支配する根絶者、地球に降り立つ   作:旧シリーズからの根絶者使い

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親友

 

 

 

「今日は何の用だ。根絶者の小娘よ」

 

「小娘はやめてよー。どうせなら……うん、『姫』だよね」

 

「誰が貴様を姫などと呼ぶか。死ね」

 

「君の口の悪さにはもう慣れたよ」

 

 

リンクジョーカー最大勢力『星輝兵』の所有する惑星で2体のユニットが相対していた。

 

 

「ふふふ、君の悪口を言っていた子がいたからついここまで来ちゃったよ。何だっけ?あの人は我々を鍛錬という名目で虐めて楽しんでいるんだーって」

 

「ほう?そのような命知らずがまだ我が軍に居たとはな。教えろ」

 

「え〜……どうしよっかなぁ……てか事実じゃん」

 

「戯けが、我は職務をしっかりとこなしその合間に趣味に勤しんでいるだけだ」

 

「職権濫用も行きすぎるとストライキされるよ?」

 

「ふんっ、軟弱な企業国家でもあるまい。我ら指揮官に一体誰が楯突こうなど考えるものか」

 

 

《支配する根絶者 ????》と《星輝兵 カオスブレイカードラゴン》は執務室で喧嘩腰になりながらも会話をしている。内容とは裏腹に、カオスブレイカーは黙って彼女に椅子を差し出し、彼女はお土産と称して持ってきた()()()映像(他惑星を根絶する時になぶり殺しにした時のもの)を渡した。

 

 

「ククク、貴様は我の趣向をよく理解しているようでなによりだ」

 

「一応オマケも最後の方に入ってるから。それよりさぁ……ボク欲しいものがあってぇ……こないだ君達がミスしかけた時に一瞬手伝ってあげたじゃん?」

 

 

2つほど前の他惑星侵略計画を実行していた『星輝兵』軍だったが、指揮官の1人である『星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン』の采配ミスにより前線崩壊の恐れがあった。そこへ現れたのが、暇つぶしにカオスブレイカーにちょっかいをかけようとしていた彼女であり、その危機を救ったのもまた彼女だったのだ。

 

 

「貴様……無断で我が軍の資料を持ち出すような事がなくなった代わりに随分とがめつい性格になりよって……」

 

「ボクと君の仲じゃないか。何を今更……そうだねぇ……1人、欲しい子が居るんだけど」

 

「またか……誰だ」

 

「今言った子」

 

「…………ハァ」

 

 

自らを道化と称しひたすらに他を嘲り笑うカオスブレイカーが、心底面倒臭そうにため息をついた。

 

 

「いいだろう、持っていくがいい。だが、代わりに何かよこせ」

 

「えぇー、じゃあ秘蔵の調弦理論の書物を……」

 

「それは我が軍の資料室から貴様が無断で持っていったものだろうが!!」

 

「あれ、そうだっけ?ええと……『虚無』の生成装置は?」

 

「貴様が【『虚無』を生み出すとかなにそれ矛盾してるじゃん。はっ!?矛盾……ごめんねカオスブレイカー、新作を思いついたから参考資料としてこれは貰っていくね】などと抜かして奪っていったが?」

 

「うわっ、ボクの声真似うっま」

 

「ふっ……道化としてはこの程度……」

 

「きっも。え、なに?ボクのこと好きなん?」

 

 

一刀両断である。カオスブレイカーはその言葉に何かが切れるような音を響かせ、まるで顔真っ赤(リミットブレイク)になりながら叫んだ。

 

 

「貴様ァ!!言うに事欠いてそれかァ!!今日という今日は許さん……!!」

 

「あっはは!!怒った?ねえ怒ったよねぇ!?んーじゃ、バイバーイ!!」

 

「こんの……!!我らより本部からの評価が多少上だからと言って何をしても許されるとは思うなァァァァァァ!!!!」

 

 

カオスブレイカーが叫ぶも彼女は既に自らの星に帰還したらしい、それを確認したカオスブレイカーはさらに深くため息をつくと八つ当たりと言わんばかりに得物であるサイズを振り回して暴れた。

