リリカルなのはvivid クローンの生き様   作:紀野感無

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今回の話は前編 中編 後編と分かれております。
まとめて書き切った後に分割している為、5分空きごとに投稿していると思われます。

それではどうぞ


23話 〜ユタのお姉ちゃん 前編〜

「さて、みんな〜たべながらでええから、ちょう聞いてな」

 

私はとあるホテルの屋上にいる。そこで少し遅めの夕食という名のバイキングをしていた。

 

「にしても‥豪華だねこれ」

 

そう、集まっているメンツがなかなか豪華だ。

 

八神司令こと母さんに元世界チャンプのジークさん、インターミドル都市本戦の上位入賞者であるミカヤさん、ハリーさん、ヴィクターさん。そしてハリーさんの取り巻きのいい子ちゃん3人組、初等科トリオ、ミウラ、アインハルト、ノーヴェさんが一堂に集まっていた。

 

「みんなも知っての通り、今日の試合を戦った2人には少し複雑な因縁がある。『黒のエレミア』の継承者ジークリンデと『覇王イングヴァルト』の末裔アインハルト、2人をつなぐのは聖王女オリヴィエ。かつて戦乱の時代を一緒に生きたベルカの末裔が今この時代にまた集まってる。それにこの場には雷帝ダールグリュンの血統ヴィクトーリアがいるし、ここにはおれへんけどもう1人旧ベルカ王家直系の子がいる。

これが偶然なのか何かの縁や導きの結果なのかはわからへん。

そやけどこれはあくまで老婆心というか大人側の心配としてなんやけど」

 

「老婆心て…母さん独身なのに…?もしかしてもう結婚適正ねんれ『ガスッ!』……」

 

「ユーター?何か言ったか?」

「い、いえ、何も言ってません」

「ならいいんや♪」

 

こ、怖い…ナ、ナイフが頬を掠めた……。

やりすぎだよ!みんなが引いてる!

 

「コホン、これだけ濃密な旧ベルカの血統継承者達が一堂に会するゆーんはちょっぴり気にかかるところなんや。インターミドル中の大事な時期やし、みんなが事件に巻き込まれたりせえへんように私たちも守って生きたい。ウチとしてはユタのこともあるしな。

そのためにもアインハルトやジークリンデ、ヴィヴィオちゃんやユタが過去のことを話し合う会に私も参加させてもらいたいんよ」

 

え…やだな。私としては聖王女オリヴィエのことに関しては割り切ってるんだけど。確かに最近ずっと聖王女オリヴィエの夢は見ているけど、それはそれ、これはこれだ。

 

「同じ真正古代ベルカ継承者同士、生きたい場所や資料があるなら私も全力で協力するよ」

 

「「「はい」」」

 

 

そうして先ずはアインハルトが自身の持っている記憶について話し始めた。

 

「クラウスとオリヴィエは、共に仲の良い友人でした。そして、共に鍛錬し合うライバルでもありました。彼女の紹介で『エレミア』とも出会い、良き友人になれました。それは戦乱の世の中でほんの束の間の、だけど永遠のようなとても平穏で幸せな日々だった。あの頃は…本当にそう思ってました」

 

「やっぱりウチのご先祖様と知り合いやったんやね。名前は覚えてる?」

 

「ヴィルフリッド・エレミア----『リッド』と呼ばれていることもありました」

 

「ジークはその人のこと覚えてねーのか?」

「申し訳ないんやけど…個人の記憶はほとんど残ってへんから」

 

ハリーさんが聞くとジークさんは申し訳なさそうにいう。

 

「あの、なんだかすごい話を聞いちゃってる気がするんですが……」

「貴重なお話ではあると思うんですが…」

「大丈夫!わたしたちもあんまり変わりません!」

「いろいろ聞かせてもらいましょう」

「そやねー」

 

別のテーブルではミウラ、りおちゃんにコロナちゃん、エルスさんやミカヤさんがそんな感想を抱いてる。

多分私が同じ立場でも同じ感想を抱いてると思う。

 

