有坂優斗は勇者となる   作:雪印のフラン

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はい、どうも雪印のフランです。今回はちぃちゃんの過去とちぃちゃんにとっての優斗とはというのですね。本来の小説ならちぃちゃんが実家に帰ったところの話をやるのですが、優斗くんが先輩とイチャついて終わりましたからね。それでは本編をどうぞ


彼女にとって彼は【彼岸花の章】上

郡千景にとって有坂優斗とは()()()()()()()()()()であり、()()()()()()()()()()()()であった。

 

郡千景は恵まれた環境で育ったわけでは無かった。むしろ環境は劣悪と言っても過言ではなかった。千景が幼い頃に母親は別の男を作って家を出ていった。それにより父親は酒に溺れて、母親に似た容姿の千景に暴力を受ける日々。学校などでは、男を誑かす売女の娘としていじめられていた。靴を隠されたり、服を燃やされたり、暴力や暴言なども日常的にあった。そんな彼女に手を差しのべてくれるような人もそこにはいなかったのであった。だが、彼女に一つの転機が訪れたのであった。

 

 

 

今日も千景は暴力を受けた。来る日も来る日も暴力を受けており、千景の心は限界であった。誰にも相談できず、頼ることすら出来ない。夏の日差しがとても眩しい。今日は午前授業であり、明日からは長期休暇に入る。普通の子供であれば、友達と遊んだり、家族で旅行したりなどと楽しいイベントが盛りだくさんであり、心が踊るものである。しかし、千景は全くもって心が踊らなかった。家に帰っても自分の居場所などはない、きっとまたあの男(父親)に暴力を振るわれるのであろう。

(それなら……もう……

 

誰か……助けて

 

 

死んだほうが……

 

そう考えた千景は校舎の方へと歩いていった。そして彼女は階段を上がり、屋上へとやって来た。そうして扉を開けて、フェンスの方へと向かう。

(このフェンスを越えれば……私は自由に……)

そう思いフェンスに手をかける。そこで千景は気づいた。そのフェンスを越えたところの人が一人座れるぐらいのスペースで棒状のバニラアイスを食べている存在に。

「……何してるの?」

……「こっちのセリフよ」とそんな言葉は出てこなかった。その少年はさも、当然かのようにそこに座っていたのであった。郡千景から見たら……いや、誰から見ても屋上のフェンスの外でアイスを食べているこの少年は変人に見えるであろう。自殺をしようとした千景は思いがけずに変人に出会ってしまったのであった。

「それでアンタ、何してるの?」

「……あなたには関係ないわよ」

「おいおい、冷たいな…このアイスみたいに」

そう言ってウィンクをしてくる少年……正直に言おう非常にうざい。千景はだんだんこの人物に対して殺意が湧いてきた。

「……そもそも、あなたは誰よ?」

「ん?俺?」

「あなた以外で誰がここにいるのよ?」

千景は目の前の少年を初めて見た。その人物は黒色の髪に所々にある赤色のメッシュ、などと一度見たら忘れないような見た目をしていた。そもそもこの村に住んでいるのであれば、千景を見たら何かしらの反応はする筈である。しかし、この人物は未だに目立った反応をしない。

「俺は有坂優斗」

食べ終わったアイスの棒を咥えてそう、少年はそう名乗ったのであった。

 

ーーこれが有坂優斗と郡千景の出会いであったーー

 

「……有坂優斗」

やはり知らない名前であった。

「それで、アンタの名前は?」

「……千景……郡千景よ」

千景は名乗る気などあまり無かった、しかし何故か名乗ってしまった。……初めて自分の目を見て話してくれる人だったからだろうか。

「……そうか、千景ね。それで改めて聞くけど何してるの?ダイビングの練習?」

「そんなのここでするわけ無いでしょ」

「じゃあ何?影送り?」

「……あなた、名前でその思考に至ったでしょう。別に父親からそんな暇潰しを教わった覚えはないわ」

「あら、残念。じゃあ……」

調子が狂う。千景はそう感じた。そもそも千景は育った環境もあり、あまり人と話すことは得意ではない。このままだと何か癪にさわる。

「それよりも、あなたこそここで何をしてるの?」

「ん?俺か……俺は迷子だ」

「……迷子?」

予想外の答えに戸惑う。

「そう、爺ちゃんの家に昨日から来ててな。遊びに言ってこいって言われたら迷子になったんだよ」

笑いながらそう言う優斗。

(……迷子だからといってこんなところに来るかしら?)

