この素晴らしいボーダーに入隊を!   作:こしあんA

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8話くらいで終わる予定です(本当は3〜4話構成だった)前回は9,000文字もあったので読みにくかったかなと反省しています。5,000文字くらいが良いのかなと個人的に思っているので出来るかがりそうなるよう調整します。
アフターストーリーも入れると少し話数増えるかな?(本編で回収できるかわかんないしちょっと小ネタを少々やりたい)


バッドエンド、この憎きネイバーに復讐を!②

あれからというものカズマは依然街に出没するトリオン兵を率先して倒した。

カズマの倒したトリオン兵はその全てが綺麗に急所を破壊されていた。

 

未だトリオン兵は市街地に出没しており、現れる度に近場にいた隊員が対応しており、防衛任務のシフトは常にカツカツであった。

 

そんな中カズマは毎日のように防衛任務を行い昼夜問わず街を奔走し続けた。忍田本部長はそれを咎めたかったが防衛範囲が途轍もなく広大であり、人手が足りない今、立場的にもそれを止めさせるわけにも行かなかった。

 

 

そして今日、平日の昼間であっても防衛任務を入れている。義務教育は便利なもので、いくら出席しなくても時が来れば必ず卒業できるのだ。なら行く必要など無いでは無いか。

そんな事をしていれば当然の事ながら中学1年生の2学期の通知表は全ての科目がオール1となった。

そして先生に呼び出しを受けた。

 

「佐藤君、君は学校をなんだと思っているのだね! 幾らボーダーの仕事があるにしてもこれは異常だ!」

 

「はぁ、学校は義務教育だから仕方なく来てます」

 

「なっ……では進路はどうするつもりなのだね! このままでは碌な進路はないぞ!」

 

頭にかちんと来たがここは我慢しておこう。冷静に、まずは話し合いをしようじゃないか。俺はただ暴力の限りを尽くす近界民とは違うのだ。

 

「ボーダーに就職するので別に構いません。高校に行く気もないです」

 

「あんなものは一過性にすぎない!! もし仮に近界民が攻めて来なくなったら君は職を失う事になるんだよ! その場合、中卒となるであろう君はどうするのだねと聞いているんだ!! そもそも私はあのような子供を兵士のように扱うなどという非文明的なあの組織は嫌いだ」

 

何を知ったような口を、俺達がそんな口ばかりで理想を掲げては具体的な方策を出しもしないお前らのような身勝手なやつも守るために身を粉にして働いていると言うのに。

我慢だ、我慢しろ。

 

「……それに関して問題ありません。家族が死んでくれたお陰で金ならたんまりあります。もう一生働かなくても大丈夫なんで」

 

「な、何を……死んだ家族になんだその言い振りは!! この親不孝ものめ!!」

 

とうとう我慢の限界だった。いや既に決壊していたのかもしれない。自分で家族のことをどうこういうのは平気だというのに他人に言われるのはとても不快だ。

 

そんなのは傲慢だってわかってる。

 

それでも溢れた怒りは奔流のように流れて収まらない。

 

「先生なら……てめぇなんとかできたのか! ああ!? 俺の家族が殺されて、葵も攫われて!……それを学歴だなんだでどうにかできたのかよ!! さっきからなんだ! 散々言わせておけば、俺達が口先ばっかのてめえら守ってやってんだぞ! お前にあの怪物がたおせるのか? 俺は倒せるぞ! 何度も殺した、何度も何度も死に絶えた奴をバラバラにしてやった。何か具体的な解決方法があるってなら聞こうじゃないか!!」

 

「……」

 

我慢の限界に達したカズマは怒髪天を衝くほど怒り狂い、座っていたパイプ椅子を蹴り飛ばす。

担任の先生はそのカズマの豹変ぶりに困惑し目を丸くする。

 

「おい! 黙ってねえでなんとか言えよ!! お前らはそうやって毎日毎日理想ばかり垂れ流しやがって!! 誰のおかげでその理想にありつけてると思ってんだ!」

 

まだ怒りは収まらない。それどころかどんどんと増幅していくばかりだ。

 

「このっ! 犬の糞に群がるハエがよ!!!」

 

カズマは担任の教師を押し倒しそのまま拳を振り下ろそうとする。

 

「やめなさい!」

 

「っ!! はなせ!! クソが!!」

 

先ほどのパイプ椅子を蹴り飛ばした音を聞いた他の教師達がカズマを静止して事なきを得た。

その担任の教師はしばらくして心の病気に罹り辞めていったらしい。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

