〜八神家〜
ユタはインターミドルの出場通知枠が届き、それを報告するために八神家まで来ていた。
「で、シードは貰えてたんか?」
「うん、地区予選8組第3シード。同じ組みの中では……私のやったことのある選手はほぼいないね」
「そうかー。よかったなぁ。一昨年はいきなりダールグリュン選手と予選で当たってたからなぁ」
「あの時は本当にクジ運悪かったからねえ」
私の予選は8組 今の所目立って突出した選手はいないけど、油断はできない。
一昨年の組み合わせは今でこそ笑いの種にできるけれど当時の私は絶望してたっけ。懐かしい。
「ま、どちらにしろやることは変わらないよ。八神家の一人娘としてやれるだけやってきますとも」
「おーそのイキや!がんばりー」
「もちろんですとも」
〜二週間後〜
『マスター。生きてます?』
「ま、まだ辛うじて…」
辛い。予想以上に辛い。
ミッドに帰ってきて次の日にノーヴェさんにリストバンド4つ送られてきたんだが……これをつけるとあら不思議。
めちゃ体重くなり魔法も使いにくくなりました。
正確には魔力の運用がしにくくなった。
なんでも魔力負荷をかけるリストバンドだとか。
出力マックスで四個つけろとのこと。
それで本気のスパーや寝るとき以外はつけたらと言われてその通りにしてるが…
「これでシグナム姉さんとの練習を普段通りのノルマをこなさないといけないんだから余計辛い…」
『一応、治癒促進の魔法はかけてますが…疲れてるのは魔法の無理な酷使のせいなので。あまり効き目がないんですよ。なので今まで以上にしっかりと休んでください』
「はーい」
さて、授業も終わってるし…さっさと家に帰りましょうかね。
シグナム姉さんとの特訓かぁ、さてはて生きて明日を迎えれるかなぁ。
〜八神家〜
「ふぅ……なんだかんだこの体の重さにも慣れてきたかな?」
『きっしょいですね』
「おおう、ど直球な罵倒」
『たった1日で慣れるマスターへは妥当かと』
いや、半日も付ければ慣れるでしょうが。
それと魔力の運用方法を少し変えたからかもね。
「ただーいまー」
「お帰り」
家に入ると聞こえてくる声が一つ。
「ただいまシグナム姉さん、少し休憩したら特訓お願い〜」
「それなんだがなミウラも来ることになったから少しだけ予定を遅らせるつもりだ。風呂にでも入って汗を流してこい。どうせリストバンドをつけた状態でランニングしながら帰ってきたんだろう?」
「ピンポンピンポン。大正解です。それで体が慣れてきたって言ったらプライドからどストレートにきっしょって言われたけど」
『当たり前でしょうが。私はマスターよりも人並みな感性を持っていますから』
「私の感性が狂ってるみたいな言い方やめてくださいませんかプライドさん」
『遠慮します』
「なんでよ⁉︎」
プライドとある意味いつも通りの口論をしていると不意に笑い声が聞こえた。声の主はと言うとまさかのシグナム姉さんだった。
「ふふっ。相変わらず仲がいいな」
「どこが⁉︎」『何処がでしょう?』
「そういうところさ。ほら、早く入ってこい」
「はーい」
シグナム姉さんの座っていた机にプライドを置いて自分の部屋に授業道具を放り込みお風呂へ突撃した。
『ん?シグナムさん。このいかにもプレゼントです的な二つの箱はどうされました?』
「今答えを言っているじゃないか。プレゼントだよ」
『ふむ?今日は何か特別な日でしたでしょうか?』
「特にそういう訳ではないな」
プライドめ、わかっていながら聞いてるな?
