からあげ弁当は売り切れだった。
「一応聞いておくが第二案は?」
「何でもいい、と」
一番困るやつだな、と飛流は溜息を吐いた。たまにコンビニへ昼食を買いに行くことがあるのだが、父や母に同じことを結構言われる。気分を外して曖昧に感謝されるあの空気といったらもう嫌だ。
それはさておき、揚げ物ならトンカツ弁当が、同じくらいのボリュームならハンバーグ弁当がある。
飛流は決めかねた。アイツのことは全然知らなかったから。だから聞くことにした。
「……明光院ゲイツは鶏肉が好きなのか」
「食べられるものならなんでも食べると思うよ」
答えになってねぇよ。飛流は心の中でぼやいた。仕方ないと棚を素早く見渡し、鶏が入った弁当を探す。無いか、と諦めかけたその時、飛流の目がある一つの弁当を捉えた。
「これなんて、どうだ」
「ん?」
飛流が差し出したのは、三色弁当。鶏そぼろと炒り卵、ほうれん草が米の上に敷き詰められている。それをウォズの手に押し付ける。
ウォズはなるほどね、とそれを少し眺めてからカゴに入れる。特に拒否されることがなかったので、飛流はホッとした。
その直後にウォズはパンの棚へ向かい、十個くらい菓子パンを放り込んだ。メモを思い出して、若干引いた。
そしてお会計。その際に追加でレジ横のからあげ棒を購入する。最初からそれを買えば良かったのでは、と飛流は思った。三色弁当と合わせればそこそこのボリュームになる。しかし何も言わなかった。
会計を終え、レジ袋を提げてウォズが戻ってくる。そのまま店内から出ると、飛流は手を差し出した。
「持つ」
「いや、いい。これから行く場所でも買い物をするからね。そこで買ったものをお願いしよう」
「まだ何か買うのか」
歯ブラシならコンビニにもあったしな、と悩む。でももっと安い店があるかもしれないし、と思案を巡らす。
そんなことをしているうちに辿り着いたのは──
「まだ食べるのか……!?」
「その通りだよ」
この街が誇るスイーツ店、シャルモンだった。
シャルモンでしこたまケーキを買い込んだ後、飛流とウォズはガレージに戻っていた。もうあたりは夕焼けに包まれている。
「まだ帰ってきていないようだね」
ウォズはレジ袋とケーキが入った三箱を冷蔵庫にそのまま入れてベンチに座る。飛流も倣ってその隣に座った。
おにぎりはお預けだった。
帰りを待つ間、サービスとして貰ったマドレーヌにかぶりつくウォズ。飛流も差し出されたもう一つのそれを受け取って噛み締めるように食べる。
「……美味いな」
「流石シャルモンといったところだね。この分ならケーキにも期待できそうだ」
ちょうど飛流がマドレーヌを食べ終わり、ウォズが耐えきれずにケーキに手を出そうとしたその時。扉が軋む音がして、バラバラな足音が聞こえてくる。
扉から出てきたのは四人の青年。その内の一人が誰なのかは飛流にもすぐにわかった。明光院ゲイツだ。
そのゲイツは飛流への警戒心を隠しもしない。赤と黒のロングコートを着こなす青年、ザックも程度は低いがそうだった。眼鏡の青年、城乃内秀保が苦笑いをして会釈してきたので返しておくと、最後の一人に声をかけられる。
「起きたんだね」
大した怪我がなくて良かったよ、と線の細い青年──呉島光実は笑う。が、目からはほんの僅かに警戒心が滲み出ていた。
ゲイツやウォズを除けば、この場で一番敵に回したくないな。
まだ名を知らぬ光実を、飛流は少し警戒する。現状は敵に回すつもりはないとはいえ、自分のことを二人からどう聞いているかはわからないし。
そんなやりとりをしていると、ウォズがメモを元にそれぞれ弁当を渡していく。各々がお礼を言ってから受け取る中、ゲイツだけ少し眉をひそめる。
「悪いね、から揚げ弁当は売り切れだったんだ」
「いや、それはいいんだが……」
眉をそのままにゲイツは座った。
最後に飛流が自分のおにぎりを取って、ウォズに返す。菓子パンだらけのレジ袋の底にはからあげ棒が残っていた。
「さて、いただこうか」
レジ袋からメロンパンを取り出して包みをビリッと破くウォズ。飛流を含めた他の面々は軽く手を合わせてから弁当を開けたりフィルムを外して食べ始める。
「さて、成果はどうだったんだい?」
ミニクロワッサンの一つをかじりながらウォズが問う。ゲイツは飛流をチラリと見て、言葉を選びながら答える。当の飛流はなるべく話している面々を見ないようにしておにぎりを口にしていた。
「まだ目的のものは見つかってはいない」
「他にアナザーライダーがいた様子もなかった」
ふぅん、とウォズはクリームパンを頬張りながら唸る。
「でもこれは見つかったぜ」
そうめんを一房啜ってから城乃内がポケットに手を突っ込む。だがその手首はゲイツに掴まれて出てこれない。
「……そこまで警戒しなくてもよくない?」
「そうだよゲイツ君。どのレジェンドライダーロックシードなのか、共有してもらわないと困る」
蒸しパンを食べながらのウォズの言葉に渋々ゲイツは手を離すと、城乃内は手を引っ張り出す。焼肉と白米を噛み締めていたザックも、ポケットから手の平大の物体を取り出して掲げる。最後に光実がプラスチックのスプーンを皿の上に置いてから物体を二個見せた。
ロックシードという聞き慣れない言葉に、二個目のおにぎりのフィルムを開ける途中の飛流も流石に注目してしまう。
それらは錠前のように見えた。普通の錠前と違うのは、鍵を挿す穴がないのと各部の装飾だ。恐らくライダーの仮面だろう、それがデカデカと彫られている。
「Wにオーズ、フォーゼ、ウィザードか」
これでほぼ全部だね、とウォズはチョココロネにかぶりつきながら数える。
「ドライブが無いのは痛いが、致し方ないか」
生クリームコッペパンの半分を一口で食べながらウォズは付け足した。
クウガから鎧武までの平成ライダーならば平成ライダーロックシードで代用できるが、ドライブはその中に含まれていない。アナザードライブとの戦いは厳しいものになるだろう。無論、レジェンドライダーロックシードが存在していないアナザーゴーストやアナザービルドとの戦いも。
「気になっていたんだけど」
今まで黙々とカレーを食べていた光実が初めて口を挟む。
「フィーニスが探しているロックシードの手がかりってあるのかな?」
「実際にアナザーフォーゼもレーダーで探していたからね……」
「レーダー?」
訝しげな目を向けるゲイツにウォズはシュガートーストを齧りながら頷く。
「オリジナルのフォーゼにそのような能力があったかはさておき、先程のアナザーフォーゼはそのエネルギーモジュールを使っていた。間違いなく昭和ライダーロックシードを探していただろう」
ゲイツの目付きが更に鋭くなる。どうどう、と諌めながらウォズはミニアンパンをまるまる一つ咥えこむ。
「……レーダーで探すといっても、所有しているデータと一致するものを発見できる程度だろうね」
「ならそのデータを──」
そんな光景を見ながら、飛流は二個目のおにぎりを食べ終えていた。未だ残る空腹の感覚を脇に置き、飛流は先程の光実とウォズのやりとりを反芻する。
