リリカルなのはvivid クローンの生き様   作:紀野感無

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「おーいユタ。ちょっと来てくれ」
「はーい」

砂浜でストレッチしてるとヴィータさんに呼ばれる。向かうとシグナム姉さん、そしてミウラもいた。

「どうしたの?」

「あー、いや、なんだ。その……」

「?」

珍しくヴィータさんの歯切れが悪い。何かあったのかな。

「ユタ、ミウラ。お前たちの今後についてだ」

「私の?」「ボクの?」

「ああ。改めて確認したいが、お前たちは今後も魔法戦技を続けていくつもりはあるか?」

「もちろん」「もちろんです」

「わかった。…だとよ、シグナム、ザフィーラ。後は任せたぞ」
「2人とも、今後…というよりは今のインターミドルが終わったタイミングだな。そのタイミングで----」




36話 私の中のご先祖様

ヴィヴィオちゃんとアインハルトが試合をして、アインハルトの憑き物が取れてから結構色々なことがあった。

 

学園祭があったりとか、準決勝があったりとか、後はリオちゃんの実家かつ武術道場であるルーフェンという場所に行ったりとか。いろいろとありまして。

 

中でもシグナム姉さん達との---は超弩級に私のこれからを揺るがすものだった。

 

シグナム姉さんたちの件についてはまた後ほど詳しく語るとて…大変有意義なものばかりでした。

 

そしてそして。ルーフェンから帰ってきてから数日後。

 

母さんに管理局へ呼び出された。

 

 

 

「で、なんでいきなり管理局に呼び出したの?」

「まー、色々とあってなー」

 

ちなみに、アインハルトとユミナさんもいますよ。ユミナ、ユミナ・アンクライヴさんというのは、私とアインハルトのクラスの委員長をしてる子。アインハルト経由で仲良くなり、ユミナさんは格闘技の選手ではないけどかなりの見る専オタク。なので当然私のことも知っていたらしい。

 

ユーフェンへの旅行もユミナさんはいた為、ついでだからと(もちろん許可をもらって)一緒に母さんの元へ向かった。

 

ちなみに本当に要件は知らない。

あとからルーさんもくるとかは聞いてるけど。

 

「でな、ユタ。『戦技披露会』って知ってるやろ?」

 

「母さんやなのはさん、フェイトさんたちが毎年やってるやつだよね」

 

「そうそう。でな、ユタにも白羽の矢がたったんよ」

 

「私に?」

 

曲がりなりにもまだ中学生の私に何故?

 

「ヴィヴィオちゃんとミウラが試合するのは知ってるやろ?」

 

「うん」

 

「広報の人たちが『八神司令のお子さんは出られないんですか⁉︎というか出してください!見たいです!』ってウチに直談判してきた」

 

「なんで??」

 

「ウチが聞きたい」

 

母さんと共に真顔になってしまうが、堪えきれず2人して吹き出してしまう。

 

「ウチとしても断る理由あんまりないけどインターミドルがどうなるか分からへんから、一応聞いてみるってことで手を打ったちゅーことや」

 

「私はいいけど。それこそ母さんの言うようにインターミドルと日程が被らなければ」

 

「そうなんよねぇ。順調に勝ち進めば都市本線決勝と被るくらいちゃうかな」

 

「……しんどくない?」

 

「しんどいと思うでー」

 

「アインハルト、ユミナさん、どう思う?」

「…ハードスケジュールすぎかと」

「同じくかな…」

「そもそも、私に白羽の矢が立ったところで、誰と試合するの?」

 

「そこはまだ考え中やな〜。出てくれるなら多少は融通効くと思うで。ちなみに誰と試合したいとかあったりする?」

 

「えー?急に言われてもなぁ…。管理局の人たちだと実践経験が天と地の差でしょ。勝てる未来見えないし…」

 

「そうかなぁ?いい線行くと思うで?」

 

「……。負ける前提で考えたくはないけど…。誰でも、いいんだよね?」

 

「うん。要望が通るかどうかは別やで?」

 

「それはいいんだけど…。えーと、その。じゃあ…」

 

考えたはいいものの、決心が固まらずフラフラと揺れてしまう。数分くらい考え込んで、ようやく決心する。

 

()()()()()()()と試合したい」

 

「……」

 

100人中100人が無謀だと言いそうな考えに、母さんは反論するでもなく否定するでもなく、じっと私のことを見つめてくる。妙に恥ずかしくなって少し下を向きながら口を開く。

