とある魔道具店店員の手記   作:シュワシュワ

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4-4 族長試練①

【コロリン病の終息】

 孤児院で繰り広げられた光景は、看病というよりかは完全に託児所のソレ。

 一見して長閑ながら、これでも波乱の連続ではあったのだ。

 

 大悪魔と女神の小競り合いにまたもや巻き込まれたウィズが、浄化魔法の流れ弾を食らって戦線離脱するし。

 遊び盛りの少年少女らに振り回されためぐみんも、疲弊でとうとうダウンした。

 バニルはおんぶ紐でおぶった幼児を寝かしつけつつ、オモチャを片手に別の子供をあやしてと大いに奮闘していた。

 何よりも、アクア。この女がいなければ、子供の大半が息絶えていたのは疑いない。

 キャリア以外の患者の病根絶を成し遂げ、命の恩人として親御さんらから様々な差し入れをされていた。現にそれだけの活躍はしている。

 

 私は大人しい子を中心に絵本の読み聞かせをしたり、おままごとに付き合った程度で、そこまでの疲れはない。

 活動範囲の都合から、ここ何日かはシルフィーナと特によく接した。

 それもあって、シルフィーナ本人や彼女といくらか親交のあるめぐみんより、その境遇について伺えた。

 彼女は、生まれつき身体が弱い。魔王軍との戦火から離れるため何度か疎開したが、かかる負担を勘案するとシルフィーナには酷だ。

 それで親戚の誘いを受け、平和なアクセルへと引っ越してきたとか。移住するや早速、此度の騒動へと発展したが。

 ……魔王軍がアクセルへ侵攻するやもしれないと発覚したのに、そんなタイミングで越してくるとは間が悪い。さりとて、他の街のほうが安全とも言い難い現実がある。

 

 シルフィーナは、ダクネスを縮めて儚げな雰囲気をまとわせた風の病弱少女だ。

 換言すると、身体の弱い私とはキャラがまあまあ被っている。似たもの同士、と言い切っても過言ではない。

 まあ、私は時たま体調は崩せど、彼女のように病気がちだったりはしないけど。

 そういった話題で和やかに連帯感を形成していると、ウィズが胡乱な目を向けてきた。めぐみんに至っては、鼻で笑った。

 私とシルフィーナを同一カテゴリーに振り分けるのに、異議があるようだ。

 

 難癖をつけてきためぐみん曰く、私たち二人には、通常のウサギと一撃ウサギくらいには差があるとか。

 一撃ウサギ。読みはラブリーラビット。

 愛嬌を振り撒いて無害さをアピールし、油断した獲物を額のツノで串刺しにする、えげつない習性を持つ。なお、肉食。

 どうして、冒険者ギルドが注意喚起する厄介なモンスターに準えたのか。

 私は意図して悲しみの表情と声音を作り、心無い無法者の暴言をシルフィーナへと訴えた。

 一撃ウサギの凶悪な生態を解説すると、心優しい箱入り娘もそれはあんまりだと同情。私の言にも、そうだそうだと一々肩を持ってくれた。

 まあ。本心としては毛ほども気にしていなかったけども。

 見透かしているめぐみんからは、正にそういうところだと鋭くツッコまれた。無視した。

 

 ともあれ。

 隣街に出かけていたカズマとダクネスが特効薬の素材を入手して凱旋し、コロリン病の治療は呆気なく完了した。

 調合に際してウィズ、バニル、めぐみんが再び口論に熱中し、アクアまで余計な善意を発揮して場を掻き乱したから、一時はどうなるものかと冷や冷やしたけど。

 

 

【今日から従業員が増えます】

 アクセルに宝島が出現した。

 

