日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた   作: まっこーける

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25 特殊部隊と特殊部隊

 ヒノマワリ王国、ハルナガ京 スラム街。あばら家が立ち並び、道端にゴミが散乱し、腐臭を放つ場所。

そんな場所に似つかわしくない品格ある佇まいの人物が3人、道を急いでいた。全員フード付きの外套を目深に被り顔を隠している。

皆、体型から女性だということは分かる。彼女の内2人は腰に剣を帯びており、周囲へ油断なく警戒しながら歩く姿からは只者ではない雰囲気が漂っていた。

明らかにその2人は残りの1人の護衛なのだろう。彼女を守るようにぴったりと張り付いていた。

 

3人の女性はとある廃屋の前で立ち止まる。

そこはかつて飲食店だった建物で、今は完全に打ち捨てられており、屋根の瓦も所々抜け落ちていた。

護衛の内、1人が籠手に覆われた手でドアをノックする。すると中から返事があった。

 

「合言葉は?」

 

男の声だ。女性の内の1人である護衛が答える。

 

「餓えた獣は獲物を決して逃さない」

 

しばしの間の後、扉が開かれ、中へ通される。

室内は薄暗く、窓は全て板で塞がれていた。テーブルの上にロウソクが置かれ、それが唯一の光源となっている。

 

部屋の中ではマルチカム迷彩姿の男たちが思い思いに過ごしていた。窓板の隙間から外へと警戒の目線を送る者。椅子に寄り掛かり

仮眠をとる者。銃器を分解清掃する者など様々だ。

3人の女性が入室すると、リーダーと思われる男が立ち上がり、口を開いた。

 

「尾けられてはいないか?」

 

男――特殊作戦群隊員の小林は女たちに問う。

 

「大丈夫だ。そんなヘマはしない」

 

答えたのは護衛の女性だ。彼女はフードを外して顔を露わにする。黒髪を後ろで束ねた、美しい女性だった。年齢は20代前半といったところだろうか。

彼女の名はコウ。日輪級剣士であり、フレイヤ王女の護衛隊長を務める人物だ。もう一人の護衛の女性も同じくフードを外す。彼女は黒髪をボブカットにした人物で名前はマルという。

 

「なら良い。……で、その後ろの方が王女様か?」

 

小林はコウの後ろにいる女性へと目をやった。

彼女は声をかけられるとフードを外す。長い黒髪に、雪のように白い肌。整った顔立ちの美女だ。

 

「はい、私がフレイヤです」

 

フレイヤは緊張した面持ちながらもはっきりとした口調で自己紹介をした。

 

「俺が日本国陸上自衛隊特殊作戦群の小林です」

 

互いに簡単んに挨拶を済ませると、早速本題に入る。

「さて、まずはこの地点にあるグラ・バルカス軍の食料倉庫の警備状況を教えてください」

「はい。この地図を見てもらえれば分かりますが、敵はこことここに人員を配置しています。しかし先日の暴動で警備が厳重になったらしく、こちらの動きが敵に気付かれる可能性が高いでしょう」

 

フレイヤは地図を指し示しながら説明する。その表情は真剣そのものだ。彼女の情報源は、元ヒノマワリ王国軍人たちであり、彼らはグラ・バルカス帝国の支配下にあるヒノマワリ王国の現状を憂いていた。ヒノマワリが帝国に降った後、彼ら元軍人は抵抗組織を結成し、レジスタンス活動の一環として情報収集を行っていたのだ。彼ら抵抗組織を密かに支援しているのが、フレイヤ王女だった。

 しかし彼ら、抵抗組織の規模は大きくない。そのため、彼らの活動は遅々として進んでいなかった。そんな中、ある日突然現れたのが、小林たち日本の特殊作戦群であった。小林たちはヒノマワリ潜入後、現地の協力者を得て情報を収集しつつ行動していたのだが、その過程で偶然にも元軍人による地下組織と出会ったのである。そして地下組織を通じてフレイヤ王女とコンタクトを取ることに成功したのである。

 

「なるほど……。敵も馬鹿じゃないということですか……」

「はい。敵もかなり警戒しています。我々も慎重に動かなければなりません」

「ふむ。そうなると正面突破は難しいですね……」

 

 小林は腕を組んで考え込む。

 

