「いやー壮絶な戦いでしたね。あそこに至るまでに各部隊それぞれどんな思惑で行動してたのでしょうか?」
間宮隊とカズマ、月見隊員の戦闘がひと段落し、息をついた桜子がそう言う。
「そうだな。間宮隊は合流するはずの所をカズマに妨害されたが、すぐに釣りの戦法に切り替えた。これはナイス判断だ。C級では知れ渡っているがカズマは敵に回すと相当厄介だ。放っておくと何をしてくるか分からないからな。潰せるなら早いうちに潰しておくべきだろう」
そう奈良坂が言うと観戦していたC級隊員の殆どが首を縦に振るった。
「特になんと言ってもカズマと当たった鯉沼隊員は間宮隊の中で1番防御・援護が優れている。これが間宮隊集結までの時間を稼げた大きなポイントだろう」
「なるほど!」
「佐藤隊と吉里隊の2部隊はあからさまに間宮隊を狙う動きをしてたな。吉里隊長や来馬隊員もそれぞれ合流を目指している途中にうっかり鉢合わせしたって所だろう」
その二部隊は攻撃手と銃手が揃って連携した攻撃をする想定だったのだろうと奈良坂は考察する。もしその通りになっていればカズマと月見隊員は銃手の支援の下、もっと強気に攻める事が出来た。そうなれば間宮隊は早期に瓦解していただろう。
「吉里隊はカズマが鯉沼隊員とやり合ってるのを見て互いにすり潰させるつもりだった。だが、そこで間宮隊が勢揃いしてしまいカズマが落とされるのも時間の問題となった。そうなれば最早、間宮隊の一人勝ちに等しい。だから月見隊員はやむを得ず乱入して誰か1人でも倒そうとした」
「しかし迎撃され膠着状態に陥った。と……いや振り返ってみると鯉沼隊員の働きが大きいですね」
「ふと思ったんだが間宮隊の戦い方二宮さんに似てないっすか?」
そう京介が割って入る。
「確かにそうだな。1人じゃトリオン的にも技術的にも二宮さんの真似は不可能だが、威力重視の分割少なめのハウンドのフルアタック。弾数重視の分割多めのハウンドのフルアタック。それぞれを1人が担って擬似的に二宮さんの真似をしているようだった」
とは言っても、2人分のトリオンを足しても二宮のトリオン量には届かないのだが。
「まあ間宮隊は二宮さん信者らしいですからね。射手のコンセプトチームにしたのも二宮さんの圧倒的な火力に魅入られたという噂もありますし」
「「へえ」」
「すっごい興味なさそうですね!振っておいて!!」
「まあその火力も2人に挟まれた関係上分散ぜざるを得なかった。その隙をついて2人も攻めようとしたが、メテオラや低速アステロイドのバリケードで牽制された。ちなみに後者はカズマがよく使う手だな。それで互いに攻めきれず一種の膠着状態に陥った」
「そしてその均衡を崩したのは!」
「ああ、古寺だ」
奈良坂の頬が少しばかり緩んだ。
女性C級隊員は鼻血を出した。
◆◆◆
市街地Aに転送された古寺。
住宅の屋根に飛び乗り辺りを見渡す。すると、運の良いことに近くには狙撃に適した高層ビルが存在していた。そしてちょうどその西側にカズマ先輩がおり、間宮隊を発見したと一報を入れてはグラスホッパーで移動を開始したようだ。
ならあの高層ビルからカズマ先輩を狙撃支援した方がいいだろう。
そう考えひたすら長い階段を登り、ようやく高層ビルの屋上へとたどり着いた古寺。
イーグレッドのスコープ越しに映る間宮隊の3人と吉里隊の月見隊員、そして自身の隊長のカズマ先輩が戦っている光景がよく見える。
間宮隊は挟み撃ちにされて攻めきれてはいないものの防御に関しては依然余力を残しているようだった。
「……これならアイビスの方がいいな」
誠に不服ではあるがイーグレッドからカズマ先輩が入れたアイビスに切り替える。
そして間宮隊の誰を狙うかを吟味する。自身も狙われている身であろう事から、狙撃支援をできるのは恐らくこの1発のみ。狙う相手は慎重に狙わなくてはならない。
