バッドエンドと書いている地点で察してるでしょうが所々胸糞展開があります。特にラストの方では胸糞極まりない展開が待っているので覚悟のある方のみどうぞ。
一応そのお話の際には前書きで注意します。
栞の変動が見られなかったので気づいてないのかなと思い最新に変えました。全話投稿し終わり次第並べ替えます。
バッドエンド、この憎きネイバーに復讐を!
ある日、三門市に突如として異界と繋がるゲートが発生した。
そして、後に近界民と呼ばれる侵略者が襲来し、街は火の海と化し、家は倒壊し、そこら中に人の死体が散乱した。
そして現れた怪物共に食われたのがこの俺、佐藤和真だ。しかし俺は
あの時、薄れゆく意識の中、視界には額にサングラスをかけた男の姿だけが映っていた。
目が覚めると視界には知らない天井が広がっている。そして病院の独特な臭いで俺がどこにいるのか理解した。
その後は精密検査を受けた。特に異常はなくすぐ退院でき、俺は家に帰った。
家には誰も居なかった。
ふと突き飛ばした葵のことが気になった。
葵の家は既にネイバーにぶっ壊されている。それにあの地区は危険区域としてまだ出入りする事ができない。
アイツが無事なのか、そう考えると胸の奥に拭えないモヤモヤが溜まり始めた。
俺は居ても立っても居られずに玄関を勢い良く開け、外に駆け出した。
あちこちと駆け回り葵について調べた。調べ尽くした。
その結果分かった事は、葵の家族は死亡が確認され、葵は未だに行方不明だという事。その際、さらに知りたくない事を知ってしまった。どうやら俺の家族は葵の家族と同様、全員胸にポッカリと穴が空いている形で死んでいたらしい。
涙が流れた。ポロポロと流れて止まらない。
やがて膝を突いては獣のような人とは思えないような声にならない叫びを出して泣き続けた。
やがて涙は枯れた。
◆◆◆
「助けて、かじゅまさん!!」
「カズマ……逃げろ!!」
「生きて……カズマ!!」
浅い眠りから目が覚める。
現在は午前4時。
激しい発汗と鼓動が煩わしい。熱いのに寒く、心臓は今にもはち切れそうだ。
「くそ、またあの夢か……」
家族を失ってから、葵を取りこぼしてから、ひたすらに見る夢。
目の前で葵が、父さんが、母さんが、化け物共に殺されていく様を何も出来ずに俺はただ目の前で眺めていて、その化け物が俺を殺そうとする寸前に覚める夢。
あまりに出来の悪い夢だ。俺が見ているというならば俺の望んだ通りにしてくれればいいものを。
「はっ、出来の悪い俺が見る夢なら当然か……」
独白に応える者はなくそれは虚しく消えてゆく。
否、俺の腹がぐぅ〜、と答えた。
こんな状況でも腹は空くんだなと思いながらも辺りを見渡す。
部屋には中身のない菓子袋やカップラーメンの容器。それらが所かしこに散乱しており、その食いカスを求めて油虫が跋扈している。
カズマはそれを気にしてもいなかった。
やがて唯一見つけた菓子袋の中身を食べ始める。そしてリモコンをいじってはただ虚ろな目でテレビを眺めていた。
これで今見てるアニメも10周目だ。
まだ見てないものも沢山あるが、見る気力も起こらず惰性で今まで見たアニメを垂れ流し続けていた。
「ああ……空になった……」
そう言ってまだ空腹なカズマは久々に部屋から出てリビングに向かう。家の中は線香の独特な匂いや菊の匂いが漂っている。
やがてリビングにたどり着き冷蔵庫を開ける。
「何もない……か」
正確にはあるにはあるのだがろくに家の手伝いもせずゲーム三昧だったカズマにはそれらは調理できない。母親なら出来ただろうか。