「はい。敵の食糧庫を破壊するには何とかして警戒網をくぐり抜ける必要があります」

「となると、やはり陽動作戦しかないか……」

「陽動ですか?」

「ええ。あなた方、抵抗組織が敵の注意を引き付けている間に、俺達が食糧庫を襲撃するのです」

「な、なんですって!? そんな危険な作戦を行うつもりなのですか? 敵はかなりの兵力ですよ! そんなことをしたらすぐに全滅してしまいます!」

「確かにそうかもしれませんね。でも大丈夫ですよ。我々は少数精鋭ですからね。それに、いざとなったら逃げることくらいできますよ」

「し、しかし……」

 

 小林の言葉に、フレイヤは困惑の表情を浮かべる。

 

「ヒノマワリ解放。そのために危険を冒さなければならないのであれば、やる価値はあると思いますけど?」

「…………」

 

フレイヤはしばらく沈黙した後、意を決したように言葉を紡ぐ。

 

「わかりました。やりましょう」

「ありがとうございます。では、その方向で計画を進めましょう」

 

 特殊作戦群の面々とフレイヤは計画の細部を詰めていった。

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 ハルナガ京内。グラ・バルカス軍の食糧庫。夜の帳が降りてから数時間が経過していたが、それにも関わらずこの倉庫の警戒は厳重であった。

 それもそのはず、数日前、この倉庫にて食糧を求めるヒノマワリ人による暴動が起きているからだ。

 グラ・バルカス軍はすぐさま対応し、この食糧庫の警備を厳重にした。近づく者は射殺も辞さない、物々しい雰囲気だ。

 

 ヒノマワリに駐屯するグラ・バルカス軍部隊向けへの補給部隊が文字通り全滅してしまってからは、この倉庫に備蓄されている食料は、グラ・バルカス帝国軍にとって貴重なものとなっていたのだ。緊急で追加の補給部隊が編制されているが、到着するまでの間は、この食糧庫は最重要防衛対象となっている。

 

 殺気立つ歩哨たちをやや離れた位置から観察する者がいた。

 マルチカム迷彩のBDUに身を包んだ男。その正体は自衛隊特殊作戦群隊員の小林である。彼はサーマル双眼鏡を片手に、倉庫の様子を伺っていた。

 

「……警戒はそこそこ厳重、か」

 

 小林は呟くように言うと、手にしていた双眼鏡を下ろした。ここより離れた場所ではヒノマワリの抵抗組織が陽動のため騒動を起こしており、この倉庫から鎮圧の応援に一部兵員が向かったことは確認している。

しかしそれでもこの倉庫周辺にはそれなりの兵力が警戒していた。小林の周囲には3人の特戦群隊員が控えており、皆、緊張の面持ちで待機している。彼らはヒノマワリにおけるグラ・バルカス軍の食糧備蓄を破壊すべく様子を伺っていた。

 

「小林どう攻める?」

 

 そう言ったのは、西山だ。

 

「そうだな……」

 

 小林は再び双眼鏡を目に当てると、しばらく考え込むような仕草を見せた。数秒後、彼は口を開く。

 

「スニーキングミッションだ。まずは俺と西山で侵入を試みる。他の者はここでバックアップだ」

 

「了解」

「多田野はUAVを展開させろ。空からの監視を怠るな。大坊は万が一の時の火力支援だ」

「了解」

 

 彼らは即座に行動を開始した。多田野は手の平サイズのUAVを1機展開すると、上空へ飛ばしていく。これは小型だが1回の充電で数時間は飛行でき、音も静かという利点があった。

 

 一方の小林と西山は、真っ黒いフード付き外套を身に纏うと、内側のスイッチに触れる。すると2人の姿は闇夜に溶け込むようにしてかき消えた。

この外套は光学迷彩装置だったのだ。制式名『特殊偵察用量子光学屈曲式戦闘外衣』、通称ステルスクロークと呼ばれる代物であるが、隊員間の間ではもっぱら

天狗の隠れ蓑や単に透明マントと呼ばれていた。

 

 この装置は防衛装備庁、先進技術装備研究所によって開発されたものだ。

原理としては可視光線に干渉し、光波を歪曲させ周囲の景色と同色化するものだが、詳しい仕組みについては機密事項のため開示されていない。

 

 その効果は絶大であり、これを装備するだけで、ほとんど敵に見つかることなく接近することができる。また、着用者の身体をすっぽりと覆うため、潜入任務では特に重宝するものであった。そのため日本を含む地球の先進諸国が保有しており、他国に対する諜報活動や特殊部隊による浸透作戦などに用いられている。

 

