日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた 作: まっこーける
グラ・バルカス帝国、帝都ラグナ。
皇帝執務室にはグラ・バルカス帝国の最高権力者たる帝王グラ・ルークスの姿があった。彼は執務机の前で、書類仕事を行っていた。
そこへ扉をノックする音が響く。許可を出すと、一人の男が入ってきた。
彼はサンド・パスタル。グラ・バルカス帝国軍本部長だ。
年齢は50代半ばほどだろうか、口ひげを蓄えた軍人然といった風貌の男だった。
しかし彼の顔色は悪く、目の下の隈が目につく。明らかに寝不足の様子であった。
「その様子だと、余の執務を中断させてまで報告したいことがあるようだな。一体何事だ? 申してみよ」
皇帝の言葉に、サンドは一礼すると報告を始める。
その内容は驚くべきものであった。
それは、イルネティア島へ出征したグラ・バルカス帝国海軍、第6任務部隊が壊滅的打撃を被り、這う這うの体で帰還してきたというのだ。
それを聞いた皇帝の顔色が変わる。
「馬鹿な……あの精鋭部隊が壊滅したとでも言うのか!? 一体何故だ! 詳しく説明せよ!」
「はっ! 我が軍のアヴィオールを含む空母が6隻、さらに戦艦グレートヴォイドが沈められました。
その後、制空権を奪われて一方的に攻撃され、航空機による爆撃によって艦隊に大きな被害が出ております。現在、生き残った艦艇は軽巡マンスフィールドを含めわずか10隻。とてもではありませんが、作戦行動が可能な状況にはありません」
「なんということだ……。主力艦を7隻も失うとは……」
皇帝は愕然とした表情を浮かべる。彼は第6任務部隊にかなりの期待を寄せていたのだ。そのため、その衝撃は大きかった。
だが、すぐに冷静さを取り戻す。
皇帝は動揺を隠し、平静を装って質問を続ける。
だが、声音は震えている
「してローゼンメラーはどうしたのだ? 生きておるのだろう? 話を聞きたいのだが」
その問いに、サンドは一瞬躊躇した後、答えた。
「ローゼンメラー提督は戦闘中に心神喪失状態に陥りましたが、現在は話せるまで回復しております。ですが……彼は今回の海戦で少々心が傷ついてしまったようでして、今は休養が必要だと思われます」
その言葉に、皇帝は苦虫を噛み潰したような顔をする。そして、絞り出すように言った。
「今すぐここに連れてくるのだ。無理なら余自ら、ローゼンメラーの所へ赴く」
グラ・ルークスの命令は絶対である。
サンドはローゼンメラーを呼んでくるため、部屋を出た。
◆◆◆
それから少しして、ローゼンメラーは皇帝の前に引き出された。
彼は未だショックから立ち直れていないようだった。
目は虚ろで、顔面は蒼白である。皇帝は彼の様子を見て開口一番叱責する。
「この痴れ者め! 貴様が指揮を執っていたのだろう。なぜ、こんなことになった!」
「あ、あ、申し訳ございません」
ローゼンメラーは消え入りそうな声で謝罪の言葉を口にするが、皇帝の怒りが収まることはない。
「余は謝ってほしいわけではない。どうしてこうなったのか、理由を述べよと言っているのだ。余に嘘偽りなく話すがいい」
「そ、その前に、一つだけ教えてください。私は一体何を間違ったのでしょうか?」
「質問を質問で返すな! このバカチンが!!」
皇帝は再び激昂し怒鳴るが、ローゼンメラーはそれに構わず続ける。
「私なりに最善を尽くしました。しかし、敵の新兵器は我々の想定を遥かに超えていたのです。あれでは、勝てるわけがありません。
私は……私たちは一体何と戦っていたのですか!? あれは本当に戦争なのですか!? まるで、一方的な狩りのようだった。我々は狩られる獲物でしかなかった! あんなのは戦いじゃない!! 戦いと呼べるものじゃなかったんだ!!!」
「ええい、黙らぬか! 言い訳など聞きとうないわ!このウンコお漏らし提督がっ!」
皇帝は怒りに任せて罵倒する。
「な、何故私がお漏らししたことを……」
その事実を指摘され、ローゼンメラーは狼籍する。
皇帝は彼に冷徹な視線を向けた。
「ふん。貴様が戦闘中に粗相したことは聞いている。その汚い尻の穴を綺麗に拭いて、しっかり反省するがよい」
「ぐぅう……。お、お願いします。もう許して下さい」
ローゼンメラーは屈辱と羞恥に耐えきれず泣き出してしまう。そしてストレスに耐えられずまたもや脱糞する。しかし彼はオムツを着用していたので、下着とズボンを汚すことはなかった。少しは学習したらしい。
