だけどそれ以上に…
「…うちはこんなにもユタに大好きって思われてたんやな」
普段自分の気持ちをあまり出さないユタが心の中ではこんなにも想ってくれていた。その事実がとても嬉しかった。
だけど……
「っと、物思いに耽ってる場合じゃないよな。……よし、早く行こう」
それ以上にあんなにも優しいユタが他人を傷つけようとしているのが我慢ならなかった。心が苦しかった。
取り返しのつかなくなる前に急がなきゃ。
「プライドさん!お願いがあります!ユタさんにかけてる魔力妨害なんですけど解いてください!」
ヴィヴィオが真っ先に声をかけたのはユタの愛機であるプライド。だけどその提案はあまりにも受け入れ難い内容だった。
『っ、何を、お考えですか!そんなことできる訳が』
「大丈夫です!信じてください!」
『しかし…』
ユタの粗雑な影操作を避けながら何度も何度もプライドへ打診する。それにとうとう折れたプライドが叫ぶ。
『ッ…知りませんよ!』
「大丈夫!大船に乗った気で居てくださいね!」
プライドが魔力妨害を解除。ユタはヴィヴィオの真意が分からず困惑するが、すぐに頭を切り替え影を足元に収束させる。
そして狙うは
影はアインハルトへ向かい勢いよく放たれる。
「ッ!」
「はぁっ!」
だがヴィヴィオはそれを許さず影目掛け魔力砲をぶつけることでぎこちないアインハルトを救う。
「もー!今は私だけを見てください!アインハルトさんに手は出させませんし、そんなにやりたいなら私を倒してからにしてください!負けませんけど!」
「ヴィヴィオさん、私も…!」
「大丈夫ですから!アインハルトさんは手を出さないでください!きっと今のユタさんだとアインハルトさんでは逆効果ですから。だからここからは私と…」
「ボクですよね!」
「はい!」
そうしてヴィヴィオと共に立ち上がったのはミウラ。互いに背中を合わせるように構え、ユタを見る。
ヴィヴィオは足に力を込め跳躍、1秒とかからずユタに近づく。
だけどそれよりも早くユタの影が操作され、巨大な鞭のようにしなりヴィヴィオをはたき落とす。
反応しきれなかったヴィヴィオは地面へ墜落する。
「…!」
「ぷはぁ!」
しかし極限の状況下な為かヴィヴィオの集中力はとても高まっていた。
鞭が当たった瞬間に踏ん張ることをやめ飛ばされた方向に自ら跳び、地面に激突する際には魔力を纏いクッションにしていた。その為ダメージはさほど受けていなかった。
「そんなものですかユタさん!いつものユタさんより遅いですよ!」
「じゃあもっと、速く…」
「それに!私1人じゃないって分かりませんか!」
「抜剣・空牙!」
「っ…!」
初手で一気に距離を詰めるのは何もヴィヴィオだけの得意技では無い。ユタがヴィヴィオへ注意を向けている隙にミウラが背後に回り抜剣で強襲。
ユタは間一髪受け流せはするがそのまま壁に激突する。
「ぐっ…。あ゛あ゛あ゛あ゛!」
悲鳴にも聞こえるユタの雄叫び。それと同時に今までの比にならないくらい影が縦に、まるで壁のように広がっていく。いままでは精々5メートル弱程度に広がっていた影は10メートル以上になっていた。
「フーッフーッ」
「気をつけてくださいね!」
「大丈夫です!」
「…ッ!アアッ!」
広がった影から幾重もの触手が鋭い刃となりヴィヴィオとミウラへ向かう。
「アクセルスマッシュ!」
「抜剣!」
それに対して2人が取った行動は迎撃。しかも
あたりに浮遊している岩を足場にしながら的確に影を砕いていく。ヴィヴィオが反応できなかったものはミウラが、ミウラが反応できなかったものはヴィヴィオが対応することでお互いに無傷でユタに近づいていく。
「なら…もっと数を…!」
「甘いです!」
ユタは再度影を使い攻撃しようとするもそれより速くヴィヴィオとミウラが接近する。ヴィヴィオとミウラが先手を取りラッシュを叩き込み、ユタはそれをなんとか凌ぐ。
