『マスター。ではリハビリを開始します』
「あいよー」
部屋に戻り、プライドがいつもリハビリに使ってる映像を投影してもらう。
ready?の文字が浮かび上がり、目をよーく解してから集中力を高める。
格好?暑いから上下ともに下着ですよ。上はシャツもきてるけど。
「いつでもどーぞ」
『では開始します』
コンコン
「ユタさん、きました」
「あいよー。はいっていいよー」
「お邪魔します」
と、コロナちゃんが入ってくる。けどまだリハビリしてるからもう少し待ってもらうんだけど。
「もう少しだけ待ってて、これ終わるまで」
「はい、わかりました」
「……はい、出来た」
『結果を出しますので少しお待ちを……87%です。前回から4%アップです。全盛期ほどではないとは言え、かなり良くなりましたね』
「そうねぇ。でもやっぱり違和感あるかな」
『それは左右での視力の差が原因かと』
「それと、どうせやるなら100%にしたいよね」
『鍛えればいけるんじゃないんです?』
ま、それは頑張るとして。
「コロナちゃん、お待たせ。ま、とりあえず座って座って」
コロナちゃんを促して、横に座ってもらう。
「で、お願いって?」
「ユタさん。……私を、鍛えてくれませんか?」
「というと?私悪いけど、コーチ経験皆無だよ。それに、コロナちゃんには私以上にしっかりしたコーチいるでしょ?ノーヴェさんが」
「それは分かっています。でも……。…少しだけ私のことを、お話ししても?」
「うん。どうぞ」
「……私、2年前のインターミドルを見たときからずっとユタさんに憧れていたんです。だから、その時に大怪我を負ってしまったのも知ってます。去年丸々、どの試合でも見れなくなって。私、ユタさんの都市本戦をみてから、ユタさんみたいになりたいって思ってたんです。そんな中、練習で一緒になれたり合宿でもご一緒できるって知って」
「んーと、コロナちゃん。私のスタイルを知ってるの?戦績なんかも。都市本戦まで見てたってことは、知ってるんだろうけども」
「はい、近距離戦では決して自分からは仕掛けない超カウンター型。魔法戦では影を主体に、リフレクトと吸収放射を使いこなして相手の攻撃を利用して戦うスタイル。戦績もライフ0にして勝った数より判定勝ちの方が多い」
「そうだね。そこまで知ってて私に憧れる?世間では真正面から勝てない相手を見切って逃げまくっている弱虫だ、なんて叩かれたこともあるのに」
当時の私は一戦一戦に全力掛けててそんな評判聞いてる暇なかったけど。
「私、ゴーレムや反射、影なんかを駆使して格上の相手と逃げながらでも渡り合えることって凄いことだと思いますよ。私なんかが上位選手とやったらそんなことできませんもん」
………あー、ダメ。こういう風にマジな顔で言われると照れる。
「それで、私。リオやヴィヴィオより色々なものが劣っているってわかってるんです。ただ少し特別な魔法が使えるっていうだけで」
「コロナちゃん、それでいうなら私も少し特別な魔法が使えるっていうだけだよ」
「ですが」
反論しようとするコロナちゃんを一度制して、あらためて自分の口で言う。
「それに、才能の話でいうなら今この合宿にいるメンバーの中で私が一番劣ってる」
「え?」
『マスター?その話はしてもいいんです?話したくないみたいなことを言ってませんでしたっけ?』
「いつ言ったっけそれ。覚えてないからいいや。細かいことは気にしない
コロナちゃんはなんで私が格闘戦と魔法戦でカウンター型を極めようとしたかわかる?」
「ええと…」
コロナちゃんは口ごもる。
「答えは私が
というとプライドも諦めたようにため息を出しコロナちゃんも驚いた顔をする。
「コロナちゃんから見て私ってどんな人に見えた?」
