リリカルなのはvivid クローンの生き様   作:紀野感無

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21話 〜決着〜

「身体自動操作?」

「ええ、ゴーレムを動かす時の要領で自分の体を操作しているんです」

 

リング外ではインターバルに入ったアインハルトとディエチ、ウェンディが話をしていた。その内容は、コロナの技の正体について。

 

「巨体のゴーレムを動かせるだけの力です。そのまま打撃に使えばまさに『巨人の拳』。そしておそらく事前にプログラムした動作---特定のカウンターを設定したトリガーで自動再生するようにもしています」

「そっか、特定の打撃に反応して自動で撃つようにしておけば……」

「反応時間ゼロのオートカウンターっスね」

「対策は?」

「あります。さっき()()()()()()()。次ラウンドでやってみます」

 

 

 

インターバル回復

アインハルト ライフ7530 クラッシュエミュレート 全身軽度打撲 左腕中度打撲

コロナ ライフ 11180

 

 

 

 

 

観客席では、何かに思いを馳せながらユタとプライドが会話をしていた。

 

「身体操作に自動反撃。格闘戦だと優位に立てそうだけど実際にはそうじゃないんだよなぁ。特にアインハルトみたいな才能に溢れてる人に対しては優位どころじゃない。自分を餌にするようなものだし」

『もともと、身体操作はタイムロスが出やすいですもんね。それに、コロナさん自身の動きにも限界はありますし』

「それに……コロナちゃんには悪いけど今使っているのはヴィヴィオちゃん達の()()()。そんなものはアインハルトには通用するとは思えない。だからこそ初見の時に倒しきれなきゃ意味がなかった」

 

と、私が喋っている間にも予想通りコロナちゃんが押され出している。

格闘戦で押していくつもりなのかコロナちゃんはゴーレム創成をしようとはしていない。

 

「そうとう焦ってるだろうね」

『自身の切り札が通じなければそうなりますよ』

「まあ、そうなんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

「ネフィリムフィスト【マイストアーム】!」

 

コロナはゴーレムの右腕を作りアインハルトに向ける。

 

「(身体自動操作や頑強な腕部武装。覇王(わたし)にとってその対策は、600年前から取り組み続けた課題だったんです)」

 

アインハルトは真正面から受け止めゴーレムの腕を破壊する。コロナの右腕を巻き込んで。

 

その直後、上空にいたコロナに近づき叩き落とした。

 

ライフ

コロナ 9010

 

「(痛い、痛い、痛い!けど!まだいけるはず!左のリボルザーキャノンからのスパイクのコンビネーションが----)」

「鋼体の型 『牙山』」

 

コロナは再度アインハルトに向かっていき、アインハルトは防御を固めた。

 

コロナは左の打撃からの回し蹴りを繰り出すも、アインハルトは威力を殺さずに肘で受け止め、逆にコロナの四肢を破壊する。

 

ライフ

コロナ 7660 クラッシュエミュレート 左拳骨折 右脛強度打撲

 

アインハルトは更に追撃をする。

 

「(拳が来る!大丈夫、オートカウンターが動作する!)」

 

そして----アインハルトは拳をぶつける直前で()()()

 

「(しまっ……)」

 

もう、遅かった。

発動した自動操作を止めることができるわけもなく、ユタのカウンターを模したコロナのカウンターを避ける。

 

ドカン!

 

そしてそのまま上から叩き潰した。

 

 

 

 

「うまいね……オートカウンターの間合いを読み切って空振りさせて反撃。完璧な筋書きだね。にしても予想してたけど私のカウンターもやっぱりあったね」

『コロナさん……心が折れてもおかしくありませんよ。先ほどのアインハルトさんの攻性防御で拳も足もクラッシュしてますし』

 

ユタとプライドは冷静に戦況を分析する。その上でコロナの勝ち目が限りなく低いと分かっているが、それでも尚、コロナがこのままで終わるわけがないという確信も持っていた。

 

「コロナちゃんならきっと……大丈夫。ここからでも…きっと」

 

 

 

 

 

「大……丈夫……です」

「……⁉︎」

 

「マイストアーツとネフィリムフィストは……ここからが神髄ですから…」

 

コロナはフラフラしながらも立ち上がる。

 

「終わりになんてしません!」

 

