よんごーろくれい   作:二クロム酸

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 買い物リスト

・大学用ノート 2冊
・箱ティッシュ 1パック
・砥石 1050番 2003番
・ネクタイ チェック模様のもの 2枚
・ドアノブ 1つ
・プラス、マイナスドライバー


暗雲

暗いのは嫌い。

 

ネガティブな様子が大嫌い。

 

人の不幸、不運でどんよりした空気になるのは迷惑だ。

 

わざわざ人前に持ってこないでほしい。

 

悪口を言うことは構わないけど、本人に聞こえるように言うのは空気が悪くなるからダメだ。

 

だから、いつも笑っていて…。

 

どんな時も楽観的でいてほしい。

 

ニコニコと口角を上げていれば…

 

何も辛いことはなくなる。

 

私は明るいとこだけが見たいんだ。

 

そんな暗い雰囲気を出して…

 

人生がつまらなくなってしまうではないか。

 

楽しく人生を送りたいなら…

 

1つおまじないがあるんだ。

 

ねぇ

 

 

 

教えてほしい?

 

 

◇◆◇

 

5月9日火曜日

 

愛知県○○市××町で、自殺したと思われる死体が発見されました。人数はおよそ20人。共通点は、全員が高校に通っている高校2年生であることでした。また彼らは共通して遺書を書いており、一人の例外もなく一言…"今日も■■■■だ"と書き残していました。その他不可解な点はありましたが、学校側から話を聞くもいじめなどはなかったそうで、現在警察が原因を究明中です。

 

 

 

◇◆◇

 

薄暗い、カーテンの閉まった部屋で1人の男が蹲っている。髪は何日も手入れをしていないようでボサボサだ。肌もどこか酸っぱい臭いがする。目に生気はなく、何を写しているかわからない。…が、笑っていた。男は自分でも気づいていないが、それはもう満面の笑みで笑っていた。一目で空元気なのは分かる痛々しいものである。部屋の中は鳥肌が立つほどに生活感がなく、真っ白だった。家具も、壁紙も、床も、照明も、何もかもが白く埃ひとつない。1人暮らしをしている男は几帳面、いや潔癖症であった。そんな男は、今窮地に立っている。別に特別な話でもない。借金も奨学金程度で闇金から借りているわけでもなく、殺人鬼に殺されそうなわけでもない。会社の金を横領してもいないし、犯罪の片棒を担いでしまったわけでもない。ただ…ちょっとばかり限界がきただけだ。平々凡々で、ある程度恵まれていた男は、社会の荒波に耐えることが出来なかった。毎日毎日同じような生活。朝の満員電車は痴漢と言われないよう両手を上げて立つ。上司にはよくミスをして叱られ、同期の奴らには先を歩かれている。そういった細かい積み重ねが男をここまで追いやった。劣等感など、様々な気持ちは押し殺してきたためだ。しかし、解放される時が来た。男は両手でしっかりと、初任給で買った大切なネクタイを握る。覚悟を決めた男は、不思議ととても晴れやかな気持ちで、ドアノブにネクタイを固定した。最近、携帯で調べるとなんでも出てくるから困る、と男は1人ごちる。固定したネクタイを首に巻き付け気道を塞ぐようにし、力を抜く。思ったより苦しく辛かったが、楽になれると思うと我慢ができた。男は、()()()湧き出てくるなんとも言えない幸福感を感じつつ意識がブラックアウトした。数分後、真っ白な部屋には当初より幾分か室温が下がった様子が残されていた。

 

 

 

◇◆◇

 

「ふぁ〜、よく寝たぁ…。」

 

午前4時12分。陽の光がまだ地平線から漏れ出る程度の早朝に、少女は起床した。右手にはお気に入りの抱き枕を携えている。抱き枕の見た目はEテレで放送している某緑色の尺取虫に酷似しており、その体にはいくつか縫い目とほつれた跡が見える。自作したもののようだ。

 

「ニキももうぺったんこになっちゃったねぇ。色も褪せてきちゃってるし、私が抱きつきすぎたからかなぁ。」

「そろそろ中の綿を詰め替えようかな…」

 

と、少女はニキという名前の抱き枕に話しかける。寿命というと語弊があるが、ニキは耐久の限界が近いように感じられる。

 

「ニキ用の綿と布買い揃えないとね。……今月のお小遣いまだあったっけ。」

 

少女はナイーブな気持ちになる。今月いくら使ったか、をきちんと把握をしていない少女は、修学旅行で購入したショッキングピンク色のマリモの貯金箱を覗く。

 

「あ!大丈夫そう!、でもニキのもの買っちゃうと今月かつかつになっちゃうしなぁ。どうしようかなー。」

 

