日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた 作: まっこーける
神聖ミリシアル帝国、バネタ地区、兵器実験場。盛夏の熱気も夜明け前のこの時間だけは鳴りを潜める。バネタ地区の砂漠地帯は昼夜の温度差が激しく、早朝は特に冷える。そんな寒々しい荒涼たる風景の中にポツンと高さ20メートルほどの鉄塔が立っていた。
鉄塔の頂上には大きな爆弾のような物体が設置されている。全長約3メートル。重量4.5トン以上の大きさを持つそれは黄色い弾殻を纏っていた。コードネーム、パンプキンと名付けられたそれは何十本ものコードで接続されている。
「ついにこの時が来た」
白衣を着た男は興奮気味に言った。彼の名はオガサ・スダト。神聖ミリシアル帝国のコア魔法研究の第一人者であり、天才的な頭脳を持った魔導博士である。
オガサはミリシアルのコア魔法再現プロジェクト、マンハッテン計画の主任研究員であった。彼は長年の研究の末、ついに古の魔法帝国――ラヴァーナル帝国が実用化した、超高威力の広範囲殲滅用兵器の再現に成功したのである。
マンハッテン計画はミリシアルの国家プロジェクトである。この日のためミリシアルは膨大な資金を投入し、国中から優秀な研究者を集め、何年もかけて準備を行ってきた。その集大成が今ここに結実しようとしていた。
その時、背後に人の気配を感じ振り返る。そこには見慣れた顔があった。
彼はその人物に向かって恭しく一礼する。
神聖ミリシアル帝国皇帝、ミリシアル8世。世界最強国家のトップがそこにいた。
「オガサ博士、いよいよだな」
皇帝の言葉にオガサは深く頭を下げる。彼は恐縮した様子であった。その言葉からは長年の苦労を労う気持ちが現れていた。皇帝もまた、長い年月をかけてこの計画を進めてきた1人であったからだ。彼はこの10年間、ミリシアルの政財界において多大な影響力を行使し続けてきた。彼が居なければここまで来ることは出来なかったであろう。
オガサはその事に感謝し、今までの日々を思い出しながら言った。そして、満面の笑みを浮かべると、誇らしげに言った。
「はい、陛下。これでようやく、我が国は古の魔法帝国に追いつくことができます」
「うむ、貴殿の尽力、誠に大義であった」
「ありがとうございます。これも全て陛下の御心のおかげです」
オガサは再び深々と頭を下げた。そして、顔を上げると真剣な表情で言った。
それはこれから行われることの重要性を十分に理解しているからこそ出る言葉だった。彼は続ける。
「この実験が成功すれば、我々は新たなる力を手に入れることができます。それはミリシアルにとって必要不可欠なものになるでしょう」
その声は自信に溢れており、確信に満ちたものだった。皇帝はオガサの言葉を聞き、静かに微笑んだ。オガサは緊張した面持ちで起爆装置に手をかける。
「これよりカウントダウンを始めます。よろしいですか?」
皇帝は小さく首肯すると、一歩下がった。それを確認してから、オガサはスイッチを押し込んだ。起爆は60秒後となっている。
鉄塔上部に取り付けられた筒型の物体、その中にある反応物質が徐々に光を放ち始める。それと同時に鉄塔下部に取り付けられている機械が起動した。
オガサは固唾を飲んでその様子を見守っている。
ミリシアルがこれより起爆実験を行おうとしているコア魔法爆弾は、臨界量の反応物質を分割して砲身状構造の両端に置き、爆発魔法の力で衝突させ核爆発を起こすという仕組みになっている。
その威力はTNT換算で15キロトンに及ぶ、と予測されている。それは半径5キロメートル以内の全ての生物を消滅させるほどの威力を持つことを意味していた。
実験の結果がどうなるか、それは誰にもわからない。しかし、オガサはこの瞬間、確かな手応えを感じていた。
彼は自分の立てた理論が間違っていなかったことを再認識していたのだ。
カウントが30秒を切ると彼らは対閃光用ゴーグルを装着した。オガサたちはは緊張した面持ちで起爆までの時間を待っている。
そして、ついにその時が訪れた。
夜明け前の薄闇の中を切り裂くように、眩い光が放たれた。闇夜を一瞬にして昼へと変える強烈な光の奔流。その中心では巨大な火球が形成されつつあった。