ライフ

コロナ 530

 

「ネフィリムフィスト、フルコントロールモード」

 

「五体の完全操作。それも外から動かしていますね。……コロナさんも()()にたどり着いたんですね」

 

アインハルトには先人の記憶……特に聖王女オリヴィエと話している光景を思い出していた。

そしてそれは、観客席にいたクローン(もうひとり)も。

 

「ですが、その技は危険を伴います。危険なことになる前に…が終わらせます!」

 

「終わらせません。私だって自分に胸を張ってみたいから---!!」

 

 

 

 

「(五体の完全外部操作、そしてこの距離。コロナさんの最大攻撃はおそらく……)」

「ガイストダイブ!」

 

コロナはアインハルトに高速で突撃した。

それをアインハルトは防ぐ。

 

「(防がれた⁉︎)」

「(やっぱり高速突撃!読めてなければ食らってた--!)」

「(それでも当たるまで何度だって……‼︎)」

 

コロナは何度も何度もアインハルトに向かっていく。

が、一歩届かない。防がれ、避けられていく。

その間にもコロナの体は限界が近づいていた。

 

 

 

 

 

「骨が折れようと腕が千切れようと、神経が切れようと戦える五体の完全外部操作。その引き換えに持っていかれるのは膨大な魔力制御のリソースと限界を超えて動かされぶつけられる体の損傷。アレは、本当に最後の切り札なんだよね」

『なるほど。シグナム様が教えない理由も納得です。マスターがこんな事をしようものならすぐに選手生命は断ち切られていたでしょう』

 

それ以上にあれは……あの技は……

 

「ん…もうそろそろ決着かな?」

 

思わず昔のことを思い出してしまった。いけないいけない。集中しなきゃ。

 

 

 

 

 

アインハルトさんが反撃をしようとしたのをみて私は距離をとった。

 

「(手も足も…体中が痛いよ。最後の切り札も決定打にならない。やっぱり無理なのかな…。どんなに頑張っても……アインハルトさんには……)」

 

もう、自分自身でも諦め掛けていたのがわかった。

 

このまま折れてしまった方が、きっと楽かもしれない。どうせ幾ら足掻いても…

 

 

 

「コロナお嬢様ッ‼︎」

 

 

 

 

そんな、私の考えをセコンドからの声が遮った。

 

 

「まだですよ!まだ練習の全部を出し切ってません!僕やユタさん、姉様と一緒に練習した強さ!ゴーレムマイスターとしての戦い!諦めないで見せてくださいっ‼︎秘密の切り札なんかなくたって…そんな無茶な戦いをしなくたって!

 

コロナお嬢様は強いんですっ‼︎」

 

 

……オットーは本当にいい先生だなぁ。私なんかにはもったいないくらい。

 

そうだ、忘れていた。私は……

 

 

(コロナちゃん、試合の時は、自分を信じて戦うこと)

 

(自分を信じて…ですか?)

 

(そう。まず、自分を信じないっていうのは、一番ダメ。それはコンディションにも関わってくるし、なにより劣勢になった時には手遅れになる。でも、相手が格上で自分の技が通じなくて心が折れそうになる時があるかもしれない。実際に私もそうだったし)

 

(ユタさんもですか?)

 

(うん。ヴィクトーリアさんとやった時なんだけどね。けどね、自分を信じれず、諦めたらダメ。それだけは絶対にしちゃダメだよ。その瞬間、負けを意味するから。それでも、もしかしたら心が折れそうになるかもしれない。そんな時はね…今までの自分のやって来たこと、自分に関わってくれた人たちを思い出してみて。そうしたら……きっと、立ち上がれる)

 

 

 

 

「(そうだった、私、何してたんだろ。私は 格闘技選手でもあるけどそれ以上に---)ごめんなさい、オットー、ノーヴェ師匠、ユタさん」

「(自動操作を解いている。魔法戦に切り替えた?)ティオ、全力警戒です」『にゃっ!』

 

「ケイジング・スピアーズ」

 

岩の柱を創造しアインハルトさんを覆った。

 

「ごめん、ブランゼル!もう一度お願い!」

『Yes anytime!(はい、いつでも!)』

「創主コロナと魔導器ブランゼルの名のもとに、蘇れ巨神!叩いて砕け【ゴライアス】!」

 

得られた僅かな隙を使いゴーレムを再構築する。

 

そうだ、私は……ゴーレムマイスターだ!

