信じ続けて届かせるこの想い   作:迷子の鴉

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この世界を「生かす」価値はあるの?


出会い-リユニオン-

 何処かもわからない暗黒。

 海月(クラゲ)のように流れるままに漂い、死に体で放心している。

 

 流れ流れて行く末に声が耳に流し込まれるのを拒めない。

 

 変わる代わる。脳に声が流れていく。

 

 

 

 

【過去は変えられないが、未来なら変えられるかもしれない】

 

 

 

【あなたはこれまで、死んでもいいと思って戦ってきた。だからダメージを一切顧みようとしなかった】

【死ぬ気で戦う事と、死んでもいいと思って戦う事は、全く違うことよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

___死ぬことでしか、誰の役にも立てない

 

 

___いつだって誰かに嫌われる人生だった

 

 

_____だからもうどうでもいい

 

 

 

 

 

 

 

 

『この力は、決して希望を捨てない人々のためにある!それに気づけぬお前が、勝てる筈がない!』

 

 

 

『光は、人に受け継がれる希望……俺は戦う!俺は生きる!生きて、この光を繋ぐ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かに受け継がれ、再び輝く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 光はそうして、受け継がれてきた____

 

 

 

 お前だって継ぎたいと思ってここまで頑張ったんだよな?

 

 

 

 

 _______もう、俺の助けはいらないな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諦めるな! 継絆(つき)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 令和○○年

 日本、北関東内、五車町。

 

 G県の山中に人知れずに築かれた町がある。今世紀最大と謳われたニュータウン。それが五車町。

 

 

 そこにいる住人は一癖も二癖もある訳ありの者達だが、そこにこの劇の【主役】の彼女たちはいた。

 

 

 一人目の少女は、艶のあるショートボブが特徴だった。前髪で右目が隠れつつもあらわになっている左顔から整った可愛らしさが見える。着痩せ? で分かりにくいが巨乳(?)で全体の印象が儚げな人。悪く言うと根暗な雰囲気に見られてしまいそうな美人であった。

 というより全体の印象自体が薄いので町ですれ違っても、「お、あの子綺麗だな」と思った後に別の女性に目移りして忘れてしまうような印象の少女が田んぼに囲まれたコンクリート舗装の道路で止まっていた。

 

 

「(‥……誰?)」

 それは、彼女の目の前でどこの誰かも知らぬ二人目の少年が、田植え前の水だけが張られた田んぼに頭から突っ込んで気絶していたからだった。

 

 紹介が遅れた。

 彼女の名は死々村孤路。五車学園三年生風紀委員会所属の学生である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 N_Project

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

New concept Ultraman

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、継がれてきた希望()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(大丈夫?)」

「かああぁぁぁペッ!ペッ!うおえっ……」

 

 現在、死々村孤路は田んぼに顔を付け浸していた少年を引き上げ、少年の背をさすりながらえずく彼の傍に座っていた。

 見知らぬ人間で不審者が撃退されたみたいにくたばっていたが、流石に少年1人を田んぼに突っ込ませたまま通り過ぎるわけにはいかなかった。というよりもほったらかしにして窒息死などされたら流石に寝覚めが悪いし、何より見捨てるほどの冷酷さや倫理欠如は彼女は持ち合わせていなかった。

 そこで彼女は少年を足から引き上げた後、彼が飲み込んでしまった田んぼの水と不純物(土、稲の葉の切れ端)を背中をゆっくり叩きながら吐き出させていた。

 

 

「ぷはっ! ゴホッウオッゴッ、ヴェ──ー‼」

 長く田んぼに浸っていたことで器官に水が溜まっていたようだ。気道を確保するために少年は激しくせき込み続ける。そして胃酸も吐く。

「(落ち着いて、吐いた後に息をゆっくりと……)」

 先ほどから水を吐き出させているが、未だに呼吸が落ち着かず荒い息を繰り返す少年。

 落ち着かせようにも孤路に医療知識はないのでただ背をさすって呼吸を落ち着かせるしかない。

 何より少年の呼吸が落ち着く様子がなく、何度も何度も吐いている。

 少しため息をつき空を見上げた。

 これはもう遅刻確定だな、と諦めの感情が空に吸い込まれるように今日は青かった。

 

 

 

 

 

 

 

 数分後

 

「ありがとうございますゲホッ!‥‥ホントに助かりましたうっぷ、もう大丈夫ゥゥゥゥロロロロ‼」

「(大丈夫じゃないね)」

 少年は強がって見せるもすぐに咳き込み、滝のようにびちゃびちゃと道路脇の排水路に嘔吐する。少年が繰り出す終わらない惨状(吐しゃ物)に孤路はこの状態で今更この子をおいて学校に行けないなと完全に諦めた。

 そこでとりあえず彼女は少年に事情を聞くことにした。

 この町で唯一の学校の転校生、でもなさそうな不思議少年の隣にしゃがみ込み声をかける。

 

