日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた   作: まっこーける

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*次話と矛盾してる箇所を修正しました


10 平原での激突

 

 アルーカより少し西の平原。そこには陸上自衛隊の特科大隊が展開していた。

 

「準備完了しました」

 

 部下の一人の報告を受け、特科大隊長は満足そうに微笑んだ。

 

「よし、始めるか……こちらFDC、各中隊射撃開始」

 

 彼の号令の元、12輌のHIMARS(高機動ロケット砲システム)がその巨大なランチャーを旋回させる。本来なら18輌で1個大隊を構成するが、アールカに上陸出来たのは今は2個中隊分だけであった。攻撃目標はムフリッド爆撃機隊の根拠地であるジナウン航空基地だ。

 

「撃てっ! 」

 

 轟音と共に各HIMARSから2発ずつ、計24発の巨大なロケットが発射される。今回発射されたのはクラスター弾頭のM26や単弾頭のM31ではない。

 

 PrSM(精密打撃ミサイル)と呼ばれる地対地ミサイルである。これはGPSにより誘導され、射程500キロメートルの範囲の敵を攻撃できるという代物だった。

 

「弾着まで20秒」

 

 低軌道衛星コンステレーションが提供するGPS網に誘導されたミサイルは、目標であるジナウン航空基地上空に達する。そして1000ポンドの弾頭を炸裂させた。

 

 あるPrSMは空中で弾頭を炸裂させ基地へ無数の破片と爆風を浴びせ。また別のものは貫通弾頭が搭載されており、地下燃料タンクに直撃し大火災を発生させる。

 

「弾着、いま! 」

「戦果は? 」

「敵航空機及び地上施設の破壊に成功! 」

 

 UAVにて戦果をモニターしていた隊員の声が響く。

 

「うむ、攻撃成功だ! 」

 

 FDC内が歓声に包まれた。

 

「よし、第2波攻撃の準備を急げ。徹底的に叩くのだ!」

 

 再度の攻撃によってジナウン航空基地は壊滅的打撃を被ることになった。

 

◆◆◆

 

 イルネティア首都キルクルス。グラ・バルカス帝国イルネティア防衛軍司令部。

 

「日本艦隊への攻撃は失敗に終った。とみていいのか?」

 

 作戦会議室では重苦しい雰囲気が漂っていた。

 

「はい、いまだにアルーカ沖の電波発生源は健在であります。おそらくムフリッドによる攻撃は失敗したかと」

 

 参謀から報告を受けた司令官ザイドは忌々しそうな表情を浮かべる。

 

「ジークを防ぎきるとは。日本の防空巡洋艦……イージス艦といったな、あれの防空能力は想像以上だったということか……ジナウンの被害状況を教えろ」

 

「はい。基地機能は完全に喪失。帰還したムフリッドもほぼ全て地上にて撃破されました。日本がどのような攻撃方法を使用したかは不明です」

 

「不明だと!? 貴様それでも軍人か! 」

 

「申し訳ありません! しかし、あの国の技術レベルを考えるに、我々が想定していない兵器を使用している可能性もあります!」

「ふんっ、まぁいい。次だ。ゲンゲンダ平原への部隊展開は進んでいるのだな」

 

「はい。既に第334旅団が展開。陣地を構築しています」

 

 第334旅団は歩兵連隊3個と戦車大隊2個、さらに砲兵連隊3個を中心部隊として編成されている。この部隊はムー大陸侵攻時に投入予定だった部隊である。

 

「よろしい、334旅団の指揮官はアクムスだったな。奴は優秀だ。必ずや任務を全うするだろう」

 

 ザイドは満足げであった。

だがその顔はすぐに曇ることとなる……。

 

◆◆◆

 

 同時刻、アルーカ西のゲンゲンダ平原。ここには陸上自衛隊の戦闘団が展開していた。正確に記すなら第8師団第12普通科連隊を中核にし諸職種混成部隊と化した第81戦闘団と、同じく第43普通科連隊を中核とした第82戦闘団である。

 

