NEXT TIME 仮面ライダーヒリュウ、ファースト 作:祝井
結の回・カットシーン
ツクヨミは戦闘員をファイズフォンXで怯ませながら、黄金狼男と睨みあう。膠着状態だ。するとよろめきながら近くに寄る戦闘員達の首筋に、黄金狼男は次々に牙を立てていく。噛まれた戦闘員は苦しみもがいて倒れ込む。
「何をしているの……?」
ツクヨミの疑問にすぐ答えは出た。戦闘員の骨格が変わり、体表に毛が、口からは牙が生えてくる。黄金狼男によってウルフビールスを注入されたのだ。
狼男と化した戦闘員達はすぐさま起き上がり、指先に新しく備わった器官から弾丸を発射する。ツクヨミはそれをマントで防ぎつつ回避しようとするが、一部をもろにくらってしまう。狼男達の攻撃は先程よりも強くなっており、ツクヨミは痛みに歯を食いしばる。
その隙を付いて、脚の筋肉を膨張させた黄金狼男がツクヨミに一瞬で近づき、懐に入り込んで胸装甲を下から上に引っかく。ツクヨミは胸装甲から火花を散らしながら吹き飛び、敷き詰められたタイルの上を転がる。
そして黄金狼男の牙が、ツクヨミの首筋に迫る──
龍玄はガラガランダと対峙する。ガラガランダはその右手と一体化した鞭を乱暴に振り回すが、あまりに乱暴なので龍玄は飄々と避けることができた。回避された鞭はタイルやコンクリートを粉々にする。龍玄もブドウ龍砲で反撃するがガラガランダは逃げ回り、更に地面は粉々になっていく。
足元を悪くして戦うつもりか。龍玄は先程よりも足に力を入れる。ガラガランダはそれに構わず龍玄と地面に向かって鞭を振るい続けた。その結果、地面はボロボロになって砂埃が舞う。砂塵で視界が遮られる中、龍玄はガラガランダを見失ってしまった。
「しまった……!」
油断せずブドウ龍砲を構える龍玄の背後から破壊音が鳴る。振り向くが、何もいない。その時、龍玄の背後__さっき向いていた方向の地面からガラガランダが顔を出し、脛に噛みついて毒を注入する。龍玄はあまりの痛みに膝を落としたが、苦しみながらも龍砲を撃つ。しかしガラガランダはまたもや姿を消して、再び背後から顔を出し──
ナックルはイカデビルの胴体に何度も拳を叩きこむ。だが殴った感触に確かな手ごたえはなかった。その証拠に、イカデビルは殴られた場所を軽く払うだけで大したダメージを負っていない。
「ただのパンチじゃ効かねぇってか……!」
ナックルはならばと強化ロックシードとゲネシスコアを取り出して自身のドライバーに装着しようとする。
しかし、それを悪魔の使い・イカデビルが許すはずがない。イカ墨を吐き出してナックルの視界を遮ったのだ。ナックルは反射的に複眼をぬぐおうとして、ゲネシスコアを装着することから意識を逸らしてしまう。
その隙にイカデビルは手を天に掲げる。するとイカデビルの頭部が一瞬だけ赤く光り、空からたくさんの隕石が降ってきた。隕石は戦闘員を巻き込みながら爆発し、視界をどうにか取り戻したナックルにも多大なダメージを与える。
「クッ……!?」
倒れ込んでしまいそうなナックルを、イカデビルは伸縮自在のイカ脚で絡めとってコンクリートの床に放り出す。そしてイカデビルは生き残った戦闘員と共にナックルを囲み、鎌を振り上げ──
「ったく、あの怪人はどこに消えたんだよ……!?」
グリドンは戦闘員をドンカチで叩きのめしながら周囲を見渡す。先程自分を引きずってきたゲルショッカー大幹部・ヒルカメレオンの姿が文字通り見えないのだ。
その様子を見て、周囲の景色に溶け込んだヒルカメレオンはしめしめと音を立てずに笑う。吹っ飛ぶゲルショッカー戦闘員から起きる爆発をこそこそと避けつつ、グリドンに少しずつ近づいていく。狙うは、腰に装備された戦極ドライバーとそれに装填されたロックシード。
「これで全部か。俺も舐められたモンだね」
周囲の戦闘員を倒し終え、少し気が抜けた状態でグリドンはドンカチをクルクル放る。絶好の機会だ。ヒルカメレオンは素早くグリドンに接近し、そしてドライバーに手を伸ばし──
○○○
