授業間の休み時間。
「……zzz」
優斗は夢の世界へと旅立っていた。いつものアイマスクに加えて彼の頭の下には【サンチョ】と呼ばれる謎の猫の抱き枕があった。この枕は寝付きが悪いということを茉莉にうっかり漏らしたときに彼女から押し付けられたものである。貰い物なので捨てるわけにもいかず、試しに使ってみたら普段よりも寝れたので重宝している。そのおかげで以前と比べたら良くなったものの
「それでは授業を……その前に誰か有坂くんを起こしてくれる」
「わかりました」
教師は授業を始めようとしたところ寝ている優斗に気づいて誰かに起こすように指示をする。それに返答した若葉は優斗の前まで行って、手に持つ丸めた教科書を思いっきり振り下ろしたのだった。
「ミギャァァァァァァァァァ!!」
叩かれた優斗は無様な悲鳴をあげながらしばらくのたうちまわっていた。ちなみにその無様な悲鳴は丸亀城中に響いた。
「ぅぅぅ……まだ痛い」
あれから授業が終わり、優斗達は食堂へと来ていた。
「その……悪かった……色々あってな」
若葉は結局最後までどちらの中にも入れなかったことを悔やんでいた。そんな中でも丁度いい
「それにしてもタマちゃんとアンちゃんって、本当に仲良しさんだね」
「タマたち、ほとんど姉妹みたいなもんだしなっ!」
「えへへ」
友奈が優斗の話から球子たちへと話を移した。話を振られた球子は自慢げに言い放ち杏へと抱きついた。しかし、球子のほうが杏よりも小柄なため、抱きしめるというより、抱きついているように見える。
(コアラみたいだな)
(コアラみたいね)
その様子をみて優斗と千景は同じ動物を連想していた。抱きつかれている杏も迷惑そうにはしていない。
「というかタマたち、もう一緒に暮らしてもいいくらいだ」
「うーん……でも、タマっち先輩と暮らすなら色々大変そう。部屋の中に自転車とかキャンプ道具とか、よくわからないもの置いてあるから、まずはそれを片付けてもらわないと」
「あ、あれはただの自転車じゃないぞ、ロードバイクだ。錆びたりしないよう、部屋の中に置いとくんだよ。それにキャンプ道具だって、そのうち使うからっ!……勇者になってから、なかなかできないけど」
球子はアウトドアが好きで、休みの日は自転車で遠出をしたり、山登りをしている。本当は、山でキャンプをしたりしたいのだが、勇者という立場上、万が一の状況があるため許可が下りない。ちなみに、優斗は一回だけこの山登りに付き合っており、その際に二人揃っていながらも迷子になった。
「だいたい、それを言うなら杏の部屋だって相当だぞ?本棚も机の上もベッドの枕元にも、部屋中が本だらけじゃんかよ。しかも恋愛小説、恋愛小説、恋愛小説、恋愛小説、恋愛小説……そればっかりだっ!部屋に行くたびに増えてるし」
「それがいいんだよ〜。本に囲まれていると幸せな気分になるんだよ」
「
「何処の英霊よ……あと知ってるかしら優斗、この世は弱肉強食なのよ」
杏がうっとりとしているなかで優斗と千景はゲームをしながら話を聞いていた。ちなみにこの二人、昼食を食べ終わってからずっとやってる。そして今、回復のできなかった哀れな優斗の画面にはゲームオーバーの文字が表示されている。そうして優斗はそっとゲームを置いた。
「それにしても、お前ら仲がいいな。互いの部屋もよく知ってるし」
「当然!タマと杏は部屋が隣同士だし、よく部屋に入り浸っているからなっ!」
勇者達が通う学校は全寮制であり、校舎である丸亀城の敷地内に奇宿屋があり、勇者の6人と巫女のひなたが暮らしている。優斗の部屋は彼女たちの部屋とは離れている。
「それなら若葉ちゃんも、しょっちゅう私の部屋に来ますよ」