戦況を見るに間宮隊を支えているのは鯉沼隊員だろう。鯉沼隊員は的確にシールドを張り、カズマ先輩と月見隊員の攻撃から2人を守っている。
ボーダーが評価した彼のパラメーターは防御・援護が5とやや高い。
出来ればダメージの少ない間宮隊長か秦隊員を狙いたかったが今の状況を鑑みるに鯉沼隊員を狙った方が良いだろう。
そう考えを纏めると満身創痍の鯉沼に狙いを決めた。
アイビスの照準が、銃口が、鯉沼隊員を捉えた。
引き金が引かれ、撃鉄が下される。
それと同時にイーグレッドの比ではないほどの反動が銃床から肩を伝い、体に伝わる。そして撃ち出された弾丸は鯉沼隊員めがけて一直線に飛んでいく。
アイビスの弾丸は狙撃に気付いた間宮隊長の集中シールドをいとも容易く貫通して鯉沼隊員の胴体に大きな風穴を開けた。
先ほどの射撃の反動からも分かってはいたが途轍もない威力だ。
イーグレッドだったらあのシールドを貫けなかっただろう。
対物ライフルのような見た目のアイビスは見た目通り重く、取り回しが悪いからと敬遠していたがこれからは入れておいてもいいかもしれない。
「と、感心してる場合じゃない。早く移動しないと」
アイビスの発砲はイーグレッドのそれよりも目立っていた。今ので確実に居場所を捕捉されたであろう。
間宮隊は動けないにしても月見隊員が離脱してこちらに来る可能性だってあり得る。
階段を全段飛ばししながら駆け降りる。それでも高層ビルという事もあり、上り下りも一苦労である。
「こんなに高いなら屋上じゃなくても良かったんじゃ……」
そうふと思いながらも急いで階段を下る。
ようやく半分降りたところだろうか、下から登ってきた吉里隊の北添隊員と鉢合わせしてしまった。
「「あっ……」」
2人は互いを見つめ合って一瞬硬直する。
先に動いたのは北添隊員だった。
ふと我に帰った北添隊員は突撃銃の引き金を引く。
「シールド!!」
古寺は咄嗟にシールドを展開して防ぎ、扉を蹴破ってこの階のフロアへと逃げる。
北添隊員は追いかけながらも逃すかとばかりにアステロイドを撃ち続ける。
逃げ込んだフロアは広く遮蔽物が全くと言っていい程なく、北添隊員の射線を切れない。
しかし、それは逆説的に北添隊員も古寺の射撃も切れないという事だ。
(これなら!)
バックワームを解除し、シールドとイーグレッドを出現させ飛来するアステロイドの雨を防ぎながら北添隊員の頭目掛け発砲した。
しかし、姿を晒した狙撃手の攻撃など怖くもない。銃口の向きで攻撃場所が丸分かりである。
北添隊員は胸から上を2枚のシールドで覆う。1枚目のシールドを突き破ったイーグレッドの弾丸は2枚目で完全に止められた。
イーグレッドは再装填に入った。
それをチャンスと見た北添隊員は身軽になるため突撃銃のショルダーベルトを外し捨てる。そしてスコーピオンを右手に握り走り出した。
「……!?」
それに対し古寺はイーグレッドからアイビスに切り替え、構え直す。
北添隊員はそれを見るや、アイビスは流石に受け止められないと足を止め慌てて後方へと飛び下がる。
古寺はそれを待っていたとばかりにニヤリと笑っては突然、くるりと90度回転し、北添隊員に側面を晒した。
一体何がしたいんだと北添隊員が思った次の瞬間、古寺は壁に向かい発砲し出した。ビルの壁面に人1人通れるほどの穴が開いた。
古寺の狙いは最初から北添隊員の撃破ではなく、逃走であった。
古寺は基本がしっかりとしている。だからこそ姿を晒したまま応戦するなどという事ハナからあり得なかったのだ。最初の一撃はあたかも応戦する意志があると思わせるためのブラフ。
古寺はアイビスを解除し身軽になっては全力疾走で出口へと向かった。
(しまった!)