「やぁっ!」
「っ…」
「抜剣・星煌刃!」
ヴィヴィオがユタの懐に潜り込み数発打撃を入れ、防ぎ切れず体勢を崩したユタへミウラは抜剣を命中させる。
影でのガードも硬化魔法をかけた腕でのガードも威力を逸らすこともできなかったユタは勢いよく吹っ飛び床へ激突した。
「っ……」
ユタは影を展開しなんとか立ちあがろうとするも、あまりのダメージからふらついていた。
「ミウラさん、ここからは私に任せてください」
「はい!お任せします!」
ヴィヴィオはミウラと一言二言交わし、ルーテシアからは魔力錠を託され1人でユタの前に降り立つ。そしてゆっくりと近づいていく。
「ユタさん、もう終わりましょう。これ以上は…」
「……嫌」
「なら、無理矢理にでも止めます。一度全力でぶつかってそれから…ちゃんとお話ししましょう。きっとユタさんの悩みも解決できます」
「……んな」
「?」
「そんな、ことで!解決できてたら!私は今、こんな事をしてないんだよ!私の気持ちなんて何もわからないくせに!目の前で大切な人を失ったことすら無い癖に!それでどうやって私の気持ちがわかるって言うの!ふざけるのもいい加減にしてよ!」
「はいそうですよ!ユタさんの悲しみは私には計り知れないですよ!でも解決できないなんて、そんなのわからないじゃないですか!もしかしたら…」
「
「それでどうする気ですか!ユタさんが消えるつもりですか!それともアインハルトさんを殺しますか!どっちでもいいですけど、そんなの私が許さないです!」
「だから、ヴィヴィオちゃんには関係ないって言ってるじゃんか!私が何をしようが、私の勝手だ!」
「関係あります!だって私はみんなで一緒に魔法戦技を続けていきたいですもん!」
「それこそ私に関係ない!私はもう魔法戦技もやらない!やれない!」
もう子供の口喧嘩だった。ユタの叫びに対してヴィヴィオも少しムキになり怒りながら叫び返す。互いの意地を譲らないが故の喧嘩だった。
「あーもう!分からず屋!」
「こっちのセリフだよ!私なんかに構わず、みんなで過ごしてればいいじゃんか!私に構わないで!」
「だーかーらー!そこにユタさんやアインハルトさんがいないと意味がないんですって!」
ヴィヴィオの言葉を聞き、ユタはギリ…と歯を食いしばる。そして最後に、逃げるように叫ぶ。
「いいから!もう!ほっといてよ!」
互いの距離が約5メートルほどの近距離に近づいた時にユタの足元から五本程度の影が生成され、ヴィヴィオへ向かって勢いよく伸びる。
ヴィヴィオは変わらずこれを迎撃しようと腕を振りかぶる。
「クラウソラス」
だがそれよりも速く影を撃ち落とされる。
「⁉︎」
「はやてさん⁉︎」
魔力弾が飛んできた方向を全員が見るとそこには八神はやてが浮遊していた。その顔は至って真面目でユタのことをじっと見つめていた。
「ヴィヴィオちゃん。ありがとーな。ユタのバカを止めてもらって。それで今、譲れないモノのために立ってくれてるのもわかる。だけど…ここからちょっとだけ、ウチに譲ってくれへんかな?」
「え?あ、はい」
「ありがとう」
ヴィヴィオは、はやてからの提案をすぐに飲み大きく下がる。代わりにユタの前へはやてが立つ。
「母さ…」
「はぁ…ユタ、一つだけ言うで?」
「…何?」
はやてはユタを見て、大きく息を吸い、そして叫ぶ。
「イメチェンするにしてももう少しなんかあったやろがい!」
はやての渾身の叫びに、ユタを除く全員が思わずずっこけたとか。
「なんっやねんお前は!女の子らしい服装とか全然せんし!セットアップ姿も参考にしたの男とかいうし!挙げ句の果てに今回イメチェンしたと思ったらそんなだっさい姿やし!あんたなぁ、インターミドルを見てくれた同僚から『八神司令の息子さんすごいですね!』って言われるウチの気持ちを少しは考えろど阿呆!」