強烈な衝撃波と爆風が荒野を駆け抜けていく。砂塵を巻き上げ、地面を大きく揺らした。
衝撃波は20キロ離れた場所で見守るオガサ達の元にも到達する。
凄まじい轟音と共に突風が吹き荒れ、周囲の灌木が大きく揺れた。
ミリシアル8世は風圧により吹き飛ばされそうになり、オガサは咄嵯に腕を交差させて顔を庇った。
数秒間続いたその現象が収まると、そこには直径約50メートルものクレーターが出来上がり鉄塔は跡形もなく消滅していた。
その中心部には大きなキノコ雲が立ち上がり、空を焦がしている。オガサは食い入るようにその光景を見つめていた。彼の瞳には強い興奮の色が浮かんでいる。
「我は世界の破壊者なり!」
オガサは思わず叫んだ。
それは彼が長年研究してきた魔法帝国の台詞でもあった。
彼は自分が開発したコア魔法の力を試す機会を待ちわびていた。そして今、遂にその願いが叶ったのだ。その興奮を抑えきれるはずもなかった。
「陛下! ご覧ください!! コア魔法の起爆実験は成功です!!」
オガサは皇帝に向かって叫ぶ。彼は自らの成果を誇るかのように、胸を張っていた。その視線の先にあるのは、今なお天高く立ち上る赤黒いキノコ雲である。
その威容はまるで天空に座す神のようであった。
「これが我々の力だ。まさに神の力! ミリシアルの究極の目標である『ラヴァーナル帝国』の再来なのだ!!」
オガサは高らかに宣言する。
皇帝は天頂が崩れつつあるキノコ雲を呆然と見つめながら呟いた。
「これが、かのラヴァーナル帝国の力……」
ミリシアル8世は古に栄えた魔法帝国の力の一端を目の当たりにし、畏怖の念を抱いていた。
彼はこの日、自らが築き上げてきたものがいかにちっぽけなものであったかを痛感した。そして同時に、魔法帝国ラヴァーナルの力が如何に絶大なものであるかも理解できた。ラヴァーナルは今しがた爆発した物の数百倍の威力をもつコア魔法兵器を有していたというのだから。彼らの前では児戯に等しいのだろう。
「素晴らしい……なんと美しいのだろう……」
オガサはうっとりとした表情を浮かべ、夢見るような口調で言う。
「いつか我々は魔法帝国に並ぶことができるだろう。いや、超えることができるかもしれない」
オガサは満足げな笑みを浮かべると、皇帝の方を振り向く。そして、深々と頭を下げた。
「陛下のお力添えのおかげでございます」
オガサの言葉に、ミリシアル皇帝は首を横に振って答える。
「いや、これは貴殿の功績だ。貴殿の研究なくしてこの実験は実現できなかったであろう」
皇帝の言葉にオガサは謙遜した様子で言った。
「とんでもありません。私はただ陛下の御心に従い行動したまででございます。全ては陛下の御心のままに」
オガサは再び皇帝に対して恭しく礼をする。
皇帝は小さく微笑むと、傍らに控えるメテオス・ローグライダーを振り返った。彼は魔帝対策省古代兵器戦術運用対策部運用課の大魔導士であり、空中戦艦パルキマイラ2号機の艦長でもある。
「メテオス、これで実験は成功したと言えよう。起爆は確実だ。あとはパルキマイラにコア魔法爆弾を搭載し、実戦配備を行うのみだ」
ミリシアル8世の言葉に、オガサは驚いたように顔を上げる。
皇帝は続ける。
その声色はいつに無く真剣なものになっていた。彼はメテオスに対し、改めて確認するかのような口調で語りかけた。
「コア魔法爆弾を搭載したパルキマイラでグラ・バルカス帝国の首都を焼き払うのだ。そして奴らに我が国の力を見せつけてやるのだ。あの忌まわしき異界からの侵略者どもに我らの技術が劣るものではないことを証明せねばならぬ。この世界の覇者は我々であると知らしめなければならぬ!」
メテオスはミリシアル8世の言葉を聞き、拳を握り締めた。
「お任せください。必ずや奴らの息の根を止めてご覧に入れます。我がパルキマイラをもってすれば容易いことでしょう。この世界にミリシアル以上の技術国家は存在しないということを奴らに見せつけてやりましょうぞ!!」
オガサは目の前で交わされている会話を唖然として聞いていた。
(何がどうなっているんだ? 一体どういうことだ?)