すぐに思いつく。アナザーエグゼイドウォッチにこの街の位置データが保存されていたように、アナザーフォーゼウォッチ、運が良ければ他のアナザーウォッチの中にもその昭和ライダーロックシードなるものを探すためのデータが保存されているのではないか。
そしてそれを知ることができるのはこの場でただ一人、俺だ。
そう結論付けた飛流はそっと手を挙げる。
「あのー……」
その瞬間、この場にいる全員の視点が飛流へ向く。彼らの会議は行き詰まっていた。
「どうしたんだい」
ウォズが少し表情を柔らかくして続きを促してくる。
「えっと──」
まだゲイツが不審げに見てくる中、飛流はその目を見てふと思い至る。自分の立場を。
こんな俺が今更共闘なんてできない相手。それは常磐ソウゴだけじゃない。現に、明光院ゲイツは俺のことを疑っている。当然のことだ。
「加古川飛流?」
「──いや、ちょっと外に出て、空気を吸ってきてもいいか」
「……まぁ、いいけどね」
〈スイカアームズ!〉〈コぉダマッ!〉
ウォズはようやく放たれた飛流の言葉に少々不自然さを感じながらも、ライドガジェットの一つ、コダマスイカアームズを起動する。
「なら、これを連れて行くといい。気休めだけど護衛にはなるだろう」
変形し人型となったコダマスイカアームズは可愛らしくお辞儀すると、頷いて立ち上がった飛流に着いていく。
扉が閉まり、僅かに聞こえる階段を降りる音が無くなると、ウォズは溜息を吐いてゲイツを見る。
「……ゲイツ君」
ウォズの呼びかけには若干の非難が込められていた。すまん、とゲイツは漏らしてからまだ半分しか食べていない弁当を見つめる。
「これは奴が選んだんだろ?」
「ああ」
ウォズの返事にやっぱりか、と納得する。ウォズならこれは選ばない。奴はなんだかんだで律儀だし、弁当でなくても何らかのからあげを買ってくる。
「ま、ほっとくしか──ミッチ?」
ゲイツを見かねた城乃内が声をかけようとするが、その途中に光実が立ち上がる。
「ちょっと話聞いてくるよ」
「どうした?」
「あの時の僕と、同じ顔をしてたんだ」
「……そうか。なら行ってこい」
「ありがとう、ザック」
光実は仲間二人に見送られ、飛流の元へ向かった。ウォズは同じく見送りながら残り僅かな菓子パンを食べる。彼にならば大丈夫だろう。
袋の中にたった一つ残ったからあげ棒。ゲイツはようやく見えたそれをただただ見つめていた。
○○○
言葉が浮かんでは弾け、浮かんでは弾け、その繰り返しだ。溜息を吐いて、星がまばらな夜空を見る。
さっきはどんな言葉を言えば良かったのだろう。どんな言葉なら彼らと協力できるだろう。
あの事故から人に関わらず生きてきた加古川飛流にも、多少妬みは買えども戦いとは無縁に生きてきた加古川飛流にもわからない。
また溜息が出る。ふと横に顔を向けると、コダマスイカアームズが身動きせずにじっと飛流を見続けている。分かってはいたがやはり監視役か。
三回目の溜息。ぼーっと意味もなく欠けた月を眺めていると、視界に誰かが入ってくる。
「隣、いいかな」
「あなたは……龍玄?」
カレーを食べていた青年、飛流が一番警戒していた青年──光実だった。メモの内容を思い出して呼びかけると、光実は意外そうな顔になる。
「ビートライダーズのこと知ってるの?」
「……いや、知りませんけど」
予想外の反応に光実は首を傾げる。まぁいいか、と気にせず自己紹介をする。
「さっき君が言ってた龍玄、は僕が変身するアーマードライダーの名前なんだ」
「そうなんですか」
また新しい用語が出てきて飛流は困惑したが、『変身』と『ライダー』という言葉から仮面ライダーの親戚みたいなものか、とざっくり理解した。
「……どうして来たんですか? 明光院ゲイツあたりに呼び戻して来いって言われたんですか?」
「違うよ」
「ならどうして」
「君が何を言いかけてたのか気になったんだ」
「言いかけていた?」
何を馬鹿な、と飛流は図星を突かれながらも誤魔化そうと笑う。
「あの時言ったことが全てですよ」
「そうかな。もっと出やすいタイミングはあったし」
確かにそうかもしれない、と飛流は思う。ゲイツが城乃内の手首を掴んだときなど、まさにそうだった。
「怖いんじゃないのかな、拒否されるのが。それが当然受けるべき報いだとわかっていても」
「どうしてあなたにそこまで──」
「わかるんだ。僕も同じだったから」
光実が真剣な眼差しで見つめてくる。……そこまで言うのなら。
「なら、聞いてから分かったつもりになってくれ」
飛流は話し始める。羽美に話したことに加え、新たに生じた迷いも。
「──アイツらと一緒に戦っていいのか、迷い続けてるんです」
「……やっぱり、そうだったんだね」
僕もだよ、と光実は自嘲げに微笑む。
「あんな偉そうに言ってたけど、僕は地球滅亡の片棒を担いだことがあったんだ」
「ちきゅ……!?」
「簡単に言えば、だけど」
飛流は驚愕で思わず噛んでしまう。時空改変も大概だが、地球滅亡とは。
「自分が正しいって思いながらやってたんだ。もちろん、それは間違いだったんだけど。
上位的存在に媚びて、大切な人達だけ守ろうとして。それ以外の仲間を、その人達すらも切り捨てて。……最後に残った人も、救えなくて」
光実は目をつむる。瞼の裏に見えたのは、腹から血を流した大切な人と、心臓を奪われ変わり果てた姿で消えていく大切な人。
それでも目を開けて、光実は飛流に語り出す。
脳裏に浮かぶのは、兄、チームの皆、共に戦うアーマードライダー達。そして、どこか遠くの星にいる大切な二人。
「そんな僕にも、手を差し伸べてくれる人達がいて、どうにかここまで戻ってこれた。
それに、一番傷つけてしまった人が言ってくれたんだ。『どんな過去を背負っていようと、新しい道を探して、先に進むことができる』って」
「……俺にそんなことができるとは、思えないです」
弱音を吐いた。諦めないでほしい、と光実は諭す。
「僕にだって違う自分になれたんだ。変身だよ、飛流君」
「変、身……」
「君はもう、どうしたいか決めてるはずだから」
光実はそう言い終えてから、立ち上がって来た道を見る。
「それに、君にもいるよ。手を差し伸べてくれる人」
走ってきたのは、明光院ゲイツ。どうして、と思っていると袋を差し出される。中にはからあげ棒がポツンと入っていた。
「これってお前のじゃ……」
「お前のだ。ウォズが言うんだからそうだ。なによりおにぎり二つで高校生の腹が保つわけないだろ」
そりゃそうだが、と飛流は素直に受け取る。
「別に、お前の所業を許したわけじゃない」
「……だよな」
「だがお前が変わろうというのなら、俺も認識を変えよう。悪かった」
「……顔、上げてくれ。お前が謝ることは何もない。認識は変えてもらうけどな」
顔を上げながらも不満げなゲイツ。真面目か。
「俺は昔アナザーライダーだっただけの普通の高校生、加古川飛流だ」
「覚えておく。俺は元レジスタンスの普通の高校生、明光院景都。救世主を目指してる」
「そうか、俺も──ん?」
覚えておく、と繋げようとしたが、流石に思考が止まる。
ゲイツじゃなくて景都?