「ともあれ、クラウスとオリヴィエ殿下はシュトゥラで時を過ごして、『エレミア』もまた私たちの良き友人でした。

でも、ますます戦火は拡大して言って…聖王家は『ゆりかご』の再起動を決めました。過去の歴史で幾たびか使われた強力無二の戦船。玉座に就く者の命や運命と引き換えに絶対の力を振るう最終兵器。

オリヴィエはもともと『ゆりかご』内部で生まれた子でした。だけど、ゆりかごの王としての資質は薄いと認定されシュトゥラへの人質として利用されたんです」

 

こうして聞いていると、本当にアインハルトは過去にいたという覇王の記憶が鮮明に残っているんだろうね。だけど……

 

何故こうも、さも自分がそうであるかのように語るのか。アインハルトはアインハルトだ。クラウスはクラウス。何故そう割り切れないのだろう。

 

もちろんみんなが私みたいな性格じゃ無いのは理解している。

 

 

それでも……アインハルトはまるで、自分の人生を捨ててまでもクラウスという記憶を、受け継ぐべきだと考えているようにも聞こえてしまう。

 

 

「ですが、ゆりかごの研究が進んでいったこと…そしてオリヴィエの戦闘と魔導の才能が諸国に響くほどに磨き上げられてしまったこと。

それで本国に『ゆりかごの王』となるために呼び戻されることになりました。

ゆりかごの王になれば自由も尊厳も未来までも奪われることを知っていたクラウスはそれを止めようとしました。

 

だけど…()()彼女を止められませんでした、戦ってでも止めようとして何もできずに破れました。彼女の微笑みをくもらすこともできずに」

 

……いろいろと知らないことが溢れてくる。けどそれに伴って頭痛が時々起こるのを繰り返す。正直にいうと結構痛い。けど我慢できないほどじゃない。

 

「そうしてオリヴィエは国に戻ってゆりかごの王になりたった一年で『諸王時代』は終わりを告げました。けどクラウスとオリヴィエは二度と合うことはありませんでしたが」

 

「クラウス殿下とウチのご先祖様とはそのあとは…?」

 

「リッドはオリヴィエが国に呼び戻される少し前から姿を消していたんです。普段からどこにいるのかよくわからない人でしたがエレミアの力や言葉が必要な時はいつの間にかそこにいてくれたんです。

けどオリヴィエが悲しい決意をした時もそのあともずっと会えないままで」

 

「クラウス殿下は不義理な友達を恨んでたんかな?」

 

「そんなことないですよね?」

 

不安そうにいうジークさんの言葉にヴィヴィオちゃんが反応する。

 

「クラウス殿下は大切な人を一度に二人失っちゃったわけですから」

 

「そうですね…見つけたらまずは1発殴ってやりたいとは思ってました。

だけど…理性ではわかってもいるんです。エレミアが…リッドが悪いんけではないって。

ともあれ、その後クラウスとエレミアの縁は繋がることなくオリヴィエを乗せたゆりかごも姿を消してクラウスは戦の中で短い生涯を終えました。

私から話せるのはこれくらいです」

 

はー。これこそまさに生の歴史の授業だ。感慨深いね。

私が血筋じゃなければ、だけど。

 

「ウチに聞きたいことゆーんはその頃のリッドについて?」

 

「何かご存知だったらと思ったんですが。…ユタさんも、何かご存知だったり、しませんか?」

 

「残念やけどウチの実家にもエレミアの資料はあまり残ってへんのよ」

 

「そうですか…ユタさんはどうですか?」

 

「…………」

 

話を振られ私は黙ってしまう。うん。わかってる。本当なら話してあげるべきなんだろうけど。それでも……

 

「ユタ?」「ユタさん?」

 

ジークさんとアインハルトが不安そうにこっちを見たのと同時、もうこの際だから私について、全部話してしまおうと、決心()()()()()()

 