剣撃の音が何もないただ真っ白な部屋、仮想訓練室に鳴り響く。

こちらは弧月一本。向こうは弧月二本。一度受け止めた程度ではすぐさま次の一撃がやって来る。それでも両手で握る弧月を自身の元に戻しその一撃も防ぐ。そうやって相手の猛攻を退けているが、それも長くは持たなかった。

振り下ろされる一撃目を防いだまではよかった。しかし次の一撃が意識外から放たれしっかりと握っていた筈の弧月が手元から離れてしまった。

 

そしてガラ空きの胴体へすぐさま次の一撃が繰り出される。

 

「シールド!」

 

それを縦横10センチにまで狭めた固定シールドでガード。シールドの表面にヒビが入った。

シールドが割られる寸前、バックステップで距離を取って避けながら腰にあるホルスターから拳銃を取り引き金を引く。

 

そして一瞬の内に8発もの弾丸が飛び出し太刀川へと向かって飛んで行く。

それをシールドで防ぐが1発、2発と受けていく内にヒビが入り始める。そしてとうとう3発目の弾丸がシールドを破壊し、太刀川へと向かっていく。

そして6発の弾丸が飛んでゆく。そのいくつかを太刀川は弧月で切り落としたが2発の弾丸が命中し、太刀川の胴体に2つの穴を開けた。

 

カズマのハンドガンは射程を20メートル程に、弾丸を8発にまで切り詰めその分を威力と弾速に振っている。

2、3発も有ればシールドは容易に突破できる。

 

「やってくれるな、旋空弧月」

 

この攻撃は避けられない。かと言って旋空はシールドでは防げない。カズマのトリオン量では尚更である。

 

「クッ……旋空弧月!!」

 

だから此方も旋空を起動する。

拡張されたブレード同士がぶつかり合い火花が散る。やがて起動時間が過ぎブレードは元の形状に戻った。

 

「グラスホッパー」

「っ!?」

 

太刀川はジャンプ台トリガーを足元に出し踏む。

一瞬にして距離を詰めた太刀川にカズマは反応が遅れ、胴を切り裂かれた。

 

『戦闘体活動限界』

 

 

 

 

「クソ……また負けた!!」

 

「ハハハ、今回も俺の勝ちだな」

 

太刀川慶、こいつは俺の同期であり同じ師を持つ兄弟子でもある。

俺は少しでも強くなる為、太刀川さんや風間さん、小南、迅と日々個人戦をして鎬を削っている。

 

「1-9か……クソッ!なんでお前より沢山努力してる筈なのに……誰にも負けない信念もあるのに……何も考えてなさそうなお前に負けるんだよ!」

 

「ハハハッ、それは簡単だ。勝負を決めるのは戦力、戦術、あとは運だ。

お前が復讐にお熱なってる間俺は技を磨いてる。お前が一つ近界民に対する拷問方法を思いつく間に俺は一つ技を編み出して強くなってる。俺は偶々恨みを持つようなことが無かったから純粋に鍛錬できた。ハハッ、俺は運がいいな

 

そう言って何が楽しいのか俺の背中をバンバンと叩いてくる。

風間さんには2-8、小南には1-9、迅さんには3-7と全員に負け越している。

迅はどうやら俺相手だとお得意の未来予知がうまく使えないらしい。なんでも霧がかったように見えないそうだ。見えたとしても断片的すぎてぱっと見ではよくわからないらしい。

 

そうして未来を見ようとしてる内に負けてると言っていた。見ないよう努力はしてるが気になって仕方ないそうだ。

 

 

俺は迅さんが嫌いだ。

あのサイドエフェクトがあるというなら大規模侵攻だって分かってた筈だ。それにしてはあの時の行動があまりにも遅かった。

理由は大体予想がつく。大方ボーダーの有用性を理解させるために被害が出るまで黙って見ていたのだろう。俺の家族やみんなが殺される様を。

だが俺が嫌いな本当の理由はそれではない。

 

 

『そんな能力があるならなんで葵を助けてくれなかったんだ!』

 

 

そう言いそうになってしまった自分と、それを見て何を言うでもなく苦笑を浮かべた迅が嫌いだ。

 

そして迅の所属している玉狛支部に居る連中も嫌いだ。

あいつらはあんなことをした近界民と融和を望んでいるんだ。狂っているとしか言いようがない。小南もレイジさんもみんな良い人なのに、なんでそんな事思えるんだ。

俺は憎くて憎くて堪らないというのに。

 