それに救世主?
「どうした?」
「いやどうしたも何も……まぁいいか。よろしく、明光院」
「ああ、加古川」
何となく握手する二人を見て、光実は微笑み、ある決意をするのだった。
三人並んで戻ってきて。ザックも、城乃内も、ウォズも喜んで飛流を受け入れた。
その後ぼかされていたり、先程言われていなかった情報を飛流は聞く。それが終わり、飛流が話す番になった。
「それで、さっき言いかけていたのは何だったんだい?」
「ああ、それは──」
飛流はからあげ棒を頬張りながら先程考えていたことを話す。
「なるほどね。なら早速そのアナザーフォーゼになってもらってもいいか?」
「やめておいた方がいいね」
「ああ。アナザーライダーはアナザーライダー同士惹かれ合う。俺の存在だけじゃなくてこの場所もバレるぞ」
「そうなんだ……」
ウォズと飛流の言葉に、そんなことあるんだ、と思いながら城乃内は手を下げた。
「まぁ、返しておくに越したことはないだろ」
ゲイツにウォズは頷き返し、カウンターの裏から布の袋を引っ張り出して、一つのアナザーウォッチとともに渡す。
「……何だこのアナザーウォッチ。ちょっとぬめぬめしてるし」
「それはアナザーディエンドウォッチ。ぬめりについては気にしないでくれるとありがたい」
「あ、ああ」
少し困惑しながらも飛流は他のウォッチを確認すべく布袋を開く。ゲイツとザック、城乃内が目を背けているのには気づかなかった。
流石に、そのウォッチはウォズから吐き出されたものだなんて言えない。
「さっき言ってたフォーゼにアギトか……」
「そういえばアナザージオウないしジオウIIウォッチはどうしたんだい、君の代名詞だろう?」
「代名詞扱いはちょっとどうかと思うが……
フィーニスに奪われて、お前らのアナザーウォッチと融合したんだ」
「何!?」
「で、それを使ってアナザージオウトリニティとやらになってたな」
「やってくれるね……」
ゲイツとウォズの顔が険しくなる。
「……そんなに強いのか? グランドよりも?」
「いや、純粋な力ならばグランドジオウが勝る」
「だがあの力は絆によるものだからね……」
それを踏み躙られて許せないってことか。飛流やアーマードライダー達は納得する。
「……あと、このアナザーライダーの能力は何だ?」
強引に話題を変えようと飛流はアナザーディエンドウォッチをウォズに見せる。
「少なくとも怪人の召喚・使役能力を持っているはずだ」
「……怪人?」
「いわば仮面ライダーの敵さ。同族でもある場合が大半だけどね」
「同族」
気になったワードをぽつりと呟くと、飛流の頭の中で今まで手に入れた情報が回り出す。
『フィーニスの目的は昭和ライダーロックシードの奪取』
『フィーニスが率いるのはアナザーライダー軍団』
『アナザーライダーはアナザーライダー同士惹かれ合う』
『アナザーライダーに対抗し得るレジェンドライダーロックシード』
『ライダーの同族であり敵である怪人』
『それらを召喚し使役するアナザーディエンド』
それらが混ざり合い、飛流に一つの結論を下させる。
「これなら……!」
「どうしたんだい?」
「ああ、作戦を思いついたんだが──」
○○○
飛流が作戦を話し終え、ウォズや光実のアイデアを取り入れて正式に決定した後のこと。
光実とザックと城乃内は自分の家へと戻ることにし、飛流とゲイツとウォズはガレージに寝泊まりをさせてもらえることになった。
未だケーキを食べ続けるウォズを遠目に、飛流とゲイツは他愛のない話を重ねていく。勉学のこと。学校行事のこと。常磐ソウゴのこと。恋のこと。進路のこと。夢のこと。
話している間に、お互いの人間らしさが見えてくる。いつも対面するときは、倒すか倒されるかだけの関係だったから、どこか新鮮だ。
「──俺も早く将来の夢とか見つけないとな」
「見つけようと思って見つかるもんじゃない。なんというか、急に転がってきて体当たりしてくる」
「何だそれ」
「実際そうだったんだよ」
「その救世主、ってのもか」
「……しかしどうしてそんなに甘味ばかり食べるんだお前は。昼のパフェもそうだが、お前が大食いとはいえ異常な多さだ」
誤魔化すようにウォズに話題を振るゲイツ。ウォズはマスカットケーキから目を二人に移す。彼の前に並んだ箱の内、二つは空になっていた。
「自分の夢とはいえ、他人に口にされると恥ずかしいかな?」
「うるさい、さっさと答えろ」
「ならそうしよう。私を保つためさ」
「保つ?」
「私を私たらしめる行動をすることで白ウォズの浸食を抑えているんだ」
ウォズが強引に使っている白ウォズの力は作戦の要だ。ライダーの力も、未来ノートも。完全に分離されたアナザーディエンドの力もそうだ。
「確かに、肝心なところで白ウォズに邪魔されるのは困る」
「だろう? ……とはいえ、食べすぎたかな」
そうぼやいてから、ウォズは箱の中からチョコケーキとアップルパイを取り出し差し出してくる。二人は素直に受け取って食べ始める。
「いつか君にも食べてもらいたいものだよ。順一郎氏のアップルパイを」
「それ他のアップルパイ食べてるやつに言うことか?」
夜食なんてしたこともなかったが、こういうのも悪くない。飛流はパリパリとした触感と絶妙な甘さとほのかな酸味を味わいながら思った。
○○○
夜が明け、日曜日の朝。決戦の日。ライダー達はとある裏路地に集まっていた。
かつてはストリートギャングがはびこっていた、ブラックホーク・ストリートと呼ばれた地。今となっては小物のチンピラが細々と活動している程度でしかないが。
昨日、そのチンピラの数人からザックは情報を得ていた。曰く、クラックを見た。化物を見た。眉唾物もあれば確実な情報もたくさんあったが、共通していたのはこの廃墟での話であること。
「じゃあ、手筈通りにお願いします」
