日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた 作: まっこーける
暁光が差し込む頃、水陸機動団は王城中庭へ集合していた。
既に捕虜としたグラ・バルカスの兵士や征統府の面々は移送を終えており、残すは彼ら、水機団の撤収を残すのみである。
水機団の任務は征統府の要人たちの無力化だ。ランパール城の占拠ではない。その任務は別の部隊が行う。
それに彼らは今回の任務では速攻性を重視したため、武装は軽装備だ。
彼らの装備には血痕が多く付着しており、激戦の後であることが伺えた。1人の死傷者も出していない事の方が奇跡的なほどの戦いだったのだ。
水機団はヘリに乗り込むと、離陸しランパール城から離れていく。
やがて、キルクルス市街地上空に差し掛かると西の空に異変が生じた。
雲一つない青空を朝日が照らし出すなか、突如として一つの黒点が発生したのだ。それは瞬く間に拡大し、1匹の白い竜を形作る。そして、その口から白熱する光線が発せられ木村たちが乗るブラックホークのテイルローターを吹き飛ばす。竜は攻撃の後、彼方へ飛び去っていく。
「ヒバリ61被弾!」
パイロットの声と同時に機体が大きく揺れ、激しい振動が襲う。テイルローターを失った機体はコントロールを失い、回転状態で落下を始めた。
警告音が鳴り響く操縦席でパイロットとコパイは必死になって機体を制御しようとするが、もはやその努力は実を結ばなかった。
ブラックホークはキルクルスの街へと墜落していく。木村たちは振り落とされまいと機体にしがみつくしかなかった。
やがて、機体はキルクルスの街中の広場へと墜落した。衝撃により隊員達は放り出され、全員が地面に叩きつけられる。
幸いにも、エグゾスケルトンを装着していたので水機団隊員に死人はでなかった。しかし、機体の方はもう使い物にならないだろう。
「ブラックホーク墜落。繰り返すブラックホーク墜落!」
上空のヘリ部隊が広場へ墜落し、朦々と土煙をあげるヒバリ61の姿を確認し報告を行った。しかし、そんな彼らにも再び脅威が迫る。
「また来たぞ! あれは竜か!?」
随伴のOAH-2のパイロットが叫ぶ。その言葉通り、先程と同じ白い竜が再び姿を現した。
その姿は神話に登場するドラゴンそのもので、圧倒的な存在感を放っていた。
「やれせるか!」
パイロットの叫びと共に機体をドラゴンへ向けて正対させる。竜と攻撃ヘリがまるで西部劇の決闘シーンのように向かい合う。
◆◆◆
「やったねライカ。1機墜としたよ」
空中を飛行しながら、白竜――イルクスが嬉しそうに呟いた。その背中に乗るライカは誇らしげに笑う。
「次はどれを墜とせばいい?」
イルクスの言葉にライカは思案すると、ある方向を見つめる。
「さっきと同じ型の乗り物。あれを墜としましょう!」
ライカが指差すのは陸自のブラックホークヘリであった。
「わかった。いくよ」
イルクスの言葉にライカはしっかりと掴まる。次の瞬間、イルクスは加速して目標へ向かって飛翔した。あっという間に距離を詰め、標的としたブラックホークヘリへ狙い定めるとイルクスは口を大きく開ける。
その口腔内に光が集まりはじめる。しかしあと少しで光線を発射できるといった瞬間、1機の攻撃ヘリOAH-2がイルクスの前に立ち塞がる。
攻撃ヘリはイルクスの進路を妨害するように機銃掃射を行う。
しかし、イルクスとライカは慌てる事無く魔法障壁を展開し、それを盾にして攻撃を耐え抜く。気勢を削がれたイルクスは一度上昇し、距離を取る。
「あの細い奴邪魔だよ!」
イルクスが忌々し気に言う。
「おそらく護衛の機ね。それを先に墜とすわ。その後、他の機体を始末しましょう」
イルクスの言葉を受け、ライカは冷静な口調で言う。
イルクスは小さく首肯すると、OAH-2の撃墜を試みる。今度はより一層強力な魔力を収束させ、OAH-2に向けて放つつもりだ。一方、OAH-2の方も黙って攻撃を受けるような間抜けではない。