 

「(再構築だけあって創成が早い!それでも破城槌ならゴライアスは一撃で…!)」

 

そして、アインハルトさんがケイジング・スピアーズを砕きゴライアスを壊そうと向かっていった。

 

『にゃあっ!』「⁉︎」

 

だから、私は後ろに回り込んだ。

 

「マイストアーム【スパイラルフィンガー】!」

 

ゴーレムの腕を纏いアインハルトさんに打撃を与える。

けど、ピンチには変わりはないのはわかっていた。けど思っていたのは…昔のノーヴェ師匠に言われたことだった。

 

 

 

(練習、やっぱりキツイか?なんでこんな思いをしてまで…って思ったりするか?)

 

(その…)

 

(まあ練習も組手も苦しかったり痛かったりすること多いけどよ、それもみんな最高の瞬間のためなんだよな)

 

(最高の瞬間?)

 

(練習した技が綺麗に打てた時、会心の一発をドカンと打ち込めた時、自分が前より強くなっていることを実感できた時。そんな瞬間をお前らに山ほど味わって欲しいから…少し苦しい練習をさせることもある。けど、それを乗り越えた先に待ってる楽しさを…お前にも知って欲しいんだよ)

 

 

 

「コメットブラスト!シュートッ!」

 

私は魔力弾を岩で覆ったものを何発もアインハルトさんに打ち込んだ。けど、それをかいくぐってアインハルトさんはわたしと距離を詰めてくる。

 

ゴーレムを操作して近づけさせないようにする。

それと同時に、床に手をつく。

 

「ロックバインド!(そうだ…ノーヴェ師匠が教えてくれたのは強くなることの楽しさ。特訓に付き合ってくれたオットーはわたしが強くなるのを自分のことみたいに喜んでくれた。ノーヴェ師匠はいつも私のことを気遣ってくれた。ユタさんは自分のこともあるのに私を一生懸命向き合ってくれた。

 

見てもらわなきゃならないのは-本当に自分に胸を張れるのは。

 

1人で思いつめた末の必殺技なんかじゃなくて-

 

チームとコーチ、みんなで一緒に重ねてきた練習の成果!)」

 

アインハルトさんにバインドをしてゴーレムのギガントナックルを直撃させる。

 

「(ティオ……助かりました)」『にゃー!』

 

ライフ

アインハルト 640

 

 

 

「ああ…アインハルト、大丈夫っスか?」

「大丈夫、ダメージ緩和と回復補助がティオの本領。アインハルトをしっかりと守ってくれてるよ。ティオのサポートとアインハルトの頑丈さと覇王流の鉄壁防御。並の攻撃じゃ進撃する覇王は止められないよ!」

 

ノーヴェたちがコロナを信じているのと同じようにディエチたちもアインハルトを信じていた。

 

ここからは二転三転と攻防が続いていた。

 

ライフ

コロナ 190

アインハルト 510

 

 

 

「これで決めるよ、ブランゼル、ゴライアス!」

『Yes!』

「パージブラスト、ドリルクラッシャーパンチ‼︎」

 

コロナはゴーレムの右腕を回転させながらアインハルトに飛ばした。

アインハルトは真正面からそれを受け止めた。

 

「覇王流-----旋衝破ァーーーッ!」

 

そのままゴーレムの腕を投げ返しゴーレムを破壊した。

それはコロナとしても予想通りで、崩れたゴライアスの破片を使い更に追撃をかける。

 

破片が床に落ちると同時、それらは床から生えている石の触手のようになりアインハルトへ向かっていく。

だが、それすらもアインハルトは真っ向から壊す。

 

「(これが本当の最後の一撃!)」

 

崩れ去るゴライアス、石の触手に紛れてアインハルトの後ろに回り込んでいたコロナは右腕にゴーレムの腕を纏っていた。

 

が、アインハルトはそれを読んでいたかのように振り返り

 

「覇王【断空拳】!」

 

コロナに必殺の一撃を撃ち込んだ。そのまま後ろに吹き飛ばされ壁に激突する。

 

ライフ

コロナ 0

 

 

 

『決着!アインハルト選手の勝利です!』

 