 田園が延々と続く長閑な風景の中、異質な存在が居た。8輪のタイヤで走り、長大な105ミリ砲を誇る16式機動戦闘車である。

その数4輛。彼らは第81戦闘団の先鋒として偵察行動を行っていた。

 

「こちら小隊長車。そろそろ敵の警戒線に入るぞ」

 

 事前のUAVによる航空偵察により、敵が展開しているであろうポイントは既に判明していた。しかし空からの偵察だけでは不十分であると考え、こうして地上からの威力偵察を行うことになったのだった。

 

 16式は速度を落としつつ前進を続ける。少しすると赤外線センサーに敵を捕らえた。藪の中に隠れるグラ・バルカス兵が白いシルエットとしてモニターに浮かび上がる。

 

「敵散兵発見、距離1000、方位265」

 

 16式のセンサーは優秀だ、自動的に敵の戦車や歩兵を識別してくれる。

 

「各車射撃用意。目標敵散兵。弾種対榴」

 

 4両の16式が砲塔を旋回させ、105ミリ砲を敵に指向させる。

 

「撃てっ! 」

 

 105ミリ砲が火を吹き、新型多目的榴弾を撃ち出す。それらは空中で炸裂し、藪の中の兵士へ破片のシャワーを浴びせた。哀れなグラ・バルカス兵たちは血煙となって霧散する。

 

「こちら2号車、新たな敵を探知しました。距離800、方位277」

「了解」

 

 2号車が補足した敵情報は瞬時に他の16式に共有され、各車の情報モニターに表示される。16式が収集した情報は中隊本部のみならず、後方の戦闘団本部、さらには他の兵科にすら瞬時に共有される。

 

「目標捕捉! 」

 

 2号車の砲手が叫んだ。そして、照準装置のレティクル内に敵を捉えるとすぐさま発砲。

砲弾は空中ではじけ飛び、敵兵を殺傷する。

 

「敵装甲車を確認! 3時方向! 」

 

 6輪のタイヤと銃塔を持つ装甲車が姿を現し、備えられた20ミリ機関砲を発砲する。しかし、射程外から発射された20ミリ弾は16式を捉えることはできない。ただ地面を穿つだけだ。

 

「3号車。あの装甲車をやれ!」

 

 小隊長はモニターに表示された敵装甲車のアイコンをタップして3号車へ攻撃目標の指示を出す。指示を受けた3号車は、すぐに照準を定め、砲撃を行う。

 

 轟音と共に撃ち出された徹甲弾は、狙い過たず装甲板を貫き、飛び込んだ断片が内部の兵員に致命傷を与えた。

 

「こちら1号車。新たな目標1輌発見。……あれは見た事無い戦車ですね。チハ擬きとは大分違うタイプですよ」

 

「何!?  データベースには登録されていないのか? となると新型か」

 

 小隊長は新たに現れたグラ・バルカスの戦車を観察する。確かに今までに確認されたどの車両とも形状が違う。そいつは傾斜装甲と長大な主砲を持つグラ・バルカス陸軍の新型戦車ラーチャーだった。

 

「少隊長、どうしますか?」

「うむ……全車、新型戦車に攻撃を集中しろ。戦って奴の情報を持ち帰る」

 

 ただ観察するだけでは敵新型戦車の性能は推し量れない。戦ってこそ得られる情報もあるのだ。

 

「全速後退!! 」

 

 小隊長の命令に従い、4輌の16式が一斉に動き出した。それを見たラーチャー戦車も猛然と反撃を開始する。

 

 ラーチャーの84ミリ砲が火を噴く。放たれた高速徹甲弾は、一瞬前まで16式がいた空間を貫いた。

 

「どうやらハウンド戦車とは次元が違う性能のようだな」

「75~90ミリ砲を装備した、本格的な対戦車戦闘を意識した車両のようです」

「みたいだな。さて装甲防護力はどの程度かな?」

 

 そう言うと同時に小隊長は射撃命令を下す。各車の105ミリ砲から徹甲弾が吐き出され、ラーチャーに殺到。パっと火花が散ったかと思うと数舜の後に砲塔が吹き飛ぶ。

 