 宝島とは、玄武の俗称だ。イメージとしては、小さな山くらいのサイズの巨大亀だと思っておけば、おおよそ間違いない。

 普段この亀は、地中の奥深くに生息する。ただし。甲羅を天日干しするために、十年に一度だけ地上へ進出する。

 主食は鉱石だ。その関係から甲羅には、地下深くに埋蔵する希少な鉱石や宝石が、びっしりとこびりついている。

 オマケに気性は極めて温厚。余程のことが無ければ、まず攻撃されない。だからこそ、玄武が日光浴に没頭する間に、人々はツルハシを手に取りせっせと鉱石掘りに明け暮れる。

 言うなれば、大金が道端に転がっているようなもの。故に玄武が現れた地域では、街ぐるみのお祭騒ぎとなる。

 とはいえ、甲羅にはモンスターの鉱石モドキも潜んでいる。自衛できない一般人による採掘は、到底敵わない。

 

 そんな大事な日に、私は偶然にもギルドのバイトに入っていた。果たして間が良いのか、悪いのか。

 ギルドでは、リュックやヘルメット等の採鉱アイテム一式を貸し出している。一時は血走った目をした冒険者が先を競うように集い、とんでもなく忙しくなった。

 金は人を狂わす魔の力。連中は、見事物欲に支配されていた。

 先日の税金徴収で、冒険者は懐が寒い。金のなる木が沸いて出たこのボーナスタイムは、紛うことなき福音だ。

 どうせ、飴玉に群がる蟻の如くわんさか集まって、ロッククライミングの要領でロープを伝い、一斉に玄武の背を駆け上がったのだろう。

 

 私は見かけなかったけど、ウィズ魔道具店の二人も同様に駆けつけたと、あとで他の職員から耳にした。

 玄武は神獣。悪魔族にとっては敵だ。玄武の鉱石欲しさに肉体労働に精を出すのは、バニルの感性的には有りなのだろうか?

 まあ大方、ポンコツ店主が新しいガラクタを今朝買い込んで今月の家賃が一気に危うくなったから、形振り構ってられないのだろうが。

 新商品の店長イチオシぬいぐるみをお買い求めの方は、当店へお越しを。子供の傍を自動で付いて回り、迷子を防止する機能付きだ。

 ただし。四六時中付いて来るので、夜中にトイレに行った子が泣いてしまうデメリット有り。

 

 宝島の採掘は半日ほど続いた。

 冒険者が出払った後のギルドは、一転して静かなものだった。

 彼らが持ち帰る大量の採掘品の鑑定、買い取りへの段取りを急ぎ整えねばならなかったので、欠片も暇ではなかったけども。それでも、平時よりかはマシだ。

 私は途中で退勤したので、一番慌ただしい採掘後の後始末には関与していない。

 小耳に挟んだ話だと、鉱物目当てにめぐみんが爆裂魔法を撃ったとか。私は現場には立ち寄っていないので、事由は定かでない。ただまあ、大した度胸だとは思う。

 

 それから。私が不在にしていた合間に、店で増員があった。

 帰宅すると、採掘で留守にしている二人のピンチヒッターとして、初対面の珍妙な生物が店番していたのだ。

 しかも。双方とも相手のことを前もって知らされていなかったので、出会った直後は気不味いムードが漂った。

 新人の名はゼーレシルト。アクセル近隣にある街を治める領地持ちの貴族にして、悪魔だ。

 先頃に特効薬の材料を融通してもらうため、カズマらが会いに出向いたターゲットと述べたほうが分かりやすいか。

 どうしてそんなのをうちで雇い入れる仕儀になったのかは、また次回にでも記そう。

 

 

【宝島の臨時収入ならもう使い切った】

 ゼーレシルトについて記すと前回宣言していたし、まずはそこから始めよう。

 

 ゼーレシルトは、ペンギンとかいう変な鳥の着ぐるみをしている。

 そんな格好だから、素肌がちっとも見えない。おかげで、王城に登城しても悪魔だと露見することは終ぞなかった。

 他国ではどうだか知らないが、ベルゼルグにおいては有能でさえあれば多少の奇行は許される。王国において、この程度の変人貴族なら掃いて捨てるほどいる。

 とはいえ。悪魔がのうのうと蔓延っているほどだとは。さすがに、もうちょっと危機感と警戒心を備えてほしい。

 そんなザル防諜だから、私やスパイがやりたい放題できてしまうのだ。

 