既にアナザーディエンドと化した飛流の声にアーマードライダー三人と一体は頷き、別れていく。
「それでは私達も行こうか」
「ああ。……ぶっつけ本番だが大丈夫か?」
「やってみせるさ」
〈OOO……!〉
「ヴェアハァ……!」
〈FOURZE!〉
「オラァ!」
「よし、できた……!」
アナザーディエンドがエネルギーを込めて起動したアナザーウォッチを核にアナザーオーズ、アナザーフォーゼが誕生する。ホッと小さく息を吐くアナザーディエンドの肩をゲイツは軽く叩いた。
「まさかアナザーライダーが味方になるとはな」
「それは俺も思う。……こっちか?」
既にレーダーエネルギーモジュールを展開したアナザーフォーゼ。それが指さす方向の真逆の道を、アナザーライダー三体と生身の二人は走っていく。
しばらく移動していると、アナザーフォーゼがいきなり攻撃を食らう。一筋の赤い閃光を僅かに捉えたと思えば、アナザーディエンドがまた一撃を受ける。アナザーオーズは緑の目を光らせてスレスレで避けていく。
「アナザーカブトに……!」
「アナザーファイズ、かな」
アナザードライブならば、こちらの動きが鈍くなっているはずだ。ジカンザックスとジカンデスピアでどうにかいなしながら、ゲイツとウォズは目に捉えきれない敵の正体を推測する。
「対処法は!」
「もちろんッ、ある! アナザーオーズ!」
「ンンゥ……」
アナザーオーズは短く唸ると、両足を四本にそれぞれ分割して青いタコのように変化させる。吸盤で自らを地面に固定し、爪を構えて待ちに入る。
するとその直後、赤い閃光がアナザーオーズに襲い掛かる。迷いなくアナザーオーズは両手を突き出す。吸盤がはがれ、体制が崩れる。しかしその爪は、アナザーカブトの胸を貫いていた。
「ブハハハハハ!」
爆発の中で笑いながらアナザーウォッチを掲げるアナザーオーズ。調子に乗って回り始めている。
そこから遠いところで、急に人影が現れる。アナザーファイズだ。睨むアナザーファイズを相手にウォズは笑みを浮かべて語りだす。
「所詮は10秒。時間が過ぎればもはや敵ではない」
「戦うのは俺たちなんだが。……ん?」
「どうした」
「もう一体来る」
アナザーディエンドの言う通り、何かが走ってくる。赤と青が交差した、戦火の中でその力を振るう生物兵器。
「アナザービルド……そう楽にはいかないか」
ゲイツが小さくぼやく。少しでも戦力をこちらによこしてくれるのは、作戦に引っかかっているということであり、ありがたいことではあるのだが。
ジカンザックスから放つ矢がアナザービルドに殺到するが、ギリギリのところで当たらない。ゲイツは軽く舌打ちする。
が、無理矢理避けたことでバランスを崩したアナザービルドがすっ転び、アナザーファイズに衝突。二体はビターンとコンクリートに叩きつけられて一瞬行動不能になる。その隙を見逃さなかったのはアナザーフォーゼ。右足にエネルギーネットモジュールを展開し、巨大電磁ネットを発生。二体のアナザーライダーはそのまま捕獲されてぎゅうぎゅうに締め付けられる。
「……楽になったな」
「そうだね……」
何とも言えないような顔をしているゲイツとウォズを放置し、アナザーオーズとアナザーディエンドは必殺の態勢に入る。
「ヴァァァッ!」
「はッ!」
アナザーオーズの飛び蹴りとアナザーディエンドのエネルギー波を立て続けに食らったことで、アナザーファイズとアナザービルドは爆散した。残されたアナザーウォッチを素早く"止めて"二人の元へ戻る。
「助かった、明光院」
「ああ、なら良かった」
「なんでそんな釈然としないような顔してるんだ……」
間の抜けた光景を尻目に、アナザーライダー二体は友情のシルシを交わしていた。といっても、アナザーフォーゼからの一方的なものであり、アナザーオーズはなされるままにしながらも首を傾げていたのだが。
ここは戦場であることをほんの僅かな時間に忘れてしまった最中。繋がれた手を断ち切るように、二体のアナザーライダーの間にアックスが振り下ろされる。本能的に攻撃を察知したアナザーオーズが咄嗟に手を振り払おうとするも、間に合わずに右の爪が破壊されてしまう。
「アァゥ……!?」
「……!? ラァッ!」
アナザーフォーゼが急いで放ったロケットモジュールでのパンチを、下手人は易々と受け止め、出現させたナックルダスターで砕いた。
「やれやれ。キミ達に負ける程、ボクの絆の力は弱くは無いよ」
態勢を立て直す暇も与えず、ナックルダスターが変形した丸のこはアナザーライダー二体を上下に切断した。音を立てて落ちたアナザーウォッチに目もくれず、下手人──アナザージオウトリニティは残りの三人を意外そうに見る。
「へえ、まさかキミ達が組むとはねえ……」
「フィーニス……!」
「まあいいか。その見知らぬアナザーライダーの力も貰うよ」
アナザージオウトリニティは長槍を喚び出し、アナザーディエンドにそれを振り下ろし──
○○○
時は少し遡る。飛流達と別れたアーマードライダー達にも、アナザーライダーの真の手が伸びていた。
最初に彼らの前へ現れたのはアナザーダブルだった。緑青の方の身体に付いた複眼にアーマードライダー達を捉えるや否や、アナザーダブルはその身体から翠の竜巻を発生させる。かつてのユグドラシルタワーには当然届かぬ高さだが、この裏路地のどこからでも発生源が概ねわかる程度には高くて目立った。
「うわ、さっさと倒さないと!」
「多分ダブルかな、お願い!」
「了解!」
〈ダブル・アームズ!サイクロン・ジョーカー!ハッ・ハッ・ハァッ!〉
龍玄にロックシードを投げ渡されたグリドンが身に纏う鎧は、かつて可能性の世界で見た、二人で一人の探偵である戦士の力を秘めている。
