「シグナムさんシグナムさん!見てください!」
「わかったわかった」
「本当に仲ええなぁ。羨ましいわぁ」
「マリナにとっての初めてのお姉ちゃんみたいなんだよ、きっと」
「ウチは⁉︎」
「……親戚のお姉さん?」
「酷ない⁉︎」
今日は八神家に機動六課が集まっていた。
名目上は保護した2人-ユタと五月雨マリナの経過観察の筈だったが、気づくと鍋を囲いみんなでワイワイと騒いでいるだけになっていた。
「ふん!ええよ別にぃ!ウチにはユタがおるからな!なーユタ〜!」
「…」
そう言いながらハヤテに激しく抱かれていたユタは困惑しながらも抱き返していた。それが更にはやての庇護欲を掻き立てており、第三者からは完全なる親バカだった。
「その様子を見る限りだと大丈夫そうだね」
「ちゃんと親子になったんだね」
「…うん、もうユタは、誰がなんと言おうとウチの子や。もちろんマリナも。せやから…絶対にウチが守る。でも、もしもの時は協力お願いな2人とも」
「「勿論!」」
「ねぇ、母さん。なんでこんな事をしているのかをご説明願いたいんですが」
「ウチの気分がええからや♪」
「いやそれは見ればわかるけど」
今は母さんの車で帰っている…筈なんだけどすごく狭い。理由としては、なぜか後部座席で母さんの抱き枕状態になっているからです。いや本当になんで?
運転はシャマルさんがやってくれてるから大丈夫なんだけど。恥ずかしいからやめてほしい。
「♪」
「なんでそんなに上機嫌なの?」
「ふふーん、別に〜♪」
と、こんな感じで聞いてもはぐらかされる。
横の座席を見るとシグナム姉さんとミウラ、助手席にはザフィがいるがシグナム姉さんもなぜか気分がいい感じでミウラは母さんたちのテンションに困惑している。
うん、わかるよ。私ですら困惑してるから。
「あ、そういえば三回戦の組み合わせってどうなってんだっけ?」
『いまトーナメント表を出しますね』
もう構うのも馬鹿らしいやと思い話題を変えると、プライドがトーナメント表を表示してくれる。
「ありがと。えーと……私の相手は、この人確か去年の予選2位だっけ」
『学校の合間などでの資料集めからですね』
「うん。そういえばミウラは?」
ふと気になってミウラに聞く。
「ボクはヴィヴィオさんとですよ!もう、今から楽しみでしょうがないです!」
元気だね。
他の子はどうなってんだろ
『リオさんは、ハリーさんかエルスさんで祝日のプライムマッチで勝った方ですね。コロナさんは……どうやらアインハルトさんとのようですね』
「はい?本当に?」
『そして、コロナさんとアインハルトさんの試合で勝った方がジークさんとやるみたいですよ?』
「うわぁ。くじ運悪ぅ。いや私も人のこと言えないけどさ」
まさかの同門対決。しかもこの組み合わせ。悪意しか感じられないのは気のせい?
にしても…どうしようかな。インターミドルが本格的に始まってからコロナちゃんとの練習はあまりできてないし…。とかいって私が行ったところで対アインハルト練習になるかと言われるとNOだし…。
そもそもどちらかに加担するのは…ノーヴェさん的にはOKなのかな?
『マスター、コロナさんからです。練習を一緒にしたいんですけど、ご予定は空いていますか、と』
「あー、うん。私としては空いてる日になら構わないんだけど……シグナム姉さんとの練習がない日になっちゃうけどそれでもいいなら、って伝えておいて」
「別に私たちとの練習を減らしても構わないぞ?」
「いやいや、それとこれは話が別だよ。シグナム姉さん達の貴重な時間を貰ってるのにそんな蔑ろにする気はないよ。…でもなぁ、練習してあげるって言ったの私だし……。とりあえず、コロナちゃんにシグナム姉さんとの練習が無い日を連絡しておいて。それから練習日を調整していく」
『了解しました』
〜プライムマッチ開催日〜
『マスター、本当にいいんですか?プライムマッチを見に行かなくても』
「いいか悪いかで言われたら…まあ、悪いけど、一応録画は頼んであるし。…それよりはコロナちゃんとの練習のほうがいいかなって」
『それは構わないんですが…いくらなんでも自分の練習を疎かにしすぎでは?』
「それについてはご心配なく、私の相手はゴーレム創造系魔法の使い手だから。コロナちゃんとならいい練習になる」
『左様ですか。ま、コレで負けたらシグナム様達にこっぴどく絞られるだけでしょうし?』
「怖いこと言わないで」
さて、録画はルーさんに頼んでおいたしコロナちゃんの練習場所に向かいますか。
「あ!ユタさん!今日も来てくれたんですか!」
「うん。よろしくね」
練習場所になっていた公園にいくとコロナちゃんとオットーさんが休憩していた。今はランニング終わりらしい。
「ユタさん、ここ1週間毎日ありがとうございます」
「いえ、私も操作系の魔法の使い手が相手なのでちょうどいいってだけですから。あとはシグナム姉さん達が忙しくて練習があまり出来ていないですし」
『と、いうのは建前でコロナさんが心配なだけです』
「おいコラ」
この愛機は……。いや確かに心配でしたけども。バラす必要はないと思うんですけど?
