そんな彼が勝利のためにもしもあのデッキを使うようになったら。これはそんな一幕
逃げ場のない地下デュエル、その牢獄の如く張り巡らされた金網はデュエルによって生じた衝撃波によって物理的に引きちぎられ、その衝撃をその身に受けた相手であるマッドドッグ犬飼は完全に意識を失って倒れている。
それを見下すように、一人の男性──かつてカイザー亮と呼ばれた青年は血走った眼をして、高揚したような、どこか愉悦じみた笑みを浮かべている。
「ヘルカイザー、亮……地下より生まれし、怪物……」
痩躯の男性──モンキー猿山が目の前の惨状を前に呟き、ニヤリと笑みを浮かべたのであった。
エド・フェニックスに負けて以来連戦連敗でマイナーリーグに落ち、いつしかプロの舞台から姿を消した丸藤亮がマイナーリーグに戻ってきた。
そんな話を聞いた亮の弟である少年──丸藤翔は、今や主のいない万丈目の部屋のテレビを借りてプロリーグの中継を見る事にしていた。もちろん同じく心配していた友人の吹雪、明日香、三沢、ジュンコとももえ、そして後輩のティラノ剣山も一緒である。
「お兄さん、よかった……」
「だから言ったでしょ、翔君。亮は必ず立ち直るって」
姿を消した兄が無事だった事、マイナーリーグとはいえプロの舞台に戻ってきたと聞いた翔は安堵の表情で呟き、明日香が優しく微笑んで元気づける。吹雪もその後ろで笑顔を浮かべてうんうんと頷いていた。
「お、始まるザウルス」
そして観戦しながら飲めるようにと人数分のお茶と茶菓子を準備していたティラノ剣山の促しで、彼らはテレビへと目を向けるのだった。
マイナーリーグなだけあって会場は質素で観客の数も少ない。そんな会場の中央に二人の男性が向かい合う。一人は黒髪のミドルロングに筋肉質な身体にフィットしたタンクトップを着用して右目に眼帯を着けた中年男性。例えるなら黒い髪の首領・ザルーグといった様子である。
そしてもう一人、それこそが彼らが今回の中継を見ている目的である青年──丸藤亮。しかし彼の雰囲気は変貌していた。彼はプロになってからもデュエルアカデミアのオベリスクブルー生徒が着用していた制服を着ていたというのに、今はそれとは異なる刺々しいイメージのある黒い衣装に身を包み、まるで飢えた獣のような研ぎ澄まされた目で対戦相手を睨みつけていた。
「クックック。落ちこぼれの負け犬が今更戻ってきたところでもう遅い。この俺様がお前から全てを奪い取って引導を渡してやるよ」
「勝つ──俺は勝つ……貴様の懐にある勝利を、奪い取る!!!」
ザルーグの言葉に対し、亮はうわ言のように呟く。妙に会話が噛み合っていない様子にザルーグは若干引きつつ、実況・解説席に視線を向けて試合開始を促す。亮のただならぬ雰囲気を感じたのか、実況もこくこくと頷いてマイクに口を添えた。
「で、では、デュエル開始です!!」
「「デュエル!!!」」
解説の宣言と同時に、二人の言葉が重なり合う。
「俺の先攻──ドロー!!」
そして先攻を取ったのは亮だった。
「サイバー・ドラゴンは後攻でこそ真価を発揮する……なのに亮が先攻か……」
中継を観戦しながら呟くのは、かつてカイザー亮のライバルと謳われた、セブンスターズとの戦いではダークネスに洗脳されてデュエルアカデミアに牙を剥いた男──吹雪。
ライバルである以上彼の手の内は知っている、という様子の彼の呟きに、亮のデュエルを知る面々は静かに頷いていた。
「俺は魔法カード[エマージェンシー・サイバー]を発動! デッキからサイバー・ドラゴンモンスターまたは通常召喚できない機械族・光属性モンスター一体を手札に加える!! 俺は──」
亮はまずサーチカードから入る。彼のデッキの主力にして象徴──サイバー・ドラゴンをサーチしてくるのだろう。誰もがそう考えていた。
「──[
しかし亮がサーチしたのは見たことのないモンスター。中継を見ていた翔達が驚きに絶句、吹雪に至っては「あんなカードを亮が使っているところは見たことがないぞ!?」と狼狽していた。
「手札の[竜輝巧-アル
俺は手札の儀式モンスター[サイバー・エンジェル-弁天-]を生贄に捧げ、アルζを守備表示で特殊召喚!」
竜輝巧-アルζ 守備力:0
「サイバー・エンジェル-弁天-……私の使ってるモンスターを……」
さらに亮が生贄としたのは明日香の主力であるサイバー・エンジェルの一体。その姿に明日香が唖然としていた。
「アルζの効果でデッキから儀式魔法[
続けて手札の[竜輝巧-ルタ
俺は手札の儀式モンスター[サイバー・エンジェル-弁天-]を生贄に捧げ、ルタδを守備表示で特殊召喚!