「わ、私は、ユタさんは11歳でインターミドルの都市本戦に出場なさいましたし試合を見た限りでも相手のペースに持ち込ませなかったり相手の攻撃を利用して戦っているからとても魔法戦技の才能のある人だなと。カウンターや反射、吸収放射を実戦で使うのって、練習をすごく積まないとできないと思いますし」
「うん。まずそもそもの前提が違うね。
私が試合でカウンターを駆使するのは私にカウンター技術の才能があるからじゃない。
……わたしもコロナちゃんみたいに憧れてる人達はいてね。特に私の師匠達って死ぬほど強くて、高すぎる壁で、高すぎる憧れなの。
それに私がインターミドルでずっと目標にしてた人も、真正面から全てを潰しに行くような人だった。……そんな戦い方をしたかった。
だけど、私はいくら鍛えても打撃力がつかなかった。筋肉がつかなかった……のほうが正しいかな。
いくら鍛えてストライクアーツの型を身につけて打っても、同世代どころか年下の子にすら負けてね。
それに師匠達からも無理だって断言されちゃったから、諦めざるを得なかった。
そこでまず、ストライクアーツではカウンター型の一択になった。私は生まれつきなのかわかんないけど筋力なんかがとてもつきづらかった。年下の子にすら打撃力負けてて、嘆いた記憶があるなぁ。
だから攻撃しても相手には大したダメージにならない。相手にペースを渡さないようにするのは、そうしないと私は後手に回ってしまうから。私はパワーでなんとかする、みたいな方法は取れないから。それに筋力がつきにくい関係上、とても打たれ弱いからね」
「でも、ユタさんは今日のチーム戦で私に」
「ああ、1戦目のやつ?コロナちゃんならどんな魔法かわかってる気がしてたんだけどな。まあ話は戻りまして。
カウンターを極めたからといって結局は拳の強さが関わってくる。私はそう考えた。けど私にはその肝心な拳自体の強さがない。スピード、威力はカウンターの性質上相手からもらえるけれど、ただの拳だと決定打にはなりにくい。さて、こんな時コロナちゃんならどうする?」
「私は……腕を固くします」
「うん、私と一緒。私もね、同じ結論に達したんだよ。で、考えたのがコレ」
陰で家の外から一つの石を持ってきて、コロナちゃんに示す。
この魔法に関しては説明するより一度見せたほうが早いからね
石に対して魔法を使い、手が初戦の時と同じように、全体的に黒くなる。
「これを受けたコロナちゃんはどういったものだと思った?」
「え?うーんと、ものすごい硬い石…みたいな」
「うん、半分正解。ものすごい硬い、はあってるけど石じゃない。……いや、石だっけアレ」
『金剛石だから石では?』
「あ、なら正解か」
「え?金剛……え?それって……」
「あ、気づいた?まず大前提として炭素っていう物質を構成する元素があってね。この炭素同士の繋がりを変えることで鉛筆の芯からダイヤモンド並みの硬さまで変化させることができる。
そして、ダイヤモンド並みの硬さにしたものを纏えばそれは鉄壁の鎧かつ硬い武具にもなる」
『マスター、そんなに秘密をベラベラと喋っていいんですか?』
「いーの、コロナちゃんめちゃくちゃ真剣に聞いてくれてるし」
今なんかもブランゼルに録音しながらもしっかりと聞いてくれてる。
「でも、それなら全身を覆ってしまえばいいんじゃないんですか?」
「私も最初はそう思ったんだけど。コレねぇ、意外と使い勝手が悪い上に魔力の燃費が悪いんだよね。一試合に一回纏う程度に留めなきゃいけないの」
多分、これで大方私のことは話したよね?あー、疲れた。
閑話休題
「それで、話がそれたけど改めてコロナちゃんが私にお願いしたいことを、教えてほしいな」
「あ、はい。私……ユタさんにノーヴェ師匠とは別で特訓をつけて欲しいんです。ユタさんみたいに強くなりたくて…」
私が強い、ねぇ。それに関しては異議あるけど、まあ答え自体は決まっている。
「いいよ」
『いいんですかい』