「ユタさんが……私を…」
「コロナお嬢様⁉︎」
ほら見ろ、赤面しちゃったじゃないか。
「落ち着いた?」
「は、はい…すいません」
「悪いのは全てプライドだよ。謝る必要はない」
『なぜ私のせいなのかをご説明願いたいのですが?』
自分の
「……オットー、ユタさん」
「はい?」「ん?」
「わたし、アインハルトさんに勝てると思う?」
……どうしたの。コロナちゃんらしくない質問だね。
「そ、それはもちろん」「急にどうしたの?」
コロナちゃんは小さく笑いながら胸中を吐露しだした。…余程心配なのか、それともまた別の想いがあるのか。
「わかってるんです。ユタさんにも一度お話ししたことがありますが、私は普通の初等科4年生で少し変わった魔法が使えるだけ。アインハルトさんは才能も実力もあって覇王流っていう正統派の技もあって
ものすごく努力してる。今も、きっと。
普通に戦ったら勝てっこないよね」
と、コロナちゃんの笑顔には全く力が感じられない。
「でもね?」
コロナちゃんがさらに続ける。
「私にしかできない魔法があるってヴィヴィオやリオが言ってくれるの。ノーヴェ師匠とオットー、それにユタさんも私のいいところをいっぱい伸ばしてくれてる。ルーちゃんが作ってくれたブランゼルもいる。
だからね…勝つ、絶対に勝ちます!三回戦は私が勝つ---‼︎」
「--はい!」「うん…強いね、コロナちゃんは」
本当に強い子だ。私なんかより遥かに…。
「さ、休憩終わりです!次のメニューに行こう!オットー!ユタさん!引き続きお願いします!」
「はいっ!」
「もちろん。絶対にアインハルトに勝とうね」
〜夕方 ミッドチルダ市内 魔法練習場〜
「ふーん、番長勝ったんだ」
『リオさんの次の相手はハリーさんですか。なかなか厳しいですね』
まあ、私はエルスさんよりは番長の方がやりやすいから私的にはラッキー。にしても結果だけだと本当に接戦だったぽいね。
「おーい、ユタ。再開するぞ!」
「はーい!今行きます!」
オットーさんが抜け、代わりにノーヴェさんが合流。いまは最後の調整をやってるところ。とは言っても私のやることと言えば魔力運用の調節とかの微調整くらいなんだけど。
「お前たちの試合、いよいよ明日だな」
「はいっ」
お前たちとはもちろん、コロナちゃんとアインハルトの試合のことだ。
「お前のセコンドは私とオットー。ユタは試合があるから観に来れるかは分からんらしいが……」
「時間が合えば応援には行きますよ」
「ありがとうございますっ!」
「で、アインハルトにはディエチとウェンディ。まぁセコンド対決にはならねーな。あいつらは単に保護者役だから」
「はい!」
と話しながらも私を交えた最後の調整をノーヴェさんとコロナちゃんとやっていく。
「さて、このへんにしとこう。今日までお前に教えたことでアインハルトとは十分に戦えるよ」
「『戦える』だけじゃ嫌ですよ。勝ちたいです」
「そりゃもちろん」
「勝つための作戦……ちゃんとあるんですよ」
「コロナ?お前……?」
ノーヴェさんにもこっちを見てくるが、わからない、という意味を込めて首を横に降る。現に作戦とかの話は私も初耳だ。
「構えてください!ちょっとだけお見せします!」
と、コロナちゃんが構える。その構えはまるで……
---ドギュン!---
「は……?」
「コロナ…お前……‼︎」
「今のは一瞬だけでしたが後先考えなければもう少しやれます」
あまりに見覚えのある構えから繰り出されたのは、同じく見覚えのある技。
「こんな技を教えた覚えはねえぞ⁉︎身体への負担がでかすぎる!」
「コロナちゃん……私も同意見だよ。その技はやるべきじゃない」
「今のもゴーレム操作の応用ですよ。ちゃんとノーヴェ師匠、それとユタさんにも教わった技の延長です」
確かに…そんな魔法を少し教えた記憶はあるけど…。だけどゴーレム操作の手助けになればと思い教えたことだった筈なのに。
「これくらいやらないとアインハルトさんには勝てませんから」
「だとしても身体に危険があるような技はコーチとして容認できねーよ」
「うまくやります」
「それでも……」
「まあまあ、とりあえずコロナちゃんの言い分を聞きましょうよ」