そして手札の儀式魔法[流星輝巧群]を見せる事でデッキから一枚ドロー! さらに弁天の効果を発動、デッキから最後の[サイバー・エンジェル-弁天-]を手札に加える」
竜輝巧-ルタδ 守備力:0
「馬鹿な、既に二体モンスターを特殊召喚したってのに、手札が減らない……」
亮のプレイングにザルーグが驚愕。そう、亮は既にモンスターを二体特殊召喚しているにも関わらず手札の枚数は結果的に減らずに六枚のまま。
さらに亮の手札から分かっている情報だけでも、彼の行動はまだ終わらない。
「俺は手札の[竜輝巧-バンα]の効果を発動! 自分の手札・フィールドから、このカード以外のドライトロンモンスターまたは儀式モンスター一体を生贄に捧げて発動し、このカードを手札・墓地から守備表示で特殊召喚し、その後、デッキから儀式モンスター一体を手札に加える事ができる。
俺は手札の儀式モンスター[サイバー・エンジェル-弁天-]を生贄に捧げ、バンαを守備表示で特殊召喚!
そしてデッキから儀式モンスター[
竜輝巧-バンα 守備力:0
あっという間に三体の竜輝巧が並び、亮の場で守りを固める。だがその展開の起点となっていたサイバー・エンジェル-弁天-はルール上デッキから尽きたのは確実であり、これ以上の展開は出来ないか出来ても遅れるはずだとザルーグは予測。
「クク……なかなかやるようだが、やった事といえば守備力0の雑魚を三体並べただけ。それで何が出来る」
そして煽りも忘れない。たしかに亮のやった事は結果的に守備力0のモンスターを三体出しただけともいえ、確かに手札を減らさずに三体のモンスターを出したことは素晴らしいが、これだけではただの的である。
だがそんな煽りには乗らないとばかりに、亮はニヤリと笑みを見せた。
「案ずるな。まだ終わらん……俺は儀式魔法[流星輝巧群]を発動! 攻撃力の合計が儀式召喚するモンスターの攻撃力以上になるように、自分の手札・フィールドの機械族モンスターを生贄に捧げ、自分の手札・墓地から儀式モンスター一体を儀式召喚する!」
「なにぃ!? レベルではなく、攻撃力で儀式召喚だと!?」
亮の発動した儀式魔法の効果にザルーグが驚愕。
儀式召喚、それは手札の儀式モンスターと対応する儀式魔法を使うだけではなく、そのレベルと同じかそれ以上になるようにモンスターを生贄に捧げる召喚方法。しかし、これから執り行われる儀式召喚はレベルではなく攻撃力を参照する、今までの儀式召喚の常識をぶち壊すものだった。
「俺は攻撃力2000のバンαを儀式の生贄とし、攻撃力1800の[神光の宣告者]を儀式召喚!!」
神光の宣告者 守備力:2800
そしてその執り行われた儀式召喚によって降臨するのは先ほど亮がサーチした儀式モンスター。その守備力は2800と、並の上級モンスターを上回るステータスを誇っている。だが、その一体を呼び出しただけで終わるはずもない、と亮はデュエルディスクの墓地ゾーンに手をやった。
「流星輝巧群のさらなる効果発動! このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのドライトロンモンスター一体の攻撃力を相手ターン終了時まで1000ダウンし、このカードを手札に加える! 俺はルタδの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、流星輝巧群を手札に加える。
再び[流星輝巧群]を発動! 俺は攻撃力2000のアルζと攻撃力1000となったルタδで儀式を執り行う! 出でよ、攻撃力2500、[竜姫神サフィラ]!」