オガサは混乱していた。彼が知る限り、パルキマイラは対魔帝の切り札となるはずだった。
それがまさか今現在の戦争相手を滅ぼすための武器として使われるとは……。
しかしオガサには皇帝を止めることは出来なかった。彼の地位では直接意見を言うことすら許されない。皇帝の命令は絶対だった。
「さあ、オガサよ。実験は成功に終わったのだ。次は大型爆弾ジビルへの適合テストを行わねばならない。そのための準備を頼む。まずは実験結果をまとめ、レポートにして提出してくれ」
「はっ! かしこまりました!」
オガサはそう返事すると、踵を返してその場を離れた。
「グラ・バルカス帝国……貴様らの命運もここまでだ。覚悟しておくがよい!!」
ミリシアル8世は怒りに燃える目で、大分崩れたキノコ雲を見つめていた。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国。カルカリア市軍港。ここではベルディエンチェ社保有の造船所にて建造された最新鋭潜水艦の進水式が行われていた。
式典会場となったドック内は大勢の見物客で埋め尽くされている。巨大な黒鉄の塊が鎮座するその光景は、見るものにとって圧巻であった。
全長90メートルを超える涙滴型の船体は、まるで鋼鉄の鯨が横たわっているかのようだ。
この日、グラ・バルカス帝国は新たな潜水艦を進水させようとしていた。既存の潜水艦を過去の物する性能を持つと言われる新型潜水艦のお披露目である。
関係者たちは皆、固唾を飲んでその時が来るのを待っていた。
やがて、軍楽隊が奏でる厳かなファンファーレと共に、進水式の主役が登場する。
ゆっくりと姿を現したのは、真っ白な軍服に身を付けた皇帝グラ・ルークスその人であった。それを認めると海軍将校たちは一斉に敬礼を行った。
皇帝は白い手袋をつけたまま、答礼を行う。そして軍帽を脱ぐと観衆に向かって手を振った。割れんばかりの拍手が沸き起こる。
「皇帝陛下万歳!! 皇帝陛下万歳!!」
「帝国万歳!! グラ・バルカス帝国万歳!!」
熱狂的な歓声が鳴り響く中、グラ・ルークスは熱狂が冷めやらぬうちにとばかりに、手にしたマイクに語りかける。
「諸君、余はこの日を待ち望んでいた」
グラ・ルークスの声が響き渡る。彼は興奮気味に続けた。
「我が国が世界に誇る軍事力。そして、それを支える科学技術力。今こそ世界に向けて見せつける時が来たのだ。かつて列強諸国と呼ばれた国は、我が帝国の前に屈服し、植民地へと成り下がった。今なお抵抗を続ける国もあるにはあるが、それも時間の問題であろう」
グラ・ルークスの言葉に、観衆からは同意と称賛の声が上がる。
「我々は遂に恐れるものは何もない領域に達したのだ。
我が国より優れた科学技術を誇る日本や、魔法なる未知の力を駆使するミリシアル。そして広大な領地と資源を有するムーなど、強大な力を持つ国は存在する。だが、それも恐るるに足らず。今、この時をもって、我が帝国は世界の覇権を握ることになるであろう!」
「うおおぉー!!!!」
皇帝の言葉に呼応して、観衆のボルテージはさらに上がっていく。
「敵は侮りがたい強者どもである。容易く勝てる相手ではないことは重々承知している。しかし、この兵器があれば決して負けることは無いだろう。我が帝国の技術力の結晶が諸君らの目の前にあるのだから!」
グラ・ルークスが右手を高々と掲げると、再び大きな歓声が上がった。
「空想科学小説『海底114514海里』は御存知だろうか? 余の好きな小説の1つだ。この物語の中に夢の様な、無限に潜航できる潜水艦が登場する。
しかしそれはフィクションだ。実在するものではない。……だがもはやそれは過去の話だ。空想の産物ではない! 我が国の技術力はついに、空想上の潜水艦すらも凌駕してしまったのだ!」
グラ・ルークスの言葉に、観衆からどよめきが起こる。
「余は この最新鋭潜水艦の名を『海底114514海里』から拝借し、名付けたいと思う。その名は――」
観衆は固唾を飲み込みながら次の言葉を待った。
グラ・ルークスは一呼吸置くと、大きく息を吸い込んだ。そして、声を張り上げる。
「――『ノーティラス』!!」
「うおぉおぉお!!!」
爆発的な大歓声が轟いた。観衆の中には涙を流している者までいる。
「この潜水艦は、帝国初の原子力推進艦となる! 今までの潜水艦はしょせん可潜艦でしかなかった。しかし、このノーティラスは違う。これぞ真の潜水艦なのだ!この海の覇者となるべき存在なのだ!!」
「「帝国! 帝国! 帝国!!」」
グラ・ルークスを称えるコールがドック内に木霊した。
「余は、永遠の繁栄をもたらすことをここに約束しよう! 帝国万歳! グラ・バルカス帝国よ永遠なれ!!」
勇壮な音楽が鳴り響く中、グラ・ルークスはノーティラスのセイルへ飛び乗った。そして、彼はグラ・太鼓を力強く打ち鳴らす。
その音に合わせるように、ノーティラスの巨体が船台を滑り始めた。観衆の誰もが興奮を隠しきれないでいた。
「はぁっ!」
滑るノーティラスの上でグラ・ルークスは太鼓を打ち鳴らし続ける。
やがて、その勢いは最高潮に達し、ノーティラスは海へとその身を投じていった。
観衆が見守る中で、鋼鉄の鯨は盛大な水しぶきをまき散らしながら進水した。
観客の誰も彼もが熱狂に包まれていた。
グラ・ルークスはそれに満足げに微笑むと、ゆっくりとノーティラスのセイルの上に立ち、両手を広げた。そして、彼は天に向かって絶叫する。
「これより、グラ・バルカス帝国海軍は、新たなる歴史の第一歩を踏み出すのだ!!」
こうして、グラ・バルカス帝国初の原子力潜水艦が産声を上げたのだった。