北添隊員は先程突撃銃を捨てたことに内心後悔する。あの時捨てていなければ牽制射撃が可能だった。新たに出そうにも古寺が逃げるのを阻止するには間に合わないだろう。
「届け!!」
そこで手に持っていたスコーピオンを投擲する。
しかし、カズマの戦闘を見ている古寺にとって、この程度の投擲など予想の範疇だ。
カズマならこれにグラスホッパーも加えてくる。
「シールド」
弧を描き飛んでいくスコーピオンはあっさりとシールドで防がれた。
そして一歩、二歩と強く大地を蹴り、古寺は大きく跳躍しビルの外に飛び出した。
北添隊員はすぐさま突撃銃を出現させ古寺の抜けた穴から半身を出し、銃を下に向ける。
突撃銃の照準越しに見える狭い視界には、古寺がイーグレッドを構えこちらに向けている姿があった。
引き金が引かれ、銃口が輝く。
「まずっ!?」
しかし、流石に落下中に弾を相手に当てるなどと言う芸当は出来ず、北添隊員の顔の真横を弾丸が通り過ぎた。
助かったことに安堵しホッと胸を撫で下ろしては改めて北添隊員は飛び降りた。
古寺は地面に着地すると同時にバックワームを起動。持っていたイーグレッド消し、全力で走り出した。
◆◆◆
「おっと古寺隊員機転を効かせなんとか逃げ延びた!!」
「狙撃手は寄られたらまず助からない。運が良かったとしか言えないな」
まあ運が良ければそもそも階段を降りている最中に出会してはいないのだが。
北添隊員は古寺の狙撃を目撃したのではなく、たまたま近くにあった高層ビルを探してみようと思い登ったのである。
その結果思い掛けず階段で出会したのだ。
「おお、厳しい評価ですね」
それだけ弟子には期待してるという事ですか。とは野暮なので桜子は言わないでおいた。
「しかし古寺隊員、北添隊員に追いつかれてしまう!!」
画面では古寺を逃さないようアステロイドで牽制射を行う北添隊員の姿があった。
古寺は仕方なくバックワームを解除し下半身と上半身を二枚のシールドで守りながら逃走を続ける。
「これは……すごい不毛な戦いですね。北添隊員は逃さないように突撃銃を撃ち続けているので機動力が下がり追いつけずにいる。そして古寺隊員は足を削られて機動力を落とされないよう上半身と下半身の両方にシールドを張らざるを得ず、常にレーダーに映るため逃げきれない」
そして月見隊員は間宮隊2人に狙われ離脱出来ず、カズマは来馬の方へと向かっておりこの状況が動く要素が何一つとしてないのだ。
「先ほどの白熱した戦いを見た後だと何というか……」
あまりに見栄えのない戦闘である。
◆◆◆
「クソッ!待て!!」
拝啓、カズマ先輩、来馬先輩、アクア先輩。いかがお過ごしでしょうか。僕は今アステロイドの雨の中を必死に逃げ回っています。
僕は体育会系ではないので運動は苦手ですが幸い、トリオン体は疲れ知らずなので永遠に走ることが出来ています。ですがもう無理みたいです。
北添隊員との距離がだんだんと縮まっており、50メートルほど離れていた距離が今や5メートルほどにまで縮まっています。
とうとう北添隊員はスコーピオンを持ち始めました。カズマ先輩、合流できそうにありません。僕、古寺章平は死に場所を見つけました。
古寺は立ち止まり180度回転し北添隊員へと向き直る。
その手にはアイビスが握られていた。
その砲門が北添隊員へと向けられる。
だが北添隊員は怖気ない。
先程は自分がアイビスに怖気付いたから取り逃したのだ。ならばまた同じ事をしてどうする。
もう既に矢は放たれたのだ。
「いっけぇぇぇえ!!!」
体を捻り全身を使いスコーピオンを投擲する。それは先の一撃とは速度が全く違う。腰の入った一撃だ。
それと同時に引き金が引かれ内部の撃鉄を動かし、弾丸が撃ち出される。
スコーピオンとアイビスの弾が交差する。
スコーピオンは見事古寺の脳天に突き刺さった。そしてアイビスの弾は北添隊員の胴体を捉えていたーー先程までは。
北添隊員がスコーピオンを投げた際、体を捻った事により照準から外れた。そして、弾丸は北添隊員の頬を掠めては背後の住宅に大きな穴を開けた。