 ときに、ファンシーな着ぐるみの中には、触手の塊が詰まっている。昨日、直接目にする機会に恵まれた。

 恐怖を喚起するおぞましい姿だ。……それを直視した私から、なぜかまったく悪感情が流れ込んで来ないと、ゼーレシルトは独りごちて困惑していたけども。

 なぜと問われても、思うところが無いからとしか。外見で差別する趣味はないし。それは、合理的でない。

 

 着ぐるみ伯爵は何もかもを放り捨て、着の身着のままアクセルへ夜逃げした。

 被害者の談によると、近頃どういうわけか、毎日のように女神エリスが住み家を襲撃してくるのだそう。

 ゼーレシルトは高位の悪魔ではあれど、正面切って女神と戦えるほどの格ではない。残機を削られ、堪り兼ねて逃亡した。

 エリスは、悪魔アンチガチ勢だ。さすがと言わざるを得ない。

 急に彼女が出没するようになった原因は、カズマやダクネスとの接点に着目すれば、一定の推測は立つ。まあ、私が気にかける事柄でもあるまいが。

 

 それはさておいて。

 這々の体で街に到着するや、今度はバッタリ出会したアクアの追い打ちに晒された。そして、いよいよ残機が尽きた。

 そうして紆余曲折あり、知り合いのバニルを頼ってうちでの就職が決定したわけだ。

 この店は、アクアが縄張りを主張している。アクアよりも悪魔に対して苛烈なクリスも、ごく稀に来店する。

 私としては、ほとぼりが冷めるまで地獄に引き籠ったほうが身のためだと思う。

 一応、ダクネスが後ろ盾になるとか。『良い悪魔は滅んだ悪魔だけ』と公言して憚らないクリスと言えど、親友が庇えば思い留まるか。恐らく。きっと。やっぱりダメかもしれない。

 

 マスコットキャラとして、早くも街で人気を博している新たな後輩の話はここで終わり。

 別の話をしよう。

 宝島の恩恵もあって、ウィズ魔道具店は資金難の窮地を辛くも脱した。

 脱した、はずだった。

 冒険者ではないバニルの分まで宝島の報酬を受領するために、ウィズが代わりにギルドへと向かったのだけど。

 帰路で、全額使い込んだのだ。

 家賃の支払いが間近に差し迫っているのに、その余分すら残していない。

 金を受け取るだけの簡単なお使いだけど、浪費癖のある女には荷が勝ったか。

 

 この失態にバニルは激怒した。

 補填として、身売り――莫大な魔力の籠もったリッチーの爪と髪を売り払っての元手の調達を図るも、そこは私が待ったをかける。

 救い主を見出したような、熱い視線を能天気店主が注いでくるも、別段そういう話ではない。

 その手は、既に使っている。デュークを討った後日、失恋で大泣きしていたウィズから爪と髪をこっそり拝借して、討伐報告がてら私が売り捌いておいた。

 リッチー化したデュークが隠れ蓑になったので、出処を誤魔化すのがとても楽だった。

 伝説級のアンデッド素材が頻繁に市場に流れては、怪しまれる。次の身売りには、もう少し間隔を空けたい。

 

 そんな次第で、代案としてウィズにはメイド服を着せて、カズマの屋敷へ送り出した。

 ウィズには、借金を身体で返してもらう。メイドさんごっこで。

 事前連絡はしてないけど、あの男なら大喜びで雇ってくれるだろう。メイドのご奉仕が性癖みたいだし。

 何ならそのまま定住して戻って来なくても、私は一向に構わない。

 ハニートラップよろしく、カズマとくっついてくれたら最上だ。不良債権の引き取りついでに、店のスポンサーかオーナーにでもなってもらえないものか。

 人員はゼーレシルトが加入した。仮面悪魔に良妻アピールがしたいロリサキュバスも、時々手伝ってくれる。

 人手不足が解消された今、ウィズをリストラしても経営上の支障はない。

 それにしても、同僚の過半数が人外で、人間が私しかいない。うちの店が、魑魅魍魎の寄り集まる温床と化している。

 