 欠点として、バッテリー駆動であるため連続使用時間が1時間程度しかない点が挙げられるが、それは仕方のないことだ。

小林と西山の両名は、そのステルス機能によって、誰にも気付かれること無く倉庫へと近づいていく。

ステルスクロークで姿を消した2人はまるで闇に蠢く影のように倉庫の側面へと回り込んだ。

 

「左40メートル、敵歩哨2、そちらに向かってくる」

 

 小林のヘッドセッド型無線機に多田野の声が聞こえてくる。多田野はUAVを操作して、周辺を監視しているのだ。小林と西野は地面に伏せ身を潜めた。

少しすると多田野の警告通り、グラ・バルカス兵の二人組の歩哨が歩いてきた。彼らは倉庫周辺のフェンスに沿って歩きながら、時折L字型ライトで周囲を警戒するような素振りを見せる。

 

 小林はハンドサインで西野にやり過ごすように伝える。2人は地面に伏せたまま息を潜める。やがてグラ・バルカス兵が2人が潜む場の近くを通り過ぎた。小林はステルスクロークのフードの隙間から4眼式複合暗視装置を覗かせ、グラ・バルカス兵の様子を確認する。

 緑色一色に彩られた視界の中に、赤く縁どられた歩哨らの姿が鮮明に映し出されていた。自動小銃を手に持ちライトで周囲を警戒しているものの、ステルスクロークで姿を隠した2人に気づく様子はない。

そのままグラ・バルカス兵は立ち去り、辺りは静寂に包まれた。

 

 小林はゆっくりと立ち上がると、周囲を警戒しつつ、再び倉庫のフェンスへと近づく。そしてワイヤーカッターで手際よくフェンスの金網を切断していった。

彼はフェンスを切り終え、敷地内へ侵入すると、周囲を警戒しつつ西野を呼んだ。

敷地内はいくつかの小規模な倉庫が並んでおり、敷地内の歩哨は外周よりは少ないようだ。

 

 敵歩哨の位置は多田野が上空からUAVを通して常時監視し、小林たちに伝えているため発見されることなく移動することができた。足音を殺しなながら進むと、目的の倉庫が見えてきた。倉庫は壁一面に赤錆びたトタン板が張られている。周囲には歩哨が2名巡回しており、入り口は鉄製の扉で固く閉ざされていた。

小林たちはその手前まで来ると、物陰に隠れ、周囲に警戒しつつ状況を確認した。

 

「どうする?」

「まず歩哨を始末する」

「わかった」

 

 小林はステルスクロークで姿を消しつつ物音を立てずに移動すると、素早く歩哨の背後に回る。

そして、腰に差したホルスターからコンバットナイフを引き抜くと、その首筋を斬りつけた。

頸動脈を切断された歩哨の男は、声を上げる間もなくその場に倒れ伏す。

 

 それを見たもう一人の歩哨が驚きの声を上げようとするが、既に西山がその背後に立ち、彼の背中にコンバットナイフを突き立てていた。声を上げる間もなく彼は絶命し、地面に崩れ落ちる。

 

 小林は二人の死体を静かに地面に置くと、ピッキングで倉庫の扉の鍵を開ける。

鍵は古いものだったらしく、あっけなく開いた。

中は薄暗く、埃っぽい空気が漂い木箱が所狭しと積まれている。

彼は内部をざっと見回し、グラ・バルカス兵がいない事を確認すると奥へ足を向けた。そこには大量の缶詰や乾パンなどが山積みされていた。

 

 倉庫内の電灯は消えており、窓から差し込む月明かりが浮遊する埃を照らしていた。

小林は暗視装置を額へ上げると、懐からペン型の携帯照明を取り出すと点灯させた。その光に照らされて浮かび上がったのは、食糧のみならず弾薬も大量に備蓄されている光景であった。

 

「奴ら食糧も弾薬もまとめてここで保管してるのか」

 

 西野はそう言うと、木箱の一つを開けてみる。中には大量の銃器類が詰め込まれていた。

その種類は豊富であり、自動ライフル、サブマシンガン、軽機関銃、重機関銃など多岐にわたる。

 

「少々不用心だな。まとめて吹き飛ばされたら終わりだろうに」

 

 西野の言葉に小林もうなずく。確かにこれだけの量をまとめて爆破されればひとたまりもないはずだ。

 

「まぁいい。こちらの仕事がやりやすくなった。C4を仕掛けてさっさと撤収しよう」

 

