日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた   作: まっこーける

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14 イルネティア島西部沖海戦 その1

 

 払暁により東の空が白み始める頃。1隻の駆逐艦が波を切り裂き進んでいた。

 

 その艦の名はアーキロ。グラ・バルカス帝国海軍第6任務部隊の駆逐艦である。

 

 アーキロは第6任務部隊のピケット艦として、艦隊前方に展開しレーダーで周辺を警戒していた。

 アーキロは従来のグラ・バルカス駆逐艦と異なり、水雷兵装を重視せず対空と対潜に重点をおいた設計となっている。

砲熕兵器として 主砲の54口径127ミリ単装速射砲を3基。70口径76.2ミリ連装速射砲を2基、スタビライザー付きの25ミリ連装機関砲を2門備える。これらは射撃指揮装置の管制により従来よりも精密な射撃が可能となっていた。対潜兵装として新型のスキャニングソーナーを備え、対潜ロケットと324ミリ3連装短魚雷発射管を装備している。

転移前のユグドにおけるケイン神王国との戦争では海戦は航空戦が主体であり、雷撃戦の機会は少なかった。その戦訓を反映して水上艦用の魚雷発射管は装備していない。

 

 これらの兵装からわかるように、従来のグラ・バルカス海軍駆逐艦の設計思想から脱却した艦と言える。

 そんなグラ・バルカス駆逐艦、アーキロの電測員を務める水兵はレーダー画面に

映し出されたブリップを認めた為、戦闘指揮所へ報告を行った。

 

「レーダーに感!方位125、距離90海里」

「IFFに応答は?」

 

 当直士官が尋ねる。

 通常、敵味方識別装置は電波を発しており、それが返ってくることで相手が味方かそうでないかを判別することが出来る。

もし、これが返ってこなかった場合、相手は友軍ではないということだ。

 その問いかけに対し、電測員が緊張を含んだ声で答えた。

 

「ありません」

 

 その答えに戦闘指揮所内の緊張が高まる。

 

「艦長、不明機です。攻撃しますか?」

 

 当直士官の問いに、艦長は一瞬考える素振りを見せ、答えた。

彼の思考時間はコンマ数秒であった。

 

「不明機を探知したことをグレートヴォイドに報告。総員配置のまま待機せよ。本艦のみで対処可能であれば、これを撃破する」

 

 艦長の命令を受け、艦内の各所でアラームが鳴り響く。

艦橋の見張り要員は双眼鏡を手に持ち、対空監視を行う。

 

 一方、報告を受けたグレートヴォイドのローゼンメラーは、すぐに戦闘空中哨戒に就いているグラジアトルAへ迎撃の指示を出した。

 

「不明機は日本の索敵機で間違いないだろう。直ちに撃墜せよ」

 

 指示を受けて、グラジアトルAはエンジンノズルから青白い炎を噴き出すと増速、針路を転じ、不明機へと向かう。

 

「クレールス1、こちらアーキロ。これより貴機を誘導する。」

 

 駆逐艦アーキロからの通信に、クレールス1ことグラジアトルAを駆るパイロットであるハルトン少佐は了解と短く返した。

彼は愛機の操縦桿を握り直す。グラジアトルAは後退翼をもつ単発、複座のジェット戦闘機だ。

 

「エルク。レーダーに敵影を捉えたか?」

 

 ハルトンは後部座席に乗るレーダー士官であるエルク少佐に訊ねる。

 

「まだ見えない」

「早く見つけてくれよ」

 

 グラジアトルAは機首にレーダーを搭載した全天候戦闘機だ。

しかし、残念ながらレーダーの性能は高くない。好条件下で100km先の目標が捉えられれば良い方だ。

 

「クレールス1。進路このまま。高度25000フィートを維持せよ」

「アーキロ。君たちの誘導に従うよ。ところでレーダーは不調かい? それとも故障かな? まあ、どちらにせよ日本機の性能は大したことなさそうだね」

「……」

 

 ハルトンの軽口に対して、エルクは沈黙を貫いた。

 

「敵機発見!方位1-2-8、上11°距離55マイル」

 

 少しするとレーダーを注視していたエルクの声がコックピット内に響いた。

 

「見つけたぞ」

 

 ハルトンはそう言うとスロットルを開け、機体を加速させる。

レーダー画面上には1つの輝点が映っていた。エルクはレーダーを追尾モードにすると、レーダーアンテナをジョイスティックで操作し敵機を追尾しつつ、随時敵の位置情報をハルトンに伝える。

 