グリドンは背中に背負っていた棍棒、メタルシャフトを手に。そのままアナザーダブルを止めようとするが、魔法陣が唐突に現れて行く手を阻む。それからのっそりと出てきたのは絶望の魔法使い・アナザーウィザード。
『スリー──』
「らァッ!」
アナザーウィザードは左手を丹田にかざそうとするが、その前にナックルの拳が突き刺さる。グリドンから引き離しながらナックルは二人に叫ぶ。
「コイツは任せろ!」
「うん!」
〈ウィザードアームズ!シャバドゥビ・ショータイム!〉
龍玄にロックシードを投げ渡されたナックルが身に纏う鎧は、かつて可能性の世界で見た、希望の魔法使いである戦士の力を秘めている。
両拳に巨大な爪、ドラゴヘルクローを装着したナックルはアナザーウィザードを殴り倒して、怪人を指差す。
「ミッチ、ソイツ連れて先に行け!」
「コイツら倒しとくからさ!」
「……わかった!」
龍玄は頷き、一体の怪人を連れて先に進む。グリドンとナックルを、ゲイツとウォズを、そして飛流を信じて。
この場を任されたアーマードライダーグリドン・ダブルアームズと、アーマードライダーナックル・ウィザードアームズは「さぁ──」と声を合わせる。
「──お前の罪を数えろ!」
「──ショータイムだ!」
指を突き付けられても動じずに竜巻を消して、人差し指を突き付け返すアナザーダブル。すかさず武骨な拳銃を喚び出して撃つ、撃つ。グリドンはそれをかわしながらだんだん近づいていく。
「長物の使い方も、拳銃を使ってくる相手の対処法も、師匠から学んでるんだよ!」
拳銃が地面に叩きつけられる。メタルシャフトが弾いたのだ。うろたえるアナザーダブルに闘士の一撃が加えられ、地面を転がった。
「これで決まりだ」
〈マキシマァムドライブ!〉
「メタルブランディング! とりゃあ!」
カッティングブレードを一回落とす。メタルシャフトの両端が熱く燃え上がり、グリドンはその勢いを利用してアナザーダブルの胸を強く打ち付けた。
二色の爆発の中から出てきたアナザーウォッチを華麗にキャッチしてグリドンは仮面の下でクールに笑う。少なくとも本人はそのつもりで。
「決まったぜ」
一方、アナザーウィザードは怨嗟の声をあげて何度も丹田に左手をかざす。大量の火の玉が殺到するが、ドラゴヘルクローで全て弾く弾く弾く。慌てたアナザーウィザードが作り出した土壁もナックルはあっけなく打ち砕いた。
「フィナーレだッ!」
〈スペシャルプリーズ!〉
カッティングブレードを二回落とす。ドラゴヘルクローに魔力が集中し、繰り出されるストレートがアナザーウィザードの胸を砕いた。
「ナンデエェェェェェッ!!」
アナザーウィザードは泣きわめきながら爆散した。ナックルは飛び出してきたアナザーウォッチを危なげなくキャッチし、最期の悲鳴に後味悪いものを感じながらも、疲れからか溜息を吐いた。
「ふぃー……」
グリドンとナックルが一つの戦いを終える中、龍玄は怪人を連れて走る。怪人の両腕の刃、ダウジングホーンが示す方向へ全力で駆けていく。
その前に立ちふさがる錆び付いたクラック。そこからライオンインベスとコウモリインベス、ヤギインベスが飛び出してくる。最後に将軍かのように現れたのは、腐りはてた落ち武者──
「アナザー、鎧武……!?」
右肩の鎧に刻まれた『GAIM』の文字を見て、龍玄は驚愕する。そうしている間にも、インベスは怪人に近づいていく。怪人はダウジングホーンの能力でインベス同士をぶつけて妨害するも、アナザー鎧武は止められていない。
龍玄は手の中のロックシードを見る。平成ライダーロックシード。大きく鎧武の仮面が彫られたそれを、昨日使えなかったことを思い出す。
一目見て、かつて使ったことのあるレジェンドライダーロックシードの一種であることはわかった。あの時自分で使わずザックへ渡したのは、迷いが生じたためだった。
世界を救った伝説の戦士たちの力。そんなたいそれたものを、使う資格が自分にはあるのだろうかと。可能性の世界で彼らの雄姿を見たことがあるからこそ、使うのを躊躇したのだ。
しかし、昨夜加古川飛流が『変身』しようとする姿を見て、光実は決意したのだ。弱い自分に、負けていられない。
「紘汰さん。力、借ります」
〈鎧武!〉
頭上にクラックが開く。現れたのは鎧武の頭。戦士を鼓舞する銅鑼が鳴り響く中、龍玄はカッティングブレードを下ろす。
〈ハィーッ!〉
アナザー鎧武が自分と同じ力に反応したのか龍玄の方を向く。既に、鎧は展開されていた。
〈鎧武アームズ!フルーツ鎧武者・オンパレード!〉
かつて、そして今も、光実の大切な仲間である戦士。彼の力を身に纏った姿の名は、アーマードライダー龍玄・鎧武アームズ。
「ここからは、僕のステージだ」
龍玄がそう宣言したその時、アナザー鎧武の視界が塞がる。生成されたクラックからエネルギーを纏ったパインアイアンが飛び出し、アナザー鎧武の頭を覆ったのだ。必死にパインアイアンを外そうとするが、果汁で手が滑って掴むことさえできない。
まごうことなきチャンスに、龍玄は動く。まずはイチゴクナイをインベス達に投げつける。注意をこちらに向けさせるためだ。
狙い通り、インベス達は龍玄に襲い掛かってくる。大橙丸と無双セイバーで迎撃しつつ、武器二つを合体させてナギナタにする。龍玄がナギナタを振るうと、ロックシードを装填していないのにも関わらず、両刃からエネルギーが弾けて二体のインベスをまとめて拘束する。そして一閃。コウモリインベスとヤギインベスは爆散する。
運よく拘束から逃れたライオンインベスは、まだ四苦八苦しているアナザー鎧武に近寄ろうとするが、後ろからの衝撃に倒れてしまう。すぐさま立ち上がったライオンインベスの目に映ったのは、オレンジとレモンの切り口を模したエネルギー体の列と創世弓ソニックアローを構えた龍玄だった。光矢がエネルギー体を取り込みながら迫る。今度は逃げることも叶わず、ライオンインベスは胸に大穴を開けて爆散した。
