この素晴らしいボーダーに入隊を!   作:こしあんA

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前回はいつも以上に誤字が多くて申し訳ありません。そして多くの誤字脱字報告ありがとうございました。今回はそんな事が無いよう祈っておきます。


第24話 間宮!鯉沼!秦!ハウンドストームをしかけるぞ!

 

『ごめんカズマ。吉里隊長と鉢合わせした。そっちに行けそうにない』

 

鯉沼との戦闘中、来馬先輩から合流不可能という一報が届く。

 

『了解、古寺はどうだ?』

 

『すいません。あともう少しで狙撃地点に着きます』

 

古寺もまだ狙撃位置に付けていないようだ。

 

支援の一切が見込めない今、尚更に早く目の前の鯉沼を倒さなくてはならなくなった。

しかし、カズマの攻撃は些か決定打に欠け、どうにも攻めきれていない。以前から感じていた弾トリガーでは突破力に欠けるという課題がほんの数分の戦闘で如実に現れていた。

スコーピオンで攻めようにもカズマの技量では相手を追い詰めるにまでは至っていない。

 

その後も何度も何度も猛攻を繰り返すも、その悉くをシールドで上手く防がれている。置弾を含めた総合的な射手としての実力ならカズマの方が上であろう。しかしシールドが絡むとそうはいかない。

 

B級に上がりたてのカズマと鯉沼ではシールドの絶対的な使用時間が違うのだ。自分でもこれは防げないと思った攻撃も何度か防がれている。

 

それでも猛攻を続け、相手のフルアタックを封じる。そして、胴体狙いと見せかけ足をスコーピオンの投擲で切り落としてやった。ついに決定打と呼べる一撃を与えられたのだ。

これで機動力の下がった鯉沼は今までのような防御は出来ない。このまま距離を詰めればスコーピオンで嬲り殺せる。

そう考えていると片足を失ったはずの鯉沼がニヤリと笑った。

 

何か嫌な予感がする。

アクアにマップを出すよう指示を出そうとすると向こうから無線が繋がった。

 

「おいア……」

 

『カズマさん。そっちに2人行ってる!』

 

「「「ハウンド!」」」

 

鯉沼が両手にハウンドを出す。それと同時に無数の弾が空に浮かび上がった。

まさに空3分、弾7分だ。

見渡す限りの空をハウンドが覆っている。それはやがて俺へと向かい降り注いでくる。

それと同時に鯉沼は3×3×3に分割した2つのハウンドを放射状に飛ばす。

 

「グラスホッパー!……シールド!!」

 

足元に出現させたグラスホッパーを踏み、後方へと勢いよく下がる。カズマを追尾していた上空のハウンドは軌道を変え始めるが、曲がりきることは出来ずに地面と衝突してはコンクリートを削る。

 

そして鯉沼が撃ち出したハウンドもシールド2枚を両側面に展開。ハウンドがシールドに衝突してはパチパチと音を鳴らして弾けて消えていく。

全ての弾を受け切ったシールドはどちらも細かく亀裂が入っており破壊寸前であった。

 

そしてグラスホッパーによる勢いのまま、後ろのT字路まで飛んでは塀に衝突し、塀に背中がめり込んでは静止する。

 

「よっこらせ……っと」

 

塀から抜け出し体についた埃を払い、顔を上げる。

視線の先には間宮隊が勢揃いしていた。3人の両手にはキューブが握られている。

 

3人全員によるハウンドのフルアタック。通称ハウンドストーム。

3人が纏まって、しかもフルアタックに入っている。古寺が狙撃位置に着いてさえいればこれほど理想的な的はない。しかし悲しきかな。その古寺はまだビルの階段を登っている最中なのだ。

 

そうしてカズマ達が最も恐れていた事。間宮隊の合流が果たされてしまった。

 

「「「ハウンド!」」」

 