「そうですよね……ダメに決まって……って、へ?」
プライド、いつもの冷静なツッコミはどこに行ったの?口調が変になってるよ。
「けど、条件がある」
「条件?」
「それは……」
【合宿三日目】
「あーー、眠い」
『あれだけ寝たのにまだ眠いんですか』
しょーがない。寝すぎて眠いってやつだよ、プライドさん。本能みたいなものだ。
コロナちゃんはもうすでに起きているようでベットには私1人だった。
今現在はカルナージの時間で8時半。
今日の合宿の予定は………
「ユター?起きてるー?八神司令と連絡ついたからお願いー」
「はいー、今行きますー」
いまからアインハルトのデバイスの交渉と昼からはアインハルトと試合。
さて、多分今回の合宿で一番疲れるぞ。気を引き締めないと。特に母さんとの交渉は。
『変なところで覚悟を決めないでください。馬鹿馬鹿しいので。まあ同情はできますが』
「同情してくれるだけありがたい」
と、私は部屋を出た。
私は、覚悟を決めるとルーさんやアインハルトのいる部屋まで来た。
「ルーさん、きたよー」
「お、きたきた。いまから八神さんと通信するから何かあったら頼むわね。ユタ」
……まあそれくらいは別にいいんだけど。
問題は余計なことを喋られないかどうか。
絶対何か爆弾投下してくる。
そんな自信がある。
「(八神司令…一体どんな方なんだろう。数々の事件を解決してきた歴戦の勇士っていうし、やっぱり怖い方なのかな…)」
アインハルトを見るとなぜか緊張している。
「あー、アインハルト?緊張するだけ無駄だよ。リラックスリラックス。あとお願いがある」
「なんですか?」
「私が冷静さを欠いたと思ったら遠慮なくぶっ叩いて」
「へ?」
よし、保険は用意できた。
『あ、オーッス。ルールー。ユタ』
「おいーっす。アギト」「んちゃーアギト」
『デバイスの件だよな?ちょっと待ってて』
と、赤髪の男の子っぽい口調のアギトさんが出てきた。そして母さんを呼びに行った。
そして、映ってきたのは
「たぬ……たぬき……?」
たぬきの仮面をかぶった人だった。アインハルトもポカーンとしている。
「あ!母さんがとうとうたぬきになった!みんなに狸って言われてたからとうとうなっちゃったか!」
『アホ!まだなる気はないわ!まだ狸になる前にアンタの親を卒業せないかんわ!』
「まだ⁉︎てことは狸って自覚はあるんだね⁉︎認めたな!言質とったからね!」
『うっさいわ!』
スパン!
「ユター、話が進まないから少し黙って」
「痛っっっ、はい。ごめんなさい。アインハルト、手加減なさすぎ…」
『それはそうとー』
と、画面の母さんが狸のお面を取りながら。
『ユタはもうエリオに告ったんか?』
「なにサラッととんでもないこと言ってんの!!!!!」
案の定爆弾落としてきた。
しかもよりによって……
「え?」「ユタってエリオのこと好きだったの……?」
まっずい話を変えないと……。
「いや、あのー」
『そうやでー。2年前のインターミドルも都市本戦で優勝したらエリオに告白するーって張り切ってたもんなぁ』
「だーかーらーー!!!人の秘密ばらすな!てか何で知ってんの⁉︎」
『決勝で負けた時もなにが一番悔しかったかって言ったらエリオの前で無様に負けたことを一番悔やんで泣いてたもんなぁ』
「だからなんでしってんの⁉︎」
『言っとくけどウチだけじゃなくてなのはちゃんやフェイトちゃんも知ってるからなー。あとはシグナムやシャマルも。エリオは知らんけどなー』
「なぜに⁉︎言いふらしたでしょ!」
『してへんわ!2年前のあんたほどわかりやすい奴はおらんかったわ!それよりはよ告りーや。そしたらウチも安心できるんやから』
「年齢=独身歴の人に心配されたくはないね!母さんこそ早くいい人見つけたら⁉︎見つけれるならだけど!」
『いま言うてはならんことを言ったな!帰ったら覚えときーや!』
ガン!