残されたアナザー鎧武は、ようやくパインアイアンを外し終えたところだった。未だに果汁が滴るそれを乱暴に投げ捨て、大剣を召喚して龍玄に斬りかかる。ソニックアローで対抗するが、予想以上にアナザー鎧武の腕力は強い。
押されに押され、廃工場の壁に背中が付く。手に蹴りが入り、その痛みでソニックアローが手から滑り落ちる。力強く踏み抜かれて創世弓は消滅していく。大剣が振るわれ、鎧やアンダースーツにダメージが入る。崩れ落ちる龍玄を見下ろし、アナザー鎧武が勝利を確信して小さく笑う。
絶体絶命だ。でも。
「お前みたいな偽物に、負けてやるもんか……!」
諦めない。咄嗟にクラックを開き、喚び出すのは無双セイバー。逆手で引き抜き、油断していたアナザー鎧武の鎧を一閃。まともに防御姿勢も取れなかったアナザー鎧武はたじろいで後退する。
その隙に龍玄は火縄大橙DJ銃を召喚、無双セイバーと合体させて大剣にする。虹色のエネルギーが大剣に流れていき、溢れ出してさらに巨大な刃と化していく。
〈鎧武・スパーキィーング!〉
「セイハァァァァァッ!」
カッティングブレードを三回落とす。巨大な刃は大剣を軽々と突破し、アナザー鎧武を真っ二つに斬り裂いた。
「やっ……た……」
龍玄はポツンと残ったアナザーウォッチを拾い上げて、仮面の下で笑う。流石に疲れた。ブドウアームズにアームズチェンジして、少しでも身体を回復できるようにする。
このまま地面に倒れこんで休みたいところだが、まだ戦いは終わっていない。昭和ライダーロックシードの回収と破壊を任されたのは、彼らアーマードライダー達なのだから。
追いついたナックルとグリドンがよろめく龍玄に肩を貸す。クワガタ虫のような姿をした青い怪人──ピクシス・ゾディアーツが龍玄に並ぶ。その両腕が示すは正面に続く一直線の道。
「行こう」
アーマードライダー達とピクシスが頷きあう。龍玄はロックビークル・サクラハリケーンを起動し、ピクシスを後ろに乗せる。グリドンもロックビークル・ローズアタッカーにナックルとともに跨った。
二台のバイクが裏路地を駆け抜ける。エンジンの唸り声しか聞こえない中、前だけを見て進む、進む。遠くに見える倉庫が近づく程、ダウジングホーンがそこを強く指し示す。
これで終わる。龍玄も、グリドンも、ナックルも、そう考えていたその時。円盤状の何かが二つ、後方の横道から高速で飛来して機体へ衝突した。三人と一体は地面に投げ出されて体を強打する。
咄嗟に受け身を取ってダメージを抑えたグリドンが真っ先に立ち上がり、周囲を警戒しようとする。が、飛来してきたであろう円盤状のものを見てしまう。
「な、なんだよこれ──」
絶句するグリドン。声には出さないが、次いで起き上がった龍玄とナックルも同じである。ピクシスはダメージを限界まで蓄積していたのか、立ち上がることもできていないが、それを気に留めることが出来ないほどの衝撃が三人を襲う。
それはマンホールの蓋だった。直径60センチメートル重量40キログラムの鉄製の円盤が、ロックビークルを破壊したのだ。
得体の知れない恐怖の存在に戸惑う中、一帯が闇に覆われる。暗闇の中、誇り高き夜の魔物が次々に現れる。
ムースファンガイア、真名『太陽、あるいは魚の目に刻まれた轍』。クラブファンガイア、真名『辞書や胸骨を模した囮』。サンゲイザーファンガイア、真名『水面に連鎖する堕落の残像』。
そしてファンガイア達の後ろから現れたのは、夜の魔物を統べる女王・アナザーキバ。
アナザーキバは地面──否、そこにはめられているマンホールの蓋を踏み抜く。飛び上がったそれを掴み取り、アーマードライダー達へと投擲する。アーマードライダー達はギリギリ避けられたが、マンホールの蓋はロックビークルの残骸に当たり、倒れたままのピクシスを巻き込んで爆発した。
ともに戦った怪人の死を悲しむこともできずに、アーマードライダー達は昭和ライダーロックシードを手に入れるための最後の障害へ立ち向かっていく。
○○○
──アナザーディエンドが張ったバリアに受け止められる。しかし、長槍から手を離したアナザージオウトリニティは、すぐさま矢でアナザーディエンドの腹を撃つ。衝撃で後退してそのまま近場の廃工場に逃げ込み、床に転がりながらアナザーディエンドは飛流に戻る。ダメージの蓄積による強制解除ではない、とアナザージオウトリニティは訝しむ。
「……何のつもりだい?」
「さて、どういうことだろうな?」
にやり、と腹部を押さえながら不敵に笑う飛流。あまりにも無防備な姿に呆れたように息を吐きながら、アナザージオウトリニティは丸のこを振り下ろす。
〈"ヤリ"スギッ!〉
しかし、フューチャーリングキカイに変身したウォズの横槍が入る。そのまま人工筋肉を限界まで稼動させ、飛流から勢いよく離していく。
「そんな力でボクに敵うはずがないさ」
「それはどうかな?」
〈フィーチャーリングシノビ!"シノビ"ッ!!〉
ライダーウォズはシノビの力を身に纏い、その身体を増やしていく。六人に増えたウォズは高速移動でアナザージオウトリニティを攪乱しながら、全員ドライバーを操作して鎌と化したジカンデスピアのタッチパネルを高速でなぞる。
〈ビヨンド・ザ・タイムッ!〉〈フィニッシュタイムッ!〉
六人のウォズは紫の閃光とともに廃工場の床と壁を跳び回る。四方から伸びる閃光は太く頑丈な帯へ変化し、アナザージオウトリニティを何重もの拘束で空中に固定する。
〈忍法・時間縛りの術!〉〈イチゲキカマーン!〉
「今だ!」
『仮面ライダーゲイツと仮面ライダーウォズの力、ゲイツと黒ウォズの元に戻った』
望む未来を書き込まれた未来ノートが淡く輝き、未来を導く。