竜姫神サフィラ 攻撃力:2500
「馬鹿な、ワンターンで儀式モンスターが二体……」
「リバースカードを一枚セットし、エンドフェイズに移る。竜姫神サフィラの効果発動、このカードが儀式召喚したターンのエンドフェイズ及び、このカードがモンスターゾーンに存在し、手札・デッキから光属性モンスターが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに異なる三つの効果より一つ効果を発動できる。俺は自分の墓地の光属性モンスター一体を選んで手札に加える効果を選択。その効果により俺はサイバー・エンジェル-弁天-を手札に加える。ターンエンドだ」
亮の怒涛の先攻ワンターンがようやく終了する。だがその結果は常識外れ。
二体もの儀式モンスターを並べた上で、サーチやサルベージの結果のため中身が分かっているカードが多いとはいえ手札は三枚保持、さらに伏せカードも一枚あるというとんでもない布陣だった。
「ちぃっ! 俺のターン、ドロー!」
だがザルーグも怯むことなく舌打ち交じりにドロー。六枚になった手札を確認し、その内一枚を手に取った。
「魔法カード[融合]を発動! 効果は説明するまでもないな? 俺は手札の──」
「待った! 俺は融合の発動にチェーンして神光の宣告者の効果を発動する! 相手がモンスターの効果・魔法・罠カードを発動した時、手札から天使族モンスター一体を墓地へ送る事でその発動を無効にし破壊する! 俺は[イーバ]を墓地へ送り、融合の発動を無効にして破壊する!
「──なに!? ぐおおぉぉっ!!」
しかしその発動した魔法カードは亮の場にいる宣告者の放つ裁きの光により無効化されてしまう。ぐぅ、と唸るザルーグだが、亮は「さらに!」と声を上げる。
「ここで[イーバ]の効果発動! このカードが墓地へ送られた場合、このカード以外の自分のフィールド・墓地の天使族・光属性モンスターを二体まで除外することで、除外した数だけ、デッキから「イーバ」以外のレベル2以下の天使族・光属性モンスターを手札に加える。
俺は二体のサイバー・エンジェル-弁天-を除外し、[緑光の宣告者]と[紫光の宣告者]を手札に加える」
「なに!? これじゃあまた神光の宣告者の効果が……」
一枚の天使族モンスターが二枚の天使族モンスターに化け、パーミッションの回数が増えたと狼狽するザルーグ。
「く……俺はモンスターをセット。カードを二枚セットしてターンエンドだ」
「手札から光属性のイーバが墓地へ送られた事で、このエンドフェイズにサフィラの効果が発動。俺は自分の墓地の光属性モンスター一体を選んで手札に加える効果を選択し、[イーバ]を手札に加える」
だがこれ以上何か出来るわけでもないのか、ザルーグはモンスターとカードをセットしてターンエンドを宣言。しかし光属性モンスターが墓地へ送られた事で亮はサフィラの効果を発動し、先ほど墓地に送られたイーバを再び手札に加える。ザルーグは苦々しい顔をしながら改めて「ターンエンド」と宣言した。
「俺のターン、ドロー! 俺は墓地の[竜輝巧-バンα]の効果を発動! 自分の手札・フィールドから、このカード以外のドライトロンモンスターまたは儀式モンスター一体を生贄に捧げて発動し、このカードを手札・墓地から守備表示で特殊召喚し、その後、デッキから儀式モンスター一体を手札に加える事ができる。
俺は手札の儀式モンスター[サイバー・エンジェル-弁天-]を生贄に捧げ、バンαを守備表示で特殊召喚!