 なお。『稼ぎを得るまで帰って来なくて良い』と言い捨てて叩き出す一部始終を眺めたゼーレシルトは、ドン引いた。

 ウィズは店内のヒエラルキー最下位だ。それをまだ呑み込めていない。リッチーだと教えられているから、尚更に。

 ただの人間が、本人に断りも入れず躊躇なく身売りをさせ、あまつさえ雇用主を顎で使う。不死者の王をまるで恐れぬ所業が、大層奇っ怪に映っている。

 何者かと訝しがられるも、私は一介の従業員だ。それ以上でも、以下でもない。

 

「……なるほど。さすがはバニル様のご友人だ。私の事を知ってもなお変わらぬ態度と言い、普通の人間ではないとは思ったが。……いや、この女は本当に人間なのか? もしや人に化けた同胞では……」

「何を言うか、ゼーレシルト。我ら悪魔族はここまで悪辣な種族ではない。汝もよく知っておるだろう」

 

 旧知の悪魔同士の、そんなやり取りが聞こえてきた。

 とりあえず、褒められてはいまい。

 どうして、悪魔共からここまでコケにされなくてはならないのか。

 

 

【族長試練のパートナーは?(前編)】

 冒険者ギルドで、ゆんゆんが項垂れていた。

 どうしたのかと話しかけると、返答として一通の手紙を手渡されたので目を通す。

 次の族長を決めるための試練を開催するから、やりたい人は紅魔の里へ来るように。

 大体そんな感じの内容が、紅魔族的な大仰な言い回しで綴られていた。

 紅魔の一族において、族長の地位とは世襲制ではない。次期族長を目指すゆんゆんにとって、この試練はなんとしてでも突破せねばならない正念場だ。

 

 で、肝心の試練だけども。相方が要る。

 二人一組でのエントリーが前提なのだ。パートナーを用意できないことには、受かる以前に挑戦すらままならない。

 人に声をかけることすら至難なぼっちには、最初にして最大の関門と言えよう。

 

 その上、次代の長を定めるだけあって、生半可なコンビでは太刀打ちできない。

 試練は有名な英雄譚に倣っており、前衛と後衛が互いに協力して、困難に打ち勝つことをテーマとしている。

 だから、相方に相応しい前衛の剣士を里外で探し出して、魔法使いの紅魔族が後衛を担う。この組み合わせが従来の定番だった。

 近年だと、この風潮は徐々に過ぎ去りつつあるようだけど。

 紅魔族が二人で組めば、火力のゴリ押しだけで難なく試練をクリアできる。そう気づいてしまったのだ。情緒もへったくれもない。

 ともかく。ゆんゆんはそのパートナーの確保で躓いていた。

 

 彼女は知人が少ない。初めは嫌々ながら、ダストに相棒になってくれないかと持ちかけた。

 ところが。宝島で儲けてしばらくは働きたくないと、すげなく拒まれた。

 いや、ダストって。

 この街の戦士だと腕が立つほうではあるけど、その他の面で難点がありすぎでは。

 それに、別側面からも非常に不味い。あのチンピラを里まで同伴させた日には、娘が悪い男に誑かされたと、父親が早とちりする。ダストが族長に殺されてしまう。

 私の見立てだと、展開速度に優れたカースド・ライトニングか、上級魔法の中でもトップクラスの威力を誇るライトニング・ストライクが出合い頭に飛んでくる。

 いくら何でも、ライト・オブ・セイバーまでは使用しないはず。

 

