『そうか。んじゃ昨日のジムに集合で』
「あいあいさーです」
ちょっと家に戻らなきゃいけない用事ができた事でノーヴェさんに連絡を入れる。数時間後に昨日スパーリングをしたジムに合流とのことなので気持ち早めに家に向かう。
「なんなんだろーね。とりあえず帰ってこいって」
『さあ?』
「たーだーいーま゛ぁっ⁉︎」
玄関を開けた瞬間飛んできたのは斬撃。
あっぶないでしょうが!やる人1人しかいないだろうけど!
「ふむ、練習は真面目にしてるようだな」
「あったりまえでしょ、でなけりゃシグナム姉さん本気で殺しにくるじゃん……」
「ちゃんと死ぬ限界を見極めてるから死ぬまではやらんさ」
「せめて肉体的な限界にしてくれませんかね⁉︎」
出迎えてくれたのはシグナム姉さん。
ピンクの髪のポニーテール、大人びた雰囲気が特徴の、他だと武士道精神が自我を持ったバトルマニアもとい戦闘狂。
黙って歩いてる姿は美人でモテると思うのに。
「今何か思ったか?」
「いえ何も。そいやシグナム姉さんがもう家にいるって珍しいね」
「元々今日は午前中で終わる予定でな。それで、主はやてからお前への復帰祝いを送ってはどうかと提案されたんだ。確かに、と思ってな。お前に聞こうと思ってたんだ。ユタ、どんなものが欲しい?」
「復帰祝い?そんなの気にしなくていいのに。むしろこれからバリバリ鍛えてもらう予定だったからそれが復帰祝いとかじゃダメ?」
「私もそう言ったのだが、主はやてには形が大事でユタも女の子だから何か買ってあげてくれ、と」
なるほど、それで急遽家に来てくれと。
うーん。とは言っても本当に思いつかない……。
にしても相変わらず綺麗な髪してるよねぇシグナム姉さん。羨ましい。
「……あ」
「思い付いたか?」
「まあ思い付いたというよりは……シグナム姉さんが髪をポニテにしてる髪留め、あんなの欲しいなぁ、とは思ったり」
「これか?これが欲しいならあげるぞ」
「いやいや、それじゃなくていいよ。そうだね……黄色の髪留めかな。柄とかはシグナム姉さんに任せるよ」
「わかった。買っておくよ」
身内の私からみてもシグナム姉さんは完全無欠の美人って感じだから憧れてるってのもあるし、何より家族からもらったものを身につけてると気持ち強くなれそうな気がする。
「んで、帰ってこいって言ってた張本人がいないってことは多分、用事はシグナム姉さんの事だろうから今からジム行ってくる〜」
「なら送るぞ」
「ほんと?助かる〜」
「練習相手はなのはの娘か?」
「そうそう。それとその友達2人。今日また1人増える、らしい。ノーヴェさんが師匠をやってて、今日は改めて私の実力を確かめたいんだって」
「ほう。ならば思う存分やってやれ」
「言われずとも。シグナム姉さん達の顔に泥は塗らないよ」
〜ミッドチルダ中央市街地 ジム〜
「んーっ、ありがとうシグナム姉さん」
「気にするな。夜気をつけて帰るんだぞ?」
「わかってまーす」
先日コッテリ絞られてるので流石に、ね?
「プライド、どの辺だって?」
『そこまっすぐ行って三つ目の部屋です』
「りょ〜」
駆け足でプライドに言われた場所に入るとヴィヴィオちゃんがスパーリングを始めるところだった。しかも相手はアインハルト・ストラトス。
「お、来たか」
「どうも。新しい練習メンバーってアインハルトのことだったんですね」
「知ってるのか?」
「んにゃ、同じクラスになってるってだけです」
「ほーん。じゃあ見ときな。度肝抜かれるぜ?旧ベルカ式の古代武術だし、実力も申し分ない」
いやまあ、うん。申し分ないのは知ってるんですけどね。なんせ一回やられてるし。
「あ、一応ビデオだけ回しといて」
『承知しました。』
純粋にノーヴェさんのいう古代武術は普通に興味あるけどね!
「(本当に?この子やユタさんが覇王の拳を、覇王の悲願を受け止めてくれる――?)」
アインハルトの足元に魔方陣が展開される。
「んじゃ、スパーリング4分1ラウンド。射砲撃とバインドはなしの格闘オンリーな。レディー ゴー!」
「改めてみると二人ともすごいねえ」
『そうですねー。マスターはあんな打ち合いできませんもんね』
「私が殴り合いしようものなら物の数分で片付けるさ。主に私が片付けられる」
『んなこた分かりきってますから』
「ひどっ⁉︎」
二人とも変身してないのにだいぶ強い。
ヴィヴィオちゃんなんか私とやった時よりうまくなってる。飲み込みが早いのかな?