「ぶっちゃけると、私は所々とはいえ記憶がある。なんならそのゆりかごとやらに乗る前後あたりの記憶も」

 

その一言で母さん以外の全員が驚いた顔をした。それに構わず言葉を続ける。

 

「話すのは構わないの。でもね…この際だから改めて、言っておこうと思う。私は…ただの八神ユタ。聖王女オリヴィエの血は確かに引いてる。でも……本当にそれだけ。私は聖王女じゃない。…でもオリヴィエの記憶があるのは事実。死ぬほど辛い記憶としか言えないけど、それでも良いなら話してあげれるよ」

 

「い、いえ、無理なさらず…。元より私が巻き込んだんです。ユタさんが辛い思いをしてまで…」

 

とアインハルトは遠慮するようにいう。けど、本当に話す分には別にいいんだよね。ただ、何故かそれと連動してお姉ちゃんのことを思い出してしまうだけで。

 

「この際だから…母さん。私の生まれとかお姉ちゃんの事とかも話しておいたほうがいいかな?」

「うちはアンタに任せるで。話したいなら話せばええ」

「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは結論だけ言うと、オリヴィエはクラウスのことを…多分他の大切な人達のことをずっと、ずっと大切に想っていただろうってこと。だからこそゆりかごに乗って戦争を終わらせなきゃいけない決意をしたんだと思う。みんなを守るために自分だけ犠牲になれば良いなら、それで良いと信じて。

 

……だけど、本当は辛かったんだと思うよ。独りでいる時にはずっと泣いている記憶しかないから。私にはアインハルトのいうクラウスだとかリッド達との楽しかった記憶は、残っていないから。それからはアインハルトの記憶と同じと思ってくれたら良い。ゆりかごに乗って、戦争を圧倒的な力で以て強制的に終わらせた。個人の記憶として話せるのはこの程度。ごめんねあんまり力になれなくて」

 

そんな私を慰めるようにアインハルトやヴィヴィオちゃん達が声をかけてくれるけど、やっぱりというかお姉ちゃんの記憶も同時に蘇ってきて、泣きそうなくらいに辛くなる。だけど、グッと我慢して次の言葉を紡ぐ。

 

「ここからは私自身の記憶。どうせだからみんなにも、私の生まれとか、大切な人について知っておいて貰いたいなって、思ってね。私のお姉ちゃんなんだけど、えーと写真写真…あ、プライドに保存してないんだった。母さん持ってたりする?」

「もちろん。プライドに送ろうか?」

「お願い」

 

そうして数十枚の写真が送られてくる。その中から適当に一枚を投影すると母さんの家に来たばかりの時の集合写真が大きくみんなの前に映る。

 

「この蒼髪の人が私のお姉ちゃん。…全然似てないけど、私にとってはたった一人の、大切なお姉ちゃん。八神・サミダレ・マリナ。私をずっと育ててくれて、ずっと一緒に居てくれた人。

 

……察してるとは思うけど、私はオリヴィエの子孫とかじゃない。私は、ゆりかごを起動するために作られた鍵、有り体に言えばオリヴィエのクローン。お姉ちゃんは、そんな私がゆりかごの王として座れる年齢になるまでの育成係をやっていたの。だけど…そんな私のこととか周りとか、どうでもよくて、本当にただただ、お姉ちゃんのことは大好きだったなぁ……」

 

感傷に浸りたいけど、それよりも私について、知ってもらわなきゃね。

 

 

 

 

 

私の最初の記憶は

ガラス管の中でよくわからない液体の中に沈んでいるところ。チューブか何かがあるのか不思議と息苦しいことはなく、周りには白衣の研究者たちがたくさんいた。

 

 

私は記憶力がいいらしく胎児からの記憶がちゃんと残っている。

 

そして、試験官から取り出されたあと私は、地球に一緒に捨てられることとなる

 

 

五月雨マリナお姉ちゃんと会うこととなる。

 

 

お姉ちゃんは透き通るような藍色の髪にサファイアのような目。年は十代前半だったとおもう。

 