 ゆんゆんは長考すると、ややあって、カズマにパートナーを打診しようと切り出した。

 暫し思案する。……いや、これ悪手だ。行く末を予測した私は、この暴挙を引き止めた。

 周りを見回して爆裂娘がいないことを確認してから、懸念を伝える。

 それだと失敗する。カズマ自身がどうとかではない。想い人を連れて行かれそうになった、めぐみんが嫉妬するのだ。埋め合せとして自分が相棒を務めると、強引に割り込んでくる。

 以降は容易に想像がつく。些細な停頓で苛立っためぐみんが雑に爆裂魔法をぶっ放して、試練は失格になる。

 試練は三度までチャレンジできる。が、ともすると、二回目も出しゃばっためぐみんにメチャクチャにされかねない。

 カズマに助力を乞うのは、崖っぷちへの片道切符だ。

 ゆんゆんも、ライバルの気質は心得ている。理路整然と説くと、確かに有り得ると血の気の引いた顔で納得してもらえた。

 

 では、どうするか。

 手始めに私がバニルを推薦するも、これは断固拒否された。

 好戦的な紅魔族と、人を煽るのが大好きな畜生仮面を一緒にすると、大事件を招く。それは嫌だと。というか、前に一度なった。

 言われてみれば一理ある。アレを里に放り込むと、試練どころではなくなるか。

 

 次にゆんゆんがウィズを挙げるが、こちらは私が難色を示す。

 試練は、泊まり込みでの数日がかりとなる。あの恐るべきガラクタ職人の住まう里に、うちの放蕩店主をそれほど長期に渡って野放しにしたくない。店が潰れる。

 

 エリスにボコられたとはいえ、一端の強者ではあるらしいゼーレシルトも頭に浮かんだが、これは保留で。

 ふとした拍子に着ぐるみの中身が里の住民に暴かれると、ややこしくなる。

 それなりの期間里に滞在するのだから、相応に起こり得る危険だ。

 それにあの悪魔、悪感情を除くとさしたる欲がない。いざ交渉をまとめるにしても、骨が折れそうだ。脅迫――もとい、そこそこ手荒な手段を用いることになるやもしれない。

 

 そうしてあれやこれやと検討するうちに、とあるアイデアを閃く。

 候補の当てを思いついた。少々時間が欲しいと告げ、パートナー探しを一旦こちらで預からせてもらった。

 目星をつけた人物は、アクセル住人ではない。物理的に遠いため、即座には動けない。

 これはこれで面倒はあるが、思えばゆんゆんにはバニル攻略本の件で、魔法陣について教わった借りがある。この機に返済しておこう。

 

 最後に、与太話をひとつ。

 族長試練を受けるには、上級魔法とテレポートを会得済みの紅魔族であることが、最低限の条件となっている。

 すなわち、めぐみんには資格がないのだが、それは置いておくとして。

 これ、仮に私が転職して両方のスキルを覚えたら、参戦できるのでは?

 紅魔族の縁者だと証明するため、色々と明かす手間こそあるだろうが。そこさえ掻い潜れば、ノリの良い紅魔族ならあっさり参加させてくれそうではある。

 実は、元々余らせていたスキルポイントに養殖で獲得した分を合算すると、上級魔法の習得には王手をかけている。テレポートまでとなると、あと一頑張り必要だけども。

 この場合、試練の相棒はウィズかバニルに依頼する。私自身はひたすらお荷物に徹して大人しく守られておけば、多分何とかなる。

 

 いや、やらないけども。

 本気で狙えば、私でも族長になる目があるかもしれない。そういう仮説で、ほんの冗談だ。族長の座とか、特段興味ないし。

 

 

【やがて勇者となり歴史にその名を刻む者?】

 カズマたちが新聞に載っているのですが。それもデカデカと。

 

 数多の大物賞金首や魔王軍幹部を葬った、最強の最弱職サトウカズマ氏の謎に迫る。

 そのような見出しから始まり、彼のパーティーが如何に優秀なのかが、紙面を大きく割いて掲載されていた。

 嘘にならないギリギリのラインを突き、上手くヨイショしている。出版側の努力の跡が窺える。

 