『戦闘体活動限界……』
悔しさに顔を歪める、体が光に包まれ始める。
『ベイルアウト』
しかし最後に古寺は笑った。
その意味を北添は気付かない。
◆◆◆
一方マップ南部
2人の銃手が睨み合っていた。
始まりはバックワームを互いに起動しての不意遭遇戦。先に仕掛けたのは来馬だった。
アステロイドの弾が射出される。
吉里隊長はすぐにバックワームを解除。シールドを張りこちらもアステロイドで応射。
それをシールドで防いでは下がりながらにアステロイドの弾幕を張り近づかせない。
しかし吉里隊長は遮蔽に隠れて射線を切りつつ、バイパーを射出。それは空高く飛んでは軌道を変え地面へと降り注いだ。当たりはしないものの相手は遮蔽に隠れながらこちらを一方的に攻撃できるのだ。
次第にそのバイパーは来馬に当たるようになっていった。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるである。
それならこっちだって! と来馬は突撃銃のセレクトレバーをカチッと切り替え銃口を上に向けては引き金を引く。
無数に打ち上げられた弾は放物線を描き吉里隊長の下へと降り注ぐ。
「ちぃ!!」
遮蔽を使った勝負ではハウンドには勝てないと踏んだ吉里隊長は頭上にシールドを張りながら突撃。
アステロイドに切り替え、弾をばら撒く。
「シールド!!」
上半身を覆うようにして出されたシールドにアステロイドの弾は当たってはパチパチと弾けて消える。
しかし覆いきれていない腕や脹脛にいくつか被弾する。
被弾痕からはチョロチョロとトリオンが漏れ出している。
ダダダッ、ダダダッ、と散発的にアステロイドを放ちながら全速力で来馬を追いかける。
両者の距離は20メートル。
来馬は近距離での射撃戦はあまり得意ではない。それは突撃銃を持つ銃手全体にも言える事だが。しかし、相手の方が銃手の年季が上だ。これ以上不慣れな状況での戦闘を継続すれば負けるのはこちらだ。
そう考え、来馬は銃口を下に向ける。
「!?」
吉里隊長の足元、彼の進行方向にアステロイドの弾幕を張る。
これには思わず吉里隊長も足を止めバックステップで後方へと下がる。
その隙に来馬は距離を取るべく後ろ向きに走り出す。
◆◆◆
「南部の銃手同士の戦闘は拮抗してますね。それでも吉里隊長がやや有利か!」
「流石に年季が違うからな。このままいけば吉里隊長が普通に勝つだろう」
距離をとった撃ち合いも銃手としての練度の差からか来馬の被弾ばかりが増えていく。
バイパーも駆使して隠れながら安全に攻撃も繰り出している吉里隊長。
「バイパーは扱いが難しいが、ハウンドじゃ曲がりきれない場所を通れるからな。今の地形的にハウンドは上空からの攻撃しか出来ない。容易に対処されるだろう」
来馬と吉里隊長は車一台が通れるくらいの幅しかない小道にて戦闘をしている。ハウンドの多角的な攻撃をするにはもう少し広さが欲しいところだ。
「それでも来馬先輩もかなり粘っている。シールドで防御しながら引き気味に戦うスタイルが割と様になってるな。これならしばらくは持つだろう」
画面では終始優勢な吉里隊長が、来馬予想外の抵抗に焦りの表情を浮かべていた。
「ですがもう……」
烏丸と奈良坂が口を揃えてこういった。
「「吉里隊長の負けです」」
「へっ?」
映像ではカズマがバックワームとグラスホッパーを使い、既に付近へとやってきていた。
そして吉里隊長を捕捉するとグラスホッパーで加速しだす。そして吉里隊長に向かい一直線で飛んで行く。左手首から肘にかけて鎌のようにスコーピオンが生えている。
それも2本もだ。
それは入隊時に見た技、初めて覚えた技。
それが初のランク戦にて披露された。
それでも使い道はある。刃を一本から二本に増やす事で単純な話、威力が2倍になる。そうでなくとも命中率は上がるだろう。
実際その通りになった。
2本ある内の一本は外したものの、もう1本の刃が吉里隊長の胴体を切り裂いたのだ。
