千景はしばらく泣き続けた。
「……ありがとう……もう大丈夫」
数分後に優斗から離れ、感謝を述べる。
「気にするな、困ったときはお互いサマーだろ」
「フッ……なによそれ」
凄くくだらないギャグであったが、そんなやり取りがとても嬉かった。こんなくだらないことで笑いあえる関係、きっとそれは千景がずっと望んでいたものであろう。そんな風に笑っている千景を見て、優斗も笑みを浮かべる。
「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」
「え……」
今回、千景と優斗は偶然出会っただけなのである。自殺をしようとしていた少女と迷子で何故か屋上にいた少年。こんな二人が出会えたことすら奇跡である。もう一度出会うなんてことはあり得ないそう考えてしまう。
(……嫌だ、行ってほしくない)
そんな思いで千景は去ろうとしている優斗に手を伸ばす。しかし、千景は椅子に腰かけており、扉に手を掛けている優斗には届きそうにもない。
「待……「あ、そうだ」
千景が言葉を言いかけたとき、優斗が何かを思いだしたかのように千景の方へ向かう。
「またな、千景」
そうして優斗は拳を千景の前にさしだしてくる。一瞬、殴られるかと思っていて身構えた彼女であったが、そんな心配は不要であった。それよりも嬉かったのだ。
(……
優斗はまた会ってくれると言ってくれたそれがとても嬉かったのだ。だから、彼女は
「うん、またね優斗!」
自分でできる精一杯の笑顔で彼の拳に自分の拳を押し付けるのであった。その反応に満足した優斗は保健室から出ていく。一人になった千景であったが、不思議と寂しさはしなかった。
(……次はもっと色々なことをしたいなぁ)
そんな未来のことを考えているからであろう。
「……早く会いたいなぁ」
そんな風に呟く彼女。すると急に保健室の扉が開けられる。
「ごめん、帰り道ってどっちだっけ?」
「………」
(……早く会いたいとは言ったけど、別にこんな早くは望んでないわよ)
そんな風に千景は呆れたのであった。
「はぁ……まさかたかが10分の道3時間もかけるなんて」
「……すみません」
あのあと結局道がわからない優斗と千景が優斗の祖父母の家を捜索したのであった。だが、その際に優斗は道をことごとく間違えた。それなのに後退のネジを外してるとかほざいている優斗が前に進んでいった。この地域で生まれ育った千景ですら知らない場所にたどり着いたりもした。だが、結局学校から徒歩10分ぐらいの距離に優斗の祖父母の家はあった。その事実に不満そうに文句を言う千景。そんな彼女の様子に申し訳なさそうにする優斗。
「別に構わないわよ、楽しくなかったわけではないし」
今まで、一人で過ごしてきた千景にとって友、人と何処かに行く経験などは勿論ない。それに加えて、自分も知らないような道を歩いて冒険するなど自分がゲームの世界の住人になった気分であった。
「でも、今度は迷わないでね」
「安心してくれ、俺は同じ道で迷ったことは一度もない」
「まず、迷うことを問題視しなさい」
楽しかったことと疲れたことは別の話だ。途中で休憩はしたものの、夏の暑い日の昼間に歩いたのだ。当然は疲れはたまる。そのことに軽く悪態をつく千景。そんなことは気にせず得意気に当たり前のことをいう優斗には多少呆れている。これまでの時間で優斗の扱い方を心得てきた。
「それじゃあ……」
そう言って千景は拳を優斗の前につきだす。
「……またね」
「おう、またな」
優斗がだされた拳に拳を合わせる。そうして二人は別れていった。優斗が家に送ろうかといったものの千景は断った。そこまで離れた距離ではないし、優斗にあの家の落書きを見られたくなかったのである。そこからの千景の日々は色付いたように楽しくなった。毎日、優斗と千景は会って遊んでいた。ゲームをしたり、外で遊んだり、迷子になったりしていた。優斗の祖父母は千景の状況を知っていた為、「辛くなったらいつでもいらっしゃい」と優しく声をかけてくれた。中でも驚いたのが千景に対するいじめや父親の虐待が極端に減ったのが千景にとっては衝撃であった。最初の方は罵詈雑言を言ってきたり、嫌がらせをしてきたがある日を境にそれは無くなった。それどころか遊んでいる千景と優斗を見ると何かに怯えたようにすぐに何処かへ行くようになった。父親も最近では暴力などが極端に減っていた。そのことを千景は優斗に話してみたりしたが「知らん、そんなことより今日こそ俺のプ○ンの実力を見せてやる」とスマッシュなブラザーズのゲームの話へと移った。