OAH-2はイルクスが攻撃を放つ前に自衛用の空対空ミサイルを発射する。1発のミサイルは真っ直ぐにイルクスへと向かう。
イルクスは慌てて攻撃を中断し魔法障壁を展開させてミサイルを防ぐ。
さらにその隙にもう1機のOAH-2がイルクスの後方へ回り込み、ミサイルで攻撃する。
それも咄嗟に展開した魔法障壁で防ぐが、背後から攻撃を受けたイルクスは体勢を崩してしまう。そこへ、OAH-2の30ミリ機関砲弾が襲いかかった。
イルクスは身を捻り直撃を避ける。
「ちょこざいなぁ!」
怒りの声を上げながらイルクスは反撃する。口から放たれた光線がOAH-2を掠め、バランスを崩したヘリは空中でふらつく。その隙にイルクスは旋回を行い、OAH-2へ止めの再度攻撃を仕掛けようとする。
その時、上空から中野と新庄が駆る2機のF-35Bが突如として現れ、イルクスに向かってレーザーガンポッドによる攻撃を開始したのだ。
突然の事にイルクスは回避が遅れ、白く美しい鱗を何枚か撃ち抜かれ、痛々しい火傷を負う。それでも致命傷には至らず、すぐさま態勢を立て直すと、翼を振るい、上空にいるF-35Bに攻撃を加えようと試みる。
だがF-35Bはイルクスの機制を制するため、互いに連携しながらレーザーを浴びせ、彼の攻撃を許さない。
「このままじゃ不利ね。いったん距離を取るわよ」
F-35B、2機からの執拗な攻撃を受ける状況をライカは不利と判断し、イルクスへ離脱を図るよう指示する。しかし、それはF-35Bを駆る中野と新庄の思う壺であった。
「新庄! 奴が逃げるぞ」
「いいぞ、そのままミサイルの回避不能ゾーンに収める」
中野と新庄はヘリボーン部隊からライカとイルクスが離れるのを待ち続けていたのだ。今までイルクス達とヘリの距離が近かった為、誤射を恐れてミサイルの使用を避けていたのである。そして、今まさに好機が訪れたのである。
彼らは兵装選択ボタンで中距離ミサイルを選択。イルクスをロックオンし、必中必殺のタイミングでミサイルを発射した。
「ゴウカ1。フォックス1」
「ゴウカ2。フォックス1」
放たれたミサイルは超音速でイルクスへ向かう。
「何か来る!」
「魔法障壁で防御!」
イルクスとライカは自身に迫る危機を直観にて感じ取り、即座に魔法障壁を展開する。
―――しかし、その判断は間違いだった。彼らは超音速で飛来する中距離ミサイルの威力を過小評価していたのである。
魔法障壁を展開した直後、2発のミサイルが起爆する。爆風と破片が吹き荒れ、彼らを襲う。
魔法障壁でも中和しきれないその衝撃によりイルクスとライカは激しく揺さぶられ、イルクスは苦痛の悲鳴を上げる。ヘリとの戦闘で消耗しつつあった彼らの魔力ではその攻撃を凌ぎきることは出来なかったのだ。
破片によって傷ついたイルクスは体中から血を流しながら地上――キルクルス市街地へ墜落していく。
ライカはイルクスの魔法障壁のお陰で軽傷で済んだが、このまま地上へ激突すれば、無事で済むはずがない。イルクスは力を振り絞り魔力で風の魔法を発動させる。すると、ライカの体が風のクッションに包まれる。これにより少しでも墜落の衝撃を和らげようという狙いだ。
やがてイルクス達は市街の大通りに墜落し、大きな音と土煙を上げてながら道路を滑っていく。
「ゴウカ1。スプラッシュ1」
その様子を上空のF-35Bのコクピット内で見ていた中野が淡々とした口調で言った。
◆◆◆
焦げ臭い匂い。
それが木村が意識を覚醒させた時に最初に感じ取ったものだ。
ハッと瞼を開くと、そこは無茶苦茶なったUH-60のキャビン内であった。彼は自身の置かれた状況を把握すると、慎重に体を動かしてみる。痛みは感じるものの骨に異常はないようだ。
どうやら助かったらしいと安堵のため息をつく。次に彼は同じヘリに乗っていた仲間の安否を確認するため周囲を見渡す。ヘリには木村を含めて10人の水機団隊員が乗っていたはずだ。すると、すぐ近くで同じように横になっている隊員を見つけた。