「105ミリ砲で貫徹可能みたいだな。性能的に第1世代MBTといったところか」

 

 小隊長は冷静に分析する。その時新たな報告が入った。

 

「こちら3号車、敵新型戦車の増援を確認しました。数は4輛、こちらに向かっています」

 

 小隊長の額に汗が流れる。

 

「ちっ、16でMBTと撃ち合うのは分が悪いな」

 

 流石の16式でも84ミリ砲を正面から受けると撃破される恐れがある。小隊長は舌打ちすると、即座に決断を下した。

 

「全車後退! 撤退するぞ」

 

 スモークディスチャージャーから煙幕弾を撒き散らしつつ、16式は全力で撤退を開始した。幸いにも敵は追撃してくる気配は無いようである。

 

 こうして、自衛隊によるゲンゲンダ平原における威力偵察は一旦終了したのであった。

 

◆◆◆

 

 イルネティア島中部イフォス市。グラ・バルカス帝国陸軍イルネティア防衛軍東部方面司令部にて。

 

「日本の部隊が334旅団の警戒線を攻撃したか……」

 

 東部方面隊司令であるレイナルドは苦虫を噛み潰したような顔になる。彼はアルーカ陥落前に脱出に成功していた。

 

「はい閣下、日本は装輪車に大口径砲を搭載した兵器で攻撃してしたと、前線から報告が上がってきています」

 

 参謀は上官の表情を見て言った。

 

「ふむ、やはり強大な相手というわけだな。それで被害はどれほど出た」

 

「はっ! 日本は警戒線全域に渡り攻撃を仕掛け、現在確認できる被害は死傷者は50以上、ラーチャーとハウンドなどを含む車両が少なくとも10以上が撃破されました。敵装輪車の搭載砲はラーチャーの装甲を1000以上の距離から貫徹できる模様です」

 

「ラーチャーをいとも簡単に屠るか……それで日本の動向はどうだ?」

 

「日本はすでに撤退した模様。おそらく威力偵察だったのでしょう」

「近々本格的な攻勢が仕掛けられる可能性が高いと判断せざるを得んな」

 

「その通りでありましょう。間違いなく日本は334旅団に対し攻撃をかけてくるでしょう。問題は如何にしてこれを撃退するかということです」

 

「ゲンゲンダにおける連合軍の展開状況はどうなっている?」

 

「 現在ゲンゲンダ東の334旅団正面に日本の部隊が展開しています。ゲンゲンダ北東の22旅団担当区域からはムー軍、その南の36旅団が展開する丘陵地帯からミリシアル軍が迫って来ている状況です」

 

「敵の兵力は?」

 

「は、推定では1万3千ほどかと思われます。こちらは2万4千。数の上では優位と言えなくもないのですが……質的な面で不安要素があります」

 

「多少の数的優位なぞ兵器の質でひっくり返る。それはこの世界に来てからのレイフォル戦で我々も証明した事だ」

 

 不安要素はそれだけではない、日本の空爆により段列に少なくない被害が出ているのだ。

 

 弾薬や燃料のみならず、それを輸送するトラック類の損害も大きく、兵員の輸送にも障害が出始めている。

 

 本国からの補給と増援が無ければ戦線の維持のみならず、イルネティア島の統治すら不可能であろう。

 

(やはり一番の脅威は日本だ。奴らは我々の想像を超えた技術力を持っている。日本と正面からぶつかるだけだと徒に損害が増すばかりだ。正面から馬鹿正直に戦うだけが戦争ではないか)

 

レイナルドは方針の転換を決めた。

 

「334旅団のアクムスに連絡だ。日本に対しては積極的な攻撃は仕掛けるな、なるべく遅滞と防御戦闘に努めろ、と伝えろ。22旅団にはドイハ方面から引き抜いた戦車中隊を送れ」

 

 レイナルドの考えた作戦はこうだ。日本に対しては積極的な攻勢は仕掛けず、遅滞と防御に努め疲弊させる。

 

 そして、その間に22旅団をムーの戦線を攻撃させこれ突破、日本の後方へと回り込ませる。ミリシアルはそのまま防御戦闘に徹すれば自ずと崩壊するだろう。

 