見れば中には5人の黄熱病で有名な細菌学者が顔を覗かせている。心なしか少女の目には、無機質な彼の目が悲しそうに見えた。

 

「う〜ん。…よしっ!ニキの布や綿はお母さんのパッチワーク用の布から拝借しよう!」

「頼めばある程度は融通してくれるでしょ。よーし、着替えるかぁ。」

 

母からニキ用の綿と布を貰う算段をつけた少女は、ようやく朝の支度を始めた。

 

「…あとはジャージを着てっと。ランニングに行きますか!」

「行ってきまーーす。うわっ、外寒!マフラー巻いた方がいいかなぁ。まぁ走ったら暑くなるし、我慢しようかな。」

 

午前5時2分。少女は支度をし、家を飛び出していった。その右手には青色の腕輪をつけていた。

 

 

◇◆◇

 

ところ変わって呪術高専より、1人の目隠しをした教師と二人の男子高校生が談笑していた。

 

「皆!今日は新たな1年生を迎えにいくよー。盛り上がってこう!!」

 

「…はぁ。そういうことはもっと前から伝えてほしいって言ってるじゃないですか。突然言われても困るんですよ…。」

 

「おぉ!、先生!同級生増えるのか!男、それとも女、どっち?」

 

「いいね悠二…やっぱり君は分かってくれるねぇ。ちなみに女子だ。ほらほら、恵もテンション上げちゃって!」

 

「……上げませんし、上がりません。やめてください五条先生。」

 

無理矢理テンションを上げさせようとする目隠しをした教師、五条悟。急な予定を入れられて不服な伏黒恵。ノリノリで同級生がどんな人かを想像する虎杖悠仁。計3人によるカオスな状況が出来上がった。

 

「よしっ、二人とも快く了承してくれたので、早速原宿へ10時に集合しよう!さあさあ早く準備しちゃって!ハリーハリー。」

 

「してないですし、急かさないでください。…たくっ、本当にこの先生は。」

 

「はーい、伏黒!原宿の行き方教えてっ!」

 

「自分で調べろ。」

 

「まぁまぁ、堅いこと言わずに…ということでよろしく!」

 

その後、伏黒は渋々悠二に電車の乗り方を教えた。

 

ーーー

in 原宿

 

通勤時間も過ぎ、朝ほど人は多くない原宿。それでも、悠二の通っていた高校がある市に比べると何倍もの人が行き交っていた。スタバで一般人には理解が出来ない呪文を唱え、何らかの飲み物を買っている女子高生。歩いている女性にモデルの仕事は、と声をかける男性。田舎には見られない煩雑な世界を形成しており、絶えず何処からか騒音が聞こえてくる。

 

そんな原宿に伏黒と、新しい制服を見に纏う虎杖が駅から出てくる。2人はどうやら、呪術師について話しているようだ。

 

「1年がたった3人って少な過ぎねぇ?」

 

「じゃあオマエ今まで呪いが見えるなんてヤツに会ったことあるか?」

 

「……ねぇな。」

 

「それだけ少数派なんだよ、呪術師は。」

 

「っていうか俺が3人目って言ってなかった?」

 

「入学は随分前から決まってたらしいぞ。こういう学校だしな、何かしら事情があんのだろう。」

 

「そっか、ところで「お待たせ、悠二、伏黒。」…先生被せないでよ。」

 

「あ、ごめんごめん。」

 

「それで、先生その3人目の同級生は何処ですか。見当たりませんが。」

 

「えーと、この交差点にいる筈なんだけど…あぁいたよ。あそこあそこ、あのうちの制服着た茶髪の女の子。」

 

「なぁ伏黒。違うと思うけどもしかしてアレなんかな。今から俺ら話しかけるの嫌なんだけど…。」

 

見ると、同級生と思われる人物がモデルの仕事に勧誘する男性に迫っている様子。男性はぐいぐいと、何故自分には声をかけないのかと詰められており、ドン引きしている。端的に言って、大変目立つ行為をしていた。

 

「お前が言うな」

 

と、いつの間に買ったのかポップコーンとクレープをそれぞれの手に持ち、2018と書かれたダサい眼鏡をつけている虎杖に、伏黒は言う。

 

 

 

 

 

side change

 

「ーーーーー?」「いいえ、今忙しいので。」

 

男性が街行く女性にモデルの仕事を持ちかけている。が、見事に断られているようだ。

 

(なんでこの男私に声かけないのよ、一言言ってやるわ。)

 

「ねえ!」

 

「は、はい…」

 

「一つ聞きたいんだけどさぁ、なんで私にモデルの仕事の声かけないわけ?」

 

「え……なんでって」

 

男は冷や汗を流す。突然声をかけられてからのヤバい問いかけに、閉口しているようだ。そんな男に救いの声が届く。

 