「進路そのまま」

「よし、敵は単機だ。まずは機銃で仕掛けるぞ」

「そうだな。敵はこちらに気付いていないみたいだ」

 

 ハルトンが駆るグラジアトルはヘッドオンの態勢で敵に迫る。

距離が縮まるにつれ、黒点がはっきりとしてくる。彼はレーダー画面に表示されるステアリングドットを照準環に合わせつつ、機銃の発射トリガーに指をかけた。

そして次の瞬間、彼はトリガーを絞った。

 

 グラジアトルの機首下に搭載されている30ミリ機関砲が火を噴く。

曳光弾が尾を引き、砲弾は吸い込まれるように目標へと向かっていった。

発射された弾丸のうち何発かは外れるが、その内の一発が命中する。

 

「やった!」

 

 後席の中でエルクが歓喜の声を上げた。

 

「いや、今のでは不確実だ。次はミサイルで仕留める」

 

 ハルトンは冷静な声で言った。

 グラジアトルが搭載する赤外線誘導ミサイルは正面からではロックオンできない。そのため、後ろに回り込む必要がある。

 

 ハルトンは日本機とすれ違うと反転、増速。一気に距離を詰め、再び敵へ迫った。敵機は長大なテーパー翼と後部にプロペラがついた変わった形状の飛行機だった。

ジーというミサイルのシーカートーンが響き、ロックオンしたことを伝える。

 

「発射!」

 

 ミサイルはロケットモーターにより加速。一直線に目標へ向かう。

機銃弾により傷つき、黒煙を曳きながらフラフラと飛ぶ敵機へミサイルは接近し激突。

 信管が作動し爆発エネルギーにより日本機はバラバラに砕け散った。

 

「やったぜ! 日本人め思い知ったか!」

 

 興奮した様子のエルクが叫ぶ。

 

「日本の飛行機も大した事ないな!」

 

 ハルトンも笑みを浮かべて答える。

彼らはグラ・バルカス人で初めて日本の航空機を撃墜した人物となったのだ。

 

 日本機撃墜の報はすぐにグレートヴォイドのローゼンメラーへ伝えられた。

彼は部下の報告を聞くと、すぐさま命令を下した。

 

「撃墜したからといって浮かれてはならん。奴らは我々よりも遥かに強力な兵器を持っているのだ。既にこちらの位置を通報された可能性は高い。敵機がやって来た方向へ索敵攻撃を行え」

 

 ローゼンメラーの命令を受け、艦隊の空母は発艦準備に入る。第6任務部隊の空母はアヴィオール1隻とペガスス級が5隻。合計6隻である。これらの空母から繰り出される航空機の数は100機を優に超えるだろう。

 

「発艦を急がせろ。いつ日本の攻撃が来てもおかしくないぞ」

 

ローゼンメラーの言葉を受け、幕僚たちは慌ただしく動き始めた。

 

◆◆◆

 

 同時刻 海上自衛隊いずもFICにて羽柴が報告を聞いていた。

 

「MQ-3が撃墜される前に送ってきた情報によりますと、不明艦隊はグラ・バルカス艦隊に間違いなしです。敵艦隊は空母6隻、戦艦1隻、その他駆逐艦や巡洋艦を含めて75隻の艦艇から成っている模様です」

 

「うむ、MQ-3が落とされたのは残念だが、敵の戦力構成が分かったのは大きいぞ」

 

 羽柴は満足気だ。

MQ-3は海上捜索用レーダーが搭載されている。しかし、レーダーは敵の探知は可能だが識別までは出来ない。そのため、近づいてEO/IRセンサーで確認する必要があった。

 イルネティア島西を大挙して進撃する艦隊なんてグラ・バルカス海軍艦隊しか無いのだが、高価な誘導兵器は数に限りがあるし、万が一間違っていた場合を考えて、自衛隊としては識別を確実にしておきたかったのだ。

 

「敵は75隻の大艦隊か……。グラ・バルカス帝国は相当本腰を入れて来たな」

「司令。敵は圧倒的多数です。F-35Bは発艦準備を完了しています。直ちに攻撃しましょう」

 

 作戦担当幕僚が言う。

皆の顔は自信に満ちている。先ほどまで敵が圧倒的な物量で攻めてくるかもしれないと不安に思っていたことなど忘れたかのように。

 

「よし、F-35Bを発進させろ」

 

こうして日本はグラ・バルカス帝国に対し第一波攻撃を開始したのだった。

 

◆◆◆

 