 小林はそういうと、爆破準備を始めた。数分後、倉庫内に仕掛けられた爆薬を仕掛け終わり撤収しようとした瞬間、小林のインカムに多田野の声が聞こえてくる。

 

〈小林、西野、聞こえるか?〉

 

 その緊迫した口調に二人は顔を見合わせた。

 

〈どうした? 何かあったのか?〉

 

 小林が訊ねると、多田野は一瞬沈黙した後、口を開いた。

 

〈敵が接近している。すぐに撤退しろ〉

 

 多田野の声は焦りを帯びている。小林と西野は急いで撤退の準備を始める。

しかし、時すでに遅し。倉庫の入り口付近に複数の人影が現れた。

 

◆◆◆

 

 グラ・バルカス帝国陸軍特殊戦コマンドシータ分遣隊副隊長、フル・ハート大尉は獲物が罠にかかったことを確信し、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「デカいネズミが2匹入り込んだようだ」

 

 彼の部下たちも同様の表情である。彼らはヒノマワリに潜む日本の侵入者を始末すべく、この物資集積所で待ち伏せをしていたのだ。

日本の特殊部隊が次に襲撃するならば、ここであるという予測をたてたのは部隊長であるシーンであった。

彼、曰く、ヒノマワリのグラ・バルカス軍弱体化を狙うなら、司令部が置かれているハスキム駐屯地か、この物資集積所を狙う可能性が高いとのこと。

そのためシーンは部隊を二分し、ハスキムと集積所の両方に配置した。

集積所はフル・ハートが指揮を執り、ハスキムはシーンが指揮を執っている。

 

「姿は見えないが、奴らがここにいる事は間違いない。見つけて殺せ!」

 

 フル・ハートは切断されたフェンスや倉庫回りの歩哨の死体から日本人がここに侵入していることを確信していた。

 

 そして、今、目の前には日本兵のものと思われる足跡が残されていた。

 

(ニホン人よ俺達を舐めすぎだ。俺達はお前らの国のように無能ではない)

 

 彼は内心でそう呟くと、部下たちに指示を出す。

 

「足跡の数からして奴らは2人いる。油断するなよ。2人裏手に回れ、残りは俺と一緒に正面からだ」

 

 彼は命令を下すと、グラ・バルカス軍最新の自動小銃、LAG-33を構える。

これは中間弾である6.25ミリ×43弾を使用する所謂アサルトライフルであり、従来の小銃より軽量で、優れた連射性能と取り回しを誇る。一部部隊で実験的配備が始まった最新型であり、部隊からの評判は上々であった。

さらに彼らはLAG-33にウェポンライトを装着しており、夜間戦闘にも対応していた。

 

(行け)

 

 フル・ハートがハンドサインで部下に指示を出し、まずは倉庫内へ2名が静かに突入する。彼らも全員がグラ・バルカス帝国軍制式のコンバットブーツを履いており、足音を立てずに行動できる。

 

 倉庫内に進入した二人の兵士は、まずは慎重に倉庫内の探索を行う。LAG-33を構えながら左右に目を配る。倉庫内には月明かりが差し込んではいたが、やはり薄暗い。

 

(どこに隠れていやがる?)

 

 二人は神経を張りつめさせ、周囲を警戒しつつ倉庫の奥へと進む。

その時1人が月明かりを受けて不気味に揺らめく影のようなものを視界の端に捉えた。

 

(!?)

 

 その影の正体を確かめようと視線を向けると、先にその影が動いた。

慌ててLAG-33を向けようとするも既に遅い。次の瞬間、揺らめく影の中から人の手が飛び出し、LAG-33を弾き飛ばした。影の正体はステルスクロークを装備した小林だったのだ。

 

「なっ……」

 

 驚愕の声を上げる暇もなく、今度は影からサプレッサー付きグロック19自動拳銃が突き付けられ、引き金が引かれた。

 パシュ!パシュ! 抑制された音が響き、脳梁を吹き飛ばされた兵士が倒れる。

もう一人の兵士がその光景を見てLAG-33を乱射する。木箱が砕け散り、中身の缶詰や乾パンなどが周囲に飛び散った。

 

 だがそれも長くは続かなかった。乱射する兵士の背後からステルスクロークを纏った西野が忍び寄り、彼の腕の腱を切りつけ、銃を取り落とさせる。

 

 その隙に、コンバットナイフが背中に突き立てられ脾臓を破壊した。さらに首筋にもコンバットナイフが振り下ろされ、頸動脈が切断される。

 

