支配する根絶者、地球に降り立つ   作:旧シリーズからの根絶者使い

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麗しのナギサ……達の尻拭い

 

 

今日は厄日である。

 

アリスは心の中でそう呟くこと既に10は超えている。

 

 

「天音さん、マモル様に勝ったってほんと!」

 

「本当よ!!この間のイベントで私見た!!」

 

「俺も見たぜ!!」

 

「スッゲェファイトだったよな!!」

 

 

先日のドラエン支部のイベントでクランリーダーのマモルに劇的な勝利を収めたアリス。自分達の地区のヴァンガードイベントという事もあり遊びに来ていた人も多かったのだ。それは中学1年生でアリスのクラスメイト達も例外ではなく、当日ファイトを見ていた者、その話を聞いたクラスメイト達に質問攻めにされていた。

 

 

「ていうか天音さんヴァンガードやってたんだね」

 

「グレード3になったってことは公式大会に出れるんだろ?すっごいなー」

 

「リンクジョーカーの見たことないカード使ってるんだよね!?」

 

「…………落ち着いて」

 

 

朝、アリスが登校した瞬間から始まり授業間の休憩時間、昼休憩まで続くこの集会だが今日は大掃除の日、午後は落ち着くだろうと考えていた。

 

もちろんそんな考えは甘かったのだが。

 

 

チャイムが鳴って体操服に着替えたアリスとクラスメイト数名が割り振られたのは中庭、教師にしっかり見られる場所だが掃き掃除をしているだけでそれっぽく見えるのでアリスは当たりを引いたと内心ウキウキである。

 

こういうところは普通に子供っぽい。

 

 

「…………ん?」

 

 

落ち葉を一箇所に纏めていると、少し離れた場所にクロノの姿が見える。横には綺場シオンがいて2人ともとてつもなく真面目に掃除をしているように見える。

 

 

(クロノはともかく……なんであんなにムキになってんの?)

 

 

掃除をしながら様子を見ていると、トコハとクミが現れ4人で会話をし始めていた。

 

 

(あの4人、仲良いよねぇ)

 

 

クロノがヴァンガードを始めてからというもの、彼の周りには急に人が増え始めた。妹としては嬉しい限りだがそれは彼の生来の性格がヴァンガードを通して周りに周知されていったもの。やはりというべきかクロノの人生はヴァンガードと共にあるらしい。

 

今更あの4人の会話に入ろうとも思わないアリスは4人から視線を外すとゴミ袋を取りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?」

 

「いや……あの……だから」

 

「…………で?」

 

「スゥー……人生かかってるレベルでヤバい状況なんで逃してください!!」

 

「で?」

 

 

あれからさらに2週間ほど経ち、普通に過ごしていたアリス。何やらドラエン支部のイベントがあったらしいがクイズ大会とかいうのだったので特に興味もなく参加しなかったらしい。

 

そして河川敷で昼寝をしていたところカムイが必死な表情で走ってくるのが見えたので声をかけたところ、この状況である。

 

 

「バイトは?」

 

「うっ……」

 

「……サボり」

 

「うぐっ!!」

 

 

容赦のない口撃にカムイは胸を押さえながら崩れ落ちた。高校生が中学生に口で大敗北をしている図だ。地獄である。

 

 

「……プレイマットとスリーブ、ああついでにパワーカウンター各種5個ずつ、ほしいなぁ」

 

「そ、そんなにっ!?後生だ!!スリーブ、スリーブで勘弁してくれぇ」

 

「……ミサキの連絡先、持ってる。人生、かかってるんだよね?」

 

「スリーブとパワーカウンター!!プレイマットまでは俺のお財布事情じゃ無理なんだよぉ!!」

 

「……分かった」

 

 

賄賂である。この女、こういう時はとことん搾り取ってくるタイプであり絶対に借りを作ってはいけない。密かにカムイからアリスへサプライの奢り、アリスからカムイへ店の手伝いの肩代わり、という契約が結ばれた。

 

 

「め、女神様ぁ!!」

 

「……地球で何をそんな、焦るのか分からない」

 

 

背中から聞こえてくるカムイの声を聞きながらアリスは呆れた声で呟いた。

 

 

 

キャピタルについたアリスはシンに事情を説明、シンもこうなることはなんとなく分かっていたのか苦笑いしながらアリス用のエプロンを用意してくれた。

 

 

「いつもすいませんねぇ」

 

「もはや趣味。楽しい」

 

「そう言っていただけると僕も気が楽ですよ」

 

 

アリスは荷物をスタッフルームにしまいエプロンを着用、もはやアリスはここの店員だと思われているのかもしれない。

 

 

「……カムイ、どうしたの?」

 

「え?ああ、ナギサちゃんがきてたんですよ」

 

 

アリスがショーケースのガラスを拭いている時、そういえばと疑問を口にした。

 

 

「……誰」

 

「カムイ君が小学生の頃からの友人で一途な子なんです。暴走気味なのが玉に瑕ですけどね」

 

「あー……面倒なやつ」

 

 

ヲクシズの記憶を()()()()引き摺り出した時にも知っていたが、カムイは昔と今で性格の差が著しい。と言っても大人らしくなったと言うべきか、自信過剰も落ち着き物事を冷静に見ることができるようになっている。なんとなーく人となりからモテるのだろうとは察していたアリス。しかし人間の番云々の話はアリスにとって最上位に来るほど関わるべきではないという判断なのでこれ以上聞くことはなかった。聞いても碌なことがないからである。

 

「アリスちゃん、次はこれをお願いします」

 

「……ん」

 

 

