陸戦場に着くと、先ほど話題に上がっていたなのはさんが絶賛模擬戦中だった。
組み合わせは……なのはさんvsスバルさん、ティアナさんか。
1vs2なのに、なのはさん普通に受けきってる。
すっっっご。
お、あの飛竜……ああなるほど。フェイトさんとキャロ&エリオか。
「あれは…アルザスの飛竜……⁉︎」
「正解!キャロさん竜召喚士なんです」「エリオさんは竜騎士!」
あの飛竜の名称を一発で言い当てるとは流石優等生。
相変わらずエリオ達も凄いねぇ。
「で、フェイトママは空戦魔導師で執務官をやってます」
あ、模擬戦終わった。くぅ、もう少し早く来れてれば。
次のメニューはフィジカルトレーニングしながら魔法訓練やらその他さまざまなハード練習に切り替わった。
……休憩なしで続けるってマ?
「局の魔導師の方たちは……皆さんここまで鍛えていらっしゃるんでしょうか?」
「ですね」「ま…まあな」
アインハルトが質問するとヴィヴィオちゃんとノーヴェさんが返す。
「スバルは救助隊だし、ティアナは凶悪犯罪担当の執務官。他のみんなも程度の差はあってもみんな命の現場で働いてるわけだしな。力が足りなきゃ救えねーし自分の命だって守らなきゃならねー」
「ノーヴェも救助訓練はガッツリやってるんですよ」
ああ、そうだ。母さん達、六課の皆に憧れて、強くなりたい……って思ったこともあったっけ。
……また帰ったら母さん達にみっちり稽古つけてもらおうかな。
今は練習見学を早めに切り上げてホテルに戻りメガーヌさんと談笑中。
その内容は……
「で、ここで火を強めて」
「なるほど」
はい料理です。この方めちゃくちゃ料理上手なんですもの。
もはや談笑じゃない。
弟子入りしてる気分です。
おいこらプライド、呆れてんのわかってるからな。
「「「おつかれさまでーす」」」
「あ、なのはさんたち帰ってきましたね」
「そうねえ、ユタちゃん。先にみんなと一緒にお風呂に入ってきたら?」
「わかりました。ではまたその後にご指導お願いします!」
「私なんかでよければいくらでも♪」
「ふー、極楽極楽~♪」
なんだここ。温泉沸いてるって。神地かなにかですか。
温泉ある理由も中々おかしい。
適当にほったら沸いてきたって。ギャグマンガじゃないんだから。
「……?騒がしいな」
ヴィヴィちゃん達の方を見るとなんか騒いでる。
ぬるっとしたものが、とか。触られた、とか。
……?
今度はアインハルトのいる辺りで騒ぎ始めた。
お、水斬り成功してる。おめでとうアインハルト。
今度はスバルさんたちが騒ぎ始めた。
……なんか水色の髪の人いなかった?その人にリオちゃんが胸もまれた、ように見えたけど。
え、ちょっと待って。リオちゃん、ぶっ飛ばすのはいいけどこっちにとんで…
「げふっ!」
あっぶなぁぁ!!!
間一髪避けれた。
飛んできた人は、うん、石畳に直撃してないだけマシでしょう。水に打ち付けられるのも結構痛いはずだけども。
「もーダメだよセイン。こういうイタズラは!みんなが転んでケガでもしたら笑い事じゃすまなかったんだし」
「セクハラも犯罪なんだからね」
「私が営業妨害で訴えたら捕まるしね」
「まったく、こんなのがあたしより年上かと思うと涙が出てくるわ」
あの後、セクハラしまくってた犯人はセインさんというのが判明し
説教されている。
「う……うう……。なんだよ~!ちょっとみんなを楽しませようよ思っただけじゃんかよ~‼ケガとかしないようちゃんと気を付けてたっつーの!これでも聖王協会のシスターだぞ!」
現在は騒ぎの原因であろう人が正座させられて説教を受けてる。……この人がノーヴェさんより年上?なのになんだこの喚きよう。
小学生みたい。
「自慢じゃねーがあたしはお前らほど精神的に大人じゃねーんだからな!?」
「「(言い切ったし開き直った…)」」
「(ホントに自慢じゃねーよ)」
そのあとはセインさんがみんなに謝って回っていた。
ヴィヴィオちゃん曰く、お茶目が過ぎることもあるがとても優しいシスターだとのこと。
……お茶目とは?
「セイン、訴えない代わりに交換条件をのまない?今夜と明日の朝、みんなのご飯作ってよ。そしたら今夜一泊してってもらえるようシスターシャッハに頼んであげる」
「ホントか!?そんなので良ければいくらでも!」
「示談成立だね」
どうやら話まとまりそうです。
あんまり関係ないんだけどね。
気がつくと、あたり一面が炎の海になっていた。
私はというと、それを船の上から無表情で眺めている。
両腕を動かそうとすると違和感がある。動かせないし、何より自分の腕ではない感覚がある
見てみると腕ではなく義腕があった
周りには指揮官らしき人間が数人いた。
(オ―――ィエよ、ゆりかごの次の向かう先は―――だ)
?ちゃんと喋って。よく聞き取れなかった
なんだろう、またおかしいことを周りは言っている。
世の中の大戦を止める?世界を救う?
世界を救うためだというのなら、なぜ私は世界を焼き尽くしている?