「ヴィ……ヴィヴィオって変身前でも結構強い?」
「練習がんばってるからねー」
と、その場にいたスバルさんとティアナさんがおんなじような感想を言っている
あ、ヴィヴィオちゃんぶっ飛ばされた。そして双子さん(名前忘れました)ナイスキャッチ。
「お手合わせ、ありがとうございました」
しかしここから空気が変わった。
なんせアインハルトはあろうことか勝手に試合を終わりにした。
ヴィヴィオちゃんは焦ってアインハルトに近づいていた。
そりゃそうだ。この態度だと怒らせたんじゃないかって誰でも思う。
「あの…あのっ…‼すみません、私なにか失礼を……?」
「いいえ」
「じゃ、じゃあ、あの。私……弱すぎました?」
「いえ、
よし、アインハルトは徹底的にぶちのめそう。今決めた。一発顔面にぶち込むくらいにしようと思ってたけどやめた。
「あのっ!すみません…今のスパーが不真面目に感じたなら謝ります!今度はもっと真剣にやります。だからもう一度やらせてもらえませんか?今日じゃなくてもいいです!明日でも…来週でも!」
「あー、じゃあまた来週やっか?今度はスパーじゃなくてちゃんとした練習試合でさ」
「そりゃいいッスねえ」「二人の試合楽しみだ」「はいっ!」
「―――わかりました。時間と場所はお任せします」
「ありがとうございます!」
「はろはろーアインハルト。学校ぶり〜」
「貴女は……ユタさん?どうしてここに」
「どうしても何も、私も練習に来てるからね。ねえアインハルト。私と一戦交えようよ。ねえ?覇王サマ?」
煽るように言いつつ、眼帯を少し上に上げてオッドアイをアインハルトにチラッと見せる。
「え、貴女も……?」
「ほほーん。覚えてないかぁ。しょうがないなぁ、プライド、セットアップ」
『イェッサー』
「なんで毎回返事変わるかね」
プライドに伝え、セットアップをするとようやく思い出したのかアインハルトが敵意剥き出しになった。
「思い出した?そう!貴女に一撃を!入れさせてもらったものデス!」
『なおその後油断してやられてますけどね』
「カッコイイシーン壊さないでもらえます?」
セットアップを解き改めてアインハルトに向かい合う。
やる気は十分すぎる、と言ったところかな。
「ノーヴェさん、ヴィヴィオちゃんの時と同じルールで審判お願いします」
「あ、ああ。4分1ラウンド。射砲撃とバインドはなしな」
「はーい」
「はい」
悪いけど、今回は圧勝する気持ちでいこう。気持ちで。
試合した相手を侮辱するやつは大大大嫌いなんです。
あのチャンピオンみたいなやつは特に。
「そんじゃ、レディー ゴー!」
〜3年前〜
「影がおかしい?」
「(コクッ)」
「はい、辺な動きをしてるらしくて。私やはやてさんといるときはそんなことないらしいんですけど」
突如呼ばれたはやては、先ほどのような説明を受けていた。
「ふーむ……わかった。調べてみるわ。ユタちゃ……ユタ、どんな感じか教えてくれるか?」
「そ、その。なんか、変だって、思って、よく、わからなくて。変な方を見たら、自分のこの黒い、影、急に、動いて」
ユタは拙いながらも必死にはやてへ状況を伝えようとしている。
「今はどこか変だって感じる?」
「(ブンブン)」
ユタは顔を横に振る。どうやら今は感じないらしい。
「マリナといるときも感じてないんやったな?」
「はい。でも1人になった途端、変な感じがするって」
「なるほど……マリナ、ちとユタを抱いてもらえんか?」
「え?は、はい」
マリナと呼ばれた蒼色の髪の子がユタを抱き上げる。
「……影に微かに魔力の残滓?我が家に入り込める技量はあるのに隠れる時だけこんなガサツなことあるか……?」
微かに残っている魔力の残滓をゆっくり、慎重に辿る。
行き着く先は、思ったよりもすぐそばだった。
「……なぁ、ユタ。ちょいと、影の方をも一回ジィーッと見てくれへんか?」
「え?で、でも……」
「だいじょーぶ!何があってもユタはウチが守るから!安心しぃ!」
屈託ない満面の笑顔のはやてに安心したのかユタは自分の影をジッと見つめる。
するとゆっくりと影が
「……あははっ。やっぱりなぁ」
「はやてさん、一体……」
「おおすまんすまん。マリナ、簡単に言うとな、全部ユタが原因やで」
「え?」
「無意識なんやろな。多分やけどユタの魔力変換が『影』なんじゃ無いかと思うてる。1人の時に影が動いたのは自己防衛のために漏れ出た魔力を無意識に操作してたから。今私たちといる時に起こってないのはユタがウチらといると安心してるから」
「そう……なんですか?」
「ほらユタ。影を見ながら……そうやね、マリナを考えてみ?」
「……?」
ユタは言われるがまま影を見ながらマリナを想う。
すると影はどんどん実体を持ち、真っ黒なマリナが出来上がった。
「な?」
「凄い……」
「マリナ、ごめんなぁ気づいてあげれなくて。怖かったやろ?でもこれはユタを守ってくれる力やから。大丈夫。もしユタが嫌だって言うなら、ちゃんと方法もあるから、安心しぃ」
「はい……!」