シンがアリスに次の指示を出すと、アリスは素直に作業に移った。どう見てもアリスがやる必要のない作業だがアリスにとっては苦でもなんでもないのですぐに動けた。

 

 

(これほどとは……楽しみですねぇ)

 

 

今からもう店の仕事を覚えさせているあたり、確信犯である。

 

 

 

「少し休憩しましょう。お客さんも今は居ませんからね」

 

「ん」

 

 

 

それから少しして2人は休憩を始めた。客足が一時途絶えたからだ。

 

 

「いやーほんと助かります。ほら、カムイ君ああだから」

 

「……それが良いところ。クロノもカムイのおかげで、今楽しそう」

 

「アリスちゃんの方がお姉ちゃんみたいですね……」

 

「ニンゲンとは寿命が違う」

 

「……なるほど、年の功ですか。科学技術の発達したスターゲートの一員となれば、そういうことですよねぇ」

 

 

ユニット側としての事情を知っているシンはアリスの言葉に惑星クレイの歴史を思い返しながら苦笑している。

 

 

「アリスさんは惑星クレイ……いえ、遊星ブラントではどんなことをしていたんですか?」

 

「……旧支配者の根絶、リンクジョーカーへの略奪、新たな同士の勧誘……えっと……」

 

「いえ、やっぱりもういいです」

 

 

見た目相応に指を折って数え始めたアリスだがその内容は物騒そのもの。よく考えればアリスは根絶者なのだ。星輝兵よりも強大な力を持つのだから当たり前の話だが……地球、それも日本の常識から考えれば恐ろしい。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「……ん、ありがとう」

 

 

シンから飲み物を受け取り、さらに話を続けた。

 

 

「創世神メサイアが遊星ブラントを庇護対象と認め加護を与えた」

 

「ええ、そう聞いてます」

 

「地球とあっちを繋ぐ絆をクレイ流に得られるようになった事で、こっちのファイターにも根絶者が扱えるようになった。まるであの日、リンクジョーカーが一般的に普及し始めた時のように」

 

「それならこっちにもカードとして根絶者が普及し始めてもおかしくないんですけども」

 

「メサイアの先導者が止めたんでしょ」

 

「あぁ……」

 

 

伊吹のやりそうな事である。ちなみにアリスは伊吹がヲクシズ達を海に投げ捨てたことは未だに根に持っている。

 

 

「これ、もらった」

 

「《創世竜 ジャッジメント・メサイア》……メサイアですか。なるほど、伊吹君が……」

 

「……出来れば、使いたくない」

 

「どうして?」

 

「根絶者はボクの民で……誇りだから」

 

「……」

 

 

支配者として、遊星ブラントとそこに生きる全てのユニット達の先導者としての覚悟を垣間見たシンは眼鏡の位置を直すと語り始める。

 

 

「なら大丈夫ですよ」

 

「……?」

 

「その思い、そのイメージは、ユニット達にもきっと伝わってるはずです。それにGユニットとは無限に広がる新たな可能性……根絶者だからと言って無闇にその可能性を閉ざしてしまう必要はないんです」

 

 

シンの言葉にアリスは言葉を失った。今までの自分の考えを振り返れば、自らの可能性を否定するようなものばかり。上に立つものとしてのプライドを優先するあまり本質を見誤っていたのかもしれない。

 

 

「……なるほど。確かに、そうかも。じゃあ……うん。参考になった」

 

「それはなにより」

 

 

革命、とでも言うべきだろう。アリスは今までよりも清々しい気分でカードを見つめた。

 

カランコローンとドアの開閉に伴う鈴の音が聞こえた。

 

 

「「いらっしゃいませ」」

 

 

1人は常連の小学生、もう1人は……アリスに見覚えがなかった。

 

 

「あっ、アリスねーちゃん。今日も手伝ってるの?」

 

「ん」

 

 

すっかり顔馴染みになったアリスは気楽に会話をしている。

 

 

「コイツ今日ヴァンガード始めるんだー」

 

「……ファイカの登録?」

 

「そうそう。後ティーチングと構築済みデッキ!!」

 

「ん、デッキ診断は?」

 

「後で!!」

 

 

少年からやることを聞いたアリスはファイカの手続きを簡単に済ませ、規約などを一通り説明した。規約に関しては書類的なものがあるため保護者に渡すようにしっかり言いつけている。

 

 

「じゃあアリスねーちゃん、コイツにティーチングファイトしてあげて」

 

「え、ねーちゃんなの?どう見たって俺たちよりチビじゃん」

 

「ばっ、おま。ねーちゃんにチビは……」

 

「……そこに直れクソガキ。年上に対する態度……教えてやる」

 

「あーもうほらー!!とりあえずお試しデッキ貸してくださーい」

 

「容赦……しない」

 

「ははは……お手柔らかにですよアリスちゃん」

 

 

子供達に呼ばれてファイトテーブルに向かっていったブチ切れアリスを見ながらシンは笑っている。クロノもそうだがアリスも面倒見がいいのだ。

 

 

「あれで中学1年生だなんて……誰が信じるんでしょうねぇ……」

 

 

アリスは薄々自分が人間の肉体創造をミスって気にしていたことを見事にシンに見抜かれていた。当の本人はすでに子どもの利点を考え生かそうとはしているが、子ども故に出来ないこともまた多く難儀している。

 

 

「次……ストライド」

 

「ねーちゃんGユニット使ってたのか!?」

 

「数多の因縁を超越し新たな未来を指し示せ……《創世竜 ジャッジメント・メサイア》。アタック

 

「…………早速使ってますね」

 

 

そこに至るまでの思考が固いが、理解と納得を得ることができたならその後は柔軟になれるアリスであった。

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