2×2×2のハウンドが3つ、4×4×4のハウンドが3つ。

計208発ものハウンドが撃ち出され、その全ての弾が放射状に広がってはこちらへと飛んでくる。

ハウンドが視界を埋め尽くさんとばかりに拡散しては一点に収束し出す。

 

「くっ……グラスホッパー!」

 

苦虫を噛み潰したような顔を浮かべつつも、足元に出したグラスホッパーを踏みT字路の右側へと飛ぶ。

 

ハウンドはその大半がT字路手前の住宅群に行手を阻まれたものの、まだ3割強の弾丸がこちらを追尾して飛来している。

 

カズマはまだグラスホッパーで移動中にまともに姿勢制御ができない。このままではすぐ後ろの家に背がぶつかり身動きが取れなくなった所にハウンドが襲いくるのは明白だ。

あの量のハウンドをカズマのトリオン能力で防ぎ切れるとは到底思えない。

 

(なら!)

 

「グラスホッパー!!」

 

背後に9個に分割したグラスホッパーを自身とは斜めの向きに展開し、右方向へ軌道を変える。

ハウンドはそのまま真っ直ぐ家に衝突しては住宅の2階部分を半壊にした。

 

グラスホッパーにより吹き飛ばされたカズマは頭から地面に着地し、地面に顔がめり込む。

 

「「メテオラ!メテオラ!メテオラ!」

 

しばらくして起き上がると、住宅の奥にいる間宮隊の2人が2×2×2に分割したメテオラを立て続けに何回も撃ち出す。すると爆発と爆風で住宅がいくつも消し飛び、カズマと間宮隊を隔てていた遮蔽物が無くなり射撃戦をするには理想的なフィールドとなった。

 

「「「ハウンド!」」」

 

間宮隊がフルアタックに入ろうとする前、俺はホルスターからハンドガンを素早く抜き3人がキューブを出すよりも早く引き金を引く。

そして一斉に8発の弾丸が撃ち出され、弾は間宮隊長へと向かい飛んでいく。

 

(早っ……てか撃ちすぎだろ!!)

 

間宮隊長は驚愕の顔と共に一歩後ろ下がってはたじろぐ。

回避は間に合わず、フルアタックに入っている為シールドも出せない。

 

(決まった!!)

 

カズマはそう内心でガッツポーズを浮かべる。

これで間宮は撃破できる。否、それに鯉沼は反応した。

 

「シールド!」

 

間宮、秦の両名に守られるようにして二人の背後に立ち、一歩下がって戦場を俯瞰して見ていた鯉沼はカズマの攻撃に反応できた。そしてハウンドの構えを解き、間宮隊長の前にシールドを展開する。

それとほぼ同時に8発の弾丸がシールドに命中。8発の弾丸はシールドに罅を入れこそしたが、破壊する事は出来なかった。

それはほんの一瞬の差ではあったが、その一瞬が間宮隊長を救ったのだ。

 

「悪い鯉沼、助かった!」

 

そう間宮は感謝を述べ、秦隊員と改めて両手に出したキューブを分割する。

 

間宮隊長は2×2×2に分割した威力重視の弾を2つ、計16発。

秦隊員は4×4×4に分割した数重視の弾を2つ、計128発を精製。

 

「「ハウンド!」」

 

「クッソ!お前ら卑怯だぞ!!」

 

「「「お前が言うな!!!」」」

 

カズマの個人戦ログを見ていた3人は声を合わせてそう言う。

 

カズマはグラスホッパーを展開。踏んで後方へと大きく下がる。

それと同時に計144発もの弾が一斉に発射される。

 

カズマの視界が再びハウンドによって覆われる。

 

秦隊員はハウンドをこの開けた戦場をフルに活用して外側へ外側へと広く撃ち出し、間宮隊長はややバラけさせて射撃。

カズマは横に逃げようにも放射状に撃ち出されたハウンドがそれを邪魔し、移動を制限した。そしてそこへ嫌なタイミングで威力重視の間宮隊長の弾がやってくる。

これは敵ながら上手い連携だと評価せざるを得ない。

 