そう考えていると、ふと訳もわからず湧き上がった行き先の無い怒りが湧いてきて冷蔵庫を殴った。
人体からは鳴ってはいけない音がした。
「なにやってんだ……バカバカしい。作れねえなら買ってくれば良いだけだろ」
そうだ、金ならたんまりある。
家族が死んだお陰で大金が降りたのだ。ただ日々を過すのであれば一生不自由なく生きていけるだろう。
夢に描いたニート生活である。
「……こんなのが俺の夢だったのか?」
カズマはそう虚しくそうつぶやいた。
もう戯言に付き合ってくれる家族も友人いない。
◆◆◆
スーパーでカップ麺を何箱も買い込んでは自転車の後部に縛り付ける。中学に行くために両親に早めに買ってもらった自転車がここに来て役立つとは思わなかった。
「やめろ……くだらないことは考えるな。余計に虚しくなる」
自転車のスタンドを勢いよく蹴り上げ、ペダルを踏みつけるようにして漕ぎ出す。
人混みで溢れる街を自転車が駆ける。大規模侵攻があったというのに街の中心部は一定の賑わいを見せている。まるで何もなかったかのように。
それを見ていると俺だけが違う世界から来たかの様な不思議な感覚に囚われる。実は怪物が襲ってきたのは夢で、その夢に出てきた葵なんて奴も家族の存在も最初から存在し得なかったのではないか。そんなことは無いはずなのに否定する言葉が見つからない。
それを否定し現実たらしめたのは、ビルに取り付けられた大型モニターから流された一つの映像だった。それは怪物を、通称近界民を撃退したと言われている謎の組織、ボーダーによる広告。
立ち止まり見上げると、モニターには鋭い鼻と目付きをした男が演説を行なっていた。
狐を擬人化させるとあんな感じになるだろうな。
「コホン、知っての通りですが我々は異世界からの侵略者ーー近界民を撃退いたしました。それは我々が独自に近界民の技術を研究してきたからです。しかし!」
男の声は段々とヒートアップしていく。
その声に街行く人々は足を止めモニターに視線を移す。
その男の言葉が、俺の世界は夢でなく現実であったのだと強く再認識させてくれた。しかし、それと同時に反吐が出る。
「我々には圧倒的に人手が足りないのです! そこで! 前途有望な君達の力を我々に貸してくれないだろうか!! この街を、この街の人々を一緒に守っては頂けないだろうか!!」
こいつらは力を持っていた癖に何をしていたというのだ。お前らがもっと早く動いていればあんな事にはならなかった。葵が消えることも、俺の家族が死ぬことも……
そこまで考えて思い止まった。
では俺はどうだ。その見下しているボーダーと違い力も無く、その場に居合わせた癖に葵を救えなかった。
反吐の出る存在よりも劣っている癖に何故それを批判する。
ーーやめろ
そうやってお前は他人のせいにして自分は楽になりたかったんじゃないのか。誰かのせいにできれば無力な自分は悪くないと言い訳したいのではないのか。
ーーやめろ、考えるな
考えないようにしようと脳を働かせれば働かせるほど頭の奥の方まで浸透していく。結局無力な俺は誰かのせいにしたかったようだ。
こうなったのは世間が悪い、時代が悪い、環境が悪い、と言うのはいつの時代でも俺のような何も出来ない、何もしない弱者なのかもしれない。
俺はその場から逃げるように再び自転車を漕ぎだし家に辿り着いた。自転車を止めては箱を抱え玄関まで向かう。すると玄関前にあるポストに目が移った。
ポストには俺が引きこもっている内に送られたであろう大量の郵便物がぎっしりと詰められていた。くだらないと一蹴しようとしたが習慣というものは恐ろしい物で気付けば中身を取り出していた。
