「ん?特に無いよ。というか把握してるでしょプライドは」
『ああそういえばそうでした。ならばちょうど良かったです。ノーヴェさん達にお呼ばれしているので学校が終わり次第練習場へお向かい下さい』
「ノーヴェさんが?わかった。終わったらすぐ向かうって連絡入れておいて」
『承知しました』
「一体何がどうなっていらっしゃるんでしょうか」
『私から皆様宛にメールしたからですね』
「いや薄々勘付いてたけど犯人プライドかい!」
今この上映会にいるのは私、ヴィヴィオちゃんコロナちゃんリオちゃんのトリオにノーヴェさん。そしてアインハルトにミウラ。イェーイ12歳以下大集合〜ってアホかい。
「一応聞こう。プライドから来たメールにはなんて?」
「一昨年のユタさんとジークリンデさんの決勝ビデオを、しかもセコンド視点から見せてくれるって」
「よーしプライド。あとで話し合おうか」
『謹んでご遠慮いたします』
先に言っておこう。
私は縛られているので拒否権はもう無いです。
なんでこうなってるかって?私もわからない。
「なんでよりにもよって自分がボロカスにされてるのをもう一回、しかもみんなと一緒に見なくちゃいけないの…」
『どうせ見るんですから、それならばついでにジークさんと戦う可能性のある方々に見せておいた方が様々な面からの助力を得られると思いまして。あとは単純にマスターのそういう姿が見たくて』
「ぶった斬ってやる」
影を駆使して叩っ斬ろうにも魔力錠とかいうやつのせいで魔力練れないんですけどね。
ソレはそうとして一度ぶった斬る。
「嫌だね。見るなら1人で見る!てかそもそも大勢で見ても私がボロ雑巾にされる姿が…」
「「「だめ…ですか?」」」
「うぐっ」
『おーっとここで初等科トリオの素晴らしい上目遣いがマスターへクリティカルヒット。マスターの心が凄絶に砕ける音が聞こえましたグッジョブ3人です』
「プライド、お前本当感情豊かだな」
『お人よしな大家族にそう作られていますので』
ちなみに私のHPはもうマイナスです。
もういいよ。どうせ知られるくらいなら見てやろうじゃない。
「それじゃあ、開始するぞ?」
「「「はーい!」」」「「よろしくお願いします!」」
「もう好きにして……」
〜2年前 インターミドル都市本戦決勝前日〜
「それでは、ユタ選手。初出場で決勝戦進出おめでとうございます!今のお気持ちは?」
「え、えーと。正直ここまで勝ちあがれるとは思ってもいなくて嬉しいです。決勝戦も悔いの残らないよう全力でジークリンデ選手を……私の憧れた選手を倒したいと思っています」
ユタは記者達にインタビューを受けていた。
それに緊張しながらもしっかりと答えていた。
「それに……私を家族だと迎え入れてくれた人や……大切な人に喜んでもらいたいので………明日は絶対に私が勝ちます」
「おおー!言い切りましたねえ!かっこいいですよー!それではインタビューありがとうございました!」
「い、いえいえ」
「だぇぁぁ!なんでこのシーンからあるの⁉︎」
『私が入れました』
「私が育てましたみたいに言わないでくれる?」
別の場所ではジークリンデもまたインタビューを受けていた。
「ジークリンデ選手、最後に明日への意気込みをお願いします」
「は、はいっ。えーと、ユタ選手はとてもすごい選手やと思っています。みんなは判定勝ちやと面白くないと思ってる人もいるみたいですが……ウチはKO勝利より判定勝ちを狙う方がすごいと思っています。それにユタ選手は何より試合の組み立てがうまいです。…………なので、明日は開幕から全力で、ユタ選手を倒したいと思っています」
「はい、ありがとうございます!いい記事が書けそうです!」
『だ、そうですよ。マスター』
「うう…ジークさん。そんな真面目なコメントを……私そんなすごくないのに…」
「なに言っとんやー。あれだけ勝ち進んでるんや。すごいよ。ユタは。しっかりと胸を張りいや」