そしてデッキから儀式モンスター[サイバー・エンジェル-
墓地の流星輝巧群の効果発動! このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのドライトロンモンスター一体の攻撃力を相手ターン終了時まで1000ダウンし、このカードを手札に加える! 俺はバンαの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、流星輝巧群を手札に加える。
再び[流星輝巧群]を発動! 攻撃力1000となったバンαで儀式を執り行う! 出でよ、攻撃力1000、[サイバー・エンジェル-那沙帝弥]!」
サイバー・エンジェル-那沙帝弥 守備力:1000
亮は再び竜輝巧の特殊召喚から始めて新たな儀式モンスターの儀式召喚に繋げる。これで儀式モンスターは計三体。癖の強い儀式モンスターをまるで手足のように操る手腕にザルーグが「ぐ……」とたじろぎ、声を漏らした。
「サイバー・エンジェル-那沙帝弥……亮のデュエル、大きく変わっているわ……」
「どういう事だいアスリン?」
中継を見ていた明日香の呟きに吹雪が問うと、明日香は「アスリンはやめて」とツッコミを入れてから話し出す。サイバー・エンジェル-那沙帝弥。あのモンスターはステータスこそ低いがそれを補う強力な効果を複数持つのだと。
まず一つ、一ターンに一度、自分フィールドの表側表示モンスター一体を対象として発動し、そのモンスターの攻撃力の半分だけ自分のライフポイントを回復する効果。実際に亮は自分フィールドで一番攻撃力の高いサフィラを対象にこの効果を発動し、ライフポイントを1250ポイント回復させている。
そして二つ、自分の儀式モンスターが攻撃対象に選択された時に発動でき、その攻撃を無効にする効果。今の状況ではこちらの方が厄介だと明日香は語った。
「今、亮の場にいるモンスターは全て儀式モンスター。つまり、対戦相手は事実上攻撃を封じられたも同然よ」
「けど明日香先輩? そんな強力な効果なら一ターンに一度の制限くらい……」
「ないわ、そんなの」
「マジか……」
明日香の言葉に剣山がツッコミを入れるも、サイバー・エンジェル使いとして制限なしと断言。三沢が唖然とする。
つまり神光の宣告者の効果によって手札の天使族モンスターがある限り相手はモンスター効果・魔法・罠全てを封じられており、効果による除去は困難。だが戦闘破壊しようにも那沙帝弥の効果によって攻撃も封じられる。まさしく鉄壁の布陣だった。
さらに例えば神光の宣告者の効果によって光属性モンスターが墓地へ送られれば、エンドフェイズにはサフィラの効果によってサルベージを始めとしたさまざまな効果によるアフターフォローが行われるとサポート体制も万全である。
「だけど……お兄さんらしくないっす……」
翔が寂しそうに呟く。彼の、いや、彼らの知るカイザー亮のデュエルとは即ちサイバー・ドラゴンを駆使したパワーファイト。どのような相手であってもリスペクトの心を忘れず、正面から正々堂々と戦う誇り高いデュエル。
だが今の亮のデュエルは相手をガチガチに縛りつけ、いや、もはやどのような相手であろうと関係なしに己のしたい事を押しつけているようなものに見えた。
「バトルだ! 竜姫神サフィラで守備モンスターを攻撃!」
亮の指示を受けたサフィラが、ザルーグの場の守備モンスター目掛けてブレスを放つ。しかしそのブレスを、姿を現した守備モンスターはひらりとかわして見せていた。
「俺の守備モンスターは[魂を削る死霊]! このモンスターは戦闘では破壊されず、これは永続効果のため発動しない。よって神光の宣告者の効果も受けないぜ!」
魂を削る死霊 守備力:200