家に入り郵便物をテーブルの上に無造作に置く。内訳はアクシズ教とか言う新興宗教の入信書に、銀行や証券会社から融資の相談書だ。
どうやら銭ゲバのハゲワシ共は人の死で成り立つ金にすら群がるようだ。
反吐が出る。先ほどよりも強烈にだ。人が死んで出来た金がそんなに欲しいのか。なら近界民共のように自分達で勝手に人を殺してればいい。良いビジネスではないか。
やはりどれもこれも下らなかった。
手に取って損したと全てゴミ箱に入れようとしたその時、一枚の紙が床に落ちた。このまま取ろうとすれば今手の上にある憎たらしい紙切れも部屋に散らばること間違い無しだ。
とりあえず今持ってるものを全て捨ててからその落ちた紙を拾おう。
そうして手にあるゴミをドサっとゴミ箱に入れて落ちた紙に手を取る。
『急募!前途有望な少年少女達よ!是非ボーダーに入り共にこの街を近界民から守ろう!』
拾った紙にはそう書かれていた。
何を、と腹立たしくなると同時にそれを手放せない自分がいた。これは近界民に復讐する最大のチャンスなのではないのか。彼らは対抗し得る武器を持っている。
たしかにボーダーはクソだと思う。それでも今捨てたものと比べれば遥かにマシだとは思う。
俺は棚にある筆を手に取り、その応募書類に記入してポストへと投函した。
そうして俺は入隊試験を乗り越え正隊員となった。
◆◆◆
一週間後、根付メディア対策室長に呼ばれた。
あのビルのモニターに映ってた人だ。
その部屋に向かうと他にも入隊した者達がちらほらと何人か集まっていた。一体何事かと思いきや、どうやら一週間後に予定しているボーダー建設記念と初の入隊者のお披露目として記者会見に出て欲しいとのことらしい。
そしてその日に向けた打ち合わせを根付メディア対策室長直々に行った。
まずは来るであろう一般的な質問。それに対する模範解答を根付さんが準備しており、それを個人個人がアレンジを加え、それをさらに根付さんが添削する。
ちなみに絶対に来るであろう志望動機「なぜボーダーに入ったか?」という問いに対して俺が「近界民共をぶち殺すため、俺の家族がされたことを何倍にして返すため。奴らを絶滅させる為」
と答えたら本番でやるなよ? と言われた。
首を傾げると絶対にやるなよと更に念押しされた。
「振りですか?」と答えたら「良い加減にしたまえよ」とドスの効いた声で制止されたので止めておくことにした。
決してビビった訳じゃないと言っておく。
そして当日。
何度も何度も打ち合わせを行い初のお披露目となり、皆それぞれが「近界民から人々を守る」や「この街を守りたい」などお綺麗な言葉を並べていく。その中でも風間さんはしっかりとした受け答えで記者からの受けも良く、記者は感心して筆を走らせる。
その様子を見て
『これなら仕込みの記者を使う必要もないねえ』と思う根付。
だが、そこで1人の記者が手を挙げた。
仕込みの記者ではない。根付が目を細める。
「……では質問をどうぞ」
「ではそこの君に聞きたい」
まだ質問の番になっていないカズマに対し手を指す記者。
「はい?」
「次に大規模な近界民の襲撃があったら街の人と自分の家族どちらを守りますか?」
よく見てみればボーダーに対して批判的な記者ではないかと根付は気付いた。だが、根付は慌てない。何故ならこういう時のために彼を残しておいたのだから。
「もちろん街の人です」
場が凍りつく。
根付は涼しい顔をしている。
しばし沈黙の末思考を整えたボーダーに批判的な記者達が攻勢に転じた。
「つまり君は家族が大事でないと?」
「なんて事を言うんだ!親不孝が過ぎる!!」