と、ノーヴェさんを落ち着かせる。コロナちゃんは何か決意している感じがしたから。
「チームナカジマの4人の中で--私1人が色んな能力で劣っていること。自分が1番わかってます。
でも、だからってアインハルトさんやヴィヴィオやリオ、ユタさんやノーヴェ師匠にも、気を遣われたりしたくないんです。
みんなのこと大好きだから、がっかりされたくないんです。
証明したいんです--わたしだってチームナカジマの一員でアインハルトさんとだってちゃんと戦えるんだって」
あー、ダメ、わたしこういうのには弱い。出来ることなら全力で背中を押してあげたい……けど、どうしても過去のことから躊躇ってしまう。それ故、何も言えなくなってしまった。
『でも、だからと言って身体に負担のある危険な技を好きに使っていいというわけには行かないのは、コロナ様ならお分かりでしょう?』
「プライドの言う通りだコロナ」
「プライドもノーヴェさんも……まぁ、そこはわたしも同じ立場ですけど」
「あう……」
「つーわけで練習時間延長だ。明日に疲れを残さねーギリギリまでその技の使いどころを詰める。
証明しようぜ。お前らしい戦い方でアインハルトに勝ってやれ」
「わたしも全力で手伝います〜」
「はいっ!ありがとうございます!」
〜三回戦開催日 予選第1会場〜
『マスター、本当に次の相手は見なくても大丈夫なんですか?』
「…ごめん、今日だけはこっちを優先したい。大丈夫、ちゃんと、私のこともやるから。今日だけは」
『まあ構いませんが、その代わりキチッと勝ってくださいね?』
「もちろん」
いまはコロナちゃんの応援に来ている。
試合は4ラウンド判定勝ちです。超急いで第2会場からきたよ。
なかなか危なかった、とだけ言っておきます。
まあそれはさておきコロナちゃんの試合がもう始まろうとしていた。
昨日までの練習を見る限りアインハルトにも、もしかしたら勝てるかもしれない。
『いつからマスターはロリコンになられたんですかね……』
「コラ、まだなってないよ」
『まだってことはなる気はあるんですね。わかりました。はやてさんに伝えておきます』
「ちょっと待て⁉︎なりません!なりません!なるつもりもありません!コロナちゃんに対してだけです!」
『え⁉︎コロナさんが好きなんですか⁉︎』
「なんでそうなる⁉︎」
『冗談ですよ。わかっていますからご心配なく』
「この……クソ愛機が」
まあ、ロリコンでないとわかってるならいい。
「お、始まるね」
『そうですね』
コロナちゃんとアインハルトが入場し互いに向かい合っている。
「…頑張れ」
『マスター、なんでそんなにコロナさんを応援するんですか?』
プライドが聞いてくる。うーん、なんでだろうな。
「あー、うん。昨日のコロナちゃんの想いを聞くまでだったり
そう言っている間にもコロナちゃんとアインハルトの試合は始まる。
「うん、
『あれだけマスターと練習してましたからね。それを抜きにしても流石と言うべきでしょう』
ゴーレムを腕の部分だけを創成し腕に纏い、格闘戦技をつかいアインハルトを殴る。感覚的には私の腕の硬化魔法と似ているらしく、少し助言を加えたこともあったっけ。
「お、アインハルトはコロナちゃんを見失ったね」
『ゴーレム創成できますね』
そうだ、とにかく自分の土俵に引き摺り込め。わざわざ相手の得意な土俵に乗る理由はないのだから。
ゴーレム創成をさせまいとアインハルトはコロナちゃんにラッシュをする。
みるみるうちにライフが削られていく。
そして、殴り飛ばされる。が、その間にも詠唱は終わっていた。
「叩いて砕け--【ゴライアス】ッ!」
コロナちゃんは飛ばされながらもゴーレム創成をした。
『Rock Bind』
そして流れるようにアインハルトにバインドをする。
「ギガントナックル!」
そのままアインハルトにゴーレムの腕をぶつけ、場外へ弾き飛ばした。
『ダウン コロナ選手及びゴーレム ニュートラルコーナーへ』
「はいっ」
ライフ
アインハルト 5200
コロナ 3500
「うん、完璧だね。あとはどれだけ優位を保てるか」
『あの技を使わずに終わればいいんですが』