彼の名は青木という。階級は一等陸曹だ。
青木は上半身を起こすと、こちらに気づき手を上げた。
それを見た木村はほっとした表情を浮かべると、自身も手を軽く上げ返す。
「みんな無事か……?」
木村は不安そうな声で尋ねる。
すると、他の隊員からも無事を告げる声が上がる。墜落の衝撃の大部分をエグゾスケルトンが吸収してくれたおかげで重症を負った者は居ない。ただ、全員が疲労困ぱいといった様子だ。
木村は改めてヘリの惨状を見る。ローターは完全に破壊され、エンジンも大破している。おそらく二度と飛べないだろう。
「パイロット。生きてるか?おい、返事しろ」
木村は操縦席へ呼びかける。反応があった。
「こっちは生きてる。だが足が折れちまったみたいで動けない。コパイは気絶したまんまだ」
ヘリのパイロットが言う。
その言葉を聞き、木村は状況の整理を始める。
現在、自分達がいる場所はおそらくキルクルス市の中央にある公園。周辺に広がる街並みからは黒煙が立ち昇っているのが見える。
負傷者を抱えた状態で敵中を突破するのは難しいだろう。
「青木。本部に救助要請を」
青木は無線のスイッチを入れ、救援を求める。
その時、外から激しい銃声が聞こえてきた。ヘリの外板に銃弾が当たる音が断続的に響く。
木村は咄嵯に小銃を手に取ると、外の様子を窺う。そこにはグラ・バルカス兵の集団の姿があった。人数はざっと見たところ30人ほど。彼らは自動小銃や軽機関銃を構えており、その銃口は真っ直ぐにヘリに向けられている。
キルクルス防衛部隊の司令部要員は、ランパール城強襲の際に全員戦死か身柄を確保されていた。だがグラ・バルカス側はそれを見越して事前に指揮下の防衛部隊に死守命令を出していたのである。
「隊長。敵に包囲されています」
ヘリの周囲すでにグラ・バルカス兵に包囲されており、その手に握られた火器から絶え間なく弾丸を放っていた。
木村は慌ててキャビン内に引っ込むと、身を隠す。
「木村隊長。本部と連絡が取れました。救援部隊が来ます」
青木の報告に木村はうなずく。
「木村隊長! 敵は増える一方です」
敵へ向けて応射している別の隊員が叫ぶ。見ると、いつの間にか敵の数は100人近くまで増えていた。
「救助部隊が来る。それまで持ち堪えろ!」
木村はそう指示を出すと、再び外に顔を出し20式を敵に向けて激しく撃ち始めた。
◆◆◆
キルクルス市街地入り口。
10式戦車が4輌、軽装甲機動車6輌そして26式装輪装甲車が2輌。それらと随伴の普通科隊員とミリシアルゴーレム部隊からなる混成部隊は、キルクルス市内への突入を試みるべく、市内入り口へ集結していた。
陸自の指揮官の名は波田1尉。本来の任務はラクス排除後にランパール城へ進撃しその支配を確固たるものにする事だったが、任務は市内に墜落し孤立した水機団の救出へ変更された。
ミリシアルのゴーレム部隊が同行するのは、隊長であるマルコリー大尉が毎年イルネティアで開催される飛竜レースの観戦が趣味でよくキルクルスに訪れていたからである。その為、土地勘がない自衛隊の先導役として適任だったのだ。
「全車前進!」
「ゴーレム、前へ!」
各々の隊長の号令により、各車両やゴーレムは市内へと突入していく。
部隊は大通りを進み、墜落現場へと向かう。この大通りを行くのが一番墜落現場に近い。
キルクルス市内の道路は至る所でグラ・バルカス軍が築いたバリケードが構築されており、それらを排除しながら進む必要があった。そのため、どうしても進軍速度は落ちる。
木村3尉率いる水機団の一隊は市内に孤立し今も攻撃を受けている最中なのだ。急いでを救出しなければ。陸自の精鋭達の顔には緊張の色がありありと浮かぶ。
「前方に敵影確認。小隊規模。機関銃装備です。発砲してきます」
前方から敵兵がバリケードを盾に、機関銃で先頭を行く10式に射撃を加えてきていた。
10式の前面に激しい火花が散る。すぐさま砲塔を敵歩兵へ指向し多目的榴弾を撃ち放つ。