「先の侵攻で家族を失った人もいる。そういう言い方は良くないんじゃないかな?」
罵声が飛び交う。彼らは反ボーダー派の記者たちだ。
カズマは口を開き始める。記者達は一体どんな返答をするのかと嫌な笑みを浮かべ始める。
「俺の大切な人達は先の侵攻でみんな消えていきました。だから俺にはもう守るべきものも何もありません。家族か街の人かですか? そんなもの俺にはもう街の人しかないんです。だから俺は最後まで、最期まで、矢が尽き刀が折れ、命尽きるその瞬間まで街の人たちのために戦います。これを見てる貴方も、その家族も。……もちろんここにいる貴方方も」
と、どこか病んだような顔でにっこりと返答する。記者達はその薄気味悪さに身震いすると共に、これ以上追及することが出来なくなった。
根付はそれを一瞥すると誰にも気付かれないようニィッと笑うと締めの言葉に入る。
後日、応募者数は今回の10倍にも跳ね上がったという。
◆◆◆
戦闘員数名の小規模な組織だったボーダーは根付メディア対策室長の手腕により着実に人手が増えていっている。実に喜ばしい限りだ。しかし未だに街の至る所で近界民が出没する現状、現在の戦力では街全体を防衛するのは不可能だ。
それに入隊者はまだ経験が浅く、そのほとんどが戦う術を知らず、満足に近界民を倒せない。その為旧ボーダー隊員の者達が率先して近界民の駆除にあたっていたのだが、しかしそれではいつまで経っても後続が成長しない。そこで忍田本部長が数名ずつ交代で入隊した者達を連れて行くのはどうかと提案した。
これ以上戦闘員の疲弊は避けたい為、簡単に許諾された。
そして最初に選ばれたのは3名である。
1人目は太刀川慶。
忍田本部長の弟子であり、戦闘技術が高く何体もの近界民次々と撃破していった。これならもう戦力として投入しても何ら問題はない。
2人目は風間蒼也。
旧ボーダー隊員であったの風間進の弟であり、彼もまた高い戦闘技術を有しており多くの近界民を次々と撃破した。彼ももう投入可能だろう。
2人は問題なく防衛任務に充てられると判断された。
しかし問題は3人目だった。
その3人目の名は佐藤和真。
ゲートが発生し、オペレーターが現場の隊員に座標を転送する。それを受け忍田本部長はカズマを連れ現場に急行する。
現場に着くと同時に黒い球体から鎌を2本携えた多足の怪物が現れる。
それを目にした途端、カズマの視界が真っ赤に染まっていく。心臓が激しく脈打ちそれ以外なにも聞こえない。しかしやがてその音すらも薄れていく。
そして段々と視界が狭まり、まるでここには自分とあの憎い怪物しか居ないように錯覚し始めた。
殺してやる!いや、殺す!!
カズマはドス黒い感情に飲み込まれ正気を失ってしまった。
「下がっていろ。まずは戦い方を見せる」
「……」
しかしその声はカズマには届いていなかった。
腰に携えた弧月に手を掛け抜刀する。そして、殺す殺すと呪詛を吐き散らしては駆け出してまった。
「っ!!……待ち給え!」
忍田は手を伸ばし掴もうとするが届かない。
モールモッドの右前脚が掲げられ、その前脚に付いた鎌が振り下ろされようとする。
しかし俺は既に一度この攻撃を見ている。
姿勢を低くしモールモッドの懐に飛び込んでは、振り下ろされる一撃と同時に弧月を振り上げる。その一閃はモールモッドの足と足の繋ぎ目、関節部位を斬り裂いた。
切断された鎌がコンクリートに突き刺さる。
散々人をひき肉にしたご自慢の鎌がざまあないな。俺達はもうただやられるだけじゃない。どうだ、思い知ったか。今度はお前らが死ぬ番だ。
振った弧月を脇に戻し、この勢いのまま横薙ぎを繰り出そうとする。
取った!!