両肩と化しているアナザーゲイツとアナザーウォズの顔面が咆哮する。身体が変貌した手をゲイツとウォズに伸ばす。帯の拘束が緩み、だんだんと近づいてくる手をゲイツとウォズは掴み取ろうとする。
「無駄だよ」
しかし、二人は空を掴んだ。掴もうとした手は、アナザージオウトリニティの両腕が変貌した鎖によって引き止められていた。鎖は先程以上に腕を締め付けて胴体に接続させ、それでもまだ暴れようとする両腕を無理矢理広げることで完全に制御下へ戻す。その時放たれたエネルギー波で帯が全て消滅してしまう。
「言っただろう。そんな無理矢理引き出してる力で、ボクの絆の力に敵うはずがない。ほら、もう限界じゃないか」
ゲイツと飛流を庇い、エネルギー波をもろにくらったウォズ。彼は変身解除し、更には白ウォズと姿が交差している。
「せっかくだ。それも貰おうかな」
未来ノートに手を伸ばすアナザージオウトリニティ。それを止めようとするのはアナザーディエンド。高速移動で掴みかかるが、文字通り一蹴されてしまう。
「加古川!」
今度こそ本当に強制解除された飛流に叫ぶゲイツ。その時、もだえ苦しんでいたウォズが突然起き上がり、ゲイツを羽交い絞めにする。
「何!?」
『久しぶりだねェ、元救世主ゥ……!』
「白ウォズ……!?」
『甘味ごときで私を抑えられるとでも?』
いやらしい笑みを浮かべた白ウォズは、アナザージオウトリニティへ声を張り上げる。
『私も君に協力しよう! これとディエンドの力を交換しようじゃないか!』
「……考えておこう。ひとまずは明光院ゲイツを任せたよ」
『踏み倒さないことを願っているよ』
信用できないな、とアナザージオウトリニティは内心思う。ウォズから出てきたモノであるならば、ボクの目的を知っていてもおかしくない。それに未来ノートを手放そうとしている。ディエンドの力を求めたあたり、白ウォズの正体はボクと同じく別時間軸からやって来たモノだろう。
ライダーの力は精々先程ウォズが行使したものが限度であろうから今は何もできないと思いたいが。目的がわからない以上、更なる力は与えたくはない。
とにかく、今は加古川飛流の始末を優先しよう。思考に区切りをつけたアナザージオウトリニティは飛流の方を向く。
〈BLADE……!〉
アナザーブレイドに変貌した飛流は白いオーラを纏ってアナザージオウトリニティへ一直線。わざわざその一撃を受け止めてから蹴とばし、長槍で何度も斬りつけてまた強制解除させる。
「……敵わないと知りながら何故戦うんだい?」
また地べたに這いつくばる飛流に問う。嘲りではなく、純粋な疑問だった。何が恨みだらけの彼を変えたのか。何がかつての敵と手を組ませたのか。
「罪滅ぼしかな? でも、キミの過去は消えないよ」
「……俺を動かすのは、お前に騙された恨みだけじゃない。確かに、無くしたい過去なんていくらでもある」
でもな、と飛流は叫ぶ。脳裏に浮かぶのは、あの二人。
「それも含めて人ってのは今ここにいるんだよ……! そんな大切なものをねじ曲げようとするお前を、俺は許せない」
「キミだって、歴史を歪めたことがあるじゃないか」
「……そうだな。許されることじゃないし、俺も俺を許せない。だから俺は、その過去を背負って生きていく」
立ち上がり、アナザージオウトリニティを見据える飛流。
「俺は過去を守りたい。全ての人達の、かけがえのない過去を!!」
飛流の叫びを聞き届けたブランクウォッチが輝き、ポケットから飛び出す。光が収まると、飛流の手には水色と金のライドウォッチが。
「これは……」
「でもドライバーがなければそれは使えない。無駄なあがきだねえ」
「無駄なんかじゃない!」
「何?」
ゲイツはあっけにとられていた白ウォズを投げ飛ばし、未来ノートを取り上げてそれに叫ぶ。
「『加古川飛流、ライダーの資格を手にする』!!」
未来ノートが再び呼応し、望む未来を手繰り寄せる。
〈ジクウドライバー!〉
そして飛流の腰にはライダーの資格、最後の一つが。
「これが、ドライバー」
「使い方は分かるか!?」
「……嫌というほど見てきたからな!」
ゲイツと軽口を叩き合い、アナザージオウトリニティに向かってウォッチを構えた。
〈ヒリュウ!〉
ウォッチを装填すると、巨大な白い時計が背後に出現する。針は折れ曲がり、時計盤の数字の順番はばらばらで、フレームは欠け、挙句の果てに竜頭が抜けて壊れた時計。
これはかつての己だ。捨ててはならない、背負わねばならないもの。
ソウゴとゲイツの変身に似た体捌きで、飛流は下から左手でドライバーを掴む。
「……変身」
ドライバーが回り、それと共に背後の時計が修復され、空色に染め上げられていく。
〈ライダー・タイム!〉
ドライバーを回した左腕と残していた右腕を交差させ、ゆっくりと開く。
〈カ・メェーン"ライダー"!〉
飛流の身体は灰色のボディスーツに包まれる。しかしすぐさまその上に時計から吐き出された大量の鱗が貼り付いていき装甲と化していく。
〈ヒーリューウゥー!〉
仕上げとばかりに時計から"ライダー"の四文字が飛び出し、飛流の顔面へ飛び込んだ。
「おお……」
飛流は未知の感覚に驚き、自分を覆う装甲を見たり触ったりしている。
透き通った空色の鱗を纏った体は、まるで青龍のごとし。夕陽のような暖かい色の複眼。形は刺々しいが例に漏れず"ライダー"の文字を象っている。
変身した本人含め、この場にいる全員が飛流の姿に釘付けになる。
そんな中で、ゲイツは白ウォズ──否、その中で抵抗しているウォズに言う。
「黒ウォズ、祝ってやれ」
『何、馬鹿な──』
「──私の、プライドに、懸けてェェェェェッ!」
白ウォズを振り払って立ち上がったウォズは勢い良く右腕を掲げる。
「祝え!! 偽の鎧から解き放たれ、自分を取り戻した過去の守護者!
