NEXT TIME 仮面ライダーヒリュウ、ファースト   作:祝井

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 スピンオフ短編第一弾です。



スピンオフ短編集
「オーラの進路と食事情2018」


 

 2018年。その9月下旬のある日の昼休みのことだった。

 

 光ヶ丘高校の進路指導室に先生が一人、生徒が二人。

 

 先生は月読織次。あだ名はスウォルツ。ちなみに自称。

 

 生徒の一人、一年生の男子は宇都宮澄春。あだ名はウール。ちなみに名付けたのはスウォルツ。

 

 もう一人の生徒、三年生の女子は大森愛良。あだ名はオーラ。ちなみに名付けたのはスウォルツ。

 

 先生一人と生徒二人は長机を挟んで向かい合っていた。机には小さめの弁当が二つと少し高そうな黒い茶碗、そして一枚の紙が置かれている。

 

「で、これなんだが」

 

 スウォルツは紙を指し示す。そこには大森愛良と名前が記されている。アンケートのようだ。

 

「オーラ、お前の進路が『救世主のお嫁さん』に変わったのがどういう理由なのか、詳しく聞かせてもらおうか。お前の拒否は認めん」

 

「ゲイツの進路が『救世主』に変わったからだけど?」

 

 予想はしていた答えだが、開き直るようにケロっと言われてどう返せと。スウォルツは内心頭を抱え、心を落ち着かせようと茶碗の中の白米を頬張った。いつも通り美味しかった。

 

 

○○○

 

 

 ことの始まりは今朝だった。ウールが登校するなり、同じく出勤直後のスウォルツにオーラの進路アンケートを突きつけて来たのだ。

 

『スウォルツ先生、これオーラが進路だって……』

 

『まさかこれ奪ってきたのか? 後々大丈夫か?』

 

『オーラの今後に比べれば大したことないですよ』

 

『健気だなお前は……お前のような弟を持ってオーラは幸せだな』

 

『弟じゃないです』

 

 ウールの健気さに負けたスウォルツは、昼休みに時間をつくって三者面談をすることにしたのだった。今回は親の代わりに実質弟みたいな関係のウールだが。

 

 その後ウールはオーラにこちょこちょの刑に処されたとさ。

 

 

○○○

 

 

「……前の進路はどうした? お前なら十分行けるだろう」

 

「いや、ゲイツに合わせてただけだし」

 

「人に合わせて進路を決めるのは……高校受験までだぞ」

 

「何よその間」

 

「気にするな」

 

 チラッとウールを見て『中学生だってしないぞ』と言いかけたのを変えただけである。ウールはソウゴに憧れてこの学校に来たのだから。

 

 ウールやオーラ、ここにはいないがソウゴやゲイツとは長い仲であるから、ウールのそういった事情も知っていた。

 

「あとこのことは親御さんは知ってるのか?」

 

 本来学校で執り行った三者面談はもう二ヶ月も前である。

 

「……まだ言ってないけど」

 

「まずはそれからだな。ちゃんと伝えるんだぞ?」

 

「……はーい」

 

 渋々ながら返事をしたオーラを見て今まで口を挟まなかったウールは小さくガッツポーズ。良かったな、としみじみ思う。

 

「ついでだ、ここでご飯も食べていけ。戻って食べても良いが」

 

「僕は食べていきます」

 

「私も。ここで食べてくるってピナに言っちゃったし」

 

 ピナとはオーラの同級生でありスウォルツの妹、月読有日菜のことである。

 

「案外仲が良いものだな」

 

「恋敵なのに、って?」

 

「俺的には仲良くしてほしいところだが」

 

 スウォルツの言葉にフッ、とオーラは口を緩める。

 

「安心しなさい、ピナと私はズッ友よ。それにピナはゲイツのこと友達としか思ってないし」

 

「……そうか」

 

 それはそれで悲しいなオイ、とスウォルツはゲイツを哀れに思った。一瞬だけ。

 