「っ、好きなものをイメージしろって言ったの母さんじゃんか!それでイメージしながらセットアップしただけだよ!それに、コレはもう、魔力を纏いやすいようにしただけ!ダサいとか言われる筋合いないよ!それに女の子らしいとかよくわかんないし!」
「とりあえず『あ、これかわいいなぁ』って思う服を着るとかでええやろがい!」
「やだよ恥ずかしいし!絶対に母さんいじってくるし!」
「あったりまえやろ!お前の女の子らしいフリフリな服とかもう弄りがいの塊や!」
「開き直んな!それに母さんに婚期こないのまいっかい私のせいにするけど!母さんがお酒入ったら悪酔いするからじゃ無いの!それで私のこと死ぬほど自慢してウザがられてるってよく聞くよ!」
「ちょっ待て、誰にや!告げ口した犯人誰や!なのはちゃんか?フェイトちゃんか?それともヴィータ達か!白状せえ!」
「心当たりあるじゃんか!それ直せばいい人見つかるんじゃないの!」
「やっかましいわ!愛娘を自慢して何が悪い!そもそも有望株のいるお前にだけは『いい人見つかる』とか言われとうない!」
くだらない口喧嘩。だけど段々とヒートアップしていきゆたの状況とは裏腹に喧嘩の内容があまりにもどうでも良すぎて見守っていた全員が呆け、次第にクスクスと笑いを堪えきれていなかった。
「ふぅ、スッキリした。そんじゃあユタ…ここからは本気の話し合いしようか?」
はやては泣いているようにも怒っているようにも見える顔だった。
「……何を、今更話すって言うの」
「そりゃあユタ自身の事について以外に無いやろ。お前なぁ、とことんふざけたことを言うたらしいな。なんや?生まれない方がよかったやて?ええ加減にせぇよ。いいか?この世になぁ、不必要な命なんてもんはあらへん。それはアンタも同じや」
「私にとっては不必要だよ!大好きな母さんに悲しい顔をさせるくらいなら、こんな命いらないよ!」
「はっ!それで自分だけ消えるってか!傲慢にも程があるわ!人間なんてものはなぁ、感情っちゅーもんがあるんや!悲しみも辛さも感情の一部や!なんや?ユタはウチに感情を捨てろと、人間をやめろって言いたいんか!それになぁユタが消えたらウチらは余計に辛いだけや!それくらい分からんのか!」
「わかるよ!わかってるよそんな事!母さんは優しすぎるから私のことをずっと気にするだろうって!でも、私に流れる聖王の血はもうどうしようもないじゃんか!コレ以外に私のことで母さんを悲しませない方法がわかんないんだよ!」
「んなことお前に求めとらんわ!子供のことで心配するのも安心できるのも嬉しくなるのも
「考えちゃうに決まってるじゃんか!母さん達って仕事でいつも疲れて帰ってくるし偶にとても辛そうな顔してるし!けどそれで聞いた時もみんな『大丈夫』って苦笑いして何も教えてくれないし!お姉ちゃんの時とか、みんな、ずっとずっと辛そうな顔してるのに私の前では無理して笑うし!」
互いに言いたいことを言い合っており、唐突に会話が途切れ沈黙が訪れる。それを破ったのは…
「はぁー…いやまぁ、予想通りっちゃ予想通りやけど。どんだけ抱え込んでたんや。ごめんなぁユタ。気づいてあげられんで。やっぱり、ウチは親失格やな」
「……んで、なんで母さんが謝るの!悪いの私じゃんか!今までも!今も!なんで母さんが謝るの!私は
「だけどな!」
「ッ!」
「それとコレは話が別や!いっぺんそこに直れど阿呆が!だーれがいつどこで『他人を意図的に傷つける』方法を教えた!」
「……」
「ユタ、抵抗するも良し逃げるも良し。好きにせい。ひとまずお前の頭を思い切りぶん殴る。話はそれからや」
とりあえずかけたぁ!
がんばった!戦闘シーン苦手だけど頑張った!
いやぁ構想が全然練れなくて苦労しました‥
引き続きがんばります
読んでくださりありがとうございました
感想や評価などくださるととても嬉しいです