「あああ!ローゼンメラー提督! 何ということを! 余の目の前で粗相をするとは……貴様には失望したぞ! 罰として貴様はこれよりウンコ提督に改名せよ! 艦隊司令も解任だ!」
「うぅ……わかりました。私はこれよりウンコ提督と名乗ります……」
ローゼンメラー提督改めウンコ提督は意気消沈し部屋を出て行く。
1人になった皇帝は一息つくと、誰にともなく呟く。
「もしレイフォルまで失う破目になると、我が国の損失は甚大なものになるな……。原子爆弾の使用も考えねばならぬかもしれん。ユグドでの惨禍を思うと使いたくないが……」
グラ・ルークスの脳裏には、ユグドで起こった悪夢のような光景が浮かぶ。
原子爆弾。
ケイン神王国が帝国と同時期に開発し、使用した悪魔の兵器。ケインは原子爆弾の事を神の拳と呼び、帝国の属国に対して先制使用した。
その威力は凄まじく、ユグドにおける帝国の属国のとある都市は一瞬にして灰塵に帰したのだ。
当然グラ・バルカス帝国も即座に原子爆弾を搭載したグティ・マウン爆撃機によって報復を行い、ケインの従属国の都市を焼き払った。
これ以上の報復を恐れてケイン神王国はそれ以上の核攻撃は行わなかったものの、ユグドは大戦勃発寸前まで緊張が高まったのであった。
「原子爆弾は最終手段だ。今はとにかく、イルネティア島とレイフォル防衛に集中しなければ」
皇帝はそう言うと、今後の戦略について思考を巡らせるのだった。
◆◆◆
アルーカ市、市庁舎。かつてここにはグラ・バルカス陸軍の司令部が置かれていたが、今は日本、ムー、ミリシアル軍の合同司令部が置かれている。統合作戦本部と名付けられたその建物には各国の武官が集まり、会議を行っていた。
議題は勿論、イフォス市攻略についてである。
各国の指揮官が集まり情報交換と意思の統一を図ることが目的だ。
まず、陸上自衛隊イルネティア派遣部隊指揮官である鈴木陸将が口を開く。
「イフォス市についてですが、我が隊のスカウトスナイパーが既に市内に侵入して情報収集を行っております。その結果から報告させていただきたいと思います」
プロジェクターに市街地の地図が映し出される。MQ-3無人機による航空偵察によって作成されたものだ。
その精緻な地図を見て、各国の武官から感嘆の声が上がる。
鈴木は説明を続けた。
「イフォス市は人口2万程度の街で島の中央部に位置することから、交通の要衝となっています。そのため、この街を東西に幹線道路が走りっており、現在グラ・バルカス軍により封鎖されています。さらにこちらもご覧ください」
鈴木の説明に合わせて、画面が切り替わる。
そこには、街の各所に立てられたバリケードが映っていた。
映像が拡大されると、その堅牢さが見て取れる。
「幹線道路上だけでなく、市内の各所にバリケードが構築されており、敵の苛烈な抵抗が予測されます。我が隊の戦力を以てしても容易でなないでしょう」
鈴木は言葉を切ると、一同を見渡した。
「さらに懸念事項として、敵は現地住民を徴発し、武装させていることが挙げられます。彼らの装備がどれほどのものかは分かりませんが、侮れるものではないと思われます。戦闘員、非戦闘員の区別がつかないため、民間人を巻き込む可能性もあり、慎重な対応が求められるでしょう」
そこまで説明すると、今度はムー陸軍のイルネティア派遣部隊指揮官であるエイント中将が発言する。
「何かこう、問題を一気に解決できる兵器はないのか? 日本の兵器は非常に先進的だと聞くが……」
「あなたは自衛隊をなんだと思っているんですか? 我々は魔法使いではありません」
鈴木はあきれ顔で言う。
「とにかく市街地戦は歩兵の数と根気が必要という事だな」
ミリシアル陸軍指揮官のトレースが言った。
鈴木はそれに首肯すると、話を続ける。
「ええ、その通りです。既に市街は包囲済みであり、攻撃の主軸は一番数の多いムーが担うことになるでしょう」
「任せてください! 我々が必ずや敵を蹴散らしてみせましょう!」
エイントが自信満々に答えた。その後会議は細々とした確認と作戦計画の作成に終始し、終了する。攻撃開始は明日0700時
しかし、この時はまだ誰も知る由もなかった。この後に起こる悲劇を……。
◆◆◆
イフォス市、ムー陸軍集結地点、午前6時55分。
いつもなら日が昇り、辺りを照らし始める時刻だ。しかし、この朝に限って言えば曇天のため薄暗かった。