 もし日本がこちらの意図に気づき、迎撃に出たとしても、それはそれで構わない。

その場合、消耗戦となり泥沼の戦いとなるだろう。だが、それでも良い。

 

 兵站線が短いのはグラ・バルカス側なのだ。日本の本国は遥か数万キロ彼方にある。

 

 いくら日本が優れた武器を持っていようと、数の上で圧倒的に有利なのだから持久戦に引きずり込めば必ず勝てるはずだ……と彼は考えていた。

 

◆◆◆

 

 中央歴1643年6月4日

 

 イルネティア島ゲンゲンダ平原。東の空が明るみを帯び始め、朱色の朝陽が闇夜の帳を払い草木の黄金色に染め上げる中、幾重もの砲声が轟く。

 

 未だ日光に暖められていない、清涼な空気が重低音によって震え、緑萌ゆる大地が爆炎によって爆ぜる。

 

 陸上自衛隊、19式装輪自走155ミリ榴弾砲による砲撃である。

彼らはグラ・バルカス軍の防衛線全域に対して猛攻を仕掛けていた。

 

「目標、敵砲兵陣地!撃て!」

 

 装輪車に装備された155ミリ榴弾砲が火を吹き、巨大な砲弾が音速を超える速度で撃ち出される。

 

 一種のクラスター砲弾であるDPICMが空中で信管が作動させ、砲弾内部に詰められた子弾を地上へばら撒く。発生した衝撃波と破片が、着弾地点の周囲にいた兵士たちをなぎ倒す。

 

 UAVからの観測と火力戦闘指揮統制システムより、高度にネットワーク化された各砲が155ミリ榴弾を正確に目標へ叩き込む。

 

「敵砲兵陣地沈黙!第2射用意急げ」

 

「了解、射撃準備よし」

 

 砲手の声と共に装輪車後部に設置された155ミリ自走砲が旋回し、仰角を取る

 

「目標、前方の敵塹壕」

「照準良し」

「撃て!」

 

 再び155ミリ砲が吠えた。放物線を描き落下していく砲弾は、グラ・バルカス軍の塹壕上空で起爆。爆風と破片の嵐を巻き起こす。

 

 その着弾点はまるで地獄のようであった。

 爆発により舞い上がった土煙。その中に混じる人間の体の一部。

その破壊の渦中では、グラ・バルカス兵たちは耐えるしかできない。

 

「ひぃぃぃぃ!?」

 

 一人の兵士が悲鳴を上げた。

 次の瞬間、その男はバラバラになって吹き飛んだ。

その光景を見た別の兵士が絶叫する。圧倒的な火力差を前に、ただ一方的に蹂躙されるしかない兵士達。

 

 この戦場において、鉄の暴風が吹き荒れる地獄絵図が繰り広げられている。だがそれは唐突に終わった。

 

「砲撃が止んだ?」

「はは、日本の奴ら、砲弾が尽きたみたいだな」

 

 絶望的な戦況の中、兵士は軽口を叩く。確かに自衛隊の砲火は止んでいた。

 

 しかし、これは弾薬が尽きてのことでは無い。

何故なら、今まさに別の攻撃を準備しているところだったからだ。グラ・バルカス軍は知らない。自分達が今どのような状況に置かれているのか。

 彼らが陣取る前線に、突如として大量のロケット弾が殺到してきた。

 

 それは後方のHIMARSから発射されたもので、サーモバリック弾頭が搭載された新型弾だ。狐を描き飛翔するそれらは狙い過たずグラ・バルカスの陣地に突き刺さり炸裂する。

 

 猛烈な火炎と衝撃が周囲一帯を飲み込み、地面ごと耕すように焼き尽くしてゆく。グラ・バルカスの兵士は断末魔の叫びを上げながら燃え、あるいは強烈な衝撃波によって肉体を四散させた。

 

◆◆◆

 

「そろそろ頃合いか」

 