 2人の空自の飛行服を着た男がレディルーム(待機室)からいずもの通路を歩き、飛行甲板へ向かう。

 

「おい、中野。今日は退屈な対地支援任務じゃないんだ。もっと嬉しそうな顔をしろよ」

 

 飛行服の男の一人がもう一人の男に話しかける。

 彼の名は新庄。彼は航空自衛隊所属の戦闘機パイロットで、階級章を見る限り1等空尉のようだ。

 

「うるさいなぁ。お前はいつもヘラヘラしすぎなんだよ」

 

 中野と呼ばれた男は答えた。

 

 彼もまた新庄と同じく、航空自衛隊所属のパイロットだ。階級は同じく一等空尉。

 

「グラ・バルカスの奴ら、今度はバカでかい空母を引き連れてきたらしいぜ? 獲物はデカイぞ」

 

 新庄は楽しげな口調で言う。

 

「無人機が1機落とされている。油断はできないぞ?」

 

 中野は注意を促す。

 

「わかってる。2階級特進した無人機君の弔い合戦だ。俺達がやっつけてやろうぜ」

 

 新庄は笑いながら言った。やがて2人はいずもの飛行甲板へ辿り着くと、乗機であるF-35Bがすでに発艦態勢を整えていた。

 

 機体の周りには機付の整備員が数人おり、整備の最終チェックを行っている。

 

「あ、中野1尉。新庄1尉! ご苦労様です!」

 

 1人の若い整備員が声をかけ敬礼をする。中野と新庄も答礼する。

 

「機体の調子はどうだ?」

 

 新庄が尋ねた。

 

「バッチリです。全て問題ありません。」

 

 整備員が答える。

中野と新庄が乗るF-35Bには、JSM(対艦ミサイル)がウェポンベイ内に2発、機外に2発装備されている。

 さらに空対空装備として中距離ミサイルが2発と搭載されていた。

今回の出撃ではこれらに加えて、胴体下に指向性エネルギー兵器であるレーザー砲ポッドが1門追加されている。これはブロック6以降の機体で使用可能な兵器であり、さらに以前のバージョンとの違いウェポンベイが改修されておりA、C型と同じ兵器がウェポンベイ内に搭載可能だ。

 

 機外点検を終えた新庄と中野はヘルメットを抱えてコクピットへ入った。

キャノピーが閉じられ、外部の音が遮断される。

 

 中野はF-35Bのエンジンを始動すると、ゆっくりと飛行甲板を進み始めた。

リフトファンの回転数があがり、プラット&ホイットニーXA101エンジンが力強く鼓動を始める。

中野は乗機を発艦位置へ移動させると、無線スイッチを入れた。

 

「こちらゴウカ1。発艦許可を要請」

 

彼はプリフライに発艦の許可を求めた。

 

「ゴウカ1、了解。発艦を許可する。グッドラック、幸運を祈る」

 

 エアボスが応答する。

続いて黄色のベストを着た発艦誘導員が合図をする。

中野はスロットルレバーをミリタリー推力の位置へ動かし、エンジンの出力を一気に上げる。

F-35Bのエンジン音が高まると同時に中野もシートに押し付けられるような感覚を覚えた。

 

「ゴウカ1、エアボーン!」

 

 中野が駆るF-35Bはスキージャンプ台を蹴りふわりとした浮遊感と共に飛び上がった。

同時に中野は操縦桿を引き、機体は上昇させる。

さらに新庄の乗機も発艦し、合計10機の攻撃隊がいずもの飛行甲板から舞い上がる。

 これはいずもが動かせるF-35Bの全機であった。(12機中10機を投入。残り2機は整備中)これを全て攻撃に投入、つまり艦隊防空にF-35Bは回さないということだ。まさにいずもの全力攻撃(アルファストライク)だ。

 

 中野を筆頭とする攻撃隊は高度3千メートルまで上昇すると、編隊を組み、グラ・バルカス艦隊へ進撃を開始した。

 

◆◆◆

 

 グラ・バルカス艦隊、空母アヴィオール。

 その飛行甲板上では着々と発艦準備が進められていた。

発艦の順番を待つグラジアトルのエンジンは、既にアイドル状態だ。

 

「早く発艦させてくれよ。今すぐ日本のミサイルが飛んでくるかも知れねえんだぞ」

 

 列線の先頭にいるグラジアトルAの操縦席でハルトンがぼやく。彼の機は蒸気カタパルト上で待機していた。

 

「そう焦るなよ。もし事故を起こしたら大変だぞ」

 

 彼の後ろの席に座っているエルクがなだめるように言う。

 