見た目の禍々しさからは想像もつかないようなおちゃらけた声でユタが気づかなかった二つの箱について執拗に聞いてくる。
「察しの通りだよ。これはユタの復帰祝いだ。満足か?」
『いえいえ。そんな我がマスターの師をおちょくって満足するなんてそんな。マスターは愛されてるなぁ。シグナムさんもマスターのこと大好きなんだなぁ、としみじみ思っておりますが』
「今直ぐ叩き切ろうか」
『ほんっとマジですいませんでしたおやめくださいシグナム様』
「ふっ、冗談だ」
『冗談に聞こえませんでしたよ』
本気で言ったのだから当たり前だろう、とは言わずにプライドの文句を右から左に流す。そこでふと思い出した事をプライドに伝える。
「そういえばプライド。『雷帝』殿が来ていたぞ」
『ヴィクトーリア様が?それはまたなぜ』
「さあな。ユタにも伝えておいてくれ。雷帝殿の自宅に時間がある時に来てくれと言っていたと」
『畏まりました。そういえば今年のインターミドルのセコンドはどうされるので?聞いたところによるとミウラさんも出られるのですよね?』
「ザフィーラ、ヴィータ、シャマルがミウラにつくことになっている。仕事の都合で3人揃わない時もあるだろうが、問題ないだろう。ユタには主はやてと私がつくさ」
ああ、そうだ。2年前のような過ちは決して犯さない。
次こそはユタの家族としての役目を全うする。
『……シグナムさん。いえ、シグナム様』
「ん?」
『もしかしてですが、2年前のことをお考えになられてませんでしたか?』
「……!」
プライドに心境を言い当てられ、思わず息を呑んでしまう。
顔にでも出ていたのだろうか。
『アレに関しては誰も悪くありません。強いていうのなら予測出来ていなかったマスターが悪い、ですけども。そもそもあんな土壇場で出してくる技が
「だが、それでも止める判断は下せた。現にヴィータは止めようとしていた。だが私がそれを制した。その結果があの惨事を引き起こしたと言っても過言じゃない。
もちろん決勝の相手の様子がおかしくなったのはわかっていた。しかし、それでもタカを括っていたんだ私は。
私たちが育ててきたユタならばきっと大丈夫だ、と」
『ですがそんな幻想はすぐさま打ち砕かれた、と』
こういう時に何の遠慮もなしに言ってくるプライドの性格には少しばかり助けられるな、何て思いながら再度口を開く。
「『彼女』のセコンドについていたご友人がいなければユタは最悪の結末を迎えていた可能性だってあっただろうな。
本当ならユタに師匠と思われることすら烏滸がましいとさえ思うよ。
愛弟子の危険を察知できないで何が師匠か」
『……そう、ですか。しかし、一つだけ言わせてください』
「?」
『マスターはシグナム様をずっと信用しておられます。あの時も、療養中の時も、……もちろん、今も。あなたはマスターにとって家族以上に
「……ああ。わかっているさ。だからこその戒めさ。っと、ユタのやつ相変わらずの早風呂だな」
『全くです。一応生物学上は女の子なんですから、もう少ししっかりと入ればいいものを』
「プライド、わかっていると思うが先の話は」
『ええ。他言無用ですね。この借りはまた後日マスターの秘蔵ファイルとやらを見せていただくことで帳消しとさせていただきましょう』
「はは。そうだな。とっておきを見せてやる。にしてもプライドは相変わらず感情豊かだな。本当にデバイスなのか、中に人が入ってるんじゃないかと疑いたくなる」
『何処ぞのお人好しな大家族の方々にそういうふうに作られたのでね』
「そうだったな」
風呂の方からバタバタと物音がして私もプライドも暗黙の了解とばかりに話題を切り替える。別に聞かれてまずい訳ではないが、復帰に意気込んでいるユタに聞かせるべきではない。
それと同時に呼び鈴が鳴りミウラが来たのがわかった。