爆発と共に数名の兵士がバリケードごと吹き飛ばされた。
しかし、残敵からの銃撃は止む気配がない。
「俺達に任せろ」
10式が敵の銃火を引き付けている隙に、今度はマルコリー率いるゴーレム隊が前に出る。銃火をゴーレムの左腕に装着されたミスリル製の盾で防ぎながら接近し、バリケードの残骸を乗り越え、その右腕に装着された魔導機関銃を発砲する。
至近から猛烈な掃射を受け、バリケードに隠れる敵兵はバタバタと倒れていく。
こうしてキルクルス市街における戦闘が始まった。
「くっ。早く広場へ辿り着かないと」
焦燥感に満ちた表情で、波田が呟く。
今この瞬間にも水機団は敵に包囲され激しい銃火に晒されているのだ。一刻も早く駆けつけねば。
◆◆◆
キルクルス市中央公園。
公園内では、水機団とグラ・バルカス兵の激しい銃撃戦が繰り広げられていた。
敵の攻撃に対し、こちらはヘリの外に分散し遮蔽物に身を隠すことで、なんとかやり過ごしている。また、ヘリのパイロットも負傷しながらも、必死にMP7短機関銃で応戦していた。
そんな中、青木が敵が大柄な筒状の物体を持っていることに気付く。
その形状は見覚えがあった。グラ・バルカス軍が装備する携帯式ロケット砲、ブル2だ。
その事実に気づいた時、青木の背筋に冷たいものが走る。
「RPG!」
青木は思わず知っている、似ている地球の兵器の名を叫んでしまう。
青木は咄嵯に地面に伏せる。次の瞬間、ロケット弾が青木の頭上を通り過ぎ、後方の樹木に命中して爆発した。
轟音とともに木の破片が飛び散り、爆風によって青木は地面を転がる。
彼は全身に激痛を感じつつも、伏せながら周囲の状況を確認する。敵はロケット砲とその弾薬を持てるだけ持ってきたようだった。
ロケット弾が白煙を曳きながら飛び交い、あちこちで爆発が起こる。その度に、水機団の隊員達が苦痛の声を上げる。
そして、敵はロケット砲以外にも軽機関銃を持ち込んでいた。
それらはヘリの周囲に展開している水機団の隊員達に激しい弾幕を浴びせかける。
水機団の隊員達は20式小銃やミニミでの反撃を試みるが、ランパール城での戦闘の後で消耗した後なので、グラ・バルカス軍の圧倒的な火力差の前に苦戦を余儀なくされていた。
そしてついに、水機団の一人が戦死してしまう。
彼はロケット弾の至近弾を受けて上半身と下半身が泣き別れになった状態になってしまう。
その光景を目の当たりにし、木村は部下を殺された怒りで歯噛みする。しかしナノマシンのよる感情調整によりすぐさま頭は冷静さを取り戻す。
敵のロケット砲による制圧射撃により、水機団は劣勢に立たされていた。このままでは全滅は免れない。
「隊長! このままでは!!」
木村の部下である隊員が叫ぶ。
「分かっている! 救援が来るまで耐えるしかない!」
木村は怒鳴るように返答する。その時、レシプロエンジン特有の重低音が上空から聞こえてきた。
木村は空を見上げる。そこには単発の複葉機、2機の姿があった。
「あれは! ムーのマリン!?」
その機体らが低空飛行でキルクルス市内に突入してくる。
木村の無線機から共用回線を通じて声が響く。
『こちらムー空軍。貴隊の援護に来た! どこを攻撃すればいい?』
その言葉を聞いた瞬間、木村の目に希望の光が宿った。このマリンはムーが占拠したイルネティア島内のグラ・バルカス軍飛行場から飛来したものだ。
「こちら陸上自衛隊、木村三尉。ヘリの残骸周囲30メートル以内は攻撃しないでくれ。それ以外の動く者は敵だ。」
『了解。攻撃を行う!』
2機のマリンのうち1機が機銃掃射を開始する。7.92ミリ弾を浴びてグラ・バルカス兵が次々と薙ぎ倒されていく。
また、もう1機は対気球用ロケットを搭載しており、それを発射すると、敵兵の密集地帯で爆発が起きる。その爆炎に巻き込まれて多くの敵兵が吹き飛ばされた。
一方的な殺戮と言ってもいいような凄惨な戦い方であった。
しかし、敵も黙ってはいない。マリンに敵の機関銃が集中する。