あ、母さん。あの、この人たちすごい変なこと言ってるんだけど。……?なのはさんにフェイトさん、スバルさん、ティアナさんにエリオなんかも来てる。珍しい。
それに戦ってきたのか乗り込んできたのか所々怪我をしている。
え?私を助けに来た?
どういうこと?
あ、近寄ってくる
―――――駄目だ、こっちに来ちゃだめだ!
きたら、私は―――――
「ダメッ!」
……夢?ああ、よかった。
『マスター。大丈夫ですか?』
「ユタさん……」
「あ、あー。うん。寝起きとしては、さいっっあく。もう大丈夫。心配かけたね。アインハルトも、大丈夫だから。
……ああ、また夢で、良かった」
プライド曰く、小一時間ほど
ずっと呼びかけていてやっと起きたとのこと。
「ああ、本当に、よかった。誰も、殺してなんかない、よね」
『当たり前でしょう。マスターに人は殺せるわけがありません。何より、マスターが悪意を持って傷つけようとした場合、私めが全力を持って邪魔させて頂きます』
今となってはプライドの憎まれ口でとても安心できる。
「アインハルト、私の両腕、ちゃんとついてる、よね」
「はい。しっかりとついています。両腕共に」
「そう……よかった。
……ごめん、ちょっと外の空気に当たってくる。すぐ、戻ってくるから。プライド、預かっててくれる?」
「え?あ、は、はい」
眼帯をつけてフードを深く被って外に出た。
「プライドさん、ユタさんは……ー
『まあ……別に口止めされていないので構わないでしょう。
マスターは最近魘される事が頻繁に起こっています』
「内容を聞いても……よろしいでしょうか」
『私が聞いたものは、曰く自身の体から両腕がなくなって義手がついている、曰くゆりかご、というものに乗せられ周りを焼き尽くしている、家族も、友達も、何もかも。そのような内容が多いらしいです』
「……いつからですか?」
『私の記録に間違いがなければアインハルトさんと
「わかりました、ありがとうございます。……すいません、ユタさんを追いかけさせてもらっても?」
『どうぞ。ああ、ついでです。私も連れて行ってください』
「承知しました」
『但し私は隠し持っていてください。……あまり言いたくない言葉を選びますが、覇王の血を受け継ぐ貴女になら、アインハルトさんにならきっと話してくれると思います。ですが、私がいるのがわかったら気を使って話してくれないと思いますので』
「わかりました」
「最近多いなぁ。……多分、私のオリジナル……オリヴィエの記憶、なんだろうね。あーにしても夢とはいえ嫌な感触なこって」
外の冷たい風に当たるも頭痛なんかは一向に治る気配はない。
思いっきり頭をぶつけて記憶喪失になれば治るのだろうか。
んなこと出来ないだろうけども。
寝っ転がって休んでいると足音が聞こえてくる。
……アインハルトだろうね。
「ユタさん!」
はい当たり。
「アインハルト。どしたのそんな慌てて」
「ユタさんが心配で追いかけてきました」
「私はもう大丈夫だよ。外の風に当たってだいぶ楽になったから」
「それは良かったです。あとはユタさんが見た夢について聞きたいことが」
「夢については話すつもりはないよ?」
即答で返すと少しだがムッとした顔になった。
「……なぜですか?」
「アインハルトには関係ないよ」
「関係あります!ユタさんが見てるものはおそらく聖王オリヴィエの記憶の一部です」
「だろうね。今アインハルトの口から聞けて改めて納得したよ」
「……わかっていたのですか?」
「なんとなくは、ね」
「ユタさん。私にも覇王イングヴァルトの記憶があるんです。なので、ユタさんのお役に立てるかもしれません。それに……ユタさんがそのような夢を見るようになったのは私と戦った日からと聞いています。それなら私に責任が……」
「あー、アインハルト。そういう理由じゃないんだよ。別にアインハルトが原因だろうがなんだろうが、私にとっちゃどうでもいい、些細なことなんだよ」
「では、どういう理由で?」
「アインハルトに夢の内容を伝えると、もしかしたら秘密にしてくれるかもしれない。でもそれすら私にとっては嫌なんだ。私自身のことで他の人に迷惑をかけたくない。
……私はね、できることなら誰にも迷惑をかけたくないんだ。それこそ母さん達には昔に散々迷惑かけちゃってるし。
私は、周りのみんなに迷惑をかけたくないし心配させたくない。苦しいことはなるべく自分以外の人に背負わせたくない。それが自分のことだというのなら尚更。ただそれだけ。これは私の問題。だから周りには言わない」
「………貴女の愛機であるプライドさんやあなたのお母様達にも、言わないのですか?」
「うん、そうだよ。元より私自身の出生がどうのこうのとか、聖王のクローンだとか、心底どうでもいいからね。そんなことで母さん達に心配をかけたくない。……だから、これは私自身の問題なんだ。私が自分で解決すべき問題
さ、そろそろ戻ろう。寒くなってきた」
「はい……」
確かに感じある明らかな拒絶。
私は自らの勝手な都合でこの人を巻き込んでしまった。そのせいで今、精神的にとはいえ苦痛を負っている。
では私にできることは?
ここまでの明らかな拒絶をされたにも関わらず、この人の奥底へ、聖王オリヴィエのことへ踏み込んで良いのだろうか。
そもそもこの人は普通に生きていた、それだけに過ぎないのに私が無理やり引き摺り込んだようなものなのに。
そんな人に深く関わる、助けになるように動く?
そんな資格が、私にあるのだろうか。