「シールド!」

 

それを30センチほどに狭めたシールドで防ごうとするが、ハウンドは程良く散らばっており、シールドを右へ左へと動かさなければ防ぎきれない。しかし、それをしても全てを防ぐ事は出来ず足や腕に被弾していき、そして遂には右腕が肘から先が千切れてしまった。

被弾痕からは多くのトリオンが漏れ出す。

 

 

 

そして外側に広がっていたハウンドが一気に収束し出す。それはまるで獲物を捉えた群狼の様。

 

「チッ!グラスホッパー!」

 

再び自身とは斜めにグラスホッパーを展開。それに背がぶつかり左へ軌道がずれる。

右に展開されていたハウンドは大きく曲がりそのほとんどが住宅の瓦礫やまだ健在している住宅にぶつかって消えていった。

後は左側に展開されたハウンドのみ。

 

「シールド!」

 

2枚のシールドを広く展開。

無数の弾がシールドに当たってはパチパチと音を鳴らして弾けていく。しかし、次第にヒビが入っていき遂に一枚が割れる。

 

(くそっ……もってくれ!)

 

残るは一枚のシールド。残りの弾は約10発。それらもシールドにあたっては弾けていく。

そしてシールドが破れるよりも前に弾が無くなった。

なんとかハウンドストームを逃れられた。

 

『もう一度だ、もう一度ハウンドストームを仕掛けるぞ!』

 

『『了解!』』

 

「「「ハウンド」」」

 

今度は鯉沼も片手にハウンドを出す。

先ほどの攻撃だってグラスホッパーがあったから何とかなったものを、これ以上さらに弾が増えたらもう避けようがない。

次の攻撃は避けられないだろう。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「おっと!カズマ隊長ここにして痛い深傷を負った!!このままではジリジリと追い詰められてベイルアウトが濃厚か!?」

 

先程まで青い顔をしていたC級隊員達はそれを見て平常心を取り戻した様だ。余程カズマに酷いことをされたのだろう。

 

「いえ、そうとも言えませんね」

 

そう言って烏丸が指を指す。その先には間宮隊とカズマの近くでバックワームを起動しながら潜伏している月見隊員が映っていた。

 

「おお!! 確かに月見隊員が近くにいますね!」

 

「部隊が散開し過ぎているとは言え、この状況なら1人でも介入するだろう。幸い間宮隊の背後を取れている。下位部隊にその技量を求めるのは酷かも知れないが、うまくやれば旋空で3人まとめて倒すことも出来る。出来ないとしても誰か1人は落とせるはずだ」

 

「なるほど!では月見隊員の動向に注目ですね!」

 

そう言って桜子はモニターに月見隊員の映像を大きく表示した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「不味いわね……」

 

カズマと間宮隊の戦闘の様子を隠れながらに見ていた月見隊員の額からは汗がじんわりと滲んでいる。

 

警戒していたカズマが深傷を負っている事は喜ばしいが、最も警戒していた間宮隊が合流してしまい、今や趨勢が間宮隊有利に傾き始めている。いや趨勢が決しようとしている。

 

出来る事なら吉里隊長の所に向かいたいが、そこで来馬隊員を撃破してから二人で間宮隊の所に戻ったとしよう。

 

その頃には確実にカズマはベイルアウトしているだろう。そしてカズマを倒し体勢を整えた間宮隊に2人で勝てるだろうか。答えは否である。

ハウンドストームの前に2人とも撃破されるのが容易に想像できた。

 

 

ならば答えは一つ。

戦闘に介入する。

今ここで。

 

 

覚悟を決めた月見は走り出した。大地を強く蹴り、ぐんぐんと間宮隊との距離を詰める。

間宮隊は全員月見に背を向けている。

 