だがマリンは複葉機特有とも言える小回りの良さを生かし、その攻撃を掻い潜ると、敵に対して再び機銃掃射を加える。
しかし、いつまでもマリンは飛んではいられない。燃料の問題である。
「すまん。そろそろ燃料が切れる。撤退する」
無線越しにマリン搭乗員の言葉が聞こえる。
そして、最後の一撃とばかりに機銃弾をありったけ地上へ撃ち込むと、2機のマリンはキルクルス市から撤退していった。
「支援感謝する」
木村はそう言うと、上空の2機を敬礼して見送った。マリンの支援によって敵の気勢を削ぐことが出来た。これでなんとか救援部隊が来るまでの時間を稼ぐことが出来ただろう。
◆◆◆
キルクルス市大通り路上。
「前方に敵兵散兵!」
先行する陸自の普通科隊員が警告の叫びをあげる。
敵兵は道路の左右に散開し、小銃を構えている。
その数およそ20名ほど。すぐさ軽装甲機動車のルーフトップに付いているM2重機関銃の照準を敵に向ける。
轟音と共に吐き出された12.7ミリ弾が左に展開していた敵の一団を文字通り粉砕する。
「右の敵兵は任せろ」
その言葉とほぼ同時に、ミリシアルのゴーレム隊のマルコリーが魔導機関銃を乱射しながら敵へと突進していく。
彼の銃口の先にいた敵は瞬く間に焦げ付いた肉塊となり果てる。
さらに彼は、ゴーレム用のミスリルサーベルを引き抜くとそのまま敵集団の中に飛び込んでいく。
マルコリーの部下たちもそれに続き、その様子はまるで獲物に飛びかかる猛獣のようだった。
彼らサーベルを振り回し、次々と敵を切り裂いていく。
「マルコリー大尉。墜落現場の広場まで後どのくらいですか?」
指揮車とした26式から顔を出した波田が尋ねる。
「あともう少し。直線距離で300メートル程です」
マルコリーは前方を指差した。
(ということはまだもう少し時間がかかるな)
波田は内心苦々しく思う。
その時無線から先行する普通科隊員の声が聞こえてきた。
「こちらヤマイヌ3。前方にドラゴンを発見」
その報告を聞いて、波田は双眼鏡を覗き込んだ。確かにそこには白いドラゴンが道路上に横たわっていた。
純白であった鱗は土埃で汚れていたが、それでもなおその美しさは失われていなかった。
そしてその身体には、裂傷が無数にあり、そこから止めどなく鮮血が流れ出していた。
「おそらくそいつはヘリボーン部隊を襲った奴だ。まだ戦意があるかもしれない。警戒しつつ慎重に近づけ」
波田が指示を出すと、すぐに陸自の随伴小隊が動き出した。
彼らは恐る恐るといった感じで、ドラゴンに近づく。すると、そのドラコン――イルクスは目を開け、彼らを睨みつける。その瞳は怒りと憎しみで満ちていた。
次の瞬間、その巨大な顎門を開き、純白の光線を放った。
光線は彼らの頭上を通過し、後方の建物に着弾する。
建物の表面が溶解し、煙を上げる。
その威力を目の当たりにした隊員たちは息を呑んだ。
イルクスは続けて第2撃目を放つ。しかしそれは外れ、廃棄されたグラ・バルカス軍のジープに命中する。
まだ燃料が残っていたのか、ジープは炎上し、辺りにガソリンの匂いが立ち込める。
「ドラゴンが攻撃してきました!」
陸自隊員の悲鳴に近い報告を聞いた波田は、慌てて射撃命令を下す。攻撃してくる以上、敵だ。そう判断したのだ。
建物の陰から20式が一斉に火を噴き。5.56ミリNATO弾がイルクスを襲う。
しかしイルクスは魔法障壁を展開させ、弾丸を防ぐ。陸自側の射撃の合間を縫い、再び口から光条を放ち反撃を行う。
それは陸自隊員が遮蔽物としているレンガ造りの建物の表面に焼痕を残した。もしイルクスが万全の状態なら建物ごと陸自の部隊は吹き飛ばされていたことだろう。
20式小銃のみならずM2機関銃からも銃弾を浴びても、イルクスの魔法障壁は破れない。
「くそっ! なんなんだこいつは」
隊員の1人が思わず悪態をつく。
さらに10式戦車が砲撃を加えようと砲塔をイルクスへ指向する。10式とイルクスは同時に照準をお互いに合わせ、そして攻撃を行った。
