欧州の火薬庫異世界へ ~1914バルカン召喚~ 作:ypaaa
ブルガリア王国。
第一次世界大戦において中央同盟国側で参戦し、大ブルガリアの悲願を達成しようとしたもののあえなく敗戦した国家…となるはずだった国だ。
その国の国王であるフェルディナント1世はオスマン帝国からの食糧の緊急輸出要請に困惑せざるを得なかった。
オーストリア=ハンガリーやルーマニアが欧州から切り離され不毛の大地が北に広がっているということは知っていたものの、ブルガリアは今回の件でほとんど影響を受けていない。
だが、隣国のオスマン帝国はそうでもないようだ。
「ダーダネルスの対岸が謎の国だと?」
「えぇ…ミクラジア統一帝国と名乗っているとのことです。」
外務大臣からの報告を聞く限り、オスマン帝国は本体ともいえるアナトリアを失いミクラジア統一帝国と名乗る国家を対岸に得たようだ。
瀕死の病人が頭だけになって瀕死のけが人にもなりおった。と、不謹慎なことを考えつつも外務大臣に話を続けるよう促す。
「実はその国の外交官と名乗る者が帝都に来て、『我々の被召喚物たる貴様らには偉大なる皇帝陛下の威光に服する権利を~』だのと宣ったそうです。」
「…ほう?」
それが本当に外交官なら大したものだ。
外交の何たるかを知らない猿ですと自己紹介しに来るとは面の皮が厚い。
しかし。フェルディナント1世には一つ気がかりな点があった。
「『我々の被召喚物』といったのか?」
「そのようです。まあ、それが本当ならオスマン帝国への要求は我々へも為されそうですが…」
動員令はかける必要はなくとも即応部隊程度は展開しておいたほうがよい。
そう言外に告げる外務大臣だが、今はまだ8月。農業を主要産業として持つブルガリアは収穫のために農民が働く時期に徴兵はしていられない。
少なくとも、今はまだ傍観する時期であろう。
「食料に関しては一部を我々が出した後はルーマニアとギリシャに丸投げしておけ。ギリシャはともかくルーマニアは麦を持っているだろう。」
「御意に。」
とにもかくにもバルカン半島が元の世界と連絡が取れなくなって約一か月。
政情不安で大規模な反乱(ブルガリアが裏で糸を引いている)が勃発しているセルビアやロシア系住民のテロが相次ぐルーマニア、国王と首相が絶妙に息が合わないギリシャなどの隣国たちよりかは状況はましだが先行きの見えない不安は全国家が共通して持っていることだろう。
「おぉ…神よ、ブルガリアを救いたまえ…」
今のところフェルディナント1世の日課は神に祈って十字を切ることである。
「…ついでにマケドニアとドブロジャと東トラキアを恵み給え…」
大ブルガリアの野望は、国王と国民の心の中に今でも眠っているのだから。
___
???
「野蛮人の国かと思っておりましたが、都だけは評価してもいい国かもしれませんな。」
「しかし首都が我々の対岸というのは都合がいい。そこを落とし、皇帝をとらえればその他の地域も降伏するだろう。」
「此度の召喚された地域は山がちであると魔法省も言っておった。長期戦になると面倒ですからな。」
「…しかし、あの城壁。海側の防御は固そうであるし、陸軍に上陸してもらうか。」
「主力艦隊から召喚国ごときに砲艦を持ってくるのは問題ですしね。」
『オスマン家の崇高なる国家』と名乗る傲慢な国家の首都を眺めながら談笑する軍人たち。
彼らの目線の先には海峡を挟んだ対岸にある、バルカン半島で最も古くかつ繫栄してきた『イスタンブール』と呼ばれる都市がその威容をたたえていた。
以下設定
召喚される場所は、
・単体ではミクラジア統一帝国未満の国力
・外交か内政に問題を抱えている
・平均した人口密度は低くもなく高くもない
・資源がある
・それなりに広い
という欲張りセットの条件を抱えている場所しか選ばれない。
…バルカン半島は満たしてるな、ヨシ!