「うん、そうだね」
あの技はつかわないに越したことはない。
そして、試合再開直後、アインハルトはゴーレムの攻撃をかいくぐり空破断を繰り出しコロナちゃんをゴーレムから引き剥がす。
ライフ
コロナ 1300
「覇王流、破城槌!」
「うおっ、あのゴーレム壊すか」
『流石の攻撃力ですね』
創造主のいなくなったゴーレムをアインハルトは持ち前のパワーで粉砕した。これだとどう見てもコロナちゃんの不利。余程の策がない限りは盤面をひっくり返せないだろう。
「でも……まだ終わりじゃないよね?」
そうだ、コロナちゃんはまだ終わりじゃない。
筋力 体力 魔力量だとチームナカジマの中だと一番目立たないかもしれない。
でも冷静さや知性、発想力は4人の中でナンバーワンだと思う。なんなら私よりも上だろう。
「でも……身体操作は負担が大きすぎるんだよなぁ」
『そうなのですか?』
「うん、シグナム姉さんにも何度も釘を刺される程度には」
ダウンから立ち上がり試合再開するとコロナちゃんは棒立ちになっている。
「(1ラウンド残り20秒。インターバルで回復させたら何があるかわからない。コロナさんにはヴィヴィオさんのようなカウンターはない。接近戦で押し切る!)」
【ファイト】
「(
格闘技をやってるって聞いて随分びっくりしたっけ。
一緒に居たいから一緒に練習するようになって。格闘技が好きとか嫌いとかよくわからなかったけど。
わたしが格闘技や魔法戦技をやめちゃったら
ヴィヴィオと友達でいられなくなる気がして。
でもホントは、ヴィヴィオみたいに上手くできなくて楽しくなくて。
そんな時はノーヴェ師匠がいつも励ましてくれたし導いてくれた。
格闘戦技が大好きでいつかママを守れるくらい強くなりたいって話すヴィヴィオはいつも素敵で。
春光拳と炎雷魔法をもっとマスターしたいって頑張っているリオは格好良くて頼もしくて。
ご先祖様の遺志を継いで本当の強さを手に入れたいって一生懸命なアインハルトさんはすごく立派で。
家族のみんなに喜んでもらいたくて自分の体質のことも顧みず強くなりたいと思ってたり、好きな人に振り向いて欲しくて頑張っていたユタさんはとてもすごくて、憧れて。
そんなみんなに恥ずかしくない選手でいたかった。
あともう少し…みんなと同じ目線で、同じ速度で歩いて行きたくて
だから----痛くても使うと決めたんだ)」
そして、アインハルトとコロナの距離が縮まる。
「ネフィリムフィスト!」
「⁉︎」
コロナちゃんのカウンターが綺麗にアインハルトの顎に直撃した。続けて回し蹴りをし、アインハルトは倒れた。
『ダウン』
ライフ
アインハルト 970 クラッシュエミュレート 中度脳震盪 視界混濁
コロナ 1100
カウント8でアインハルトはふらつきながらも立ち上がる。
「(格闘戦での反撃はないとコロナさんを侮った----こんな形では終われない----)」
「(残り10秒……創成している時間はない。ネフィリムフィストで押し切ろう!)」
そして、互いに距離をつめ格闘戦が繰り広げられる。
「ネフィリムフィスト《虎咆》!」
そして、強烈な打撃がアインハルトに命中した。
それと同時にゴングが鳴った。
「コロナちゃんのあの技、練習の時にも思ったけどヴィヴィオちゃんとリオちゃんの技だよね。あの調子だと他の人の技もあるかな。私のもあったりして」
『いまは作動も安定していますね。あのまま押し切れたらよかったんですが』
まあ、あれはしょうがない。最初のネフィリムフィストでアインハルトが警戒しちゃったしね。
コロナちゃんのあれは最初だからこそ意味がある。
「まあ、落ち着いていけば勝てるとは思うけどな」
『本当にそこですね』
「でもなぁ…あの技はコロナさんの持ち味を殺してしまうのが…。焦らなきゃ、なんとでもなりそう‥だけど」
さて同門対決をどう描き切るか。
リメイク元があるとは言え相変わらず頭を悩ませていますはい。
難しい……。けど楽しい。頑張って描きます
それでは読んでくださりありがとうございました。
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