10式が放った多目的榴弾はイルクスが展開させた魔法障壁の前に爆散する。一方、イルクスが放ったブレスは10式の砲身に命中し使用不能にさせた。
「もうやめてイルクス!お願いだから……私を置いて逃げて……」
イルクスに抱えられたライカが涙ながらに訴えかける。
しかし、彼女はイルクスが足の折れた自分を見捨て、逃げるような事はしないと分かっていた。
ライカの願いも空しく、イルクスと自衛隊の攻防は続く。
「このままでは……」
波田は焦りを覚え始めていた。
いくら攻撃しても効かない相手にどう対処すればいいか分からない、というのもあるが今もグラ・バルカス軍の攻撃に晒されている墜落した水機団の安否が気がかりであった。
「時間が惜しいのはこちらも同じだ……私が囮になって注意を引く。その間にあなた達はドラゴンを攻撃してくれ」
マルコリー大尉の言葉に波田は耳を疑った。
「何を言っているんです!? あのドラゴンの攻撃の威力を見たでしょう!」
「大丈夫だ。奴の魔力もおそらく無尽蔵ではない。それに今までの攻撃でだいぶ疲弊している。我々が装備するミスリルシールドはある程度魔力を吸収できる。多少の被弾は覚悟の上だ。君らは私の後ろから援護してくれれば勝機はある」
そう言ってマルコリーは自身が跨乗するゴーレムの左腕に装着されている、ミスリル製の盾を叩いた。
マルコリーの部下たちも隊長の決意を感じ取ったのか、黙って彼の言葉に従うようだ。
「しかし」
「心配はいらない。もう時間がない。さあ、行こうか!」
マルコリーの言うとおり時間が無いことも事実だった。
「分かりました。くれぐれもご無理はなさらぬように」
「うむ!」
マルコリーと彼の部下はゴーレムの脚を動かし、イルクスへと接近する。
そして、イルクスに向けて射撃を開始した。
当然イルクスはマルコリー達の存在に気付き、そちらに視線を向ける。
「マルコリー大尉! 敵がこちらを向きました」
「うむ」
マルコリーはゴーレムの右腕に装着された魔導機関銃をイルクスに向け連射する。14.5ミリ弾がイルクスへと殺到するが、その全てが魔法障 壁によって防がれてしまう。続いてイルクスが反撃の光線を放つ。
咄嗟に構えたミスリルシールドによって幸いにも直撃は免れたが、その熱量でシールド表面が赤くなる。もしイルクスが万全ならそれは溶解していただろう。
それでもなお、マルコリー達ゴーレム隊は怯まず射撃を続ける。自然とイルクスの注意が彼らに集中していく。
波田はその様子を眺めつつ、損傷していない別の10式へイルクスの攻撃命令を下した。
その指示を受けた10式は、多目的榴弾をイルクスの横っ腹に叩き込む。
ゴーレムへの対処で精一杯なイルクスは魔法障壁を展開するのが遅れ、ライカを庇う形でその攻撃をまともに喰らってしまう。
イルクスが苦悶の声を上げ、動きが鈍くなった。
そこへ更に攻撃が加えられる。
陸自隊員たちは建物の陰に隠れながら、20式小銃による射撃でイルクスの身体を傷付けていった。イルクスはギュッと体を丸め、ライカを庇う。
「今だ! 撃て!」
波田の命令を受け、陸自隊員のみならずマルコリー達も一斉に畳みかける。
イルクスの鱗は剥げ落ち、肉が露出し、鮮血が飛び散っていく。
「やれえぇ!!」
波田の号令と共に、10式が止めの砲撃を行う。
砲弾はイルクスの胴体に命中し、そのまま体内へめり込み炸裂。イルクスは断末魔の悲鳴を上げると、力なく地面に横倒しになった。
「やったぞ!」
「やりましたね!マルコリー大尉!」
歓喜の声が隊員たちから上がる。
しかし、波田は油断することなく、倒れ伏したイルクスを注視していた。
やがて、イルクスの巨体が光の粒子となって消え去る。後に残ったのは倒れ伏した少女――ライカのみだ
「あれは……?」
波田はライカの方を見て怪しげに目を細める。
「波田中隊長。彼女は一体?」
波田の視線の先のライカに気付いた隊員が恐る恐る、彼女に