「おうぇぇ、まだ口の中がグチュグチュする……」

「(質問……いい?)」

「ウェ……あ、はい」

「(あなたは、何処から来たの? この街は……観光するところなんて何もないくらい……田舎町なんだよ)」

 

 孤路が述べたように、この『五車』と呼ぶ地域には観光名所など一つもない。あると言えばいくつかはあるのだが観光目的で来るには魅力の乏しい町である。

 実際にここに来るまでは電車は通っていない上にバスは3~4時間に一・二本か、移動するには山道ばかりの苦労しかない不便なクソ‥‥のどかな田舎町である。

 それ以上にこの町は様々な事情から外部の人間が来る地ではないのだが。

 

 

 そして彼の服装。五車ではまず見かけない都会で見かける(恐らく)若者系のファッションであった。分け目を見せない二八分けのツンと跳ねた髪。Gパンに合わせたハイカットスニーカー。青と緑の迷彩柄の奇抜なパーカーを羽織っていたことがこの田舎町に突如現れた異物感を放出していた。

 何より目を引き付けるのがパーカーの背に印字された文字。

 

『NEW OLNATIV EARTH』

 三単語の英字が横並びにでかくプリントされていた。

 しかも背中いっぱいに地球のイラストがこれでもかと大きく主張している。

 

(『新しいもう一つの地球』ってどういう意味で付けたんだろ……?)

 若干、少年の服のチョイスに引いた。

 

 

 孤路の質問に対し、少年は口を開こうとしたが。

 

 

「ペッペッ! ……え、あ、いやその。僕は……何でここに?」

「(……ん?)」

 読書好き孤路ちゃんの経験則が、彼の答えに対する違和感を察知。心の内側にいやな予感が発生。

「僕は、えと兄さん? 姉さん? に会うために……違う。誰かを探して、夢を探して、掴む。あれあれえええ‥‥」

 

 父親、兄、家族、夢、未来、光、探し物。単語が浮かんでは消え少年の頭を駆け巡る。薄ら薄ら映像が見えた気がするが、それもカシャカシャと切り替わって記憶から零れていく。

 ひとしきり悩んだ後に孤路に苦笑いで向き合う。

 

「ごめんなさい。僕、いわゆる記憶喪失みたいです」「(…………え──)」

 

 呆れる孤路。苦笑いする少年。

 緊張感がまるでないが、二人とも独特のノリで話を進めそうなタイプなので仕方ないかもしれない。

 

 しかし記憶喪失とは困ったものだ。孤路は少々悩む。

 普通に彼を警察に届けて身元を探してもらうことになるが、五車町はその住人の特異性から警察のような行政機関が存在しない。そのせいで問題が起きれば学生が首を突っ込んだり、住人の自らの手で解決しなければならない障害が出てしまっているが(かく言う自分もそういうことに対処する組織に入っているが)……

 少なくと孤路の記憶には『五車町内で記憶喪失の人間を見つけた時』の対処法など載っていなかった。

 

「(何か覚えていること‥‥ない?)」

「えーとそもそも僕、ここがどこで何で田んぼに頭から突っ込んでいたのか‥‥」

「(え、自分から突っ込んだんじゃないの?)」

「え。流石に田んぼに顔から突っ込むなんてしませんよ。自殺したいと思ってないし」

 

 とりあえずあの奇行は事故であったらしい。そして自殺でもなかったようだ。

 いよいよ少年の身元の手掛かりがなくなってきて、こうなれば学園の上の方に掛け合ってみるかと考えた。

 

 その時、孤路は彼の首元に鎖がかけられ、服の下に何かが隠れてしまわれているのを見た。

 

「(それは?)」

「え? あ、あった。……なにこれ?」

 

 少年が何かを手に取って、ようやく首の何かに気づく。

 

 

「……ドッグタグ?」

「(名前も……彫られてる)」

 二人でそろってその名を確認する。

 

『KOMON TUKI』

 

 英文字で彫られたそれは酷く不格好だった。単に言えば、素人がガリガリと削って縁取りも汚いものだった。

またドッグタグといってもそれは普通のドックタグが1枚あり、その金属片に先のような不格好に大きく名前だけが書かれているだけのものであったが。

 

「……これが僕の名前みたいです」「(うん)」「こもん、つきって書かれてます」「(変わってるね)」「……はい」

 二人はマイペースで話し込む。

「只、漢字が分かりません」「(仕方ないよそれは)」「仕方ないですね」「(うん)」

 MY paceで話し込んでいる。

 

「‥‥とり合えず呼びやすいほうで」

「(じゃ、ツキ君で)」

 MY(略)

 

「あ、そういえばあなたの名前……」

「(死々村孤路だよ)」

「シシムラ……コロ?」

「(後で読み方と書き方、教えてあげる)」

 

 簡略、簡略。

 とにかく二人は顔を合わせて、現状を確認していく。

 

「ツキ君はこれから……どうする?」

 尋ねたとたん、少年は蹲った。道路にお尻から腰を付けてコンクリート道路特有の熱による火傷の危険性も気にせず、ただ座って悩む。ひたすら悩む。

 