千景の疑問はもっともである。

「それで、高いところからならワンチャン爺ちゃんの家が見えねぇかなって」

「……それで結果は?」

「全くわからん」

千景は呆れる。この男、どうやら馬鹿であるようだ。優斗はそんなことを気にせず、あっけらかんとしている。

「それでアンタは……ってあんたどうした!?服もボロボロだし痣が……」

そこで優斗はようやく千景の異常な格好に気付いた。優斗はフェンスを越えて千景の元へ駆け寄る。

「……あんた一体何が?」

「……さっきも言ったけど……あなたには関係ないわ」

しかし千景はそれを冷たくあしらう。

「……まぁ、ともかく行くぞ」

そう言って優斗は千景の手を引く。

「ちょっと!?行くって何処に?」

「ん?怪我してるんだ。保健室に決まってるだろ」

「私は大丈夫だから……そもそもあなた、この学校の生徒じゃないから保健室の場所知らないでしょ」

「あ……それはそれとしていいから行くぞ」

そうして千景は優斗に連れられて行くのだった。

 

 

「……やっとたどり着いた」

「……驚いたわ、ことごとく保健室から遠ざかる道を通るなんて」

保健室に行く途中の道で何度か別れ道などがあったりしたが、優斗はことごとく保健室から離れる道を選んでおり、最終的には千景が保健室への道を教える羽目になった。そんな事があってようやく保健室へとたどり着いた。そうして優斗は保健室の扉を開ける。

「すいませ~ん」

「……それって入る前に言うものじゃない?」

保健室には誰もいなかった。

「ってあれ?誰もいないのか」

優斗は遠慮せずに保健室へと入っていく。そこで救急箱を見つけたのでそちらの方へと向かう。

「それじゃあ千景、座ってくれ」

「……別に構わないわよ」

「いや、駄目だ。菌が入ったりすると危ないからな」

「……それに勝手に学校の備品を使ったりしたら……」

「今使わないで、いつ使うんだよ。こいつらも人の役に立つ為に作られたんだ。役に立てて本望だろ」

優斗は慣れた手つきで千景の応急措置をする。

(この痣……昨日、今日で出来た痣じゃないな。他にも……打撲に火傷、切り傷。……いくらなんでも自分1人で出来たのものじゃないよな)

応急措置をしながらそんなことを考えている優斗。千景は何も喋らずにされるがままである。

「……終わったぞ」

「……ありがとう」

「………」

「………」

暫くの間、沈黙が場を支配する。

「……ねぇ」

それを破ったのは千景だった。

「なんで……私を助けたの?」

「……助けるなんて、そんな大袈裟なことはしたつもりはない」

「それでもよ……放っておけば……見ないふりをすればよかったじゃない」

「悪いな、お節介で……それでも俺は見ないふりなんて出来ない。俺は、今日ここで見たんだから……君が…郡千景が()()()()()()()()()()()()()()()

「!?」

その言葉に千景は目を見張った。それは()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

「俺は君のことを全然知らない……でも一つだけ言えることがある」

「………」

()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……っ!!

(……何も知らない癖に!!)

実際に優斗は何も知らない。今すぐに文句を言い出したい……それなのに千景は声に出すことができなかった。ただ……目から溢れ落ちる涙。それは初めて千景が人に見せる()()であった。こうして郡千景は会ってまもない、名前だけしか知らないような少年に救われたのであった。

 

 

 

 




はい今回は優斗とちぃちゃんの出会いでした。今回の話で何処かに千景の本心が隠されているので暇でしたら探して見てください。もし、初見でそれに気付いた人がいたとしたらヤバイですね。その人は立派な【雪フラ民】ですね、家族や友達に自慢しましょう(やらなくていいです)。とりあえず今回はここまでです。最後まで見て頂いてありがとうございます。また、次回お会いしましょう。
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