 

 

「チッ!!カオスブレイカーがいつものアレだ!!ネビュラロード、とっとと行くぞ」

 

「……またですか。彼女にも困ったものですねぇ……と言っても、彼女の相手をするのだけは御免ですのでカオスブレイカーにはこれからも苦労していただきましょう」

 

 

カオスブレイカーと同じく指揮官である《星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン》と《星輝兵 ネビュラロード・ドラゴン》が、この騒ぎに気づきリミットブレイクやブレイクライドまで使用し鎮圧。

 

人知れず1人の星輝兵が消息不明になるが、冷静になったカオスブレイカーが誰にも知られる事なく『虚無』に飲まれたものとして処理をした。

 

 

星輝兵が惑星クレイと地球に攻め込む、ほんの数百年前のよくある日常だった。

 

 

「あはは……唯一の友達君には悪いことをしたねぇ……さてと、そろそろ……下克上の時間だ。遊星骸王者様?」

 

 

地球などという下位の惑星の存在をまだ知らない、遊星ブラントにまだ別の『王』たる存在がいた頃のちょっとヤンチャな時期の彼女の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夢?」

 

 

 

いつも通り河川敷で日向ぼっこをしていたアリスは珍しく夢を見た。これも人間になった影響かとアリスは内心嬉しく思いながらあくびをして体を起こした。

 

 

(カオスブレイカー、元気してるかなぁ……祈り聞く者達に敗北してから会ってないし、死んだとは聞いてないけどどうせどっかで惨めに生きながらえてるよね。だってカオスブレイカーだし)

 

 

カオスブレイカーがカオスブレイカーだということに全幅の信頼を寄せ過ぎているがアリスはあの程度で死ぬような玉ではないと理解している。支配者たるアリスから見ても彼は評価が高かった。

 

本人は心外だろうがカオスブレイカーはアリスから『唯一無二の親友』という評価を得ており昔のヤンチャだった頃、趣味が合うのもあって星輝兵の中でも特に気に入っていたのだ。カオスブレイカーは他者の感情を読み取る事が上手いためアリスからの信用を理解しているため、アリスが余計な事を言わなければ、じゃれ合い程度で済んでいる。

 

無論、ガチの殺し合いになればアリスの圧勝であり組織単位での序列を鑑みても、リンクジョーカーの秘密兵器とまで言われる『根絶者』と主力部隊である『星輝兵』では雲泥の差がある。アリスが王となった『根絶者』はその気になれば星輝兵の全てを根絶し『リンクジョーカー』そのものを掌握することも可能である。

 

 

「ふぁぁ………眠い……」

 

そんな彼女も地球ではただの人間だ。

 

クランリーダーに勝ったファイターとしてドラエン支部周辺では一時期、時の人として有名になったアリスは忙しい……いや、心の休まらない日々が続いていた。クラスメイトどころか他クラスの同級生にすら質問攻めにされ、キャピタルに行けば殆どの人間からファイトを申し込まれる。街に繰り出しても無邪気な子供達から路上ファイトを頼まれるなど、断っても問題ないようなものまでアリスは一つ一つ対応していたのだ。もちろん全勝という形でだ。

 

大きく変わったわけではないが、地味にヴァンガードで街の活気も出てきておりドラエン支部はアリスに感謝しているらしい。マモルだけは負けた悔しさとそれによる良い方向への影響を天秤にかけて微妙な顔をしていたそうな。

 

 

ガガガガ

 

 

「…………ん?」

 

 

大きな音が聞こえ、安眠妨害だと不機嫌になったアリスは少し様子を見ることにした。河川敷に隣接して公園があるこの場所には大きな木が並ぶように植えられており、自然というものに馴染みがないアリスからして立派だといえるようなものでもあった。そんな木のうちの一本が伐採されているではないか。

アリスは少し驚いたがそういえば最近は作業服の人間の姿をよく見ていたことを思い出す。まさか伐採だとは思っていなかったので興味深そうに見学することにした。

百聞は一見にしかずとは地球もいい言葉を考える、生の体験というのは何者にも変えがたい。

 

 

「…………トコハ、何してるんだろう」

 

 

しばらく様子を伺っていると、焦った表情のトコハがやってきて作業員に話しかけている。作業員達は首を傾げてトコハに返答、トコハは不安げな表情を浮かべまた走っていった。

 

アリスは考える。

 

 

(ボクがわざわざ干渉するほどの問題かな?)