 

 

「……帰るばしょなんて、何処にもない……何処に、行けば……」

 

 

 

 少年は記憶がない。生まれたところがどこなのか。何をしにここに来たのか。家族は何処か。友達はいるのか。学校はどうしたのか。今何歳なのか。好きなものは何か。嫌いなものは何か。性癖は何か。夢は何か。

 

 ただ、叶えたい願い(欲望)が漠然としたものとして蠢いていた。

 それに意識が向くたびにどうしようもない淋しさと歓喜。焼き付くように胸を焦がす感情の爆発が連鎖していく。

 どうしようもなく、どうしたらいいのか分からず下を向いて陰で闇を作る。

 

 

 

 

「(ねぇ。行くところ、ないでしょ。じゃあ……とりあえず私と一緒に来てくれない?)」

「………………え」

 

 孤路は彼を見捨てなかった。

 ここで放っておくなんて有り得ない。何よりこの子をここに置きっ放しにすれば、この町で彼がどんな目に遭うか予想がつく。

 そこでとりあえず自分たち学生の最高責任者であり、町の代表に助けを求めることにしようと決め、彼を彼女の元に送り届けようと考え、ツキに提案した。

 

 

 

 

 

 何故、自分は()()()()()()()()()()()()()()前提で助けようとしたのか。

 残念ながら()()孤路の心にその問に対する答えは存在しなかった。

 

 

「あ、ありがとうございます……あの、よろしくお願いします……」

 孤路はにこりと微笑み返し、学園へ案内するために道なりにいつもの通学路を通る。

 少年は彼女の後ろに着いていく。自分の右手を孤路の手に繋ぎ、ゆっくりと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 孤路の目にセミと夕焼けの田舎道が垣間見える。今はまだ春上旬の午前。セミはおろか夕焼けもこの目に移されることはないのに。

 しかし孤路の目に映る『それ』は、今この目に映る現実だと捉える。

 もう細切れになった、色褪せ灰になりかけてしまった遠い遠い昔の記憶。

 

 

 

 

 

 

 _______まいごの、まいごの、こねこちゃん

 

________あなたのおうちはどこですか~? 

 

__________おうち~をきいても、わからない~

 

____________なまえ~をきいても、わからない~

 

 

 

 

 

 

 

「(……手、繋ぎたいの?)」

「え?……あ、すいません……!ちょっと無意識に……外します……」

「(いいよこのままでも。なんだか、楽しいし)」

 

 実際、彼が手を放そうとしたときに項垂れてしっぽが垂れ下がった子犬みたいに見えたことは内緒にしておこう。

 

 

 

 しばらく二人は黙っていた。

 何故かはわからないが、一言もしゃべらなかった。喋ることは不必要だと思った。

 ただ少しでも長く、一緒にいることでこの空気を二人で大きく腕で包むように暖かくなれたら良かった。

 

 

 まるでずっと、これを望んでいたかのような……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんか煙あがってません?」

「(!うそ……!)」

 

 学園に辿り着く直前になって、遠目で見える学園施設から火の手が上がっているのが二人には見えていた。

 さらに只ならぬ怒声と罵声が細々に聞こえてもいる。

 

「(ごめんね。案内の約束。ちょっと後回しになるかも)」

「え?あ、ちょっ!」

 

 瞬間、握られていた手が離れ二人は離れる。

 

 人間離れした走りでグングン遠ざかっていく孤路。

 置いてけぼりにされてしまった不審者少年。

 呆然と立ち尽くし俯く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクン。ドクン。ドクン。ドクン‥‥

 

「………………なんで、今なんだよ、ふざけんなよ……クソ……()()()()()()僕、ちゃんとここまで来れたのに……本当に、頑張った。のに……」

 孤路が学園へと去った途端に濁っていく瞳。冷や汗が流れ始め、背中にシャツが気持ち悪く張り付いていき、喘息の症状のように息が荒くなっていく。

途端に体の力が入らなくなり両手を地に付けて蹲る。

 安定しなくなる呂律。ぶれる一人称。ぜぇぜぇと吐き気がこみ上げるほどに息は苦しくなる。

 何もかもが歪むように見え始め、段々と少年はどす黒く滲んだものになっていく。

 両目から涙が溢れ始める。自分では止められず絶え間なく地に落ちて足元をポツポツと濡らす

 

「…………行かないでよ…………1人にしないでよ…………」

 

 

 彼の右手に今まで存在しないはずのものがあった。存在するはずもないし持ち物としてしまっていることもなかったものがあった。

 

 左手は真っ白になるほど強く握りしめ

 少年の右手には真っ黒な棒きれ/ダークエボルバーが握られていた。

 

そして彼は立ち上がる。

 

 

 

 

「……やっぱり大嫌いだアイツラ」

 

 

 

 

 

(ネクサス)の誕生まで、あと……

 




6月4日、微修正を行いました。

次回、面談
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