あれー?なんか目の前に星が浮かんできた……
ドサッ
『……アインハルトさん、容赦ないですね』
「え?ユタさんがこうしろと」
最後にプライドとアインハルトの話し声がかすかに聞こえてきて意識が途切れた。
『よし、ユタは黙らせてもらったことやし。改めてルールー。お久しぶりやー』
「八神司令、お久しぶりです。今日はお休みなんですねえ」
『そーなんよー』
「(この方が……)」
「あ、それで今日はですね、この子の」
『あー聞いてるよ。覇王イングヴァルト陛下の正統血統ハイディ・E・Sイングヴァルト。格闘戦技【覇王流】を継承してて。ちょっとやんちゃもしてたけど今はノーヴェ師匠やヴィヴィオ達と一緒に魔法戦技に一生懸命。真面目で一生懸命なええ子やって。そんな子にならいくらでも協力するよー」
「ありがとうございます!」
と、アインハルトが頭をさげる。
『公式魔法戦用のデバイスやったっけ?どんなのがいいか決まってる?』
「あ、はい…!」
『装着型とか武器型とか』『なんでも相談にのるよー』
と、はやてさんの横からアギトにリインも映ってくる。
「えと…格闘戦技だけで戦いたいので武器型ではない方が…」
『そーかー。格闘家さんやもんねー。ほんなら体の動きを阻害するような装着型も良くないかなー。スバルのナックルやキャリバーも、あれなんだかんだでめっちゃ重いしなー』『そうなんですよねぇー』
「ですから、その、この子達のように補助・制御型の方がいいなと」
と、アインハルトはクリスやプライドを持って示す。
『なるほどなー。ほんならクリスやプライドの性能をベースに
『そやねー。ほんならアインハルト』
「はいっ」
『覇王の愛機。まずは軽く取り掛かってみるな。八神はやてとリイン&アギトがノリノリで組んであげよ』
『『お任せだ!(です!)』』
「ありがとうございます!」
『まあ詳しい話も聞きたいから合宿が終わったら、ユタあたりに一度ウチに遊びにでもきてな。特にウチのユタに勝ったこととか聞きたいしなー』
「え?あ、いや、その……あれは……」
『そやけど合宿ええなー。ウチらもまた行きたいなー』
「またいつでもいらしてくださいー」
〜八神家〜
「しかし、インターミドルか。もうそんな時期なんだな」
「五月も終わりだぜ。そんな時期だよ」
「ウチの近所からも出る子達いるよなー?」
「ザフィーラの教え子達ですね。何人か出るそうですよ」
リビングにはシグナム、ヴィータ、シャマルがおり、そこにはやてとリインとアギトも戻ってきて一気に賑わってくる。
「みんないつも頑張ってるけど……ヴィヴィオたちやユタのライバルになりそうな子いたりする?」
「ああ、いますよ」
「結構凄いのが1人いる」
「あ、わかった。ミウラやろ?」
「正解!」
「ザフィーラはもちろん、シグナムやヴィータともちょくちょく練習試合してるもんなー。しかも優しく教えてもらってるし。ユタが嫉妬しそうやけど。私ももう少し優しくしてー!って」
「ユタの場合は仕方ないです。あのスタイルをやると決めた以上、生半可な練習じゃダメですから」
「一応、アレもユタのことを思っての厳しさやからねー。シグナムってなんだかんだユタのこと大好きやから、ウチと同じくらいユタのこと裏で可愛がってるもんなー。けどツンデレいうもんなんかな。シグナムみたいなのは」
「そ、そんなことは…ないと思います」