彼我の距離が5メートルになる頃、腰に携えた弧月を抜く。

抜き身の弧月を握る腕は、体は、緊張からか力み、強張っていた。

 

「やあぁぁ!!」

 

「!!」

 

それを自覚した月見は平常心に戻そうと言霊に縋る。

しかし、それがいけなかった。

 

バックワームを付けての弧月による奇襲。間宮隊のオペレーターは当然気付いておらず、完璧な奇襲であった。それを月見は自分自身で台無しにした。

月見の掛け声に反応した鯉沼は狙撃警戒の為空けていたsubトリガーのシールドを展開する。

 

それは直径20センチほどにも縮められた分厚いシールド。それが上段から振るわれる一撃を受け止める。が、それも長くは持たない。ワンテンポ置いてシールドに亀裂が入り始め、シールドは叩き割られた。

しかし、それは回避するには十分な時間であった。

 

2人が鯉沼を抱え飛び下がる。

 

「ハウンド!」

 

間宮隊長はすかさずカズマに撃つはずだったハウンドを、全て月見隊員に向け撃ち出し、それに遅れて鯉沼隊員も月見へとハウンドを撃ち出す。

これにはたまらず月見もシールドを展開し後方へと下がり距離を取る。

 

 

失敗した。それも下らない事で。

自分の軽率さに心底うんざりする。姉にも散々仕込んでもらったと言うのに、その全てをたった一つの行動で台無しにしてしまった。

 

「すぅーーはぁーー」

 

大きく深呼吸をし、気持ちを切り替える。

反省はした。後悔は後でいい。

 

月見は再び弧月を握り直した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ああ……奇襲失敗ですね」

 

会場に悲嘆の声が溢れる。

 

月見の奇襲は途中までは会場から見てた隊員からも正しくお手本のような奇襲に見えた。しかし土壇場でその全てを台無しにした。

 

「途中までは良かったんだがな。功を焦ったって所だろう」

 

「緊張でついつい大声を出してしまったと」

 

「それは月見隊員も自覚してるでしょう。反省の顔色も伺えますし、それにこれで間宮隊はカズマ先輩と月見隊員に挟まれる形となり、大きく流れが変わりました」

 

間宮隊は前方をカズマに、後方を月見がおり包囲されている。

正しく前門のカズマ、後門の月見である。

 

「しかし1人ずつハウンドストームを当てていけば良いのでは?」

 

先ほどカズマに向けた圧倒的火力。それを1人ずつ行えば容易に片付くのではないか。それは至極当然な疑問。

たしかに挟み撃ちにされた。しかし、間宮隊は鯉沼隊員が片足を欠損しているとはいえ勢揃いしておりハウンドストームは未だ健在だ。優勢がやや優勢に傾いたに過ぎない。そう思えた。

 

「それは説明するよりこの先の展開を見てもらった方が早い」

 

そう言って奈良坂は観戦を促す。

観戦している隊員は疑問を頭の片隅に置き、再び試合に意識を向けた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

月見隊員が思わぬ介入をしてきた事で運良く命拾いした。間宮隊の意識が月見隊員にも割かれた事を察したカズマは左手で拳銃を抜き秦隊員へと発砲。

一瞬にして8発もの弾が銃口から飛び出す。

 

「シールド!」

 

鯉沼隊員がいち早くそれに反応してシールドで防御。ダダダダダダッとシールドに当たっては弾けて消える弾丸。しかし7発目にしてアステロイドがシールドを貫いた。

2発の弾が秦隊員の腹を食い破る。

 

(なっ!?……何故だ!?)