球子の話に対抗してどこかか自慢げに胸を張っっていうひなた。
「若葉ちゃんは私の部屋に来ると、困り顔で相談事を持ちかけてきたり、膝枕で耳掃除をしてほしいとねだってきたりしますね」
「ひ、ひなた!」
慌てて口を塞ごうとする若葉であったが、もう後の祭りである。
「いつもの若葉さんとイメージが違いすぎます………」
杏は意外そうな視線を向けており。
「若葉ちゃんって、もしかして甘えん坊さん?」
「私の前限定で、です」
友奈がきょとんとして質問してひなたがそれにこたえる。
「……フッ」
千景はその様子を鼻で笑っている。
「……………」
球子と優斗は若葉と視線を合わせないようにそっぽを向いている。こころなしかその二人は小刻みに震えている。二人が笑いをこらえているのは誰の目から見ても明らかだった。
(この二人……後でしばく)
若葉がひっそりと決意を固めた瞬間である。
「そういえば、若葉さんはいつも自然とひなたさんの隣に座りますよね。今もですし」
「だ、だが、ひなただって毎晩特に用がなくても私の部屋に来るじゃないか。きっと寂しいからだろう!?」
「いえ、私の場合は、若葉ちゃんが明日の準備ができているかなどを確認しに行っているんです。若葉ちゃんは毎日、課題の予習復習は完璧にしているんですが、使ったあとの教科書を鞄に入れ忘れたり、時々うっかりしてますから。もちろん、そんなときはこっそり鞄の中に教科書、ノートを戻しておきます」
「え……そんなことをしていたのか!?」
「オカンか!?そして知らんのかい!」
ひなたの発言に驚きを隠せない若葉、笑っていた優斗も思わずツッコんでしまう。
「優斗くんの言う通り、ひなちゃんって若葉ちゃんのお母さんみたい」
「当然です、若葉ちゃんは私が育てましたから」
「……これが光源氏計画とやらね」
「えぇ、まさかこの目で見れるとは……これで若葉さんはひなたさん無しでは生きれなくなってしまって、ひなたさんは若葉さんを自分の物にするという目的を達成してそのまま二人のキスシーンで終わるハッピーエンドに」
「……それは本当にハッピーなのか?」
こうして食堂での時間が過ぎた。食堂からの帰り道ひなたが杏に尋ねた。内容は杏と球子がどうしてそんなに仲がよいのかというものだった。ひなたは巫女であり勇者たちの基本のデータはだいたい把握していた。もっとも知らないこともたくさんある。たった数回程度しか会って球子と杏の二人が、丸亀城に収集されてからときに既に数年来の親友のように仲が良いのかも把握していないことの一つであった。その質問に杏は前を歩く球子の背中を見ながら答えた。「バーテックスに襲われているところを助けてくれた。自分を救い出してくれ拠り所である」と。ひなたはその話に感動しており球子は恥ずかしそうに話を聞いていた。もちろん話は全員に聞こえておりひなたに王子様と称されたといには、羞恥のあまり球子が暴れだしたが若葉と友奈の二人がかりで止めていた。
「……王子様ねぇ」
「どうかしたの?」
「……いや、随分と小さい王子様だなと思ってな」
「…それもそうね、王子様ならあと20cmくらいは欲しいわね」
いつもと違いどこか複雑そうな顔を見せて呟く優斗。いつもと違う反応に疑問を浮かべる千景であった千景だがすぐにいつもの調子に戻ったのでその後はとくに気にすることは無かった。
【王子様】……かつて諏訪の勇者、白鳥歌野との通信の際に出てきた言葉であった。自身とは無縁であろう言葉だった。優斗は
まさかのまだ上巻の五話目の半分……番外編とかも作る予定なのに『あの走りに憧れて』のほうが早く終わりそう……今回はここまでです最後まで見ていただきありがとうございました。それではまた次回!