 そういえば。

 少し前に私が仕入れた情報で、カズマとめぐみんの二人が王都にある新聞社に乗り込んで、自分たちの特集記事を書かせた。というものがあった気がする。

 馬鹿馬鹿しくて裏取りはしていなかったが、差し詰めあれは事実だったのだろう。

 あれがすべて正しいのなら、要求を通すために二人は、ダスティネス家の権力をチラつかせている。

 正直、割といつものことではある。

 あの問題児三人は、かなり下らないことで度々彼女の実家の威光を振りかざす。

 高級料亭で入店を渋られた際に、家名を持ち出して押し通ったり。

 おかずの買い出しで美味しい部位を分けてもらうのに、ララティーナお嬢様の口に入るものだと圧力をかけたり。

 この新聞も、ダクネスは事態を把握していないに違いない。

 

 これはまた、随分な悪目立ちを。魔王軍はもう今さらだとしても、これでは血気盛んな余所の冒険者にまで目をつけられそうな。

 冒険者ギルドは、冒険者間の決闘を公認している。

 めぐみんはどうだか知らないけど、カズマは絶対にそこまで考えが及んでいない。

 

 サトウ繋がりの余談として書しておこう。

 かつて魔王軍に甚大な損害をもたらした、サトウという伝説的な剣豪がいる。家名がカズマと同じだ。

 両名の関連――率直に言って、カズマはその剣士の子孫なのかと、事情聴取していた頃のセレスディナより尋ねられたことがある。

 魔王が、やけに案じていたそうだ。

 無論、正解を私が知る由もない。そこは彼女も理解している。というか、当の質問者がそれはないだろうと、全然信じていなかった。実態は単なる雑談だ。

 

 どこからともなく湧く、変わった名前をした常識外れの実力者たち――勇者候補の存在を、魔王は確と認識している。

 カズマ以後、ピタリと出現しなくなった点も。

 そのカズマは、次々と幹部を下して破竹の快進撃をなおも続けている。

 この二つの事象を、魔王は結びつけて捉えた。

 つまり、魔王軍との長きに渡る因縁に決着をつけるには、彼一人いればもはや十分。だから、勇者候補の増援は途絶えた。そういう天意と解釈したのだ。

 

 魔王からすると、たったの一年で戦況を激変させた彼は、脅威どころではない。

 それこそおとぎ話に登場する本物の勇者、いずれ自らに引導を渡しにくる死神もかくやだ。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花、とは言うが。伝聞それも、華々しい戦果でしか相手を知らないとは恐ろしい。

 実物のぐうたらニートを目の当たりにすれば、そんな幻想には囚われまいに。

 ただ。そんなことを真面目に憂いているのは魔王のみ。セレスディナも含め、魔王軍内部では誰も真に受けていなかったらしいのが、カズマにとっては僅かな救いか。

 それに、彼が見込み通りに魔王を倒すと、私は勇者の末裔という仰々しい肩書きを自ずと取得してしまうのだけど。

 

 ちなみに。伝説の剣士サトウとカズマの関係に関する、私の見解はこうだ。

 偶々家名が一致しているだけの、赤の他人。

 勇者候補については私も気になって、あれこれ調べていた時期がある。その最中で気がついたのだけど、勇者候補には『サトウ』が結構多い。

 今も昔も、サトウの名は時折目にする。王都で行商したときの顧客リストにも、サトウという冒険者はいた。

 案外、彼らの故郷だとありふれた家名なだけ、というオチだったりして。

 

 

【族長試練のパートナーは?(後編)】

 紅魔族の次期族長として認められるには、三つの試練を乗り越えねばならない。

 そのうち前二つの課題は不明だ。ただ、傾向としては遊び要素が強いとか。

 反面、最終試練だけはハッキリしている。

 強大な魔物がひしめく紅魔の森で、一晩を過ごすこと。どんな環境であっても生き延びる生存能力が試される。

 上記を踏まえ、ゆんゆんのパートナー選定において私が考慮した点がある。

 