 

鯉沼隊員は先程カズマの射撃を防いだ時より少し分厚いシールドを展開した。それなのにと思う鯉沼隊員。

しかし秦隊員の方へ顔を向けると理由がすぐに分かった。

秦隊員の腹には一つの風穴が存在していた。シールドを突破した弾は2発のはずなのにだ。

 

つまりカズマは同じ場所に8発もの弾丸を撃ったということになる。それならいくらトリオン能力の低いカズマの射撃でもシールドを貫く事は可能だ。

 

これは偏に、利き腕を失っても狙った場所に確実に当てられるよう練習し続けた賜物である。

 

決定打にはなり得ないものの確かに間宮隊の態勢が崩れた。その隙を見逃さずカズマはグラスホッパーで、月見は孤月を握り間宮隊へと襲い掛かろうとする。

しかし、

 

「メテオラ!」

「アステロイド!」

 

間宮はカズマの進行方向へメテオラを放ちカズマの追撃を封じる。本来間宮のトリガーにメテオラは入っていなかった。しかし、カズマがレイガストを使ってくる可能性を考慮してメテオラを採用していたのだ。

 

そして鯉沼は自身と月見の間に威力90、射程9、弾速1に設定した弾を撃ち出し低速弾のバリケードを張る。

これは鯉沼が以前カズマにしてやられた戦法だ。その試合でカズマにこっぴどくやられたのだ。

鯉沼は脳裏にその光景が焼き付いて離れなかった。だからこそこの技を習得できたのである。

 

月見は踏みとどまろうと全力でブレーキしながら目の前にシールドを張る。

シールドがアステロイドに触れると一瞬でアステロイドの形に穴が開いた。

 

(止まれない!!)

 

勢いよく飛び出した月見は勢いを殺せずそのまま低速弾のバリケードに触れるかと思われた。

 

だが月見は機転を効かせシールドを自身の目の前まで移動させ固定。シールドにぶつかり何とか静止する。

一命を取り留めた月見は安堵するも気を抜く事なく直ぐに一歩、二歩と下がっては弧月を構える。

 

「旋空弧月!」

 

15〜18メートル程に伸びた斬撃が間宮隊へと襲う。

 

「「「シールド!」」」

 

鯉沼が2枚、間宮と秦が一枚ずつ固定シールドを展開。が、旋空を止めるには足りない。

旋空はその固定された集中シールドを易々と一枚、また一枚と破っていく。

ブレードの先端が間宮隊を捉える。

 

それでもシールドにぶつかる度に一瞬だけ勢いが止まる。

 

『秦。タイミングを合わせろ』

 

『了解です』

 

『せーの!』

 

間宮は肩を組み、秦は腹部を抱いて再び鯉沼隊員を抱えて跳躍する。

 

拡張されたブレードが全てのシールドを破壊し終える頃には旋空の軌道上に間宮隊は存在しなかった。

 

 

そうしてカズマと月見が間宮隊を挟むようにして1対3対1の三つ巴が形成された。

そして先程まで圧倒的優勢であった間宮隊はその火力を2方向に分散せざるを得なくなり戦況は一気に膠着し出し、泥沼の様相を呈していた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「これは!!」

 

先ほどの烏丸が言っていた事を桜子が気付く。

間宮隊は持ち前の火力をそれぞれ真逆の二方向に分散せざるを得なく、攻めるに攻めきれず膠着状態に陥った。

 

「先ほどの答えが出たな。間宮隊の強みは3人による集中砲火。それも各隊員が一定の間隔を保ち複数の方面からのクロスファイヤだ。だが鯉沼隊員は機動力を失っているし、今戦力の分散をしては攻撃手の月見に食われかねない。勿論カズマにもだ」

 

「やっぱ集団戦になるとカズマ先輩のいやらしさが遺憾無く発揮されますね。まあ良い言い方すれば盤面のコントロールが上手いって言うんでしょうけど。ほら見てください」

 

そう言って映像を見る事を促す。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

火力で優勢を誇る間宮隊、それを囲うカズマと月見。

間宮隊は人数有利があるものの包囲されその本領を発揮できていない。仮に誰か1人でも落ちれば間宮隊は瓦解だ。逆にカズマと月見はどちらか1人が落ちた瞬間、3人によるハウンドストームが降り注ぐ。