しかし、急所を外したのか吉里はトリオンを大量に漏洩してはいるもののまだベイルアウトには至っていない。
そしてカズマは着地に失敗し地面に顔をめり込ませている。
いまなら確実にカズマを倒せる。今度はこっちの番だと吉里は引き金に指を添える。
しかし、アステロイドが放たれることは遂になかった。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
吉里隊長の背後にいた来馬にトリオン器官を撃ち抜かれベイルアウトした。
◆◆◆
「二度目のグラスホッパー奇襲は当てましたね」
まあその後は滑稽にも顔面からコンクリートに着地したのだが。
「そうですね。足りない技術を機転でカバーしたというところでしょうか。確かにアレなら命中率が上がりますね」
「単純かつ一定の効果は見込める良い手だな」
それを聞き嬉しそうな気持ちを抑え切れず烏丸もついに顔が緩んだ。
既に会場の女性隊員の大半が奈良坂と烏丸のコンボによって脳を破壊されダウンしている。
◆◆◆
「「ハウンド!」」
「シールド!」
月見隊員は間宮隊2人に大苦戦をしていた。
間宮隊長が2×2×2の威力重視のハウンドを、秦隊員が4×4×4の弾数重視のハウンドを両手に出現させた。
秦隊員が側面と上空へ撃ち出し、間宮隊長は散らして放つ。
それに対し固定シールド2枚を使ってなんとか凌ぐも全てはガードしきれず被弾が増えていった。威力重視の弾は防げた。だが、細かい弾は防ぎきれずに小さなダメージが蓄積していく。
それがもはや無視できない程のダメージとなっている。特に足は蓮根のように穴が空いており千切れる寸前だ。
近づこうにもメテオラによる牽制やハウンドによる多方向からこ攻撃に晒され、近づくに近づけない。戦況を打開できるであろう旋空も隙が大きすぎて使えない。
『秦、絶対に旋空の射程に入るなよ。このまま距離を戦う。次にやつが固定シールドを展開したら一点にハウンドをぶつけてトドメを刺す』
『了解です』
そう言って2人は再びハウンドを両手に出す。
無数の小さな穴からはトリオンが漏れ続けている。もう既に大部分のトリオンが漏れ出した。
2度あの攻撃を受けただけでこの有様だ。
このままでは何も出来ずに負けてしまう。それだけは嫌だ。それでは何のために今まで鍛錬を続けてきたと言うんだ。
そう考えては月見隊員は呼吸を整える。
北添君は狙撃手を倒したばかりでかなり遠い。隊長も来馬隊員と依然戦闘中で合流は不可能。カズマさんは恐らくそのどちらかに向かった。
私も速くここから離脱しなければ。しかし、2人のハウンドストームからは逃げられないだろう。
ならせめて1人でも倒して圧力を減らし、逃げる。
そして月見隊員は覚悟を決めた。
間宮、秦、両名がフルアタックに入る瞬間。視線を秦隊員へと向ける。
すると、間宮隊2名の視界から突然月見隊員が消えた。
それは作戦会議で吉里隊長が入れた新トリガー。吉里隊はランク戦の行われない9月の間にコッソリとテレポーター(試作)の特訓を行なっていたのだ。
それを今、この土壇場で使用したのだ。
「「なっ!?」」
月見隊員は秦隊員の背後へと瞬間移動し、そしてくるっと振り向き、その勢いのまま秦隊員へと切り掛かる。
それに間宮隊長はいち早く気付いたが、2人はフルアタックに入っておりシールドの展開は出来ない。
鯉沼ならこれも防げただろうと間宮は悔やむ。それでも何もできない訳ではない。
「ハウンド!」
両手に持ったハウンドを月見隊員へ向け一直線に放つ。
月見隊員が秦隊員を斬り裂くこと同時に間宮のハウンドが月見隊員を撃ち抜いた。
『『戦闘体活動限界、ベイルアウト』』
◆◆◆
「ここで月見隊員と秦隊員が2人同時にベイルアウト!!月見隊員は新トリガーテレポーターをしっかりと決め、間宮隊長もすぐさまハウンドで月見隊員を撃破した!!」
「月見隊員は最後の最後で粘りを見せたな。あのまま何事もなく間宮隊にすり潰されて負けるという可能性の方が充分あり得た話だ」
奈良坂も十中八九間宮隊が勝つと思っており感心する。