「なに言ってんだ。こんな状況で落ち着いてられるか」

 

 その時だった。

 

「攻撃隊。全機、発艦せよ」

 

 無線からの命令が流れた。

 

「おっしゃあ!」

 

 ハルトンはスロットルを押し込み、蒸気カタパルトの力を借りて最大出力で加速する。

そして一瞬の浮遊感の後、彼の機体は空へと飛び出した。

 

「さあて、仕事の時間だ」

 

 彼は呟くと機体をロールさせて、南東方向へ機首を向けた。

 

 

 一方、同時刻。

中野はF-35Bのレーダーで多数の機影を捉えていた。

 

「ボギー多数確認。おそらく空母から発艦した敵機だ」

 

 中野は新庄へ報告した。

 

「空母6隻から発艦するとなると結構な数だぞ」

 

新庄の言葉通り、敵の数は増えつつある

 

「よし、敵機が発艦しきる前に叩く。ゴウカ1より各機へ、JSM攻撃用意」

 

 中野は正面の大型MFDをタッチしJSMを選択。彼はMFDを操作し各機へ目標の振り分けを行う。狙うは敵空母群と戦艦だ。さらにJSMへ目標データの諸元入力を行う。

 

「ゴウカ1発射準備よし」

「ゴウカ5、同じく準備完了!」

「ゴウカ7、いつでもいけます」

 

 各機からも通信が入る。

中野は兵装選択ボタンをFCSにより自動追尾モードへ変更する。

そしてウェポンリリースボタンを押下。

ウェポンベイが開き、JSMが勢いよく飛び出す。

 

 JSMは機体下部のウェポンベイから放たれると、そのまま母機を離れていきターボジェットエンジンに点火、飛翔していった。

続いて機外のJSMも順次射発射され、敵へ向かっていく。

いずものF-35B10機から4発ずつ、合計40発のJSMが放たれ、グラ・バルカス帝国艦隊へ向かっていった。

 

◆◆◆

 

 グラ・バルカス帝国海軍、駆逐艦アーキロ。

 

 その艦橋ウィングでは見張り員が双眼鏡を手に、艦隊の前方を見つめていた。何処までも続く青い水平線に空。しかしそんな風景に違和感が現れた。彼方の水平線上に無数の黒点が見える。それはどんどん大きくなっていく。

 

 見張り員はそれが何か気付いた。低空を飛ぶそれらを彼が見つけたのはまさに僥倖であった。

 

「こちら見張り!方位112よりミサイルらしき高速飛翔体!!こちらに向かってくる!」

 

 慌てて無線機のマイクを取ると、彼は叫んだ。

 

「何だと!?電測は何をやっていた!」

 

 艦長が怒鳴り返す。

 

「探知できませんでした!おそらく飛行高度が低すぎて探知できなかったかと思われます!!」

「クソッ、対空戦闘用意!全砲門開け!」

 

 艦長の指示を受け、主砲が旋回し仰角を上げる。さら機銃も照準を合わせていく。

 

 その間も接近してくる物体――JSMはアーキロへ低空からぐんぐん迫る。

 

「撃ちぃ方始めぇっ!!」

 

 砲雷長が叫ぶと同時に127ミリ砲が轟音と共に火を噴いた。だが発射された対空砲弾はJSMを捉えることはない。

 高速で飛行するJSMはあっと言う間に76.2ミリ砲と機銃の火網も突破、アーキロの船体を避け直上や近くを航過していく。

 

「まずい。空母へ向かうぞ! 打電しろ!」

 

艦長は叫ぶように命じた。

 

◆◆◆

 

 グラ・バルカス艦隊上空。ハルトンの機は艦隊上空を旋回待機していた。空母アヴィオールは既に索敵攻撃隊の7割が発艦を終えていた。

 

「ん?」

 

 ハルトンの目が艦体に向かう海面を這う様に進む多数の白い物体を捉える。彼は目を凝らす。その正体に気付いた時、彼は思わず声を上げた。

 

 彼の目に映ったのはJSMだった。

JSMの群れがグラ・バルカス帝国艦隊へ猛然と突き進んでいく。

 

「アヴィオール! 日本のミサイルだ!」

 

 ハルトンは叫ぶ。彼は必死で機体をバンクさせ、空母へ警告を送る。だが、JSMの速度は速い。

 既に空母群の手前まで来ており、このままでは命中するだろう。

 

「え、何処だ?」

 

 無線越しに動揺が伝わってくる。アーキロからの一報もあったのだが、まだアヴィオール側はミサイルを見つけられずにいた。

 