近づき生死を確認する。
「……もう息がありません」
その言葉を聞いた波田は、深いため息をつく。そこへマルコリーがやってきた。
「おそらく彼女はあのドラゴンの御者だったのだろう。」
「彼女を守る為にあのドラゴンはここを動かなかったのか。」
「そういう事だ」
マルコリーの言葉に中隊の面々は納得した。
ドラゴンが守っていた少女は、すでにこの世にいない。
「彼女の亡骸を丁重に葬ってあげたいが、我々は救出任務の途中だ。ここで足を
止められない」
「そうですね。残念ですが、今は彼女を弔っている暇はなさそうだ。1尉、我々が先導します。付いてきてください」
「ああ、引き続き頼むよ」
波田は僅かの間ライカの亡骸へ黙祷を捧げると、前進の指示を出す。
国を守る為に散った1匹と1人に敬意を払いつつ、彼らは再び走り出した。
◆◆◆
キルクルス市中央公園ブラックホーク墜落現場。そこから少し離れた路上にて。
バルカス帝国キルクルス防衛部隊所属のシェイファー軽戦車が1両、トロトロと進んでいた。
「車長やっと公園に着きますね」
「ああ! 故障で出遅れたが、やっと憎き日本に1発ぶち込めるぜ!」
操縦手の言葉に、車長はニヤリと笑みを浮かべた。彼らの乗るシェイファー軽戦車は、未だ奮戦を続ける水機団が立て籠もる公園へと向けて突き進む。
「悪魔の日本人どもを、俺達の戦車砲の餌食にしてやるんだ! いくぜ!」
「ウッス!! 行きます!」
車内では興奮気味の車長と操縦手が声高に叫ぶ。エンジン全開で公園内へと突っ込んでいった。
「オラオラオラァ!どうしたぁ!? 日本人!かかってこいやあ!!」
主砲である37ミリ砲を発砲しながら、シェイファーは公園の敷地内へと侵入する。生憎、車体側の機銃は機銃手不在のため発砲はできなかった。
突如として現れたグラ・バルカス軍の軽戦車に木村たちは驚愕し、慌てて迎撃態勢を取った。
「なんだあいつは!」
「まだ動く戦車があったのか!?」
木村たちはランパール城強襲というスピード重視という任務の特性から、今回は対戦車火器などの重装備を持ってきていなかった。
彼らが持っている武器は、小銃(20式)とミニミ、あとは手榴弾のみ。
対する敵は、37ミリ砲。いくらグラ・バルカス軍の軽戦車が貧弱でも軽歩兵との火力差は歴然であった。
「全員後退! 距離を取れ!!」
木村はそう叫びながら、自らも後退していく。
それを見たシェイファーも慌てて彼の後を追った。
「逃がすか!」
シェイファーは砲塔を旋回させ、逃げる木村へ照準を合わせる。だが、その時。
突然公園の向こう側から120ミリ多目的榴弾が飛来し、シェイファーの正面に直撃。爆発炎上を起こした。
「10式だ!助かったぞ!!」
水機団隊員たちは歓声を上げる。救援部隊が到着したのだ。10式戦車のみならず普通科隊員やミリシアルのゴーレムが公園内へ突入し、水機団を援護する。
その隙を突き、木村と青木は負傷者を連れて後退した。
そして入れ替わるようにやって来た、救助部隊隊がグラ・バルカス軍を蹴散らしていく。
波田は部下たちに指示を出し、負傷した兵士たちの収容を命じた。
「よし! 負傷者を収容しろ!」
負傷者は26式装輪装甲車へ次々と収容されていく。その様子を見ながら木村は波田に声をかけた。
「水陸機動団、第1水陸機動連隊の木村3尉です。救援感謝します」
「波田1尉だ。こちらこそ遅くなってすまない」
互いに敬礼を交わす。
「さぁ長居は無用だ。敵がまた集まってくるかもしれない。すぐにここを離れよう」
ヘリの残骸にテルミット焼夷弾を仕掛けた後、波田たちはその場を離れた。
その後グラ・バルカス軍のキルクルス防衛部隊は司令部を失ったにもかかわらず、頑強に抗戦を続けた。
しかし、最終的には日本、ムー ミリシアルによりキルクルスは制圧され、ランパール城のグラ・バルカス旗も降ろされたのだった。
中央歴1943年6月25日。連合軍はイルネティア王国解放を完遂したのである。