 

 

 

 

コロナvsアインハルトの同門対決は、アインハルトに軍配が上がった。

 

 

 

 

 

〜第一会場 救護医務室〜

 

「頑張ったんですが届きませんでした。アインハルトさん、やっぱり強いです」

「でも、あと一歩のところまで追い詰めてたぜ」

「いい試合でしたよ。コロナお嬢様はやっぱり強いです」

 

救護医務室には包帯をあちこちに巻かれたコロナと付き添いに来たノーヴェ、オットーがいた。

 

「お前のすごいところ、ちゃんと証明できてたよ。公式戦績(オフィシャルレコード)と満員の観客が証人だ。お前の創成戦技(マイストアーツ)はいくらでも応用の効くいい技だ。鍛えたら鍛えただけ強くなる。

今のチームで一緒にやっていけるよな?」

 

「はい、私はチームナカジマの一員ですから。みんなと一緒に練習していきたいです」

 

そんな良い雰囲気の中、医務室の扉近くで小さな話し声が。

 

(マスター、早く行ってください)

(いや…この空気の中いくのは……)

(じれったいですねぇ)

(いやだってさ…)

『ノーヴェさんっ!コロナさんっ!オットーさんっ!お客さんです!』

「あ、おいコラ!」

 

 

 

この愛機!なんでわざわざ呼ぶかな⁉︎

 

「ユタさん…?」

「あ、あー、えーと、コロナちゃん、お疲れ様」

 

この時、自分でもかなり辿々しいのはわかっていた。ただ、正直なところ、何を言えば良いのか分からない。下手な慰めは逆効果だろうし。

 

「ユタ、お前の試合はどうだった?」

「4R判定勝ちです。で、急いでこっちにきました」

『聞いてくださいよ、ノーヴェさん。マスター、コロナさんに教え方を間違えたんじゃないか、余計なことをしてしまったんじゃないかってずっと自分を責めてるんですよ』

「何バラしてんの⁉︎」

 

ほら見ろ、ノーヴェさんにジト目で見られたじゃないか。

 

「ユタさん、そんなことないですよ。私はずっと、ユタさんに感謝しています」

「僕もですよ、お嬢様がここまで強くなられたのもユタさんの手助けあってこそです」

「そうだ。少なくともユタのお陰でコロナのマイストアーツの練度は予定よりもはるかに上がったんだからな」

「そ、そうですか…」

 

それなら…まあ、よかった、のかな?

 

「ああそうだ。コロナちゃん、あとノーヴェさんやオットーさんにも言わないといけないんですが」

 

「「「?」」」

 

「これからも私、八神ユタはコロナ・ティミルの練習相手を続けたいと思っているんですが、構わないでしょうか?チームとしてやっていくかどうかはまだ未定なんですが…とりあえず最初は、コロナちゃんの魔法戦技の練習相手として」

 

 

あ。あれ?みんなが驚いてる。そんなに変なこと言ったかな?

 

 

「ユタさん!こちらこそお願いします!」

「アタシとしては構わないぞ」

「僕も構いませんよ」

 

「はい、ありがとうございます」

『皆さん、マスターのワガママを聞いてくださりありがとうございます』

 

さてと、それじゃあ家に帰りますか。

 

「それでは、失礼します」

「おつかれ様でした。ユタさん、4回戦以降も頑張ってください!」

「うん、ありがと。コロナちゃん。ノーヴェさんもオットーさんも失礼します」

「おう、気をつけて帰れよ」

「これからも宜しくお願いしますね」

 

挨拶を済ませた後は直で家に帰宅しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!はぁ…はぁ…」

 

久しぶりに、悪夢を見た。

 

もう良い加減に覚えてしまったオリヴィエの記憶

 

 

それともう一つ。お姉ちゃんの夢を。

 

 

つまるところ、私の心がまだまだ弱いから、なんだろうか。

思わず、蹲ってしまう。

 

「うぅ…お姉ちゃん……おいて…いかないで…」

 

頬を伝う涙にも、ずっと声をかけてくれていたプライドにも気づかず、母さんに強引に抱き寄せられるまで、その状態が続いていた。




さて、当初の予定している終了地点に近づいてきました。
もう少しだけ頑張るぞい


それでは読んでくださりありがとうございます
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