 まずは当然力量。殊に、詳細が判明している最終試練を踏破できる腕っ節は必須だ。

 それも叶うなら、安定して達成できる腕利きが欲しい。

 贅沢な望みだけども、なまじ保険にウィズが控えている点がハードルを上げた。中途半端な戦力を引き合わせるくらいなら、気乗りはしないがウィズを選ぶ。

 迷惑店主が妙な真似をしないよう、そのときは私が目付役として目を光らせるしかない。

 もちろん、私とて魔王軍幹部並の高望みまではしていない。

 なお。アクセルの冒険者は、この時点でほぼ全員選考から漏れる。槍を持たせたダストなら該当するかも、というくらいか。

 もっとも。当人は何か訳アリっぽいので、実際に槍を使わせるのには難儀するだろうが。

 

 それと。森での試練となると、爆殺魔人の動向も気がかりだ。

 爆殺魔人もぐにんにん。紅魔の森を徘徊する賞金首モンスターだ。

 紅魔族をなぜか襲わないため、過去には紅魔族の守護者とも呼ばれていた。なお、紅魔族でない男性は容赦なく襲う模様。

 とりわけ、黒髪黒目の男を目の敵にしている。

 この魔人、元は里の謎施設――ノイズ開発局で寝かされていたらしい。

 

 ここからは多分に憶測が絡むが、爆殺魔人の生誕には恐らく、改造人間やデストロイヤー製作に携わったのと同じ人が関わっている。そして、その者は勇者候補だ。

 黒髪黒目の男に執拗に襲いかかるとの特徴は、理由は判然としないが、他の勇者候補を指している可能性がある。

 そうなると、パートナー候補として男、わけて勇者候補は優先順位が下がる。

 試練の難易度を無駄に引き上げるリスクは不要だ。生息域は森の深部なので遭遇戦は起きないはずだが、念のため。

 これさえなければ、相棒枠にはミツルギキョウヤを推していただろう。

 

 その他だと、注目する部分は限られてくる。

 というより、何をさせられるかが始まるまで非公開なので、吟味しようがない。

 強いて言及するなら、ゆんゆんとの性格的な相性が良好で、得意分野が重ならずカバーし合える間柄なら良し。といったところか。

 

 で、先程の項目全部を満たす人物に、ちょうど心当たりがある。

 というか、ゆんゆんとはとうに友達だ。

 それなら話は容易い。これからゆんゆんには相手の自宅へお邪魔して、相棒になって欲しいと打ち明けてもらう。

 小難しく考えずともいい。遊びに行こうと声かけする程度の心持ちで大丈夫だ。

 しかしながら。友達のお宅を訪ねた経験の乏しいコミュ障に丸投げすると、一生話が前に進まないのは目に見えている。だから、私もサポートとして同行しよう。

 

 対象は、異国の地にて黄金の竜を一撃で屠った最新のドラゴンスレイヤー。

 魔王軍幹部とすら渡り合えると噂の、規格外の剣士だ。

 めぐみん盗賊団のしたっぱイリス、と紹介したほうがゆんゆんには馴染みがあるか。

 そういえば。彼女の本名と身分を、ゆんゆんは何も知らなかったような。

 まあ、どうでもいいか。ゆんゆんのメンタルにしか差し障りはないし。

 ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス。この国の第一王女に、試練パートナーとしてお出まし願おう。




・爆殺魔人もぐにんにん
ノイズ王国産の忍者ロボット。改造人間紅魔族の経過観察と共に、ハーレム野郎、特に日本人のリア充を爆殺する使命を帯びている。
原作とは異なり、本作のもぐにんにんは暴走していない。
傀儡ポイントを削られまくった元凶のセレスディナに余力が無く、この世界線ではもぐにんにんに手出ししていないためである。
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