その名も仮面ライダーヒリュウ。まさに生誕の瞬間である!」
勝手に付けられた名前に飛流──ヒリュウはウォズにツッコむ。
「まんまか!」
「どうどう、私やゲイツ君、ツクヨミ君だってそうだよ。……初めてツッコまれたね、このこと」
「そんな暇もなかったからな、"前"は」
二人を余所に、ヒリュウは左腕を構える。飛流が持っていたアナザーウォッチが、アーマードライダー達が収集していたアナザーウォッチが、フィーニスが意図的に回収しなかったアナザーウォッチが。そしてヒリュウの胸から現れたアナザーウォッチが、左腕に殺到して融合し一つに昇華されていく。
〈ANOTHER TIMER〉
歪んだ針が目を惹く、アナザーウォッチに似ているがそれよりも少し大きなデバイス。その名は偽騎召喚器・アナザータイマー。
「何だいそれは!?」
「俺は裏の王だった。その過去は俺が未来永劫背負っていくもの。これはその証だ」
〈────〉〈AGITΩ──〉〈RYUKI──〉〈FAIZ──〉〈BLADE……!〉
アナザータイマーの針を一と四分の一周、回す。アナザータイマーのウィンドウにアナザーブレイドの仮面が浮かび上がり、輝く。
〈ANOTHER FORCE!〉〈BLADE……!〉
スターターを親指で押すと、喚び出されるのはアナザーブレイラウザー。ヒリュウはそれを掴み取ってアナザージオウトリニティに斬りかかる。
アナザージオウトリニティは咄嗟に長槍で防ごうとするが、手から即座に弾き飛ばされる。それどころか両腕に絡みついていた鎖を一刀両断されてしまう。
「その剣に、そこまでの力はないはずだッ……!?」
「俺は裏の王、アナザーライダーの王だ。王が臣下に負けるわけないだろ」
〈ANOTHER FINISH TIME……!〉
残った鎖を無理矢理腕に戻そうとするアナザージオウトリニティ。その疑問をヒリュウは一蹴。アナザーブレイラウザーを床に突き刺し、アナザータイマーのスターターを押してから針に手をかける。
〈HIBIKI──〉〈KABUTO──〉〈DEN-O──〉〈────〉〈DECADE──〉
先程と同じくらい回したところで、先程まで腕だったアナザーライダー二体が襲い掛かってくる。一旦針から手を離し、アナザーブレイラウザーを再び手に取り応戦する。
アナザーゲイツの斧とアナザーウォズの鎌での連携攻撃。防ぐことは容易だが、それ以上行動できる隙をヒリュウに与えない。
厄介だ、と内心舌打ちしていると、アナザーウォズの脇腹を深紅の円錐状のものが貫き、アナザーゲイツの腕を矢が正確に射貫いた。
「明光院、ウォズ……」
「裏の王サマには必要なかったか?」
「いや、助かる!」
〈DOUBLE──〉〈OOO──〉〈FOURZE──〉
連続攻撃が止んだ隙に少しだけ針を回してから、アナザーゲイツの背中をアナザーウォズごとアナザーブレイラウザーで串刺しにして蹴り飛ばす。
〈WIZERD──〉〈GAIM──〉〈DRIVE──〉
地面とアナザーゲイツに挟まれたアナザーウォズがもがいているうちに更に針を回す。ゲイツとウォズはサンドイッチ状態の二体を警戒しつつ、アナザージオウトリニティの動きを妨害しようとジカンザックスとファイズフォンXを撃つ撃つ撃つ。
〈────〉〈EX-AID──〉〈BUILD──〉
あと少しのところでアナザージオウトリニティが両腕の再生を終え、矢や光弾を物ともせず長槍で斬りかかってくる。ヒリュウはどうにか右手で切っ先を掴み取り、それで針を動かす。
〈ZI-O……!〉
エネルギーがアナザータイマーから右手へ、そして長槍へ。身に纏うそれと同質のエネルギーがアナザージオウトリニティを襲い、耐えきれずに長槍を手放してしまう。
「このぉ……!」
「俺の武器だ。返してもらうぞ」
そう言い放ったヒリュウはスターターを右手で押す。長槍に禍々しいエネルギーがまとわりつく。アナザーゲイツとアナザーウォズがようやく立ち上がるが、もはや手遅れだった。
〈ANOTHER TIME BREAK!〉
「これがお前への罰だ!」
ヒリュウは跳び上がり、長槍を一閃しながら三体のアナザーライダーへ突っ込む。時計の長針と短針のような斬撃が放たれ、アナザーライダー達はもがき苦しんだ後に爆散した。
〈ゲイツ!〉
〈ウォズッ!〉〈ギンガッ!〉
フィーニスの胸から飛び出したアナザージオウトリニティウォッチが砕け、ゲイツとウォズにライダーの力が戻っていく。ウォズは珍しく安堵した顔で緩く笑う。
「ようやくもう一人の私の力を使わずに済むね」
「やったな」
「ああ。……お前の計画も終わりだ、フィーニス」
うつむいたままのフィーニスに長槍を突き付けるヒリュウ。フィーニスが顔を上げると、笑っていた。
「終わり? 終わりだって? ハハハハハ!!」
フィーニスが不意に突きだしたのはひび割れたアナザーウォッチ。また力を奪われるかもしれないと三人は後ずさるが、そのウォッチが吸収したのは先程砕けたアナザーウォッチだった。
「まさか力の残滓を吸収しようと……?」
「違うよ、何もかも。今このウォッチが求めたのはそんなものじゃないし。
なにより、ボクの計画は終わるどころか最終段階に進んだのさ」
その手に握られたアナザーウォッチが鼓動する。ヒビが塞がっていき、更にその色を変えていく。
「想定外だったのはボクを倒したのがキミであること。ボクが倒されること自体は計画の中核だよ」
「何……?」
「てっきり、ボクを倒すのは常磐ソウゴか、あるいは葛葉紘汰、呉島貴虎──まあ、終わったことはいいか」
教えてあげるよ、とフィーニスは笑みを深くする。
「アナザーライダーの進化には、外的要因が必要なんだ。かつてティードが特異点の少年を狙ったように、ボクがタイムマジーンを取り込んだようにね。特に興味深かったのはキミさ、加古川飛流」
「俺……?」
「キミはアナザージオウの力を、恨みを糧にIIにまで至らせた。特別な物品ではなく、普遍的でありながらも概念的なものでね」
確かにそうだった。早瀬が変貌したアナザーウィザードなど、他のアナザーライダーにも見られることではあったが、飛流のそれは規格外だった。
「だったら、幾度も継承されながらも、毎度ライダーに倒されたアナザーライダーの恨みなら? どれほどの力になるのか、と」
僅かに差し込む日光が反射して、禍々しく照る黄金のアナザーウォッチ。
「ネオアナザーウォッチは完成した。実験は成功したのさ」
「だが昭和ライダーロックシードはこちらで押さえてある」
アナザータイマーに融合していないのはおそらくまだ起動しているであろうアナザーウォッチだ。つまりフィーニスに残っている駒はアナザークウガ、アナザーキバ、アナザーゴースト。
アーマードライダーや、ソウゴと有日菜が向かった大天空寺にどれほどアナザーライダーを放ったのかはわからない。しかし彼らが傀儡を相手に、そう簡単に奪わせるはずが無い。ヒリュウもゲイツもウォズも、そう信じていた。
「なるほど。確かにかつて語ったボクの思想から考えれば、本命が昭和ライダーロックシードだと思われるのも当然か……」
結果的にブラフになったわけだねえ。そう呟いてフィーニスは上を──屋根を見る。
「どれでもいいんだよ、今回は。力だろうと魂だろうと関係ない。在るべき歴史に正すのは変わらないからねえ」
「……まさか」
本命は、ゴースト眼魂──!?
「流石だよ、ティード。キミも、キミが遺してくれた物も素晴らしい」
屋根が破られる。落ちてきたのはアナザークウガ。その身体が消失していくと同時に、更にネオアナザーウォッチへ怨念が充填される。
「彼風に言うなら──タスクは果たされた」
フィーニスが立ち上がり、ネオアナザーウォッチを天に掲げる。その瞬間、スローモーションかのごとく、彼女の挙動がはっきりと見えた。
降り注ぐ屋根の破片とホコリ。その中に紛れて落ちてきたのは眼のような小さな物体──1号ゴースト眼魂。それがネオアナザーウォッチに触れると、一瞬で白く空っぽの器になってしまう。
〈ICHIGOU……!NEO!〉
「今日からボクこそが、時代の創造者で新時代の1号だ」
フィーニスはブランク眼魂を踏みつぶして、そう宣言した。
ヘンシン→変身→「転」
ちなみに、この作品は「ゲイツ、マジェスティ」のストーリーラインをなぞっております。と、いうことは……?