「おーい、野薔薇〜。」

 

「ッ…はぁい!今いいとこだったのに、入って来んなよ五条先生。」

 

野薔薇は、どう問い詰めようかと算段をつけていたところに水を差されたため、不機嫌になっていた。

 

「はーい2人ともー、同級生の釘崎野薔薇さんでーす。じゃあ野薔薇自己紹介始めて。」

 

「釘崎野薔薇。喜べ男子、紅一点よ。」

 

((うざ……))

 

「俺、虎杖悠仁。仙台から来たんだけど。」

 

「伏黒恵。」

 

虎杖と伏黒は簡単に自己紹介をする。しかし、その様子はどうやら釘崎の反感を買ったようだ。

 

(何よこの男たち。このパーカーのやつは見た目が馬鹿そうで芋臭いし、ツンツン頭の方は名前だけしか言わないし。私名前だけしか言わない男嫌なのよね…。)

 

「はあ、私ってほんとツいてないわね。」

 

と、釘崎はジロジロ二人を見る。

 

この場にいる一年生3人はそれぞれ同じことを思った。

 

(((第一印象最悪)))

 

 

 

 

 

 

その後、先生が虎杖と釘崎を軽く勘違いさせ任務に連れて行き、ご飯を奢ってもらったのち解散した。

 

◇◆◇

 

201■年■■月■■日

 

またもや自殺!増え続ける自殺者への警察の取り組みとは!

 

昨晩未明。アパートの一室の扉が開いていていることを疑問に思ったアパートの管理人は、中を覗き中年男性と思われる人物が首を吊っていたのを発見した。発見された当時、男性は既に死亡しており、死後数時間経過していたと検察は報告している。警察によると、被害者の名前は飯田和宏。46歳のIT系の会社員であり、周りとの関係も悪くはなかったそうだ。人当たりの良い性格だったらしく、同じ職場の方に話を伺っても自殺したことが信じられない様子だった。また、警察からもーーーーー

 

 

 

 

 

「もう…ほんと最近自殺ばっかで辟易するわ。」

 

「別に気にすることないだろ……でもまぁ皆そうなるまでに追い詰められているってことなんだろうな。」

 

「これらの自殺って呪いと関係でもあんのかなぁ」

 

植物トリオでチラッとニュースを見ていたようで、それぞれに感想や考えを述べている。

 

「いや、関係ないはないらしい。」

 

「はぁ?!普通こんなに連続…というか大量に自殺者が出てるってことは呪詛師か呪いの仕業なんじゃないの?」

 

「俺も気になって先生に手伝ってもらったんだよ。……そして全く残穢は無かった。不可解なことこの上ないがな。」

 

「この世には不思議なことがあるもんなんだな。皆揃って自殺するんだからさ。俺この世界に入ってもう知らないことなんかないなんて思ってたわ。」

 

「………………お前この世界に入ってまだ1週間のくせに何言ってんだ。」

 

「ちょっと!人がシリアスになって喋ってんのに空気壊すなよッ。」

 

「事実だろ。」

 

「タイミングよ、タイミング!」

 

「おい。なんであんたらかけ合いしてんのよ、もっと落ち着きなさい。…まぁ気分転換にどっか出かけましょ、原宿とか。」(今日は任務もないし…)

 

「え〜。俺ヤだよ、野薔薇の荷物持ちすんの。野薔薇の買い物エグい量買うし、長いから行きたくねぇよ。」

 

「俺もパス。」

 

「うるさい!うるさい!いいから黙って私について来い!」

 

「「勘弁してくれよ…。」」

 

烈火の如く怒る釘崎の剣幕に、二人は渋々ついて行くことになった。

 

 

 

 

---

in 原宿

 

朝の会話から数時間後………

 

 

 

「はあ…はあ…お、重いんだけど…」

 

「くそっ、なんで俺まで…」

 

「ん〜♪〜♪次何処行こっかな〜」

 

虎杖と伏黒は疲労困憊だった。どちらも両手に大量の紙袋を持ち、まだまだ続くと思われるこの苦行に耐えていた。勿論この状況を引き起こした元凶たる釘崎は、そんなこと知ったことではないとでも言うように抹茶ラテを片手に歩いている。

 

「チッ、もう絶対お前の買い物には付き合わねえ…」

 

「ほんとだよ…」

 

((これ全部もうここに捨てていきてぇな………いや無理か…))

 

慣れない女性?のお買い物に強いトラウマを植え付けられた二人は、いっそのこと全て地面に置いて帰るという選択肢を考える。がしかし、目の前に歩く釘崎がそれを許すはずも無いと思い、あえなく二人の心の中で棄却された。

 

そんなこんなで朝のことなどすっかりと忘れた植物トリオは、久方ぶりの休日を過ごしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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