西暦2018年8月末日
あれから、3年の月日がたった。優斗はたった一人で四国へと辿り着いて、彼は現地の巫女や神官の人達と話して【大社】と呼ばれる組織に所属して【勇者】の副リーダーや、【鏑矢】となった。最も副リーダーとは言われるが名ばかりであり、よく遅刻したり、授業中に昼寝などをしているなどと不真面目であり、リーダによく注意をされている。
そんな彼は今、リーダである乃木若葉を探しながら歩いていた。いつもは自分が探される側なので、偶には最初から居てやろうと放送室で待機をしていたら、全然来る気がしないので探しに出ている。しばらく歩くと話し声が聞こえてきた。若葉とひなたのものだろう。
「乃木、上里、入るぞ。もうそろそろ諏訪との通信だから乃木を借りて……」
「「あ……」」
話している最中であったが、彼は思わず話を止める。そこには若葉を膝枕して耳かきをしているひなたとそれをされて気持ちよさそうにしている若葉がいた。優斗に気付いた、ひなたは「見つかっちゃいましたね」と笑っていたが問題なのは若葉の方である。顔を真っ赤になっており、体が震えている。それをひなたと若葉の顔を何度も見合わせた優斗は微笑み、そして
「………ごゆっくりと」
そう言って扉を閉める。扉を閉めた彼は直様走りだす。閉めた部屋からは若葉の叫び声が聞こえるが気にしない。
『……諏訪より、白鳥です。勇者通信を初めます。』
「香川より、乃木だ。よろしくお願いする」
「痛ぇ、同じく香川より、有坂です。よろしくお願いします」
『なんか一人、大丈夫じゃなさそうな人がいるのだけれど…まぁ有坂さんが大丈夫じゃないのはいつものことね」
「なんでさ」
あの後、逃げた優斗は結局若葉に捕まって拳骨をくらって、放送室へと連行された優斗。思わず痛みが声に出てしまうが、特に気にせずいつものことで済まそうとする白鳥こと【
「白鳥さんそちらの状況はどうだ?」
『芳しくはありませんね。もっとも、そんなことを言えば三年前から状況が芳しかったことなど一度もありません』
「……違いない」
「諏訪の人達の様子はどうですか?」
『諏訪の人達?えぇ……特に問題などはありませんが。有坂さんが質問なんて珍しい。何かあったんですか?』
「俺も、大阪から四国へと逃げてきた身でしてね、その時に生き残ったのは俺だけなんですよ、だからちょっと気掛かりでして」
『なるほど…大丈夫です。諏訪の人達やみーちゃんは私が守るので』
「その言葉が聞けて満足です」
『今は現状維持ができるだけで……■■……でしょう』
「すまない、通信にノイズが入ったようだ」
「………っ!!」
『ああ、現状維持ができるだけでも御の字だと言ったのです。通信ノイズ、最近多くなっていますね』
「そうだな……」
「はい……」
『この通信もいつまで続けられるか……』
3人に不穏な空気が見え始めるが、若葉が冗談めいた口調で話題を変える。
「ところで白鳥さん。そろそろ決着をつけようじゃないか……」
『ええ、私もそう思っていたところです。今日こそは雌雄を決しましょう……』
『「うどんと蕎麦、どちらが優れているか、を!」』
「…結局これか…」
ノリノリな歌野と若葉に対して、テンションがだだ下がりしてため息をついて呆れる優斗。そうこの二人は通信のときに毎回【うどん蕎麦論争】*1を始めるのだ。
『ところで、有坂さんは結局どっち派なんですか?』
「ん…たがら俺はうどんや蕎麦派ではなくて
「…有坂、何故お前はうどんの良さがわからないんだ!?それでもお前は人間か!?」
「なんでさ!!そこまで言われる筋合いはないぞ!」
『…フフフ、そう
「ん?何を笑っているんだ白鳥さん?」
『突然だけど乃木さん、ラーメンの別名って知ってるかしら?』
「知らないが…それがどうしたんだ?」
『私も最近みーちゃんから教わったのよね』
『
「何ィィィィィィィィィィィィィイ!?」
「みーちゃァァァァァァァァァァん!?」
若葉はその発言に対しての驚愕を優斗はそれを歌野に対して教えたみーちゃんこと【
『フフフ、つまり彼はひっそりと自分が蕎麦派であることをアピールしていたのよ。この・照・れ・屋・さ・ん』
「うぜぇぇぇぇ!!」
「裏切ったなぁァァァ!!有坂優斗ォォォォォ!!」
「裏切るどころか入ってすらいないんだけどォォォ!!」
