残念なIS   作:通りすがり1

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週一投稿を目指すとは言ったが、できるとは言ってない←
艦これとレンタルしてきたゾイドジェネシスとマキブに忙しかったから仕方ないよね!


第二話「仰せのままに、お姫様」

「ねぇ、あれが……」

 

 疲れた。

 なんというか、もう、うん、疲れた。

 

「はふぅ〜、眼福眼福……」

 

 思い出したくもないから、回想もなし、文句は断じて受け付けねぇ。

 とりあえず教師二人、せめてあんたらくらいは自重してくれ頼むから。

 

「千冬お姉様の……」

 

 さて、と。

 

「うはっwww ガチロリっ子www テラカワユスwww」

 

 この状況、どげんかせんといかん。

 俺達はカンカンとランラン(日本初のパンダ達)か、と言わんばかりに一組の教室内、及び隣接する廊下にはギャラリーがひしめいているのだ。

 その恐怖たるや、筆舌に尽くし難い。隣の小動物なんて、早々に頭を抱えてフルフルと震え始めてしまった。哀れだ。

 状況を打破しようと、ファースト幼馴染の姿を探して視線を走らせた俺は、目標を見つけた瞬間即座に逸らした。

 知らない、幼女にハァハァ言ってるクール系幼馴染なんて、俺は知らない。箒のあんな一面見たくなかった。人の業というものの深淵をのぞいた気分だ。深淵にのぞかれたら嫌だから見なかったことにしよう。願わくば、次に視線を向ける時箒が元に戻っていますように。

 

「話がある、来てくれ」

 

 頼れる者がいない以上、信じるべきは自分のみ。努めて普段通りの声を出して、小動物の肩に手を置く。ここで拒否されたり、周囲からバッシングが来たらと思うと身が竦むが、もうやっちまったから後戻りはできない。幸いな事に、セクハラだとかの罵詈雑言が飛んでくる事はなかったが、誰一人リアクションがない。幸いじゃなかった、なにこれ辛い。シカトか。イジメか。イジメなのか。泣くぞこら。かくなるうえは、強引にでも事を運ぶしかない。

 南無三! 心の中で叫び、呆気に取られている女子達(肩に手を置かれている小動物含む)を他所に、小動物の膝裏に余った手を回し、肩に置いた手を背に回す。ぶつからないよう足で机をずらしてから一気に持ち上げ、身体ごと教室の出入口へと向き直る。ザザザザッ、と、音が出るほどの勢いで人が引き、廊下の人垣の外へ至るまでの道が現れた。え、なにこの統率された動き、怖いんだけど。

 

「ありがとう」

 

 にこっ。笑顔と挨拶は社会の潤滑油です。まあ自覚できるほど顔が引きつっているから、ちゃんと笑えているか不安なんですけどね、ハイ。ただでさえ男ってだけでもこの学園(女子校)においては異物なのに、奇人変人のレッテルまで貼られたらこの先キッツイなぁ、そらまあいきなり奇行(突然の小動物捕獲)に走った俺が悪いんだろうけど。

 とまあそんなことはさておき、今は離脱が最優先。開けた道を堂々と歩き(急に動くと刺激しそうで怖かった)、廊下を曲がって姿が見えなくなったところでダッシュ、メロスもかくやといった必死さで屋上まで駆け上がった。

 

 前よし。右よし。左よし。後ろよし、ドアも閉じてる。階段を上がってくるような足音も無ければ、見渡す限り屋上に人影もない、というか始業日の一限直前から人がいたら怖いよね。

 

「安全確保。ふぅ」

 

 ベンチを見つけたので腰掛け、深い溜め息を一つ。我ながら年寄り臭いと思うが、自然に出てきてしまうものは仕方が無い。腕の中の小動物(・・・)を撫で回し、心を落ち着ける。色々と振り回されて疲れているのだ。マトモじゃない学生生活を送らされている俺に、一つくらいは癒しがあってもいいだろう。

 

「はっ、俺は何を!?」

 

 おれ は しょうき に もどった !

 

「遅いわ!」

 

 ぺちん、と撫でくりまわしていた手が可愛らしくはたかれた。ちっ。

 

「いきなりなんだお前! 話ってなんだ!?」

 

 おお、威嚇しとる威嚇しとる。顔を真っ赤にして、今にもフシャーとか言いそうだ。ちょっと涙目なのがやたら可愛らしい。

 

「知ってるとは思うが、俺の名前は織斑一夏。これから一年よろしくな」

 

 笑顔はコミュニケーションの基本です。モーゼの時はスルーされたけど。

 

「ぼ、僕は工藤レンだ。よろしく」

 

 手を差し出して握手、小さくて柔らかいおててがとってもキュートだ。

 

「って答えになってない! 話を逸らすな!」

 

 おお、気付いた。ぶっちゃけ話あるって下りは嘘なんだが、これ言ったら怒るかな?