「さて、間宮隊長はどう出るか。1人じゃカズマと来馬先輩の2人には勝てないだろ。距離的にも自発的なベイルアウトはまだ可能だ」
もしくは北添隊員も含めた乱戦に持ち込むかだ。そうすれば場が混乱した所にメテオラを撃ち込めば状況によっては勝ちの目もあり得る。
と、そんな事を言っていると画面ではカズマがグラスホッパーで移動を開始した。
「おっとカズマ隊長はグラスホッパーで先に間宮隊長の所へ急行し始めた!」
「自発的ベイルアウトで逃げられる可能性がありますからね。来馬先輩を置いてでも向かいたい所でしょう」
B級ランク戦では自発的ベイルアウトによる離脱であれば相手の得点にはならないというルールがある。と言ってもそれを使えるのは他部隊が半径60メートルに居なければという条件付きだが。
カズマがグラスホッパーで半径60メートルに入った後は、来馬が到着するまで待っていれば安全に間宮を倒せる。しかし北添隊員の存在があるためそう悠長にもしていられない。
今もバックワームを付けて行動しているためカズマ達の視点からはどこにいるかわからない。もたもたしていればまた吉里隊にキルスティールをされる恐れがある。それだけなら良いが自分達が不意打ちされて落とされる危険性だってあるのだ。
◆◆◆
『隊長!』
『隊長!ベイルアウトしましょう。射手1人では絶対に勝てませんって!』
『そうです。ベイルアウトしましょうよ!』
通信越しから秦、鯉沼、楠本の声が聞こえる。
間宮は今回の試合を振り返る。
佐藤隊の隊長、カズマは自分で戦場を動かしあの不利な場面から活路を見出した。
吉里隊の隊長は隊のみんなを信頼して各自に自由な行動をさせた。極め付けは月見隊員が使った新トリガーのテレポーターだ。
では俺は何ができた?
鯉沼は十分なほどの活躍をしてくれた。秦は俺がもう少ししっかりしていれば落とされることはなかった。
そうだ、俺は何もできていないんだ。
深く息を吸い吐き出す。そして無線を繋げた。
「そうした方がいいのかもしれない……いや良いに決まってる」
『じゃあ早く!』
「それでも引き下がれない!こればかりは!!」
『隊長……』
「鯉沼。お前にはこの試合でたくさん助けられた。秦。さっきは守らなくてすまん……だから最後まで戦うお前達の隊長の姿を見ていてくれ!!」
間宮は通信を終了し、南の方角を見つめる。
この前出たワートリのQ&Aで死んだ二次創作作者どれだけ居るんだろう。花緒ちゃんが苗字同じだけで月見の妹じゃないって言われてたら俺も死んでました。
本編の犬飼と影浦のやり取りでおそらく影浦隊がB級降格する理由が明らかになるだろうからその時は俺も死にます。水上が奨励会に入ってたって判明した時に死んだ人も何人かいるでしょう。
みなさん強く生きましょう。
C級隊員編で面白かった話教えてください。
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1話この厳しい試験に合格を!
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2話この新入隊員に洗礼を!
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3話このC級隊員に勝利の栄光を!
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4話このC級隊員に弾バカを!
-
5話このC級隊員にも狙撃手を!
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6話この狙撃手たちにハーミットを!
-
7話このロクでもないランク戦に終止符を!
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8話このランク戦に菩薩様を!
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9話この愚か者に制裁を!
-
閑話