(こんな日々が永遠に続けばいいのに)
千景はそんなことを考えていた。勿論、永遠になど続くわけがない。優斗が来て二週間優斗は家に帰ることになった。
「長いようで短かったそんな二週間だったわ」
「おいおい、夏休みはまだ終わってないだろ」
「そうね」
「………」
会話は続かず、しばらくの沈黙が訪れる。やがてその沈黙を破ったのは千景であった。
「ねぇ、優斗」
言うのを躊躇う……それでも彼女は口にする。
「……もう少しだけ、ここにいてくれない」
自分でも無茶を言っていることは千景はわかっていた。でも言わずにはいられなかった。それほどまでに千景にとっては優斗との時間は楽しかった。
「……ごめん」
「……そう」
断られることなどわかっていた。それでも残念に思わずにはいられない。涙を流さずにはいられなかった。
「……ここには居られないけとざ、別に一生会えないわけじゃない」
「……優斗」
「離れていても、会えなくても……繋がりはある、そうだろ」
「……フフフ、まさかあなたにそんなことを言われるとはね」
「そうだろ、まぁ親友の受け売りだけどな」
「へぇ、そうなの……その親友って女?」
「あぁ、女だけど」
それを聞いて千景は優斗の尻をける。
「イタッっっ!!なんで!?」
「……さぁね」
そうしてまたしばらくの沈黙が訪れる。しかし先程までの気まずさはなかった。やがて時間がたち優斗の両親が優斗を迎えにきた。
「……時間だな」
「そうね」
そうして優斗は千景に拳をつきだす。それに千景は拳をあわせる。そうして二人は大きな声で言うのだ。
「「またな(ね)」」
そうして千景と優斗は長期休暇で優斗が祖父母の家に帰ってきたときには毎回遊んでいた。こんなことが多分、ずっと続いていくのだろうとそう考えていた。しかしそうはいかなかった。
<千景side>
彼の祖父母から優斗達に連絡が届かなくなったと聞いたとき胸が張り裂けそうになった。日常に色がまた失われた。テレビを見ても他の県とは連絡が繋がらないらしい。私もゲーム機の連絡機能で何度も何度も連絡を取ろうとする。……しかし一向に繋がらない。そんな中でも状況はどんどん進んでいった。導かれるように神社にたどり着いた。そこで大きな鎌に触れた。それに触れると力が溢れてくるようだった。そしてその神社では【
そうしてまたしばらく時間がたった。優斗との連絡はまだつかない。『大社』と呼ばれる組織に丸亀城へと集められた。そこには私を含めて4人の少女がいた。会ったこともない人間が急に集められたのだ当然会話などはできる筈がない。一体なんの集まりだそんなことを考えたそのときであった。扉が開いて2人の少女と……1人の少年が入ってきた。
「……優斗?」
黒色の髪に赤色のメッシュ……一度たりとも忘れたことがない。どこか変わった気がするが、間違いなく……有坂優斗であった。
「久しぶり、千景」
ずっと聞きたかったその声を聞いたとき、私は彼を抱き締めていた。そして私は彼の胸で泣いたのであった。私は彼を強く抱き締めている。体温は感じる、それなのにどこか彼は
それからというもの私の日常はまた色付き始めた。高嶋さんという親友ができたこと。勇者の力によって村の人が私を見る視線が変わったこと。そしてなにより……彼と……優斗と生きて出会えたことそれが私にとって大きかった。でも、今の彼は危険な感じがする。元々、迷子体質なので目を離したら何処に行くかわからないような人間であったが、今では目を離したらいなくなってしまうよな、そんな感じがする。それに授業もよく遅刻する。授業中に居眠りをする。目にくまがある。そしてなにより昔のような無邪気さが減ってしまっているのである。過去の彼は土居さんのようであった。しかし今の彼にはその面影が少ししかない。無理にそうしようと演じているような気がする。だからこそ私は勇者として戦うのだ。
(……皆に……彼に……認めて、必要とされる存在になるために)
途中から自分でもわかんなくなってきました。というか嘘っ私の編集速度遅すぎっ!!12話くらい投稿しているのに一向に『乃木若葉は勇者である 上』から進んでいる気がしません。というわけで次回はやっとバーテックスとの戦闘第二回戦ですかね。もしかしたら別作品を投稿するかも……(もっとこれの投稿が遅くなりそう)まぁいいや、今回も見ていただいてありがとうございました。それではまた次回