『フフフ、これで我が蕎麦派のビクトリーは決まったようなものね』
「いや、まだ……まだ…時間は…」
そんな時、チャイムの音が鳴り響いた。今は夏休み中ではあるが、チャイムは正確に同じ時間に鳴る。
「…時間切れか、クソっ!!このままでは終わらん。明日までに必ず有坂をうどん派にしてみせるぞ!」
「え?」
『まぁ、有坂さんが蕎麦派なのは確実として……明日からは新学期が始まりますから、通信は放課後の時間にした方がいいですね』
「うむ、ではそうしよう。諏訪の無事と健闘を祈る」
「その前に一ついいか」
「なんだ?」
「これからこの通信機の調整をするから、白鳥さんには通信機を付けたままにしておいてくれませんか?」
『わかったわ』
「私はどうすればいい?」
「俺一人で調整をするから帰って構わないぞ」
「そうか、なら終わったら連絡してくれ」
「ん?何故?」
「決まっているだろう、お前にこれでもかとうどんの良さを教えてやる。こうなればひなた達も呼んで徹底的にやるからな」
「………」
『…では乃木さん。四国の健闘と無事を祈ります』
そうして若葉は放送室を去っていたのだった。
『…彼女は去ったので話をさせていただきます』
「レディを騙すなんて、将来いい男になれませんよ有坂さん。」
若葉が去った後で歌野は残った優斗と会話をすることになった。おそらくは
『俺の将来のことはどうでもいいですよ。急かすようで悪いんですが貴方達の返答は?』
「みーちゃんと話し合ってを決めました」
「私達は諏訪に残って戦い続けます」
優斗が彼女達にした問とは『諏訪に残って戦うか歌野と水都の二人だけで四国へ逃げるか』というものであった。歌野と水都の二人は話合ってこの選択を決断したのだ。
『……理由をお聞きしても?』
「ええ、いいわ。四国へと逃げるそうすればここよりもずっと平和で、貴方達四国の勇者もいる。きっととても楽しいと思うわ。…でも私達は諏訪をこの地に住む人達を見捨てておけないわ」
『例え、信じていた諏訪の人達に裏切られたとしても』
「ええ、私には信じて何処までも着いてきてくれるあの子…みーちゃんがいるから」
『……そうですか、貴方の決断を尊重します白鳥歌野』
「いいわよ。それよりごめんなさいね、貴方も私達の為に頑張ってきたんでしょう。それを全て無駄にするようなことになっちゃって」
『構いませんよ。貴方達に比べれば俺なんて苦労のうちに入りませんよ』
「ちなみに、私達が逃げると決断していたらどうしていたの?」
『俺が一人で食料などを持って向かいに行ってましたね』
「まぁ、王子様みたいね。それで白馬にでも乗っていたらベリーグッド」
『顔をみて落胆しますよ。それに俺は王子様なんてそんな人ではありませんので。寧ろ逆ですよ、元いた土地…大阪から俺は逃げて来たのでね』
「それで私達に同情でもしたの?」
『そうですね。貴方達二人を助けて逃げてきた罪の償いでもしようと思ったんですけどね、見事振られちゃいました』
「
『へ?』
「ダウト、有坂さん貴方の嘘を発見したの」
『…嘘とは?』
さっきまではあっけらかんと会話していた二人だが歌野のダウトという発言によって空気が変わり始める。
「
歌野の考察それを聞いた優斗の答えは
『………』
沈黙であった。
「反論はないようね」
『……バレないと思っていたんですけどね、いつからバレていたんですか?」
「みーちゃんと話し合った時にね、貴方は確かに逃げたのかもしれない。…でもそれは大阪の人じゃない…
『…それで、騙していると知ってながら返答したんですか?』
「えぇ、とても大事なことは本当だったから」
「私達を助けたいという思いだけは」
『…本当に残念です。
…
「そんな風に思ってもせめて、私達を助けようとする。
『そうしなければいけない、それが
「そう………」
(もっと素直になればいいのに)
口に出そうと思ったが、思い留まった。これは
『それでは…すみません、長くなってしまって…御武運を…歌野』
「えぇ…御武運を…優斗」
(そして…優斗…あなたに救いがあることを)
歌野はそう思いながら優斗との通信を切った。
不穏な感じで終わりましたね、誤字ってないか心配です。果たして優斗はどうなってしまうか次はようやくのわゆメンバー全員集合します。ではここまで読んでいただいてありがとうございました。