 陸上自衛隊野戦司令部の中で迷彩服3型に身を包んだ男が呟いた。

彼の名は鈴木。陸上自衛隊所属の陸将でイルネティア島派遣部隊の司令官を務める男だ。

 

「ええ、前進して殲滅するべきかと」

 

そう答えたのは、陸自の戦闘服に防弾チョッキを身に着けた女性自衛官。

 

 彼女の名前は佐藤。陸自イルネティア島派遣部隊の幕僚を務めている人物だ。

 彼女達の前には、イルネティア島の地図が広げられており、そこには多数の×印が書き込まれていた。これは、敵の砲兵陣地の位置を示したものだ。

 

 おおよその砲兵陣地は無力化できた。

 

 彼らの眼下の戦況表示モニターには、自衛隊の特科部隊に散々耕されたグラ・バルカス軍陣地の残骸が映し出されている。

 

「もっと撃ち込んでやりたいが、こちらの弾薬量も心もとないしな」

 

 鈴木の言葉に佐藤はうなずく。現在の自衛隊の輸送力は昔に比べて遥かに強化されている。

だがそれでも、輸送能力の限界はあり、日本、イルネティア島という物理的な距離の壁は大きいのだ。

 

「81CT(戦闘団)と82CTを前進させろ」

 

 鈴木の命令を受け、戦闘団の各部隊が動き出す。彼らはイルネティア島に展開する敵部隊を撃滅するため進撃を開始した。

 

◆◆◆

 

 ゲンゲンダ平原、グラ・バルカス軍陣地。そこは地獄のような有様となっていた。あちこちに死体が転がり、黒煙が立ち上っている。

 

 炎熱によって焼かれた肉が焦げる匂いが漂い、吐き気を催すような異臭が鼻をつく。

 その中でも生き残り兵士たちが各々の武器を構え自衛隊を受け待ち構えていた。

 

「日本軍接近! 戦車を伴う!」

 

 小規模ゆえ生き残った、隠蔽された観測所からの報告に兵士たちの顔色が変わる。そして、ついに自衛隊部隊が姿を見せた。

 茶と濃緑の迷彩に扁平な砲塔を持つ、巨大な鋼の塊、10式戦車と29式装甲戦闘車で構成された部隊が圧倒的な存在感を持ってイルネティアの大地を疾走していた。

 

「目標敵戦車! 撃て! 」

 

 ごく僅かに生き残ったグラ・バルカス軍砲兵が、105ミリ榴弾砲を撃ち放つ。

 

 砲弾は放物線を描き、10式戦車に向かって飛んでいく――かに思われたが、唐突に空中で爆発四散する。

 

「――!?  弾着せず! 何やってるんだ! ちゃんと信管を調整しろ!」

 

 観測所から困惑とした声が上がる中、次々と砲弾は飛翔中に爆発していく。

 混乱するグラ・バルカス軍砲兵。砲弾が途中で四散するのは彼らのミスではない。自衛隊により迎撃されているのだ。

 

 砲弾を迎撃する正体、それは10式に随伴する高出力レーザー砲車であった。

 

 それはレーザー砲を搭載する装軌車で、探知、追尾レーダーも搭載し、これ1輌で完結する兵器だ。

 対無人機用に開発されたものだが、C-RAMにも使用できる代物だ。

 

 レーザー車はその性能を遺憾なく発揮し、砲弾が飛来すれば瞬時に弾道を計算、至近に落着する可能性のあるは物は即座に反応しレーザーで迎撃。

 

 砲弾は空中で爆散するか、レーザーの照射範囲外の物はそのまま地面に落下する。前進する自衛隊部隊に傷1つつけられない。

 

 自衛隊もただ黙って撃たれるばかりではない。対砲兵レーダーにより発射地点を特定。19式による対砲兵射撃(カウンターバッテリー)を速やかに実施する。

 

 砲弾は正確に、そして無慈悲に生き残りのグラ・バルカス軍砲兵を叩き潰していく。

 

「こちら第4観測所。敵が――!」

 