 

「どうせ逃げ出すなら一緒に連れ出そうかなぁ、と」

 

 それだけです、ハイ。あの空気の中に一人置いていくのは、流石に俺の良心が咎める。

 

「え? 話があるって……」

 

(わり)ぃ、それただの口実なんだ。とにかくあそこに居たくなかったからな」

 

 あれは、トラウマものだよなぁ……と遠い目で呟けば、昏い瞳で是と返ってくる。この日この時この瞬間、今日会ったばかりの俺達は、間違いなく同じ感情を共有していた。ああ、なんて奇妙で悲しいシンパシー。

 お互いがお互いに同情の視線を交わし合い、それに気付いて同時に苦笑が漏れ、なんて鏡映しのような事をやっているうちに、何がおかしいのかいつしか二人してクスクスと笑っていた。

 

「あははっ。なんつーか、変に似てるのな、俺達。だからってわけじゃないけど、工藤とは仲良くやっていけそうだ」

 

「ふふっ。そうだな、僕も何となくだが、織斑とは気が合うように思う。仲良くしてくれるか?」

 

 ニカッと笑って見せると、返ってきたのは優しい微笑みと悪戯っぽい瞳。どことなく気恥ずかしいものがあるが、嬉しくもあり楽しくもある。

 なるほど、これが青春というものなのだろうか。

 

「仰せのままに、お姫様」

 

 調子に乗って、取った手の甲に口付けをしたらしこたま怒られました、まる。

 

 

 

 見える。

 微かな大気の流れも、クラスメイト達が各々意識を向けている先も、山田先生の息遣いも。この教室という小さな空間を形成するあらゆる要素が、俺には手に取るようにわかる(・・・)

 そう、今まさに俺の頭部へ振り下ろされんとされる、鈍器『出席簿』の軌跡を見切ることさえ、あまりに容易い事。

 ああ、うん、まあ。

 

 ドゴン!

 

 軌跡は見えたし、動きは見切ったけど、避けられるかどうかは別問題なのよね。

 

「もう一度言ってみろ、馬鹿者」

 

 いや、無理、死ぬ、死んじゃう。せめてもの抵抗にと、軸ずらしたりとか色々小細工して衝撃緩和したはずなのに、死ぬほど痛くて声も出せない。

 とはいえ何も意思表示をしないと追撃が来かねないので、死力を振り絞って右手のシャーペンを動かす。

 

 ーーーはんにんは、や

 

 ドゴン。

 

 ……………………おけ、わかった。わかったから俺の頭部すれすれに叩きつけた鈍器で、俺の頭皮を嬲るのをやめてくださいディアマイシスター、ハナセバワカル。

 

 さすがにこれ以上はあかんやつや、俺も命は惜しい。ということでノートにカキコカキコ。

 

 ーーー電話帳かと思って捨てちゃった、てへぺろ(*´ω`*)

 

「再発行してもらえ馬鹿者。1週間で全て覚えろ」

 

 ーーー1週間……だと………Σ(゚д゚lll)

 

「泣き言は聞かん。覚えろ」

 

 ーーー(のワの ;)

 

「お ぼ え ろ」

 

 ーーーはい………・゜・(ノД`)・゜・

 

「けっこう余裕あるんじゃないかしらこいつ……」

 

 うるせぇ外野、姉弟の絆と姉を持った弟の下僕根性と人間の生きようとする意思ナメんな。筆談するのも必死なんだぞ。

 はてさて、それにしても本当にどうしたものか。ぶっちゃけ一週間で覚えられる気が全くしない。いやだって、電話帳と見間違うサイズの本だぜ? これは七徹ルート待った無しか……?

 

 

 

 と思ってるそこのアナタ。

 私にもそんな時期がありましたよ、ええ。今日から長く苦しい一週間が始まってしまうものだと、嘆いていましたとも。ノートの切れ端が隣から渡されるその瞬間までは。

 

 ーーー僕でよければ放課後にでも教えるぞ。

 

 思わず視線を向けると、ぷいっと顔を背ける工藤。ほんのりと朱に染まったほっぺたが、見えないはずの表情を容易にイメージさせる。可愛い、何この生き物可愛い。可愛いのでガン見してみると、『そろそろ視線外してるよね?』と顔の向きを戻そうとして俺の視線に気付き、『な、なんでまだ見てるの!?』と慌ててまたそっぽを向きもじもじ、少しするとまた『今度こそ、もう見てないよね……?』とおそるおそる振り向き、慌てて以下エンドレス。

 あまりの可愛さと面白さに、ニヤけながらひたすら視姦することに全力を費やす俺。どこからどうみて完全に変態です、本当にありがとうございました。仕方ないじゃない、だって可愛いんだもの。もじもじチラチラとこっちを伺う潤んだ目、少しずつ赤く染まって行く真っ白な肌、ああもうなんなんだこの天使は。今すぐ抱き締めて頬擦りして撫で繰り回した

 

「織斑君がいいと思います!」

 

 ん? あれ? えーと………なんの話?




1-1の総意「なにこのリア充空間、ブラックコーヒー寄越せ。その小動物も寄越せ、愛でる」

何が凄いかって、屋上でのやり取り全部、レンちゃんが一夏の膝の上に乗ったままなのが我ながらあれだよね。
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