ムー陸軍はイフォス攻略のために、2個師団を投入。それらの部隊は市街の北から西にかけて包囲していた。さらに南はミリシアル軍、東と南東は自衛隊が攻撃発起位置についており、作戦開始時間を待つばかりとなっている。
そんな状況の中、市街地郊外西では青い上衣に赤いズボン、という軍服姿のムー陸軍の兵士たちが慌ただしく動き回っていた。
彼らは銃に弾を装填し、装備の点検を行う。
ムー陸軍の兵士たちは、今回の作戦に非常に意欲的で、皆生き生きとしていた。
というのも、グラ・バルカス帝国に祖国を蹂躙された恨みを晴らすことができるからだ。
しかも、今回は今までとは比べ物にならないほどの大規模な市街地戦闘になる可能性が高い。
これは、ムーにとって歴史上初めての出来事となるだろう。
そんな中、一人の兵士が緊張した面持ちでライフルに弾を装填する。彼の名はハンダル。2等兵だ。
彼は今、小隊の他の兵士とともに、作戦開始を待っていた。
「おい、少し力を抜けよ。力んでもしょうがないぞ?」
隣にいた同僚であるドアムが言う。
「あ……ああ」
ドアムはハンダルの肩の力が抜けたのを確認すると、再び口を開いた。
「お前の気持ちも分かるけどさ、グラ・バルカス軍なんて雑魚だぜ? 日本に散々叩かれて虫の息だって話だ。だから気楽にやろうぜ。力んでいたら力を発揮できないからな」
「そ、そうだな……」
ハンダルは少し笑って見せる。
「よし、落ち着いたようだな。俺達は西側を担当することになった。もうすぐ時間だ、いつでも行けるようにしとかねえと」
「わ、分かった」
その時、ラッパの音が鳴り響く。
「さぁ! 攻撃開始だ!!」
ムー陸軍の兵士たちは一斉に雄叫びを上げた。そして、ムー陸軍はイフォス市内中心に向かって進撃を開始する。
部隊の先鋒を担うのは軽戦車デ・マン4輌だ。
デ・マン戦車が石造りの道路をゆっくり進む。その両脇を歩兵部隊が固める。
デ・マン戦車長はハッチから上半身を出し、機関銃を構え警戒する
しばらく進んだところで、戦車長の男が前方に人の集団を発見した。よくみるとそれはイフォスの住人達だった。
彼らには敵意は感じられない。どちらかと言えば歓迎ムードだ。
「ハーイ。ムーの兵隊さんたちー」
「この街を解放しに来てくれたんだね」
住民たちの声に、戦車長は笑顔で応える。
「もちろんです。あなた達の故郷を取り戻しに来たんですよ」
「ありがとう。これで安心して眠れるわ」
住民の感謝の言葉に、戦車長は誇らしい気分になった。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
ムーの部隊は続々と集まってきたイルネティア人に囲まれていた。
「おお! すごいな」
「まるでお祭りみたいだ」
部隊は盛大な歓迎を受ける。花輪を首に掛けてもらったり、お菓子を貰ったり、さらに美女から頬へのキスまで貰ってしまった。
「はっはっは! こりゃいいや」
戦車長をはじめ、兵士全員が上機嫌だ。
交流のなか1人のイルネティア人の女がデ・マン戦車によじ登り、戦車長の横に座ると話しかけてくる。
その女は美しいブロンドの髪の女性で、どこか妖艶な雰囲気を漂わせている。
年齢は20代前半といったところだろうか? 服装も露出が多く、胸元が大きく開いているため豊満なバストが強調されており、男なら思わず見てしまうほどだ。
つい戦車長は鼻の下を伸ばしてしまう。
そんな戦車長の様子に気づいたのか、その女性は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、その豊満な胸に手を当てて見せた。
これには流石の戦車長も凝視してしまう。
「こんにちは。ハンサムさん。これからグラ・バルカス軍をやっつけに行くの?頑張ってね」
「え、あ、はい! 頑張ります!」
「あら、元気なお返事ね。あなた名前は?」
「 自分はアレクシといいます」
「私はラミア。よろしくね」
ラミアはそう言うとアレクシの頬に軽く口づけをした。
次の瞬間、アレクシの顔が真っ赤になる。その隙を見せたのが彼の運の尽きだった。
ラミアは隠し持っていたグラ・バルカス製の小型リボルバーを取り出すと、そのまま引き金を引く。
乾いた銃声とともに、銃弾は発射され、アレクシの左目に命中した。眼窩から侵入した銃弾は彼の脳髄を無茶苦茶にする。
突然の出来事に周囲は騒然となる。
ラミアはニヤリと笑うとその拳銃を放り投げ、デ・マン戦車から飛び降りた。