 10式の砲撃を受け観測所は沈黙する。

 一方的な展開。もはや戦闘とも呼べぬ蹂躙劇。それでも戦場に居合わせたグラ・バルカス兵の心を折るには至らななかった。

彼らとて軍人。祖国のために戦う戦士である。劣勢であろうとも最後の最後まで戦い抜く覚悟は出来ていた。

 

「目標1時の日本軍戦車。撃て!!」

 

 ダックインしたラーチャー戦車の84ミリ砲がタングステンAPDSを吐き出す。砲弾は空気を切り裂くように飛翔していく。

 

 砲弾は10式の砲塔正面に命中。しかし、ガンという金属音と共に弾かれてしまい撃破するにはいたらない。

続く2射目は地面を穿ち、土煙を巻き上げるのみ。

 

「APDS残弾なし」

 

 ラーチャー戦車の装填手が報告する。第334旅団に所属するラーチャーに支給されたタングステン弾は各車2発ずつだった。航空自衛隊による空爆により弾薬庫が破壊され、砲弾が欠乏してしまったのが原因だ。

 

「クソッ! 化け物戦車め。通常の徹甲弾を装填」

 

 車長が命令を下す。しかし84ミリ砲を撃つことは叶わなかった。

 10式が放った120ミリAPFSDSがラーチャー戦車の砲塔正面に命中。貫通して内部に入り込み、内部をぐちゃぐちゃに破壊する。

次の瞬間、ラーチャーの乗員は飛散した装甲片とAPFSDSによって肉塊となり果てた。

 

「これでも喰らえっ!」

 

 タコツボ壕に潜むグラ・バルカス兵がブル2ロケット砲を10式に向ける。だが10式の車長はすぐさまそれを察知、オーバーライド機能によって砲を指向させ砲手に優先目標である敵兵を示す。

 

 ブル2を担いだ歩兵に対し10式戦車は連装機銃による掃射を行う。猛烈な速度で7.62ミリ銃弾を放ち、数秒後、そこには血の海に沈んだ屍しか存在しなかった。

 

 やがて10に随伴していた29式装甲戦闘車が後部ハッチ

を開く。そこから姿を現したのはエグゾスケルトンを装備した普通科隊員たちだ。

彼らは塹壕に潜むグラ・バルカス兵を制圧すべく進撃を開始する。

 

 10式は多目的榴弾を、29式装甲戦闘車は砲塔に搭載された35ミリ機関砲や40ミリ自動擲弾銃を撃ち放ち、普通科隊員の前進を援護する。

 圧倒的な火力を前にグラ・バルカス兵は次々となぎ倒されていく。

 

 その間に普通科隊員はグラ・バルカスの塹壕内に侵入、内部に潜むグラ・バルカス兵と壮絶なCQBを繰り広げる。20式小銃が火を吹き、手榴弾が投擲され、グラ・バルカス兵の身体が吹き飛ぶ。

 

 塹壕内は怒号と悲鳴が入り混じった阿鼻叫喚の場と化していた。やがて近接火力に優れる自衛隊側の方が優勢となる。

遂に塹壕に陣取るグラ・バルカス兵の殲滅が完了する。

 

 自衛隊側は負傷者こそ出たが、戦死者はゼロであった。

そして制圧した塹壕を乗り越え後続の部隊がさらなる戦果拡大を求めて進撃していく。

 

◆◆◆

 

 グラ・バルカス軍、第334旅団第42混成連隊本部。

 

「第1大隊が守備する防衛線が突破されました。日本は戦車部隊を投入した模様です」

 

 報告に連隊長は顔を歪める。

 先ほどから司令部に緊急電がひっきりなしに届き、その度に通信兵たちは忙しそうに無線を取り次ぎしている。

 

 やはり日本の部隊は相当に強力なようだ。しかしグラ・バルカス軍はゲンゲンダ平原に縦深陣地を築いており、簡単には抜け出せないはずだ。

 

「第1大隊に後退命令を出せ。開いた防衛線には予備兵力を投入する」

「了解しました」

 

 通信兵が受話器を取ろうとした時だった。1発のPrSMが第42混成連隊本部の天幕を突き破り炸裂。爆風と破片から成る暴風が中にいた司令部要員たちの身体を引き裂いた。

 