 わずかの間に2名の兵士たちが殺され、フル・ハートは無理に倉庫内へ踏み込むのは危険と判断、外から火力を以て制圧することに方針を変更した。

 

 すでに庫の周りはシータ分遣隊が固め、倉庫外周は警備部隊に包囲にさせている。2重の包囲網、まさに袋のネズミだ。フル・ハートたちはLAG-33だけでなく機関銃も装備しており、数でも優位に立っている。

銃弾を撃ち込み、混乱したところに一気に突っ込めば問題なく殲滅できるだろう。

そう考えたフル・ハートは部下に射撃命令を出した。シータ分遣隊員たちが、各々の銃器を発砲する。マズルフラッシュが煌めき、曳光弾が暗闇の中を飛んでいく。トタン壁が瞬く間に穴だらけになり、窓ガラスが割れていく。

 

「フッハッハ!!死ね! 日本人!」

 

 フル・ハート大尉は勝利を確信し、高笑いをする。しかし……、彼ら優位は唐突に終わりを告げた。砲弾の甲高い飛翔音が響いてきたのだ。地面が爆ぜ、土煙が舞い上がる。フル・ハートたちは本能的に地面に身を伏せた。

 

 砲撃の正体。それは待機していた大坊からの支援砲撃であった。彼は60ミリコマンドモーターを操作し、倉庫周辺の敵へ撃ち込んでいく。砲弾が次々と炸裂し、大量の破片をまき散らす。

 

 フル・ハートたちはこれには堪らず、攻撃を中断し身を守る他なかった。

さらに大坊は倉庫外周の敵に照準を合わせると、容赦なく撃ち込んだ。多田野操るUAVにより敵の位置情報が把握できているため砲撃は正確であった。

次々と榴弾が着弾し、倉庫外周を包囲しいたグラ・バルカス兵は粉々になって吹き飛ぶ。

 

「クソッ!」

 

 フル・ハートは悪態をつくが、迫撃砲弾が降り注ぐ中を動くわけにはいかない。

彼は悔しげに歯噛みする。そんな彼の目の前に倉庫内から手榴弾が転がって来た。

フル・ハートは反射的に地面を転がる、直後に爆発が起きた。

至近距離での爆風を受け、フル・ハートは地面に叩きつけられる。

 

「グッ!……」

 

 手榴弾が炸裂した直後、倉庫内から小林と西野が飛び出してくる。

二人は駆ながらSIG MSXを撃ちまくり、進路上にいるフル・ハートの部下やグラ・バルカス兵をなぎ倒していく。ステルスクロークはバッテリー切れのため纏っていなかった。

彼らの姿はフル・ハートの目からは月明かりを受けて、まるで死神のように映った。

 

「逃がすか!!」

 

 フル・ハートはLAG-33を構えて反撃しようとするも、小林の方が反応が早かった。小林はフル・ハートに銃口を向けると、躊躇うことなく引き金を引いた。

パシュ! 放たれた弾丸はフル・ハートの脇腹を掠め、後方へと抜けていった。

 

「グアッ!?」

 

 フル・ハートは激痛で声を上げる。脇腹から血が滲み、戦闘服に赤い染みが広がる。小林と西野はフル・ハートには構わずそのまま走り去り、正面ゲートへと突進する。銃を撃ちまくり、未だ砲撃の混乱から立ち直れないグラ・バルカス兵たちを薙ぎ払い、血路を開いていく。

 

「逃がすかっー!」

 

 フル・ハートは脇腹を押さえながら必死の形相を浮かべ、自動拳銃を撃ち放つ。

だが夜闇に虚しく銃声が轟くばかりであり、その銃弾は二人に届くことはなかった。

 

「くそおぉおお!!!」

 

 フル・ハートは絶叫を上げ、怒りに任せて拳銃を地面に叩きつける。その時、それを合図にしたかの様に、彼の背後で大爆発が起こった。小林と西野が倉庫に仕掛けたC4爆薬が爆発したのである。

フル・ハートは爆風に煽られ、地面に倒れ伏す。彼は必死になって地を転がり身を庇ったが、それでも全身を強く打ち付けた。

倉庫は完全に崩壊しており、瓦礫の山となっている。もはや使い物にならないだろう。

 

「おのれぇぇえ!! 許さんぞ! 日本人ども!!!」

 

 フル・ハートはふらふらと立ち上がりながら怒号を上げた。だがその叫びは、夜の静寂に吸い込まれていくだけであった。

 

◆ ◆ ◆

 