 

「ほらまた違う事考えてるだろ。そんなんだから負けるんだよ。大方迅か玉狛支部辺りのことでも考えてたか?」

 

「……ッチ!」

 

太刀川さん(バカ)に言い当てられたことが非常に腹立たしい。

純粋な攻撃手相手に搦手、飛び道具を用いても勝ち越せない。これが今の俺の実力だ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

今日も今日とて基礎練だ。積み重ねてきた基礎は裏切らない。そう忍田本部長に教わった。だから今日も太刀川さん達との戦闘を想定しての弧月の素振り、二刀流の相手を弧月1本で受け流すつもりで弧月を振るう。

そしてどんな状況、どんな場所でも正確に撃てるようにと射撃練習。

そしてそれが終わればひたすら個人ランク戦を繰り返す。

 

その対戦で学んだ事、見つけた自分の課題についてノートに殴り書きをする。

それを清書して重要な部分だけを残す。

そんな日々を続けていた。

 

 

 

そんなとある日の朝、ラウンジにて食事を済ませていると背後から声をかけられた。

 

「よっ、カズマ」

 

「東さん……」

 

この人は銃手トリガーを教えてくれた師匠だ。最近では狙撃手トリガーというものを開発し、運用をしている。それは文字通りトリオンの弾を発射する狙撃銃。

狙撃銃は主戦場の外から攻撃できる。つまりは意識外から攻撃ができるという利点がある。これは途轍もないアドバンテージだ。だから銃手の次に狙撃手の立ち回りを東さんから教わっていた。

 

「お前、そんなものばっか食ってたら成長しないぞ? 育ち盛りなんだからもっと色々食ったらどうだ。そして1日3食は食え」

 

俺が今食べているものは食パン2枚水である。

そのパンを無理やり口に入れては水で流し込んで胃に入れる。

 

「東さん、人はブドウ糖さえあれば生きていけるんです。そもそもトリオン体であれば1日2食で事足りるんですからわざわざ食事なんかに時間を割くくらいなら個人戦に時間を割きますよ」

 

「またそんな屁理屈を、タンパク質取らないと筋肉がつかないし他にも食べないと背が伸びないぞ」

 

「身長伸びたら良い的になるので伸びないのはむしろ好都合です。それにトリオン体であれば筋肉なんて関係ないじゃないですか」

 

目指すは風間さん体型だ。

以前どうやったらそんなに背を伸ばさずにいられるんですかと聞いたらボコボコにされた思い出がある。

 

「よーし分かった。お前がそこまで言うならしょうがない。今晩、俺の隊の連中と焼肉に行くんだがお前も来い」

 

「嫌です。そんな事なんかに時間を使って……」

 

「狙撃手の事教えてやんないぞ?」

 

この悪魔め。この人は戦術家として高い評価を受けているが俺はただ相手が嫌がることを見つけては嬉々としてやるただの陰湿な人間なのではという気がしてならない。

 

「……はあ、分かりましたよ。行けばいいんでしょ! 行けば!!」

 

「うむ、よろしい」

 

そして東は「腹を空かしておけよ」と言ってその場から立ち去っていった。

その時間になるまでカズマはランク戦を続けた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

焼肉屋『寿寿苑』

それは警戒区域にほど近い場所にある焼肉店。

カズマはため息をつきながらその店の中に入った。

すると店内の端に東隊メンバーが座っている。長方形のテーブル。その上側には東、加古が座っており、テーブルの左側に二宮、右側に月見、テーブルの下側に三輪が座っている。

 

「よっ、カズマ。約束通り来たな」

 

どの口が言うんだと若干顔を引き攣らせながら渋々三輪の隣に座る。

 

「よしじゃあカズマ。何が食いたい?」

 

「別に……なんでもいいですよ何食べても栄養には変わらないですし」

 

カズマは不貞腐れたようにそっぽを向く。するとなんて事言うんだと三輪がカズマの足を踏んでくる。

イラッときたカズマは踏み返した。

 

「東さん最初はタン塩から行きましょうよ」

 

「そうだな。じゃあ一般的なやつから頼んでいくか」

 

「フンッ」

 

三輪とカズマが皆にバレない様、足の踏み合いの応酬繰り返す中4人がそれぞれ注文をする。

まずカルビやタン、ロースなどを頼み、次にギアラというあまり一般的ではないものが注文され、最後にジンジャーエール等の飲み物が注文された。

 