 

「母さんや、ザフィ、ヴィータさんやなのはさん、フェイトさん、…もちろんエリオも捨てがたいんだけどね。

 

やっぱり私の『強さ』の象徴で、私の『師匠』で、私の『目標』で、私の『憧れ』でもあるシグナム姉さんとかな、って、母さん?どしました?なにニヤニヤしてるの⁉︎私、そんな変なこと言った⁉︎」

 

「いーやー、別にぃ〜?ま、聞いてみるわ〜。みんなちょっと待っててな〜」

 

そう言いながら母さんは離れていく。いたたまれなくなって、アインハルトたちをみると、こちらもこちらで驚いた顔でこちらを見ていた。

 

「ね、ねえユタさん。シグナムさんって…もしかして()()?」

「いつもユタさんが吐くまでトレーニングを課すというあのシグナムさんでしょうか?」

 

「アインハルト正解。ユミナさんのは、それが何を指してるのかはわかんないけど、高町なのはさんレベルの有名人を思い浮かべてるならその人で正解。単純な強さなら高町なのはさんと同レベルじゃないかな」

『勝てる見込みあるので?』

「んにゃまったくこれっぽっちも」

 

正直に言ったのに2人+1機から素っ頓狂な声が発せられる。

 

「現段階は、ね。どうせ都市本戦が終わるまでは試合組まれるかすら分からないと思うから、要望が通ればまた色々と考えるよ」

 

やれたらいいな、くらいの軽い気持ちだし。

それから談笑を続けてると母さんが戻ってくる。

 

「ほいっと、聞いてきた限りは大丈夫やでー。シグナムの予定が合うかどうか、ユタの都市本戦がどうなるか、で出来るかどうかは変わってくるけど」

「いいんだ…管理局って暇なの?」

「暇なわけないやろ。許可してくれた理由聞いたら、ヴィヴィオちゃんの方もおんなじよーな事を言うてたらしくて、予想はしてたって」

 

ほへー。誰と戦う気なんだろ。

 

「ミウラに勝てたら、なのはちゃんと戦いたいとのことらしいで。考えることはおんなじやなー」

「へー…」

 

ヴィヴィオちゃん、凄いこと言ってるなぁ。いやぁやる気があるってすごいね(遠い目

 

「あ……」「クロ?」

 

そこに現れたのはルーテシアさんことルーさん、そして無限書庫事件(?)の首謀者ファビア・クロゼルクだった。

 

「クロもな、るー子と同じく局の民間協力者として登録してくれたんや」

「資格取得とかしながら魔女の森の知恵と技を未来にちゃんと残せるように、ってね」

「……」

 

あれ?睨まれた。

『なんかセクハラでもしたのでは?』

「してないよ。あと心読まないで」

『却下します』

 

「アスティオンとプライドを預かるよ。私がメンテルームに届けてくる」

「ありがとうございます」

「あ、どうも」

 

と、ファビアが言ってくるので、まぁ大丈夫だろうとプライドを渡した。ついでに言うと、睨まれたんじゃなく見つめられてた。

 

「元気そうで安心しました」「どーも、あの日はお世話になったね」

 

「……。あなたたちとヴィヴィオには、もう一度会いに行こうと思ってた。もう一度謝って……それから、ちゃんとお話ししなきゃって」

 

ファビアの言葉を聞いて、思わずアインハルトと目を合わせる。そして…

 

 

「一度と言わず何度でも……歓迎しますよ。私もヴィヴィオさんもチームのみんなも」

「チームは違うけどアインハルトとほとんど以下同文」

 

「そ、そんないきなり仲良くする気とかはないから…!」

 

「いいじゃないですか。私は仲良くしたいですよ」

「長年ぼっちだったアインハルトに友達が…明日は雪が降るかも」

「ユタさん?きこえていますからね?」

「ごめん。悪かったです。私が悪かったから断空拳の構えはやめよう」

 

 

 

 

 

 

「それにしてもアインハルトはよー笑うようになったなー」

「ですねー」

 

ウチは3人で楽しそうにしてる子孫(こども)たちを見ながらそう呟いた。

 

「こんな可愛いお友達までできてウチも嬉しいよー」

「あー、いえいえ、そんな」

 

と、連れてきてくれた友達のユミナちゃんを見る。

 

「支えてくれた皆さんとかチームのみんな…、それからやっぱりコーチたちのおかげって言ってます。特にコーチには感謝しても仕切れないって」

 