お姉ちゃんは私の世話役だった。だから私にとってお世話役立った彼女は姉も同然だった。

 

「ほ、ほらー。ユタちゃん。ご飯食べてー」

「やー!」

「ほら、お……美味し…いよ?」

 

研究所のご飯は栄養しか考えてなくて味が不味かったのでよく嫌がっていた。

それをなんとか食べさせようと姉さんは美味しく食べてみせようとしていた。が、まずい!というのが顔に出てしまっていたので成功したことはなかった。

 

「あ、ユタ。ほら、検査に行かないと」

「うーあー」

 

そして、ご飯以上に研究者たちの【検査】は嫌だったのも覚えている。

 

よくわからないコードにつながれたり注射器で何度も腕を刺されたり、とにかく嫌なものだった。

 

 

 

そして、4年弱が経ったある日

 

 

「なんで!なんでですか!なんでユタを捨てるなんて…」

「もう決まったことだ」

 

お姉ちゃんと私は共に呼び出され、私を捨てると言ってきた。当時の私はよく理解していなかったけど、お姉ちゃんはすごく怒ってたなぁ。

 

「そんな理不尽な…あの子はまだ4歳ですよ⁉︎あんまりじゃないですか!」

 

「はぁ…随分と偉くなったものだな。お前を拾ってやって育ててやったのは誰だ?もう忘れたのか?それとも…情でも移ったか?それに依然としてゆりかごの適正値の低い出来損ない(ユタ)に金をかけて生かすだけ無駄だと結論付けただけのこと。廃棄処分じゃないだけマシだろう?ま、今現在、新たな適正値の高いクローンが出来つつある。それも踏まえた上で失敗作に期待する必要もなくなった。それだけのことだ」

 

「っ!そんな言い方って…」

 

「まだ何かいう気か?そんなに心配ならお前も()()()()()()()()()()()

 

「え?それはどういう…」

 

お姉ちゃんが聞き返そうとすると突如激しい痛みが走って、目の前がフワフワした。お姉ちゃんも同じようで倒れたけど咄嗟に私を庇ってくれたのか不思議と痛くは無い。

 

「目を覚ませばわかるさ」

 

そんな研究者の声を最後に、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

それからどれくらい時間が経ったのかな。気がついた時にはまあ二人で裏路地にいたんだ。

 

お姉ちゃんは自分も一緒に捨てられたんだと察するのにそんなに時間はいらなかったみたいで、苦しそうな顔をしていた。でも私を見つけた瞬間に強く、だけど優しく抱きしめてくれた。

 

「ああ、でもユタもいる。よかった…。にしてもお金もほとんどないし持ち物も服だけって…よほど私たちには生き残って欲しくないのかなぁ。あの人たちが生み出した命なのになんでこんなに簡単に捨てられるのかなぁ。

 

……………

 

うん、考えても仕方ない。生きる術を身につけないと」

 

だけどお姉ちゃんは超ポジティブ精神を持っていたらしい。

なんかすぐに吹っ切れていたのはわかった。

 

「よーし、まずは仕事を探さないと」

 

そういいながらお姉ちゃんは私を抱きながら裏路地から出た。

余談だけど、表通りにいた人に変な目を見られたがここは地球という星の日本らしい。

 

管理局の管轄外の星らしいね。この時の私はまだそのことを知らなかったけど。

 

 

 

こうして、お姉ちゃんは私を生かすために働こうとしたが……現実はそう甘くはなかった。

一年もしないうちに、お姉ちゃんも私も、心身共にボロボロになっていた。




ユタの幼少期、そして前書きなどでちまちま出していたマリナなる人物についてこの2〜3話で出し切りたいと思っています

ユタにとってはたった1人の大切な『お姉ちゃん』。
だけどシグナムに関しても作中でシグナムを姉さんと呼んでいるように、シグナムのことも姉のようなもので、大切な家族として想っています。


それでは読んでくださりありがとうございます。
感想や評価などくださるととても嬉しいです
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