 

誰か1人でも抜ければ戦況は一気に傾く。

 

それを分かっているからこそ1番ダメージの多いカズマは消極的な射撃戦のみを展開し、こちらの圧力を減らし間宮隊の意識を月見隊員へと向けさせた。

 

タン、タン、タン、と散発的に一般的な拳銃の発砲音が響く。

煩わしそうに秦がシールドでそれを防ぐ。

 

カズマからの圧力は緩和されたものの、いつ来るか分からないカズマの不意打ちを常に警戒し守勢に回らなくてはならない間宮隊は依然火力が足らず月見を落とせずにいた。

そして月見もアステロイドのバリケードと旋空を封じる濃密な弾幕により攻めるに攻められずにいた。

それでも間宮隊にダメージはなく、月見は被弾が増えていく。

 

 

戦局は月見がやや不利であるものの膠着し続けている。

その膠着を1発の弾丸が破った。

 

それはこの盤上(主戦場)の外、狙撃手からの一撃だった。

鯉沼がフルアタックに入ろうとする瞬間、東方面に存在する高層ビルの屋上で光が発生した。

古寺による狙撃である。

 

「シールド!」

 

 

しかし間宮隊の隊長、間宮はそれに気付いた。

間宮隊はその戦法ゆえに狙われやすく、狙撃手からは格好の的である。だからこそ狙撃には他のどの下位部隊よりも人一倍敏感であった。

 

シールドの大きさを20センチほどにまで縮小しガードする。今までの経験上このくらいの厚さにすれば防げていた。

 

ーーイーグレットなら

 

しかし古寺が使用したライフルはランク戦スタート前、カズマが入れたアイビスであった。

アイビスは間宮の展開したシールドを容易くブチ破り鯉沼の胴体に大きな風穴を開けた。

鯉沼の顔に亀裂が走りだす。

 

「今っ……旋空弧月!」

 

攻撃の止んだ一瞬の隙を月見は見逃さなかった。

一歩踏み出す。

緊張に手が震える。だが2度同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。

 

弧月を構え、振るう。

拡張されたブレードは今度こそ相手の首をその軌道上に捉えた。

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

死に体の鯉沼を撃破し、月見隊員が1stキルを飾った。

 

 

 

「あっっ!キルスティールしやがったな!!汚ねえ!!!」

 

「「「どの口が言うか!!!」」」

 

「グラスホッパー」

 

間宮隊の2人と吉里隊の月見は口を揃えて俺にそう言った。

旋空とハウンドが飛び交う。

俺はグラスホッパーでその場から離脱した。




やりたかったこと、B級下位部隊によるランク戦。
その為にも全ての部隊の戦術を真剣に考えて気付いた、無いから下位部隊なのでは?
下位部隊の戦術レベル考慮するのはかなり難しい。中位以上の人たちが当たり前に出来てる事を出来ない描写を加えないといけないから。でも同じ人間なんだからそこまで馬鹿では無いだろうとも思ってしまう。でも間宮隊だけはハウンド撃つ事に快感を覚えてるはず。(こいつらだけこのすば適性あるんだよな)
悲しいのがやりたかった「下位部隊によるランク戦」別に書かなくてもシナリオ上何の問題もない所。

C級隊員編で面白かった話教えてください。

  • 1話この厳しい試験に合格を!
  • 2話この新入隊員に洗礼を!
  • 3話このC級隊員に勝利の栄光を!
  • 4話このC級隊員に弾バカを!
  • 5話このC級隊員にも狙撃手を!
  • 6話この狙撃手たちにハーミットを!
  • 7話このロクでもないランク戦に終止符を!
  • 8話このランク戦に菩薩様を!
  • 9話この愚か者に制裁を!
  • 閑話

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