そう思った瞬間、モールモッドの胴体に納められていた無数の脚が展開され始める。その一つ一つに先程のような鋭利な刃が付いていた。
「そん……な……」
それは次々と襲い掛かり、カズマを串刺しにした。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
カズマは光に包まれ空を飛翔する。
それを見た旧ボーダー組の忍田は気が気でなかった。
鬼怒田さんの尽力によりようやくベイルアウト機能が完成した。だから後ろめたさはあるもののトリオン能力の成長が見込める子供を戦闘員として、兵隊として募集した。
十分安全を取っているとは頭では分かっている。だが、散って逝った旧友と今の光景がどうしても重なってしまう。
もしかしたらベイルアウトの誤作動で、本体が切り裂かれたまま戻されていたらどうすればいい。ベイルアウト専用のベッドにズタズタに引き裂かれた彼の姿が脳裏に浮かび、へばり付いて離れない。
気が気でない忍田は一瞬の内に残る10体のトリオン兵を倒しては急ぎ本部へと戻った。
ベイルアウト用のベッドに着くと、殺された事に怒り狂い壁を殴りつけているカズマの姿があった。忍田は少し安堵した。
それはそれとして忍田はカズマを酷く叱った。
◆◆◆
そして数日後、俺は再び防衛任務に参加した。
今回は前回の反省を踏まえハンドガンを装備して来た。東さんに銃手トリガーの使い方を指導してもらい、その他にも余りある時間を射撃訓練や弧月の素振り、模擬戦に充てており、毎日10時間以上、寝る間も惜しんで日々鍛錬を積んだ。
トリオン体というものは便利で栄養の吸収効率が良い為食事の回数も減らせ、肉体への負荷が少ない為、僅かな睡眠時間で事足りる。
そして余った時間を全て鍛錬に費やしていた。
他にもブレードを使いこなしたいなら体の動かし方を学べと忍田さんに言われ、死ぬほど嫌だった運動も毎日続けている。それも近界民を殺す為だ。あいつらを殺せるならなんだってやってやる。
そんな事を思い返しているとモールモッド一体が現れた。
それをハンドガンでモールモッドの射程外から一方的に攻撃し、ダメージが蓄積して動きが鈍ったところでハンドガンから弧月に切り替える。
振り下ろされる一撃は以前と比べ格段に遅い。少ない動きで易々と躱し、弧月で一刀両断した。
「死ね!死ね!死ね!!この前はよくも殺してくれたな!!人様を殺すから殺り返されるんだ、分かってんのかこのド低脳が!!ザマァみろ!!!………ハッハッハ!!!」
そしてカズマは既に生き絶えたモールモッドに対し弧月で何度も何度も刺突を繰り返していた。人間をミンチにした奴がその人間の手でミンチにされているのだ。愉快で愉快で堪らなく笑いが止まらない。
「佐藤君」
「……」
「佐藤君!」
「……っ!離せよ!!」
見かねた忍田本部長がカズマを無理やりモールモッドの死骸から引き離す。
モールモッドはすでに原型を止めておらずバラバラになっている。それでもカズマにはまだ足りなかった。
「憎いのはわかる。しかし何度もそう繰り返していては君の心が持たない!」
「いいだろ!こうでもしないと気が治まらないんだよ!!コイツらは俺の家族を殺したんだ!それ以上の苦痛を味わってもらわなきゃ気が済まない!!」
「いい加減にしろ!!」
忍田本部長は俺の右頬を殴った。
トリオン体のはずなのに、痛みはそこまで感じないはずなのに、なぜかとても痛かった。でも自然と不快には感じなかった。
「いいか、よく聞くんだ。これは生き物じゃ無い。簡単に言えばこれは向こうの世界……近界民が作った人形兵器なんだ」
「……えっ……はっ?……」
あまりの衝撃の事実に言葉を失った。
なんだよそれ。つまり俺の家族のみんなや街の人は心を持たない人形なんかに殺されたって言うのか。
じゃあ俺はさっきまでただの人形に怒りをぶつけてたっていうのか。
「ははっ……なんだそれ……」
俺は力無く地面に膝をついた。そしてあまりのやるせなさにしばらくその場から動けなかった。
それでも涙は出なかった。
「佐藤君……」
◆◆◆
あれからというものカズマは人が変わったように落ち着きを見せた。
もう目の前でトリオン兵が現れようが錯乱することはなく、ただただゲームのデイリーを消化するかのように淡々とトリオン兵を倒していった。
「旋空弧月」
弧月の専用オプショントリガー旋空を起動。
10メートルは離れていたモールモッド2体が急に伸びたブレードに何の反応も出来ないまま真っ二つにされる。
そして、倒したモールモッド2体には目もくれず側面にいたバムスターへホルスターのハンドガンを向け、ノールック射撃を放つ。
一瞬にして8発の弾丸が射出されその全てがバムスターの弱点部位、その一点に命中。バムスターは動かなくなった。