 そしてまだ温かい白米を一口。美味い。

 

 目の前の弁当にはどんなおかずが詰まっているだろう、と気になったスウォルツは開かれたそれらを眺めた。いつも通りしっかり作られていて美味しそうだ。

 

 しかし何か違和感を感じ、ウールにそれを尋ねることにする。

 

「いつもと何か違くないか?」

 

「いやまあ、何というか──」

 

「ダイエットよ、ダイエット」

 

 言われてみれば、量が少なくなっている気がする。

 

「お前達の歳でダイエットは早すぎるだろう」

 

「デリカシー無いわね……」

 

 まぁスウォルツにそこは期待してないけど、とオーラ。

 

「最近順一郎さんに夕飯をお呼ばれすることが多いんですよ」

 

「確かに有日菜も夕食を済ませて帰ってくることが多くなったな」

 

「勉強会の流れで食べていくことが多いんだけど……その、美味しいのよね、すごく」

 

 わかるぞ、とスウォルツは同意した。あまり頻度は高くないがやはり食べたことがあるからわかる。すごく美味しい。特にスウォルツは彼のつくった天丼が好きだった。

 

 以前冗談で「お食事屋をやられてはどうです?」と言ったら「僕、時計屋だからね?」と真顔で言われたのを思い出した。

 

「それにおかわりも沢山あるから、つい食べすぎちゃうわけ。そして体重計から悪い知らせが……」

 

「だからって僕も巻き込まないでよ……」

 

「こんなに肉をつけておいて?」

 

「わきばらっ!?」

 

 オーラに脇腹を掴まれ、思わず跳び上がるウール。なるほど、制服の上から僅かに分かるぐらいでしかないが、ウールは太ったようだ。

 

「というわけで私達はダイエットしてるわけ。あ、ごちそうさま」

 

「ごっ、ちそうさまでした……あー痛い……」

 

 喋っている間に二人はもう食べ終えたようだ。スウォルツも自分の茶碗を確認するともう無くなっていた。追加するか、と部屋に置いてある炊飯器を開ける。

 

「うわぁ……」

 

「食いたいならやるぞ?」

 

「それはいいけど」

 

「オーラ!?」

 

「よくそんなこと許されてるわねスウォルツ」

 

 それだけの理由はあるんだぞ、とスウォルツはぼやく。

 

「俺は進路指導主任だ。クラスの担任から相談を持ちかけられることも少なくない。特にこの学年相手ではな」

 

「常磐君ね……」

 

 明光院やお前もだぞ、とは言わなかった。

 

「そういうことなら仕方ないか。食べ終わったし私は戻るわ。ウールは?」

 

「僕はまだ残るよ。進路関係で話したいことがあるし」

 

「ふーん。じゃあまた放課後」

 

「うん!」

 

「親と相談するのを忘れるなよ?」

 

 分かってるわよ、と言い残してオーラは足早に去って行った。

 

「……さてウール、お前はこれが欲しいんだろう」

 

 炊飯器の中から覗いている白米を見てウールはゴクリと唾を飲む。白米が輝いて見えた。

 

「さっき体育だったんで今日はほんとヤバくて……ふりかけと交換でいいですか?」

 

「いや、今日はプレーンの気分だ。自分で使うといい」

 

「あざぁっす……!」

 

 ふりかけをかけてガツガツと食べ始めるウールとともにスウォルツもまた先程ついだ白米を食べ始めた。問題児どもの進路をどうすべきか考えながら。

 





 ヒリュウのスピンオフ、としての投稿ですが、むしろ8ジオや後に投稿予定(この作品の投稿当時EP1は完成している)の「ツクヨミ、トゥルース」の方が展開的に繋がっているような気もしますがまぁいいでしょう。
 時系列はゲイツ、マジェスティとヒリュウの間であるため、そういう意味ではスピンオフとしてピッタリなのですが。
 ちなみにこの作品は2020年の8月末に執筆されました。
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