「クク、うまくかわしたか。俺はエンドフェイズを宣言、このターン手札からサイバー・エンジェル-弁天-が墓地へ送られた事で、サフィラの効果を発動。俺は相手の手札をランダムに一枚選んで墓地へ捨てる効果を発動する。ターンエンドだ」
「チッ……俺のターン、ドロー!」
戦闘破壊耐性を持つ魂を削る死霊を使ってどうにか無傷で耐えたものの、亮はただでは起きずに相手の手札を破壊しておく。ザルーグも起死回生の手を願ってカードをドローし、最初に持っていた方の手札を取る。
「俺は[ナイトメア・ホース]を召喚し、バトルに入る。ナイトメア・ホースは相手フィールド上にモンスターが存在しても、相手プレイヤーに直接攻撃をする事ができる! ダイレクトアタックだ!」
「通してやろう」LP5250→4750
「チッ、余裕ぶりやがって……俺はリバースカードを一枚セットしてターンエンドだ」
なんとかダメージを与えたものの微々たるもの。ザルーグはリバースカードを一枚追加してターンを終えた。
「俺のターン、ドロー。まずはサフィラを対象に那沙帝弥の効果を発動、一ターンに一度、自分フィールドの表側表示モンスター一体を対象として発動し、そのモンスターの攻撃力の半分だけ自分のライフポイントを回復する」LP4750→6000
「く……」
毎ターン1250ポイントの回復。ナイトメア・ホースの攻撃を一回ずつ繰り返す程度では追いつかず、亮は悔しそうなザルーグを見てニヤリと愉悦じみた笑みを浮かべている。
「バトルだ。サフィラでナイトメア・ホースを攻撃!」
「この瞬間カウンタートラップ発動[攻撃の無力化]! その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる! スペルスピードの関係上、これなら神光の宣告者の効果では無効化できまい!」
サフィラへの攻撃指示が出た瞬間、ザルーグの場のトラップが発動する。そう、モンスター効果である神光の宣告者の効果はスペルスピード2なのに対し、カウンタートラップである攻撃の無力化はスペルスピード3。ルール上攻撃の無力化に神光の宣告者の効果をチェーンする事は不可能であり、この効果ならば通り防御が出来る。
その目論み通り防御が通り、ナイトメア・ホースは無傷。さらにバトルフェイズも強制終了、亮は強制的にメインフェイズ2に移され、リバースカードを一枚セットしてターンエンドを宣言した。
「俺のターン、ドロー……俺はナイトメア・ホースを守備表示に変更。さらにモンスターをセットしてターンエンドだ」
ナイトメア・ホース 攻撃力:500→守備力:400
「待った。俺はお前のメインフェイズ終了時にリバース・永続罠[闇の増産工場]を発動し、効果を発動する。自分の手札・フィールドのモンスター一体を墓地へ送って発動でき、デッキから一枚ドローする。俺は手札の[緑光の宣告者]を墓地へ送り、一枚ドロー」
打つ手がないのか、しかし
「手札から光属性の緑光の宣告者が墓地へ送られた事で、このエンドフェイズにサフィラの効果が発動。俺はデッキから二枚ドローし、その後手札を一枚選んで捨てる効果を発動する」
「く……」
そう。亮の狙いはただ手札交換をするだけではなく、サフィラの効果の能動的な発動。さらにドロー数を増やし、手札交換を行っていた。
「俺のターン、ドロー。まずはサフィラを対象に那沙帝弥の効果を発動、一ターンに一度、自分フィールドの表側表示モンスター一体を対象として発動し、そのモンスターの攻撃力の半分だけ自分のライフポイントを回復する。さらに魔法カード[シールドクラッシュ]を発動。そのセットモンスターを破壊する」LP6000→7250
「ぐっ……」
亮はまずライフ回復から始め、さらに正体不明の守備モンスターの除去を狙い、ザルーグの場の守備モンスタ──―キラートマトが壁になる事すら出来ずに破壊される。