「う、うん。シグナム姉さんにも、母さんにも、ザフィーラにも、……もちろんプライドにも教えてもらったことを明日は今までの試合以上に出し切ってみせる」
『はい、その意気です』
「明日はうんと応援するからなー!」
「うん、ありがとう。母さん。プライド」
決勝戦前日の八神家は親子水入らずの状態になっていた。
なんでも周りが気を利かせてくれたんだとか。
このときは誰も【あの事故】が起こるとは思ってもいなかった。
〜決勝戦 当日 第一会場〜
控え室にはユタ、セコンドとしてはやて、シグナムの三人がいた。ザフィーラは観客としてみるのだそうでここにはいなかった。
「どうや?ユタ。準備はええか?」
「うん、バッチリ。それじゃあプライド。最後の確認と慣らしも含めてもう一回やらせて」
『はい、いつでもどうぞ』
「うん。……セットアップ」
と、光に包まれる。
その後にはセットアップした状態になっていた。
「ん…よし、
「はいよー。んじゃいくで?」
母さんの合図でいくつかの小さな魔力弾が撃ち込まれる。それをリフレクト、吸収放射を使って母さんに弾き返す。
「ん、こっちもよし」
『よかったです。それで本日の作戦は?』
「今までと大して変わらないよ。ジークさんを無理やりこっちの土俵に引きずり込んで影、リフレクト、吸収放射、カウンター、持てる全てを使うだけ。そのあとは状況に応じて考えていく。何かあれば随時伝えるよ」
『畏まりました』
時間が刻一刻と迫ってくる。途端に震えが出てくる。変な汗も。
そんな私を見かねたのか背中を思い切りバシンと叩きてきた人が1人。
「いっったいなぁ!なにすんの!」
「怖気付いてる愛弟子に喝を入れたのさ」
「もうちょっと加減してもらっていいですか⁉︎」
「だが断る」
「断らないでくれません⁉︎」
ショートコントにしか見えないやり取りをすることでユタとしても気分が少し軽くなる。
シグナムもそれを感じ取ったのか改めてユタへ向き直る。
「ユタ。一応確認しておくぞ。試合の時は…」
「うん。わかってる。自分を信じろ。だよね」
「わかってるならいい。私も全力でサポートしてやる。だからお前も全力を出しきれ」
「わかった」
コンコン
「八神ユタ選手、入場お願いします」
ジークリンデが会場に入ると同時、観客一気に沸く。まるで地震が起こってるような感じだ。
ユタも同じように入る。するとジークの時ほどではないが会場が沸く。
しかし、ジークもユタもお互いにそんなことは気にしてすらいなかった。
「正直、本当にここまでくるとは思ってなかったわ。今日はよろしくな。ユタ」
「こちらこそ、ジークさん。今日は胸を借りるつもりで全力で行きます」
「あははー。顔はそう言ってないでー。倒す気満々やな。………けどウチも同じや。今日の試合も、全力でやらせてもらうで」
「それではインターミドル 都市本戦決勝を行います。ライフは15000。お二人とも正々堂々と!」
「はい」「わかりました」
と、その言葉と同時にユタも、ジークも、構えを取る。
「それでは……試合開始っ!」
「鉄腕……解放!」
「プライド、腕硬化の準備だけはしておくから補助お願い」
『畏まりました』
試合開始直後、ジークは出し惜しみは無しとばかりに『鉄腕』を解放し両腕に籠手を装備する。
それを見てユタは大きく後ろへ下がる。ジークを近接へ近づけさせない為に。
「それじゃ、行くで。ユタ」
「ええ、どこからでもどうぞ」
ジークは足に思い切り力を込め、ユタへ肉薄する。
右フリックを繰り出すもユタは寸でのところで影の壁を出し、攻撃を防ぐ。
「(やっぱり『視え』てても対処が難しすぎる…今防げたのはラッキーだ)」
「ウチを前に考え事かー?ユタ」
「いえいえ、そんな不躾なことは…っ!」
影の壁を解きパンチをしてきた腕に影のバインドとして絡みつかせ再度ジークから距離を取ろうと試みる。が、そんなものは関係無しとばかりに絡みつかれた右腕ごとユタへ向かって振りかぶりバインドを引きちぎる。魔力収束砲と共に。