 そして次の瞬間、爆炎が上がった。

 

 空母アヴィオールには3発のJSMが命中。

2発は飛行甲板に命中し、発艦しつつあった艦載機を薙ぎ払った。残る一発は艦首付近に直撃した。

 

 だが、アヴィオールは500キロ爆弾に耐える装甲甲板を持っており、舷側も20センチ砲に耐える防御力を誇る。

125キロの弾頭を持つJSMでは少々威力不足だ。しかし艦はすぐには沈まないにしても、ダメージは大きく、アヴィオールは戦闘能力を喪失した。

 

 アヴィオールの被害はまだマシな方だった。

 

 同時にJSMの攻撃を受けた他のペガスス級空母は大損害を受けていた。発艦中だった為、飛行甲板には兵器を搭載した艦載機が並べられており、そこをJSMが襲ったのだ。

ある空母は大爆発を起こし。また別の空母は艦尾に直撃弾を受け、浸水により傾斜を始めている。その他のペガスス級空母も黒煙に包まれていた。

 

 グラ・バルカス帝国海軍は空母戦力を大幅に喪失する結果となっていた。

 

「なんてこった! 母艦がやられちまったぞ!」

 

 ハルトンの言葉通り、グラ・バルカス帝国の空母群は瞬く間に壊滅状態に陥った。

 

「どうする? ハルトン」

 

 後席のエルクが問う。

 

 空母がやられた以上、彼らに帰る母艦は無い。海面かイルネティア島へ不時着するしかないだろう。

 

「一か八かやってやろうぜ! 奴らの艦隊を沈めてやるんだ!」

 

 ハルトンは編隊無線で各機に呼びかける。

 

「こちらハルトン。みんな聞いてくれ! このままやられっぱなしじゃ気が済まねぇ!俺が攻撃隊指揮官になる。これから敵艦隊のど真ん中へ突っ込むぞ」

「おう!やってやるぞ!」

「いいぞ! ハルトン!」

「日本に一泡吹かせてやろう!」

 

 ハルトンの呼び掛けにパイロット達から応答があった。

 

「よし! その意気だ。まだ攻撃中止の命令は出てない。つまり敵を索敵し、攻撃しろという命令はまだ有効だ。皆行くぞ! 全速で敵艦隊を目指す!」

 

 ハルトンの機体が加速を始め、他の機もそれに続いた。JSMの攻撃までに発艦できた機数はアヴィオールからはグラジアトルA、B型が8機ずつ。他のペガスス級空母からはアンタレス改13機、パウーク攻撃機24機の53機になる。

 

 さらにパウークから改装された早期警戒機(AEW)1機が攻撃に参加する。これは海面スレスレを飛ぶJSMは探知できなかったが、350キロまでの水上目標を探知可能で、これによって日本艦隊の位置を捜索するつもりだ。

 

 ハルトン達の機体は全速力で日本の無人機がやって来た方角へ向かう。まさに捨て身の攻撃だ。

 

 一方旗艦である戦艦グレートヴォイドにも2発のJSMが命中していた。1発は1番砲塔基部命中し、もう1発は右舷高角砲を滅茶苦茶にした。幸いにもすぐに消火活動が行われ、装甲の厚いバイタルパート部への命中であったため、被害は限定的であった。

 

「被害とつきましては、右舷高角砲の半数近くが使用不能です。さらに1番主砲塔はターレットリングが破損してしまい旋回不能です。これにより艦の攻撃力は大きく低下しました」

 

 艦長がローゼンメラー提督へ報告する。

報告を聞く提督は司令官席にどっしりと座り、腕を組んで黙ってそれを聞いていた。

 

「航行に支障は?」

「ありません」

「ならば作戦は続行だ。もはやここまできたらこの攻撃隊が戦果を上げる事に賭けるしか無い。我々が勝つか、日本が勝つのか……」

 

 JSMの攻撃を受けたにも関わらず提督は冷静そのものだ。眉一つ動かさない。

 

(さすが提督。見事な胆力でいらっしゃる。まさに鋼の如き精神力だ……)

 

 艦長は感心した。しかしローゼンメラーの内心はそうではなかった。

 

(日本のミサイルこわい!ちょっと、おしっこ漏らしちゃった。もし大きい方まで漏らしたら、提督生活が終わってしまう)

 

 彼は内心では恐怖に震えていた。

 

 だが、彼はそんな感情を一切表に出さず、ただ淡々と状況を見つめている。それが彼の凄みだった。

 

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