しかし今の彼の場では突破できない戦闘破壊耐性持ちである魂を削る死霊を狙わずに守備モンスターから狙った事に周りの観客からやや不審げな目が向けられるも、亮はそんな事知った事かとばかりに笑みを見せた。
「俺は墓地の[竜輝巧-バンα]と[竜輝巧-ルタδ]の効果発動! フィールドの儀式モンスターの那沙帝弥とサフィラを生贄に捧げ、この二体を特殊召喚! そしてそれぞれの効果によりデッキから儀式モンスター[竜儀巧-メテオニス=QUA]と儀式魔法[流星輝巧群]を手札に加える!」
竜輝巧-バンα 守備力:0
竜輝巧-ルタδ 守備力:0
「何!? 自分を守っていた儀式モンスターを自ら捨てるだと!?」
「こいつらはもはや用済み! 俺は儀式魔法[流星輝巧群]を発動! 攻撃力の合計が儀式召喚するモンスターの攻撃力以上になるように、自分の手札・フィールドの機械族モンスターを生贄に捧げ、自分の手札・墓地から儀式モンスター一体を儀式召喚する! 攻撃力2000のバンαとルタδで儀式を執り行う! 出でよ、攻撃力4000、[竜儀巧-メテオニス=QUA]!」
竜儀巧-メテオニス=QUA 攻撃力:4000
「こ、攻撃力……4000……だと……!?」
亮の場に出現するのは宇宙を駆ける巨大な機械竜。その圧倒的な攻撃力と威圧感にザルーグが圧されたように震えた声を漏らす。
「それだけではない! 竜儀巧-メテオニス=QUAの効果発動! このカードの儀式召喚に使用したモンスターのレベルの合計が2以下の場合に発動でき、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!! バンα、ルタδのレベルは両方とも1、合計は2! よってこの効果が発動する!」
「な、なんだとぉ!?」
亮の宣言と共にメテオニスから放たれる波動がザルーグの場の全ての魔法・罠カード──スピリットバリアと追い剥ぎゴブリンを粉砕。
(く……神光の宣告者の効果で無効化されるから発動も出来なかったが……だが、俺の場には守備表示の魂を削る死霊がいる。こいつでしのげば……)
「く、ククク………ハハハハハハハ!!!」
ザルーグは負けを考えていないのか、今は時間を稼いでどうにか逆転の手段を探そうと考える。だがそれを遮る勢いで亮の笑い声が響き出した。
「俺はこの瞬間を待っていた! 俺の確認できない部分に未知のカードがなく、貴様から抵抗の手段がなくなるこの瞬間をォ!!」
「なんだと!? 俺の場には魂を削る死霊が存在する。こいつがいる限り、お前は俺にダメージを与えられないはずだ!」
「いいだろう。ならば見せてやる!!」
亮の言葉にザルーグが声を荒げて反論するが、亮は愉悦の笑みを浮かべながら宣言し、一番最初のターンに伏せていたリバースカードに手を向けた。
「リバース・永続罠発動[輪廻独断]! 一ターンに一度、種族を一つ宣言して発動でき、このターン、お互いの墓地のモンスターは宣言した種族になる! 俺は機械族を宣言する!!」
「なんのつもりだ!?」
亮の発動したカードの効果にザルーグが驚き、観客がざわめく。しかし亮はそんな事知った事かと、これまたこのデュエルの開始時から持っている手札を手に取った。
「俺はフィールドの光属性・機械族モンスターの竜儀巧-メテオニス=QUA、墓地の光属性・機械族モンスターの竜儀巧-バンα、竜儀巧-ルタδ、竜儀巧-アルζ、そして輪廻独断によって光属性・機械族となったサイバー・エンジェル-弁天-、サイバー・エンジェル-那沙帝弥-、竜姫神サフィラ、緑光の宣告者の八体のモンスターをゲームから除外し!! 手札から[サイバー・エルタニン]を特殊召喚する!!」
サイバー・エルタニン 攻撃力:?