しかし顔目掛けて飛ばされた収束砲は僅かに頬を掠めたのみ。
だけどやられてばかりのユタではなく。
「爆!」
「⁉︎」
ジークがちょうど次の動きをしようとしたところでユタが叫ぶと、右腕に残存していた影がジークを巻き込んで爆発した。
「よし…
「やっぱり変に絡め手をやろうとするのは悪手か…なら当初の予定通り、近接戦で早めに決着をつけに…」
片や近づこうとし、片やそれをさせまいと迎撃する。ジークは影を的確に弾き、潰し、確実にユタへ肉薄していく。ユタはというと影での迎撃は得策ではないと判断したのかリングの中心から半径数メートルをひたすら動き回り、受け流し、カウンターを仕掛け続ける。
「こんの………ちょこまか動くなぁ!」
「そうする必要があるもので!せやっ!」
「くっ!」
と、ユタは動き回りながらもジークを寄せ付けないように必要最低限は影で攻撃をいなす。時折死角から影で攻撃するも鉄腕で防がれダメージは入っていない。
「…っ!ゲヴェイア・クーゲル!」
「?!(魔力弾を展開してきた…しかもかなり高密度。だけどそれなら……)」
「ファイアッ!」
「リフレクト!」
ジークが弾幕を打ち込むと同時、ユタは反射魔法を使う。
「いたた。まさかそうくるとはなぁ」
「げー、もう少しダメージ食らっててくださいよ』
ユタはすべての弾幕を跳ね返すのは無駄だと考えたのか致命傷にならない程度に反射をする。
ジークもそれは予想外だったのか反射された弾を何発か食らっていた。
【ライフ】
ユタ 15000→11500
ジークリンデ 15000→12500
クラッシュエミュレート 互いに無し
「プライド、残り時間はどれくらい?」
『2分半です。が、仕込みを考えるとなるとまともに戦えるのは1分程度が限度かと』
「おっけー。……流石に腕の魔法を構築して戦う暇はないか……このラウンドはとにかく仕込みに行く。サポートよろしく」
『どれで行きます?』
「秘密兵器アルファで』
『厨二病ですか?』
「うるさいなぁ!ほら、例のハコだよ!」
『承知しました』
「…?また何か企んでる顔してるな。けど関係ない。兎に角近距離戦に持ち込むだけや」
ジークがユタへ向かって駆ける。それを見てユタはリング中央を使うようにして逃げ回りながら所々で迎撃をしていく。そしてジークがまたユタを追いかける、の繰り返しとなった。ユタは目隠しも含めて足元を狙って攻撃していたが、試合時間が残り30秒を切ろうかと言う時、試合が動く。
「っ⁉︎いつの間に⁉︎」
「逃さへんでー。せやっ!」
「っ!」
ジークがいつの間にかユタの懐に入り込んでいた。恐らく土煙に紛れて移動をしていたんだろう。そのまま脚を掴まれ投げ飛ばされる。
「がっ!」
「まだまだ!」
「くっ……!」
そしてユタは関節技を脚に決められる。
誰もがユタの負けが頭によぎった。しかし当の本人ユタは不敵に笑う。
「……フフッ、ようやく、ようやく近くまで来ましたね」
「?なんや、負け惜しみか?」
「忘れてませんか?私の魔力の変換資質のこと。近接…は…私も望んでいたことなんです」
「はっ……!」
ユタの考えに気づいたジークは即座に関節技を外し離れようとする。
しかし一足遅くユタの近くから出て来た影がジークを切り裂く。
「痛たた……。ふうーー、なんとかなったぁーー」
『アホマスター。無茶しすぎです』
「うん、自覚してる。でも無茶しないとジークさんには勝てないのはわかってるでしょ?それよりクラッシュの回復ナイス」
『せめて一言言ってから無茶をして下さい』
「善処するよ」
「(侮ってるつもりはなかった。でも心のどこかで慢心してたってことやな。……何をしとるんやウチは!ユタにも失礼やろ!)」
【ライフ】
ユタ 11500→8000 ボディ蓄積ダメージ 27%
ジークリンデ 12500→9700 クラッシュエミュレート 右肩部及び両腕 裂傷多数
カンカンカン!