「それじゃあ私はミウラを迎えに行ってくる。プライドはユタにストレッチを十分して砂浜へ来いと伝えておいてくれ」
『承知しました』
「あり?シグナム姉さんは?」
『ミウラさんをお迎えに行きました。適度に体を慣らした後砂浜へ行くように、と言伝を預かっております』
「はーい。……死にたくないから念入りにやっとこう」
『どうせ吐くまでやるんですから乙女として死ぬのは変わらないでしょうに』
「どっちにしろ死ぬのは確定なのやめよう?」
その後、結局吐いた。
そろそろお嫁に行けないかもしれない
ミウラにはめちゃくちゃ優しくしてたのに。解せぬ。
次の日
〜ミッドチルダ南部 抜刀術天瞳流 第4道場〜
「……ノーヴェさん。なんでミカヤさんとのスパーリングを組めたの……?」
『人脈広いですねぇ」
「え、そんなに凄い方なんですか?」
「うん、居合抜刀の師範代をやってるし。ミッドチルダじゃミカヤさんくらいの居合剣士はそうそういないと思う」
私とアインハルトは今ミカヤさんの道場に来ていた。
母さん達がみんな仕事だったため予定が空いているのでOKして来てみるとまさかのミカヤさんのところ。先にも言った通り居合抜刀の師範代でめっっっちゃ強い。戦ったことはないけど研究だけはしてたからよく知ってる。
「……時にアインハルト」
「何でしょうか?」
「その肩の猫は?」
「ティオです」
「愛猫?」
「私のデバイスです」
「…デバイス」
「デバイスです」
「母さんたちお茶目がすぎない?」
「ですが機能は折り紙付きです」
『お茶目に関してはマスターもあまり人のこと言えないでしょう』
「それもそうか」
こんなのがいいって画像見せたらノッリノリでプライド作ってくれたから感謝しかないけど。まさかの猫とは。
「ま、待たせちゃ悪いし早く入ろうか」
「はい。そうですね」
「失礼しまーー」
「天瞳流抜刀居合。水月」
「へ?」「ユタさん!前隠してください!」
は?え?待て待て。今どうなったの?
恐る恐る下を見下ろしてみると………
綺麗に服だけ切られて色々と丸見えだった。
「ぎゃあああ!なにするんですか!」
「いやいや。ナカジマちゃんにユタには初対面で恐ろしさを伝えておけと言われていたのでね」
「ノーヴェサンッッ⁉︎私何かしましたか⁉︎」
『色々としておりますね』
解せぬ。
「はぁ…まさかこんなところに来て服を剥がれるとは…」
「あっはっは」
「…何か言うことは無いんですか?ミカヤさん」
「…………。眼福、だったねえ?」
「なぜ疑問形⁉︎」
「あのー練習をしたいのですが」
と、私とミカヤさんとのショートコントみたいなものはアインハルトの一言で終わりを告げた。
「おお、すまないね。では、改めてユタちゃん。アインハルト。練習相手にご指名頂いて光栄に思うよ。ただ私も出場選手だからね。あまり手加減はしてあげられないよ」
「構いません。コーチからは【斬撃の怖さを体感してこい】と言われています」
「私はミカヤさんみたいな剣士タイプと近距離での対策をするために来ましたー」
「ふむ。ナカジマちゃんから聞いた話ではアインハルトは
「その通りです」
「で、ユタちゃんは……近距離に接近された時の対策を。そのかわり、私は魔法に対する対策を、ということかな?」
「その通り。大正解です」
「それじゃあ、時間もあまり無いし始めようか。アインハルトからだね」
「よろしくお願いします。お役に立てるよう頑張ります」
「怖いな、瞳がそうは言ってないぞ。殴り倒す気満々じゃ無いか」
「お見せしますーー覇王流の斬撃対策。行きますよ。ティオ」『にゃっ!』
しばらくのほほーんとした感じで進めていきます(願望
vividを書くにあたってその前の話とか読んでみようと思った結果全部読んでました
アホですね
でも面白かった(
それでは読んでくださりありがとうございます
感想や評価などをいただけると嬉しいです