「街でフラついていた危険な不良少女を拾って育てたわけだもんねー」

「あ!その辺わたしはふんわりとしか聞いてないんで!今度内緒で詳しく聞きたいです〜」

「いいよー♪ナイショで教えてあげる!」

 

「あ……でも」

 

るー子と話してたユミナちゃんがこっちに振り返って言った。

 

「本当に恩返しはしたいって言ってましたよ。コーチにもチームメイトにも、もちろんユタさんにも。それとお世話になってる八神司令にも」

 

「ウチは好きでやってるだけやし…周りのみんなも同じとちゃうかな?それに……感謝してるのはウチも同じや。アインハルトの…みんなのおかげで、今、ユタは…あんなにも笑ってくれる。

 

ユタはな……ウチにも、多分愛機(プライド)にも言うてへんけど、ずっと、心に枷をはめ込んでた」

 

「それはどういう……」

 

何か深刻そうな言い方をしたウチにユミナちゃんが恐る恐る訪ねてくる。るー子もこのことに関しては初耳なはずでこちらを神妙な面持ちで見ていた。

 

「ユタはな、多分今までずっと自分を責めてたんよ。

 

ユタには最愛のお姉ちゃんがいたってのは聞いてると思うけど、その人が死んだのは自分のせい、自分がいなければ死ななかった。きっと、ずっとそう思ってた。一番辛いのはユタなはずなのにな。

 

けど、ユタはめっちゃ優しいからな。ウチらに迷惑をかけたくない、巻き込みたくない、心配をさせたくない、その一心でずっと自分を偽ってた。明るく振舞ってた。決して、そんなことを表面には出さなかったんよ。

 

…親としては、そんなユタに気づいていながら、何もしてあげれなかったのを今でも悔やんでる。

だけれど、無限書庫でとある出来事があってからな。いい意味でその枷が外れた。ウチはそう思ってる。実際にインターミドルでの戦いも、準々決勝と準決勝でだいぶ違ったやろ?」

 

「あ、そういえば……」

 

ユタの戦い方は相手の弱点をひたすらに狙う戦法だった。だけど無限書庫の一件からは相手と真正面から戦うことが比較的増えていたように思う。

 

ユミナちゃんはそれについて思い当たる節があったらしく、軽くユタの戦い方を解説してから話を進める。

 

「ユタだけやったら、きっとこうならなかった。だから、感謝するのらウチなんや。アインハルトがいて、ヴィヴィオがいて、るー子がいて、ユミナちゃんがいて、ノーヴェがいて……みんなのおかげで、今のユタがいる。ほんまにありがとなー。ほんで、これからもユタをよろしゅーな」

 

そう笑いながら言うと、るー子もユミナちゃんも恥ずかしがりながらも、はい、と言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

綺麗な空間で目が覚めた。地平線がどこまでも続いて、地面には水が薄く張ってある。

だけど体は思うように動かない。

 

という事は…

 

「(夢かな。でもなんだか()()()()…)」

 

夢ならお姉ちゃんでもいないかなと思い周りを見渡すと、とある人物がいた。

 

その人の全体像にはまるで雲がかかっているかのようなボヤけているのに、誰なのかすぐにわかった。

 

「……初めまして、でいいんでしょうか。()()()()

 

「はい。初めまして」

 

その人は、間違えようもない。オリヴィエ・ゼーゲブレヒト。

私のオリジナル。戦乱の世を生きた聖王。

 

ずっと前から、オリヴィエさんの記憶が私の中で混ざっているのは自覚していた。それに『あの時』の、私がハードヒッターまがいの戦法で試合をした時の映像から、私ではない意識が混在してることも、なんとなくだけど理解していた。

 

きっとそれが、私のオリジナルであるこの人の意識なんだろう。

 

「……」

 

とは言っても、特に何を話せばいいのか分からず黙ってしまう。

 

「ごめんなさい。困惑させるつもりはなかったんです。ただ、貴女に謝りたくて…」

 

「謝る?私にですか?」

 

「はい」

 

はて?特に謝られるようなことをされた記憶がないけれど。

何を謝るというんだろう。

 

「…私が、『ゆりかごの鍵』でなければ、貴女を辛い目に合わせずに済んだかと思うと、胸が張り裂けそうでした。それに、クラウスやリッド、クロも…。私1人で全部を背負おうとせず、みんなに相談していればこんな事に…子孫の皆さんを辛い目に合わせずに済んだのかもしれないと…」