『第1ラウンド終了!』
「どうや?仕込みは終わったか?」
「うん、
「簡単じゃないか。足を止めてやれば良いだけだろう?なあユタ?」
「無茶言うなぁ…シグナム姉さんは。……まあ期待には答えてみせますよ」
『セコンドアウト』
【ライフ】
ユタ 8000→13000 ボディ蓄積ダメージ13%
ジークリンデ 9700→14500 クラッシュエミュレート 全回復
『第2ラウンド、始め!』
開始の合図と同時にジークはユタに向かって走る。
しかしユタはそれを見て少し下がっただけで逃げようとはしていない。
「(?なんかの作戦か?…まあわからんもんを考えてもしゃーない。とにかく、先手必勝や)」
「(逃げ回りながらじゃうまく仕掛けられない可能性がある。なら多少リスクを背負ってでも接近戦を仕掛けるしか…)」
と、近距離でのジークの【鉄腕】とユタの【影】の攻防が開始された。
「(キッツ…でもここまできた。あとは出来るだけわざとらしくない隙を作っていって…)」
ユタはジークを引きつけながらリングの中心に近づいていく。
「(よし、ここ!ここで耐えろ!)」
ユタは腹をくくり影での攻撃を激しくする。
切りつけたり、打撃攻撃をしたり、バリエーションが広くなっていった。
しかし、ジークは鉄腕や弾幕を駆使し影を防いでいた。
一瞬の瞬きすら憚られるほどの激しい攻防に観客は大きく沸く。
願わくばずっと見ていたいと、そう思っていただろう。
だけどジークの脳裏にあったのは、ユタの異質さ。今までの試合とは明らかに違うユタに警戒を跳ね上げていた。
同時に早めに決着をつけようと決め、動く。
「いまやっ!」
「!」
僅かな隙を見つけ、影を抜けて来たジークがユタに膝蹴りをする。完全に不意をつかれたことでふらついてしまったユタに絞め技を決め、一気に意識を断とうとした。
「ぐぐ………」
「はよ落ちた方が楽やで」
ユタへ警告するのは彼女故の優しさからか。本気でやれば意識なんてすぐに断てるのにそれをやらないのはユタの体を心配してからか。
だけどユタにとってはそれが反撃の狼煙になった。
「っ…勝った気に…なるのは早いですよ……寧ろ捕まえたのは…こっちです。ぐっ…
「っ⁉︎」
床からではなく、
「にが、すかぁ!」
「はぁっ!」
逃してはならないとジークは鉄腕による追撃を仕掛ける。
それを見てユタは影を使うでも逃げるでもなく、選んだのは迎撃。ジークの拳に右手を合わせ、パンチの威力を利用して回転する。同時に発動直前まで構築しておいた硬化魔法を展開し硬い拳によるカウンターをジークに決める。
「…っ!」
「まだ、まだ。
一気に流れを掴んだユタは今までリングに仕込んでた魔力を全部使うかの勢いでジークへ影魔法を仕掛けていく。
影でのバインドでジークを捕える事ができたのを確認し即座に次の魔法を発動させにかかる。
「やっと、やっと、できた。
「え⁉︎なんやこれ!」
ユタのカウンターにより
その箱の中は一筋の光すらない完全な闇だった。
「な、なんや⁉︎なんも見えへん!どこ行ったユタ!」
「一箇所に止まってると危ないですよーって、聞こえないか」
「⁉︎」
と、多分観客とかからはわからないが(というかわかったら怖いが)ジークは四方八方から影での攻撃を受けていた。
完全な闇ということもあり反応しきれておらず次第にライフが減って来ている。
ライフ
ユタ 13000→6200
クラッシュエミュレート ボディ蓄積ダメージ70%
ジークリンデ 14500→10000
クラッシュエミュレート 全身裂傷多数 脇腹強打撲
「ゲホッ、あとは、ゆっくりと」
「…………」
無論ユタとてこの程度でジークが終わるとは微塵も考えていない。更に確実にするために次の策を、と考えていた。が…
突然なんとも言い難い恐怖がユタを支配した。
「ガイ……・ク……」
闇の箱から何か聞こえてきたかと思うと爆発が巻き起こる。
「は………?」
と、次の瞬間にはジークを閉じ込めていた影は跡形もなく消えていた。
そして、そこに現れたのは
まるで機械のような冷たい瞳のジークリンデがいた。競技者というよりは、まるで暗殺者のような。それを見て今の今まで考えていた作戦を即座に放棄した。せざるを得なかった。
「(は?ちょっと待てちょっと待て。あれ、相当強度高く作ったよね?いやそんな事はどうでも良い。とにかく…)プライド!魔力を全部防御に回して!」
『承知しました!それとマスター、お気をつけて!あれは明らかに…』
「わかってる!早く!」
普段の冷静でおちゃらけていた筈のプライドですら焦った声になる。そんな2人を1人の破壊者が遮る。
「ガイスト・クヴァール」
「⁉︎」
ジークは突然ユタの目の前から消えた。
『マスター!後ろ!』
「えっ⁉︎がっ⁉︎」」
プライドの声により反応できて避けてはいたが……ソレが齎した結果はユタにとっては最悪の一言だった。
「…嘘ぉ、なにこの威力。初めて見た」
ジークの一撃は、ユタの硬化魔法のかかっている右腕ごと、リングを綺麗に削り取っていた。巻き込まれたのは右腕だけではあったが、それでもリング端まで吹き飛ばされてしまうほどの威力だった。
「……これマジでやばいやつだ。プライド、早く、クラッシュ、治して。流石に片腕だけじゃ…」
『違うんですマスター!