「攻撃力が決まっていない……?」
いきなりほとんどのモンスターをゲームから除外するという豪快な手段を用いて出現したモンスター。しかしその攻撃力は不確定、ザルーグが思わず訝し気な声を出していた。
「サイバー・エルタニンは特殊召喚時、このカード以外のフィールドの表側表示モンスターを全て墓地へ送る」
「なっ!? 神光の宣告者ごとだと!?」
「エルタニンの効果発動!! 俺の勝利のため、全てを消し去れぇ!! コンステレイション・シージュ!!!」
ザルーグは敵である自分のモンスターはもちろんこのデュエルの開始時から彼を守っていた神光の宣告者までも諸共に消し飛ばす亮の判断に絶句、しかし亮はそのような事些事だといわんばかりに宣言。
同時にサイバー・エルタニンの周囲に浮遊していた竜の頭を模したビットがフィールド中にレーザーを雨の如く降り注がせ、ザルーグの場の魂を削る死霊、ナイトメア・ホース、そして亮の場の神光の宣告者までも消し飛ばしていった。
「エルタニンの攻撃力・守備力は、このカードを特殊召喚するために除外したモンスターの数×500ポイント。俺が除外したモンスターは八体……エルタニンの攻撃力は……4000!!」
「ば、馬鹿な……」
手札が尽き、フィールドのモンスターも魔法・罠カードも全て消えた。墓地にネクロ・ガードナーのような墓地から効果を発動できるカードはない。もはやザルーグに抵抗の手段はなく、しかもサイバー・エルタニンの攻撃力は無駄なく彼のライフを削り取れる数値を示している。
「これで、俺の、勝利だァ!!! サイバー・エルタニンでダイレクトアタック!! ドラゴニス・アセンション!!!」
「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!!」LP4000→0
そしてサイバー・エルタニンの腹部にある巨大な竜の頭が口を開き、そこから出現した巨大な砲塔から放たれたエネルギーレーザーが瞬く間にザルーグのライフを消し飛ばし、このデュエルの終結、そして亮の勝利を示すのであった。
「つ、強い! 圧倒的強さ! 今まで見たことのないパワー! まさに圧殺!」
静まり返った会場の中に実況の声が響くが、会場内はもちろん中継を見ていた翔達ですら呆然としていた。
「鬼にならねば、見えぬ地平がある──敗者の貴様には分かるまい」
「強い! 本当に強い! 地獄から舞い戻った丸藤亮、ここに復活! ヘルカイザー亮。この強さは本物だ!!」
倒れたザルーグを見下し、そう述べてクククと嗤う亮の姿に呆然とする明日香達。そんな中、翔だけは何か寂しい覚悟を決めた様子で中継を見続けていた。
《後書き》
サイバー流メスガキinデュエルアカデミアを非公開に設定して以来、スランプというのは大袈裟かもしれませんが、執筆に身が入らなくなっていました。
遊戯王だけならまだしも現在連載中のToLOVEるや今度連載しようかなと思っているISやロックマンエグゼのプロットすら作れなくなって、事実上執筆から離れてました。
まあそんな事してたらふと「そうだ、カイザーがヘル化してドライトロン宣告者使ってるっていうのどうだろう。今マスターデュエルでドライトロン宣告者流行ってるらしいし」と思いついたので書いてみました。これでスランプ脱出できればいいんだけど……。
言うまでもありませんが短編です。絶対に続きはありません。何故かって?
・今回はネタが思いついたから書いただけで、現在遊戯王小説を書く気力はありません
・こんな先攻制圧デッキでストーリー組み立てろとか不可能です
・そもそもこんなの一発ネタでしかないでしょうが!!!
以上です。