直後、ムー兵を囲んで歓迎していた群衆の一部が不審な動きを見せる。あるイルネティア人は隠し持っていた火炎瓶をデ・マンに投げつけ、また別の者はサブマシンガンを取り出しムー兵へ向かって乱射し始めたのだ。
突然の事態に兵士たちは混乱し、次々と倒されていく。唐突に仲間を殺されたムー兵達は逆上し、周囲の群衆に向かって無差別に発砲する。
イルネティア人たちはパニックになり、辺りは怒号、銃声、悲鳴が響き渡り阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
「こいつら敵だ!!」
「どいつが武器を持っているんだ!?」
ハンダルとドアルはそう叫ぶとライフルを構え、逃げ惑う群衆を狙う。
だが、誰が狙うべき敵なのか分からず照準を定められない。その時、誰かが放った弾丸がドアルの頬を掠った。彼は驚き、思わず尻もちをつく。
「ちくしょう! やりやがったな」
ハンダルは怒りの形相で、逃げるイルネティア人を撃とうとする。彼は友人が攻撃されたことで冷静さを失っていた。
トリガーに指をかけ発砲する。バン!という音と共に銃弾は空中へと放たれ、その弾道上にいた1人の少年が倒れる。
槓桿を素早く動かし排莢と装填を済ませると再度発砲。
バン、バン、バン、バン。撃ち出された弾は数人のイルネティア人に命中し、鮮血が飛び散る。
「ハンダル、落ち着け。俺は生きてるよ」
ドアルが立ち上がり、ハンダルを落ち着かせようと、彼の肩を叩く。既にイルネティア人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去り、周囲に人影はない。
ムー部隊の周りには大勢の冷たくなったイルネティア人が倒れ伏していた。腹を撃たれ腸が飛び出している青年、頭を銃弾に砕かれ中身を石畳に零してる少女、自ら流した血の海に沈んでる老婆、まさに死屍累々だ。
ハンダルは自分たちがやったことに震え上がる。そして恐怖からその場にへたり込んだ。ドアルも呆然としている。
「後続の部隊に連絡。イルネティア人から攻撃を受けた。民間人でも警戒しろとな」
この部隊の中隊長が通信士に指示を出す。
先ほどの惨劇で、多くのムー兵が負傷しており、中には致命傷を負っている者もいる。
「ハンダルしっかりしろ。お前のせいじゃない。仕方がないことだ」
「ああ、分かってる。」
ドアルの言葉に、ハンダルはなんとか立ち上がる。
しかし、その表情には後悔の色がありありと浮かんでいた。
彼らはこれからのことを考えると気が重くなった。
◆◆◆
イフォス市南部。
イルネティア人のコーバスは建物の2階に潜み、ミリシアル陸軍が接近してくるのを待っていた。ミリシアル軍はこの南から北へ延びる通りを進撃してくるはずだ。
彼の手には遠隔起爆装置が握られている。
彼は元イルネティア陸軍中尉であり、陸軍はグラ・バルカス帝国との戦いの後、解体されてしまった。
イルネティア島がグラ・バルカス帝国に降った後は定職に就かずブラブラとしていたのだが、ある日、契機が訪れる。
それはグラ・バルカスのイルネティア統治機関であるイルネティア征統府が治安維持要員を現地人から募集したことである。ブラブラしていることに飽いたコーバスはこれに応募し、思想調査の後に合格すると晴れて治安要員になった。
それから彼はグラ・バルカス製の銃火器の取り扱い訓練を受け、さらに給料として大量の金を支給された。軍務経験のある彼はすぐに頭角を現し、イルネティア治安維持機関の幹部にまで抜擢された。以後彼はイルネティア島内の不満分子の摘発に邁進することになる。
しかし、ムー大陸にて異世界連合の反抗が始まると仕事内容は変化した。異世界連合軍の上陸に備え、イルネティア征統府が現地住民を徴発して軍事訓練を施し、現地住民による防衛隊を組織するというものだ。
彼はこの計画において橋渡し役を担い、現地人の訓練における教官役を担当しているのだ。
そして今、自分が訓練したイルネティア人と共にミリシアル軍を迎え撃つべく建物の2階窓から、通りの様子を窺う。
徐々に特徴的な魔導エンジンの音と、ドス、ドスという石畳を踏みしめる音が聞こえてきた。おそらくミリシアル陸軍のゴーレムだろう。
少しすると3体のゴーレムを引き連れた30人程のミリシアル部隊が見えてくる。コーバスは窓から伺いながら起爆のタイミングを計っていた。
(もう少し引きつけてからだな)
彼が起爆装置を押せば遠隔操作によって、道端の樽に入った爆薬が爆発し、ミリシアル軍を殺傷するだろう。一種のIED(即席爆弾)だ。
(今だ!)
