残念なIS   作:通りすがり1

1 / 3
NOS(にじふぁん)の時と同じく、誕生日ということでなんとなく投稿。
三年前と違うのは、ストックが一つもないこと。
タイトル一緒だけど色々変えるつもりだからけっこう別物かも。
週一投稿を目指す予定。
誤字脱字あったら極力直します。


1.残念な幼馴染(ファースト)
プロローグ、夢の終わり


 少女が笑う。

 

 いちか、いちか、と俺の名前を口の中で転がすように繰り返しては、にこにこと無邪気に笑っている。

 

 暖かな風が、俺の頬を撫ぜる。

 

 ひらりはらりと、優雅に踊る桜の花びらが彼女を飾り、眩しい逆光がその顔に影を落とす。

 

 シロ、と俺と彼女だけの、彼女を指す名を口にする。

 

 ぱっ、とさらに輝きを増した笑顔が向けられる。

 

 いちか、と表情そのままの弾んだ声と共に、とてとてと歩いてくる。

 

 近づいて来る彼女の瞳の中には、満面の笑みを浮かべた俺が居た。

 

 シロ、彼女は俺の、何よりも大切なーーー。

 

 

 

 暗転。

 

 

 

 おまじない、と彼女は言った。

 

 いつか、どこかで、また出逢えるように、と。

 

 悲しそうな顔で、俺に白い剣のペンダントを渡した。

 

 これと対なんだよ、と黒い本のペンダントを見せて。

 

 薄まっていく。

 

 綻んでいく。

 

 稀釈され、曖昧に、不確かに、ぼやけていく。

 

 視界が、意識が、世界が。

 

 ぼんやりとした全ての中に、一滴の涙が落ちた。

 

 なぜだが、それだけが酷く鮮明に見えた。

 

 気が付いたら彼女を抱きしめていた。いや、抱きついていたと言うべきだろうか、そう身長の変わらない子供同士がくっ付いている様は、客観的にはそう表現するべきだろう。

 

 ……視点がおかしい、俺は一歩離れた位置から幼い俺自身(・・・・・)を見ていた。

 

 ああ、と何となく自分の状況を察した。

 

 離れていく、ここ(・・)から、俺が離れていく。

 

 全てが遠く朧気になっていく意識の中、たった一言だけが、なぜか俺の耳に強く届いた。

 

「うん、やくそくだよ、いちか!」

 

 ああ、そうだ、俺はこの時、何か大切な約束をーーー。

 

 

 

 暗転。

 

 

 

 夢を見ていた。

 

 遠い遠い、儚い夢を。

 

 暖かくて、優しくて、ビー玉のように光り輝く、キラキラとした眩しい世界。

 

 確かに交わした、たった一つの大切な約束。

 

 目を覚ましてしまえば、輪郭を辿る事くらいしかできないあやふやな幻。

 

 それでもそれは、いつか大切な何かを思い出させてくれるような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それでは遅いのだ。

 

 いつか思い出させてくれる、なんて何を甘ったれた事を言っているのか。

 

 これは警告だ。

 

 早く思い出せ、早く思い出せ、と急かしているんだ。

 

 わかったような気になって、本当は何一つわかってなんかいないじゃないか。

 

 全てを忘れ、何も思い出す事のなかった俺に、何も言わず寄り添ってくれた、誰よりも大切な少女。

 

 俺はもう、彼女の笑顔を、二度と見ることができない。

 

 だから、ああ、だから。

 

 早く、早く思い出してくれ、俺。




という夢を見たのさ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。