 自衛隊特科部隊の攻撃だった。自衛隊は無線の逆探による電波評定によりグラ・バルカス軍の野戦司令部の位置を特定。PrMSによる攻撃を実施したのだ。

 

 一瞬で司令部が壊滅した第42混成連隊は混乱に包まれる。

 

◆◆◆

 

 一方の陸上自衛隊第81戦闘団も敵の反撃を受けつつあり勢いが鈍り始めていた。

 幾重にも張り巡らされた塹壕線。そこを突破するのは容易ではない。

 

「11時方向、敵対戦車砲!撃てぇ!!」

 

 10式戦車の目標自動検知機能が対戦車砲を捉え、120ミリ砲が吠える。発射炎とともに撃ち出された多目的榴弾はグラ・バルカス軍の対戦車砲を粉砕する。

 

「命中、撃破」

 

 砲手は冷静に報告する。その顔には疲労の色が濃く浮かんでいた。彼は休みなく砲撃を行っているのだ。

それでもまだ、10式の砲口は休むことなく火を噴き続けていた。砲の照準を別の目標に合わせた時、砲塔側面に激しい火花が散る。別の対戦車砲からの攻撃だ。

 

「砲塔側面に被弾!被害軽微」

「オーバーライド射撃!」

 

 対戦車砲は僚車である別の10式が撃破した。

 

「このままではジリ貧ですね」

 

 砲手の言葉に小隊長が応じる。

 

「奴らの防御力が予想以上だが、それも後少しだ。奴らの指揮所を破壊したという連絡が入っている」

 

 確かに敵の防御陣に綻びが見え始めた。既に多くの陣地が突破されている

 

「各車へ、これより我々は突撃を敢行する。もうひと踏ん張りだ。各自戦闘に備えよ!」

 

 小隊長が命じると同時に全車両が前進を開始、敵防衛ラインに猛然と突き進もうとした時だった。

 

「え、後退命令!?」

 

 10式戦車が突如として動きを止める。同時に他の車両からも困惑の声が上がった。

 

『こちら中隊本部、全車へ。今すぐ撤退せよ』

 

 無線機越しに聞こえる声は明らかに動揺の色を帯びていた。

 

「何があったんです?」

 

 砲手が尋ねる

 

「北のムー軍が苦戦しているらしい。もしムーの戦線が崩壊したら突出してる俺達は半包囲にされる」

 

 小隊長は淡々と答えた。

 

「そんな……このままグラ・バルカスの防衛線を突破してしまえばいいのに。俺達ならやれますよ」

「無茶を言うな。この数を相手にするのは一度補給を受けてからの方がいいだろう。とにかく後退するぞ。小隊、前進中止。後退だ」

 

 小隊長は素早く判断を下すと、全車両を後退させた。

 

◆◆◆

 

 日本国山口県航空自衛隊防府北基地。ここには自衛隊が運用する人工衛星を運用する第2宇宙作戦隊がおかれている。

 

 その日、衛星運用オペレーターの1人がグラ・バルカス本土のラグナ上空を撮影した衛星写真に異常を発見し、上司である技術官に報告していた。

 

 その写真はラグナにある軍港を撮影したものだ。2日前に同じ場所を撮影した写真には大小様々な艦艇が停泊していた。しかし、今手元にある写真はいくつものグラ・バルカス帝国海軍の主力艦が姿をいくつを消し、閑散とした軍港であった。

 

「これは……」

 

 技術官は絶句した。グラ・バルカス帝国の艦隊が忽然と姿を消してしまったのだから無理もない。

 

「どういうことだ?何故、突然、艦隊が姿を消したんだ」

「考えられる事は1つです。出撃していったのでしょう」

「出撃しただと?どこへだ」

「おそらく、イルネティア島です。彼らは同島周辺の制海権を奪取すべく進撃を開始したと思われます

「なんて事だ、早くこのことを市ヶ谷に伝えなければ」

 

 技術官は慌てて受話器を取ると、市ヶ谷の統合幕僚監部へ連絡を入れた。

 

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