 

 

はっきり言ってアリスはトコハに対して気まずさを感じている。クミと3人でグループ通話をすることは多々あり表にはその感情を出していないが、アリスはトコハが尊敬している兄のマモルを圧勝とも言える形で下している。トコハの芯となるものを砕いた自覚があるアリスはやけに人間臭い感情で気まずいのだ。

 

 

(普段のボクなら遠慮なんか知るかとばかりに原因を両方とも殴り飛ばして終わりなんだけどねぇ……)

 

 

何はともあれアリスは昼寝中、騒音で邪魔をされたのではたまったものではないため自宅のベットでもっと安らかに睡眠をとる事を決めたのだった。

 

 

(興味ないわけじゃないけど、せっかく親友との戯れの夢を見ていたんだ。もっと見たい)

 

 

立ち上がりぐぐっと背伸びをしたアリスは、寝ぼけているのか怪しい足取りで帰路についた。

 

 

(あ、いやカードキャピタル行こう。枕の下に写真を入れたらその夢が見れるらしい?し、カオスブレイカーのカードでもいけるでしょ)

 

 

カオスブレイカードラゴンは売り切れだった。ふて寝することにしたアリスだった。

 

 

 






「キミにもプライドというものがあって良かったよ王サマ!!だからこそこうして跪けさせることに意味が生まれる」

『…………!!』


片腕を無くし地面に転がった《遊星骸王者ブラント》、いや《遊星骸神ブラントリンガー》は自身の頭を踏みつける矮小なユニットを鋭く睨みつけた。


「今日からボクがこの星の王であり神だ。異論は?諸君」

『予は……ぐっ……』

「黙れ、許可なく喋るな敗北者」


ブラントリンガーの周りにはすでに事切れた星骸者達の山があった。それらを囲っているのはかつて支配していた根絶者達。


「永遠の忠誠を我ら根絶者一同、あなた様に捧げる」

「ありがとう、ヲクシズ。だそうだよ王サマ?キミ達はもう用済みさ」

『予の存在無くして、惑星ブラントは制御できぬぞ……!!』

「うん?もしかしてこれの事かい?」


そしてブラントリンガーの所有していた制御装置である、惑星ブラントを模した黒い球体が彼女の体内に吸い込まれていった。


『なっ……バカな!!たかが根絶者が……何をした!?』

「ボクは支配する根絶者!!支配を重ねるごとにボクの権能は強固になっていき、やがてそれは概念となり、共通の法則となったのさ。それは生物にも非生物にも、そして……星にも適用される。キミを根絶する事でキミの敷いたルールも根絶され、ボクの支配は完全なものになる」

『ブラントを支配し何を為す!?』

「べつになにも?」

『ッ!!』

「支配する根絶者が別の支配者を許容できると?ボクはボクの本能に従っただけ。何も間違った事はしていないよ」

『本能の獣がっ……いつか身を滅ぼすぞ……』

「根絶ならば本望。ボク達は根絶者故、覚悟はできている。だから……死んでよ、ブラントリンガー」


異形の腕が黒く染まる。デリートのためにエネルギーが収束していくがそれは通常のデリートとは比べ物にならないほど洗練されており完全に昇華されている。


『予はブラント、遊星骸王者である!!』

「ドミネーティング、ドミネーティング……ドミネーティング!!!」


ブラントの最後の言葉などいざ知らず、支配の権能によりさらに膨れ上がっていく波動はすでに赤い空を覆い隠すほどだ。


「カタストロフィデリート」


音もなく、ブラントリンガーは虚無へと還った。
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