 レイフォル州レイフォリア。グラ・バルカス軍統合基地ラルス・フィルマイナの一角。そこでは作戦会議が行われていた。

グラ・バルカス帝国陸軍ムー方面軍司令部参謀長ランボール・フーリマン大佐が発言する。

 

「報告します。先ほど、ヒノマワリのガオグゲル中将より連絡がありました。軍管理の食料備蓄兼物資保管庫が何者かに襲撃されたとの事です。被害状況は全滅に近い模様とのこと。ヒノマワリ国内の物資備蓄量は危険域まで減少しております」

 

 その報告を聞き、ランボールの目の前に座っている男が目付きを鋭くする。

男の名はアレク・アダルトマン。グラ・バルカス帝国陸軍ムー方面軍司令官だ。

彼は鋭い眼光をランボールに向けると、「ふむ」とだけ呟いた。

 

「……犯人については?」

「おそらく日本の特殊部隊と思われます。特殊作戦コマンド、シータ分遣隊が日本人らしき集団と交戦しました。それによりシータ分遣隊の数名が死亡しています」

「ヒノマワリ、ムーとの国境に展開する敵部隊についての動向は?」

「ムー軍の通信傍受により状況把握に努めておりますが、敵は国境に戦力と物資を集中させつつあるようです」

「敵の戦力構成はどうなっている? 」

「敵はムー、ニグラート連合、そして日本からなる連合部隊で構成されており、数の上での主力はニグラート連合が占めています。次に数が多いのはムー軍で最後に日本軍ですね」

「ふむ……。本来ならば集結中の敵など砲や航空機で叩きたいところではあるがな……」

 

 ムー大陸方面軍は本国からの命令によりヒノマワリから越境しての攻撃は禁じられていた。これはムー本国進攻からレイフォル防衛へと戦略を転換したためである。

 しばしの間アダルトマンは顎に手を当て、戦況図を見ながら熟考していたが、やがて顔を上げて口を開いた。

 

「ヒノマワリを放棄する。ヒノマワリの部隊は順次後退させろ」

「まだ敵と一戦も交えてないのにですか!?」

「そうだ。このままではヒノマワリの部隊は飢えて死ぬだけだ。輸送機による物資の空輸も行っているがとても追いつかん。もはやヒノマワリの維持は困難だ」

「しかし、それだと敵にみすみすヒノマワリを明け渡す事になりかねませんが……」

 

「もちろんタダでくれてやるつもりはない。後退時にヒノマワリの物資を可能な限り徴発するのだ。焦土作戦だ。それと、ムーとヒノマワリは友好国だったと聞く。ムーはヒノマワリに物資を分け与えるはずだ。それは奴らの兵站の負担になるだろう。そして異世界連合軍をレイフォル国内へ深く引き入れ、兵站線が伸びきったところを叩く」

 

「なるほど。確かにその手は有効でしょう。早速、ガオグゲル中将へ通達します」

 

 ランボールは敬礼すると、足早に退室した。次にアダルトマンは基地司令であるファンターレに目を向ける。

 

「ファンターレ大佐。基地の防衛体制はどうなっている? イルネティアを拠点に敵爆撃機が空襲を行う可能性がある。イルネティア島が敵の手に落ちた以上、その可能性は高いだろう」

 

「はい。経空脅威に対しては新兵器である高高度迎撃用地対空ミサイル『トーラス』の配備が完了しております。また、短距離防空ミサイル『ジェミニ』も既に全基が稼働状態に入っております。さらに低空防空用として、レーダー照準と射撃指揮装置の組み合わせによる半自動式の40ミリ高射機関砲を配置しております。まさに3重の鉄壁です。これで敵の航空機は寄せ付けないはずですよ。まあ、もっとも、この基地が攻撃される前に敵は降伏しているかもしれませんがね」

 

「ほう、なかなか頼もしいな。では海からの侵攻には対応できているのか?」

 

「はい。地上発射型のジーク対艦ミサイルが配備されました。これは対艦攻撃能力に優れるうえ、砲より射程が長いため非常に頼りになります。この基地の守りは万全と言って良いかと」

 

 ファンターレの自信満々な様子にアダルトマンも笑みを浮かべる。

 

「うむ。いいぞ。だが、慢心するなよ。ミリシアルやムーはともかく、日本

は侮れんからな」

「承知しております。警戒態勢を強化しておきましょう」

 

 こうしてグラ・バルカス帝国陸軍ムー方面軍司令部の会議は終了した。

 

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