コーバスはボタンを押す。次の瞬間、オレンジ色の閃光が煌めき爆発が起こった。
爆炎が轟音と共に立ち上り、爆風と破片が辺りに撒き散らされる。グラ・バルカスから提供されたTNTはイルネティア軍が使っていた黒色火薬とは比べものにならない威力でミリシアル軍を襲う。
さらに樽の中には釘などの金属片が混入されており、それらは超高速で飛散しミリシアル兵たちを殺傷した。これもグラ・バルカスの入れ知恵だった。
爆心地付近にいたゴーレムは一瞬で薙ぎ倒され、辺りは血の海と化す。
朦々と巻き上がる爆煙の中でミリシアル兵たちは混乱していた。そんな彼らに向かってコーバスは無慈悲にもサブマシンガンによる掃射を加える。
(この銃はいいな! )
彼は元イルネティア陸軍だ。当然銃器を取り扱ったことはあるが、イルネティア軍に配備されているのは旧式のパーカッション式小銃であった。
しかし彼の持っているグラ・バルカス製のサブマシンガン――MP3はイルネティアの銃器よりも軽く高性能だ。
コーバスはMP3サブマシンガンから9ミリ弾を、次々とミリシアル兵へ浴びせていく。
(こんなすげぇ銃を作れる奴らに俺達が負けるのは当然だな……)
コーバスはそう思いながら、ミリシアル兵の掃討を続ける。彼のみならず樽IEDの起爆を合図にコーバスの仲間のイルネティア人、数十人もサブマシンガンを撃ち始めた。路地裏からあるいは建物の窓から、無数の弾丸が撃ち出される。
この攻撃により、ミリシアル兵パニックに陥る。彼らも負けじと反撃するが、統制を欠いた射撃では、イルネティア人たちを捉えることが出来ない。
「後退! 後退しろ!」
コーバス達の攻撃にミリシアル兵は堪らずに後退を始める。
それを好機と捉えたコーバス達は逃げるミリシアル兵の背中へ容赦なく銃弾を浴びせる。
後に残されたのは破壊されたゴーレムの残骸と、血を流し倒れ伏した死体だけだった。
コーバス達は物陰から姿を現すと、逃げ去るミリシアル兵を見送りつつ勝利の雄叫びを上げる。そしてミリシアル兵が残した戦利品を漁り始める。
目当ては武器、弾薬だ。彼らはグラ・バルカス軍から武器を支給されているが、十分とはいえない。
今後の市街地戦に備えるために敵から使えそうな装備を奪い、戦力の増強を図る必要があるのだ。
「うぅぅ……」
コーバスが死体を漁っている最中、ふいにうめき声が聞こえた。
彼は驚き振り返ると、そこにはゴーレムの下敷きになった若いエルフの男がいた。どうやら彼は運悪く、爆風で吹き飛ばされたゴーレムの下敷になってしまったらしい。
「た、助けて……」
エルフの兵士は苦痛に顔を歪めながらも必死にコーバスに懇願する。
コーバスは彼を感慨なく見下ろすと、無言のままMP3の銃口を彼の頭部へ向け、躊躇することなく引き金を引いた。
タタタ! 銃口から発射された9ミリ弾が、兵士の頭を粉々に打ち砕く。
「何が世界一の国だ。糞が」
コーバスは吐き捨てるように呟き、死体へ唾を吐いた。
やがて彼らは戦利品を纏め上げると、その場を離れていった。