 

「あー…」

 

謝りたい内容をなんとなく察してしまい、口篭ってしまう。

 

「本当に、本当にごめんなさい。私の…」

「謝らないでください。ご先祖様」

 

頭を下げようとしてたので、慌てて止める。

 

「確かに、私は貴女のクローンとして作られ、『ゆりかごの鍵』の代替品として生かされてきました。

 

でも『聖王女オリヴィエのクローン』としてこの世に生まれたからこそ、今の私があります。母さんと出会えて、シグナム姉さんやヴィヴィオちゃん、アインハルト、ジークリンデさん…何よりお姉ちゃんに色々な人に出会えて、沢山の幸せをもらえました。

 

確かに辛かった時もあるけど、辛くない人生なんてそもそもありませんし。それ以上に幸せでしたから。確かに()()()、私自身に流れる血が嫌い、なんて言っちゃいましたけど…。今はもう、この血も含めて私ですから。だから……」

 

勢いで言いたいことを連ねたから、どう終わらせようか迷いに迷う。

そんな私を見てオリヴィエは小さく笑いながら…

 

「あはは。ありがとうユタ。貴女の言葉で、私は救われました」

 

「それを言うなら私のほうこそ。貴女と言う存在がいたからこそ私は生まれることができた。ありがとう。それに…準々決勝での試合、私の代わりに貴女が出てくれてたんでしょ?」

 

「あら、バレていましたか」

 

「貴女の記憶がはっきりと私の中に現れてから映像を見て、すぐに確信できました。…ま、クラウスは気づいてなかったですけど」

 

「あの人、昔から鈍感なんですよね」

 

「もれなく子孫のあの子に受け継がれておりますので」

 

「ふふっ。だとしたら大変ですね」

 

「全くです」

 

そのあとは、ご先祖様と最初で最後のガールズトークをした。

気になってる人がいることや友だちの話、家族の話、学校での話。

 

他愛ない私の身の回りの話をオリヴィエさんは楽しそうに聞いてくれた。逆にオリヴィエさんの身の回りを聞いても嫌な顔一つせず、自分の大切な人たちのことを楽しそうに語ってくれた。

 

 

 

 

「もうそろそろ…終わりのようです」

 

「えー…せっかく楽しくなってきたのに。現実の私、もう少し寝ててくれないかな」

 

「うふふ。ダメですよ。育ち盛りなんですから早寝早起きはしっかりと、です」

 

「はーい」

 

まるで第二の母親のように諭され、ガールズトークを終わる。

 

「…あ、そうだ。オリヴィエさん」

 

「はい。何でしょう」

 

「アインハルト…えーと、クラウスさんやリッドさんたちの子孫へ何か伝言とかありますか?あるならお伝えしますよ」

 

「伝言…」

 

しばらく考え込み、口を開く。

 

「では、お言葉に甘えて。まずアインハルトさんへ---」

 

 

 

 

 

 

「こんなところでしょうか」

 

「わかりました。必ず伝えますね」

 

「ありがとうございます。ユタ」

 

「こちらこそありがとうございましたオリヴィエさん。今なら断言できます。

 

私は、貴女のクローンでいられて、幸せです」

 

 

 

 

 

 

 

「……」

『おはようございますマスター』

「おはよプライド」

 

やっぱり、夢だったらしい。でも何故か内容をはっきりと覚えてる。

きっと聖王女の血が流れてるからこそ、私がクローンだからこその、あの空間なのだろうと不思議と納得できた。

 

「プライド、ちょっとメールを送ってほしいんだけど」

『どなたへ?』

 

「ヴィヴィオちゃん、アインハルト、ジークさん、ファビア選手の4人」

 

『どういった内容を?』

「少しだけご先祖様のことについて話がある、って。それと4人へ伝言も預かってるから直接会って話したいってのも書いてて」

『承知しました。ではマスターが朝の身支度を済ませてる間にしておきます』

「うん、ありがと」

『ところで、伝言とはどなたから?』

「んーナイショ」

『はあ?』

 

イラついたであろうプライドから爆音が流れ、鼓膜さんが空の彼方へ逝きました。

 

 

そろそろ廃棄するぞ。





次回!最終話!

たぶん!!おそらくきっとメイビー!!
長くてもあと2話以内で終わります!たぶん!!

あ、インターミドルの試合は別腹ですのでね

それでは、読んでくださりありがとうございます
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