トリオン兵の死骸を一瞥してはすぐにパトロールに戻った。
『そろそろ交代の時間ですよ』
今回の担当オペレーターが通信越しにそう伝える。
「いや別にこのまま続行できますよ。それに今は人手不足ですから」
『そんなこと言ってもう24時間もぶっ続けで防衛任務に当たってるじゃない! いい加減休まないと本当に死にますよ!!』
「トリオン体なんですから過労なんてあり得るわけないじゃないですか? バカですか? それにまだトリオンにも余裕あるんで弧月一本でならあと一勤務分は行けますって」
『そんなわけないでしょ! カズマ君のトリオン量的にそろそろ限界……』
するとオペレーターは嫌な予感が脳裏をよぎった。
カズマのトリオン量は3、決して高くない数値だ。いや寧ろ低いと言っていい。以前までは色々なトリガーを入れては試しまくっていた。しかしトリガーを入れれば入れるほどトリオンを食うと知ってからは極力抑えていた。
現に彼はシールドすら入れておらず弧月とその専用オプショントリガーの旋空。あとはハンドガンの一丁しか入れていないのだ。
それでもこんなぶっ続けで戦っていればトリオンだって切れるはず。いやすでに切れていてもおかしくはない。
ではなぜ未だ戦えているのか。オペレーターの脳裏に一つの答えが浮かび上がってくる。
『まさかベイルアウト機能を外して……』
「ん? 当たり前じゃん。あんな無駄にトリオンを食うなら外すに決まってるだろ?」
『どうしてそんな無茶な事を……というよりどうやって外したのよ!? エンジニアでもない限り外せるわけ……」
「エンジニアについても学んでますが?」
『そうだった!! そんな事勉強してないで学校の勉強してよ!……忍田本部長! 忍田本部長! 来てください! またカズマ君が!!』
今日の担当オペレーターが忍田本部長に泣きつき、大慌てで現場にやってきた忍田さんにゲンコツを食らった。
トリオン体なのに痛い。
「佐藤君ふざけるのも大概にしなさい!」
「ふざけてないです。トリオンを有効活用する方法を模索した結果ベイルアウト機能を外すという結論に至っただけで……」
シールドもどうせガラスみたいにパリパリ破られるので入れるだけ無駄と入れていない。
「そんな態度なら二度と剣術を教えないぞ!」
「なら太刀川さんから教わればいい……」
あのちゃらんぽらんから教わるのは癪だが背に腹は変えられない。きなこ餅一年分でも渡せば喜んで教えてくれるだろう。
「東君にもカズマ君に銃手について教えるなと通達する。そして個人戦も禁止だ!」
「すみませんでした」
俺はそれはそれは見事な土下座を披露した。
「分かったらもう二度とこんなことするなよ!!」
その後、この事態をきいた鬼怒田開発室長が青い顔をしながら大慌てで全隊員のトリガーからベイルアウト機能を外せないようにしたという。
長かったかもしれませんね。
本編詰まってて、こちらも途中までしか書けてないですがある程度出来てるこちらを先に投稿します。
誤字脱字あれば報告していただけると幸いです。
C級隊員編で面白かった話教えてください。
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1話この厳しい試験に合格を!
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2話この新入隊員に洗礼を!
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3話このC級隊員に勝利の栄光を!
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4話このC級隊員に弾バカを!
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5話このC級隊員にも狙撃手を!
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6話この狙撃手たちにハーミットを!
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7話このロクでもないランク戦に終止符を!
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8話このランク戦に菩薩様を!
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9話この愚か者に制裁を!
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閑話