「はい?」
珍しく焦っているプライドの言葉と共にまたジークがユタに向かう。
ゾオッという悪寒が走りユタはとっさに身構える。がジークは四肢を攻撃して麻痺させられ、ユタは膝をついてしまう。
そして、また大きく振りかぶってユタに向かって…
「(え?ちょっと待って?あれ受けるの?嫌だ……死……)」
『マスター!避けて!』
「ジークさん!止まって!」
「「!」」
と、プライドの声により顔をわずかにそらして直撃を免れた。
ジークもセコンドの声で一瞬我に返り、なんとか拳の軌道を、ほんの僅かに逸らす。
しかし、『直撃を免れた』だけであって、ジークの一撃は
ユタの左目を綺麗に潰した。
「がっ、ゲホッ……」
そして、そのまま倒れこむ。
「はっ……⁉︎」
ジークは先ほどまでのように機械のようでなく、試合をしているときの顔に戻っていた
「(あー、これダメだ……調子乗った罰かなあ…。もうちょっと研究してればよかった)」
ユタの胸中にあったのは、己の準備の甘さによる後悔。
だけどソレを塗り潰すかのような一言が。
「……ユタ、ゴメンな」
「…え?」
ジークリンデの優しすぎるが故の言葉が、ユタの胸に突き刺さる。負傷した眼や腕などの痛み以上に、ゆたの心に深く突き刺さる。
(え?何で…私…謝られたの……?なんで……?ただお互いに全力を出して戦っただけなのに…何で?…私が弱かったから?最後の技は使うつもりなかったとか…?それで使っちゃったから謝られた…?)
「ふ、ざけ…」
何かを言おうとするも、体は言うことを聞かず、悔しさをはじめ色々な感情が混ざる。だけど立ち上がるには遠く及ばず
そのまま意識を失った。
ユタが倒れると同時、はやて、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、さらには審判やジーク、ヴィクター達も含め一気にユタの元へ駆け寄る。
すぐにタンカを持ってきてくれているがその間も全員の呼びかけも虚しく目を覚ます気配はない。
おそらく一番心配しているのは、はやて達であるのは間違いない。が、対戦相手であるジークリンデ自身も心配していた。
セコンドであるはやて達がユタのそばへ来た時に謝ろうとするもソレどころではない様子に思わず尻込みをしてしまっていた。
「あ、あの…ユ、ユタは……」
責められ、怒鳴られるのを覚悟でジークはシグナムへ話しかける。
そんな彼女の心境を悟ったのかシグナムは優しく答える。
「変身が解けてないのはプライドの防御機能のせいだと思われる。私はデバイスには詳しく無いがデバイスの出力の限界を超えてしまった時の現象を何度か見ているがソレに似ている。
…それと、そんな哀しそうな顔をしないでくれジークリンデ殿。貴女は勝った。ならばその勝利を誇ってくれ。でなければユタが浮かばれない。それと心配しないでくれ。私達は誰も貴女を責めちゃいないのだから」
「は、はい…」
「もしそれでも心を痛めてくれるのならば、お見舞いにでも来てあげてくれ。ユタは余り表に出して言っていないが貴女のことをずっと尊敬して目標にしていたんだ。きっと貴女がきてくれたらユタのやつも喜ぶと思う」
そう言い残しはやて達と共にユタを病院へ送るため会場を後にした。
「…そんな資格、ウチには…」
だけど今は、その優しさが余計に辛く心を抉っていた。