──が、牙がツクヨミのアンダースーツに突き立てられる寸前のところで黄金狼男の動きが止まった。否、止めさせられた。
〈バーストモード!〉
黄金狼男の腹にφの記号が刻みつけられている。ファイズフォンXのエネルギー弾が黄金狼男の身体を一瞬硬直させたのだ。ツクヨミはタイルの上を転がって距離を離す。
再び狼男達が指先に備わった器官をツクヨミに向けるが、射線が黄金狼男に重なり下手に撃つこともできない。その隙にツクヨミは立ち上がってファイズフォンXをドライバーに装填した。
〈エクシードチャージ!〉〈フィニッシュ・タイム!〉
ドライバーのウォッチを起動すると、右脚にポインター555が装備される。回し蹴りしながらポインター555を黄金狼男に向けると、そこから円錐状のマーカーが射出されて黄金狼男の身体を狼男達ごとその場に固定した。
「一撃で、決める!」
〈ライド・ガジェット!〉〈タイムジャック!〉
ツクヨミは飛翔し、月光のように輝く中心にφの記号が赤く光る右足を突き出す。勢いよくマーカーを潜り抜けると、狼の群れは灰になって崩れていった。
──噛みつこうとするが、その顔面に銃弾が叩き込まれる。ガラガランダは急いで地面から這い出ようとするが、更に降り注ぐ銃弾がそれを襲った。ならば、と再び地中に潜って距離を取る。
一方の龍玄も、次の攻撃の予想はできたものの、足にじんわりと広がる酷い痛みで動くことができず、龍砲でガラガランダの動きを阻害して遠ざけるのが精一杯だ。……今のままならば。
〈ドラゴンフルーツエナジィー!〉
ドライバーにゲネシスコアを拡張した龍玄は、起動したエナジーロックシードを装填して素早くカッテイングブレードを下ろす。
〈ジンバー・ドラゴンフルーツ!ハハーッ!〉
龍玄は烈風纏いし双龍・ジンバードラゴンフルーツアームズにアームズチェンジ。ソニックアローにエナジーロックシードを装填し、構える。
それほど遠くもなく近くもない距離の地面から飛び出してきたガラガランダ。それを視野に入れると、龍玄はレモンを絞るようにゆっくりと力強く矢を引き絞る。
〈ドラゴンフルゥツエナジィー!!〉
そして、手を放す。二匹の龍となったエネルギーの矢は、一方は叩き落とされたもののもう片方はガラガランダの喉を噛み切った。万歳をするようなポーズを取りながらガラガランダは倒れ、すぐに爆散した。
〈ジンバァーマロン・スカーッシュ!〉
──たが、ナックルから飛び出した棘が戦闘員を貫き爆散させ、イカデビルの頭部に突き刺さる。イカ脚を引き千切ったナックルは既に、熱拳構えし闘拳士・ジンバーマロンアームズに変わっていた。
棘が刺さったままのイカデビルの頭部からは煙が出ている。ナックルが知る由は無いが、イカデビルの頭部には隕石誘導装置が内蔵されており、それが破壊されたのだ。
「弱点は頭か!」
頭を押さえるイカデビルの様子を見て、ナックルは確信する。ならこの熱く燃え滾る拳を叩き込むだけだ。
〈ジンバァーマロン・オーレェ!〉
カッテイングブレードを二度下ろす。拳同士を打ち付けあうと、両拳が燃え上がる。走り出したナックルの拳は正確無比にイカデビルの頭を捉えた。
イカデビルは後ずさり、次第に熱を増していく頭を抱える。その瞬間、衝撃と熱が軟体生物の肌を超えて、隕石誘導装置を爆発へと導いた。
「分かってんだよ、そんなの」
──その手首をグリドンに掴まれる。驚きのあまりヒルカメレオンは透明化を解除してしまう。ヒルカメレオンはヒルの口を伸ばし突き立てて手を離させようとするが、グリドンの力は緩まない。
「お前みたいな奴の対処法は、師匠から学んでるんだよ……!」
〈ドングリ・スパーキング!〉
グリドンは左手でカッテイングブレードを三回下ろした。上半身を覆うドングリアームズが展開前に戻り、巨大なドングリと化しエネルギーを蓄えていく。
そしてお見舞いするのは全力の頭突き。その衝撃でグリドンは手を離してしまい、ふらつきながらもどうにか踏ん張る。手首を解放されたヒルカメレオンはふらつきながら倒れ、そのまま爆散した。