 

 

網には様々な肉が置かれ、肉の焼けるいい匂いが鼻の奥をツンと擽る。

落ち着け佐藤和真、今目の前の肉がすごく美味しそうに見えるのは幻覚だ。どうせパンと変わらない。腹に入ればどちらも同じくカロリーとなる。ならばこんな手間暇を掛けずに手早く食えるパンの方が食事として優れている筈だ。

 

「ほら焼けたぞカズマ」

 

そう言って東がトングで程よく焼けたカルビを何枚かカズマの皿に乗せる。

カズマは思わず固唾を飲んだ。

 

「食わないのか? なら狙撃手の件は……」

 

「分かってる! 分かってるから!! 食えばいいんだろ、食えば!!」

 

全部食って速攻帰ってやる。

そう考え、箸で皿に置かれたカルビを口にする。

 

「っ!!????」

 

口いっぱいに肉の旨みと塩気が広がった。その瞬間自然と涙が溢れた。

美味しかったからじゃない。いや、美味しいのだがそれだけじゃない。何か、不思議と心がポカポカとした。でもこの感覚は初めてじゃない。どちらかと言うと懐かしい感じだ。

 

一体いつこんな体験をしたのか、そう思考を巡らせるとすぐに答えが出た。これは家族と一緒にご飯を食べた時と同じ感覚だ。

鮮明に脳裏に浮かぶ家族との何気ない日々。その記憶の中には葵の姿もある。

あの日々が懐かしい。

もうかれこれ一年は経っているのか。

 

気がつけばポロポロと涙を流しながらも残りの肉を口に入れる。

 

「お、おい……」

 

先程カズマの足を踏んでいた三輪はポロポロと泣き出すカズマを見てやり過ぎたかとあたふたし始める。

 

「美味いかカズマ?」

 

「はひ……グスッ……美味しい……です……東さん……ありがどう"……ございます」

 

東は「そうかそうか」と言っては笑みを浮かべ、今度はカズマの皿にギアラを置いた。

見かねた月見はカズマの涙をハンカチで拭き、二宮はジンジャーエールを追加で注文しそっとカズマの元に置いた。

その後もカズマはひたすらありがとう、ありがとうと言いながら焼肉を食べた。

 

そしてしばらくして落ち着きを取り戻すと自身の身の上話をし始めた。家族を失ったこと。大切な人が攫われたこと。

それを皆は黙って聞き続けた。

自分の中に閉じ込めていた感情を初めて吐き出したカズマは少し気が楽になった。

 

 

また、先程足の踏み合いをしていた三輪も実は姉を失っており、互いの境遇に共感し意気投合した。

 

「さっきは悪かったカズマ」

「こっちこそ」

 

「なんの話だ?」

 

「「いえ、こちらの話です」」

 

流石に先程まで足を踏み合ってたことがバレれば今の温和な顔をした東さんが変貌することが容易に想像できる。

 

二人の間に固い結束が生まれ始めた。それは会話を織り成していく度に強固なものとなっていく。

 

「「打倒近界民!!」」

「一匹残らず?」

「ぶっ殺す!」

「手足を?」

「引き千切る!」

「老若男女問わず?」

「皆殺し!!」

 

二人は厚い握手を交わした。

ここに打倒近界民許すマジ同盟が締結された。

 

 

東は三輪とカズマの改善のため色々と画策していたのだがどうやら火に油を注ぐ結果に終わってしまったらしい。

 

 

 




挿入話だから更新気づいてる人少なさそう。ランク戦より前に書き始めてたからこっち先に出せばよかったと今更ながらに後悔。
コメントでも言ってる人いましたけど三輪くんとは仲良くなりそうですね()
コメント、お気に入り、評価等よろしくお願いします。

一体いつになったらめぐみんは来てくれるのか。まあ真打というのは遅れてやってくるものと相場が決まってるのでね。これヒロインじゃなくてヒーローだろ

C級隊員編で面白かった話教えてください。

  • 1話この厳しい試験に合格を!
  • 2話この新入隊員に洗礼を!
  • 3話このC級隊員に勝利の栄光を!
  • 4話このC級隊員に弾バカを!
  • 5話このC級隊員にも狙撃手を!
  • 6話この狙撃手たちにハーミットを!
  • 7話このロクでもないランク戦に終止符を!
  • 8話このランク戦に菩薩様を!
  • 9話この愚か者に制裁を!
  • 閑話
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