日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた 作: まっこーける
ヒノマワリ王国、ハルナガ京、王城にて。
ヒノマワリ王国の国王、エーギスは謁見の間にて娘であるフレイヤと対面していた。
フレイヤは普段の温厚そうな表情を消して厳しい視線を父王に向けている。
「お父様。グラ・バルカス帝国が国内で大規模な徴発を行っています! まるで国中の物資を根こそぎ奪っていくような勢いで、あれではただの略奪です!」
エーギスは黙って娘の訴えを聞いている。フレイヤは続けた。
彼女の言う通り、グラ・バルカス帝国軍はヒノマワリ国内のあらゆる物資を強奪していった。国民の生活必需品はもとより、食料、武器弾薬に軍需物資、さらには井戸まで埋めてているという。
「このままでは国が滅んでしまいます。オル・ブーツ総督と軍に抗議いたしてください」
だが帰ってきた言葉は冷淡なものでしかなかった。エーギスは言った。
「グラ・バルカスのヒノワワリ内での行動は把握している。グラ・バルカスと協議し、国内での物資徴発の許可を出したのはこの私だ」
その発言に、さすがのフレイヤも衝撃を受けた。
あの誇り高く、誠実な父がまさかこのような暴挙に出るとは思っていなかったからだ。
父は民から慕われており、国民を慈しんでいた。だから彼がこのような事をするとは夢にも思ってはいなかった。父の変わり果てた姿に、フレイヤは悲痛な声を上げる。
「お父様! なぜこのような、国を売るような真似をなさったのですか!?」
「ふん。今更我が国に何が出来るというのだ? 私は帝国と取引したのだ。徴発の許可と引き換えに王族と一部貴族の帝国への亡命を認めてもらったのだ。小国には手段を選ぶ余裕など無いのだよ」
そう言って笑う父を見て、フレイヤは目の前が真っ暗になった。
「お父様。自身がなにを成されておられるのか分かっておいでなのですか!!」
「無論だ。全ては自分自身のためだ。王が生きていれば国は存続できる。私が居なくなればヒノマワリ王家は滅びる。そして我が一族はグラ・バルカス帝国へ渡り、亡命政権を打ち立てるのだ。帝国軍がミリシアルやムーを打ち破った後に再びこの地に舞い戻り、王国を再興すればよい」
「そんな…………、そのような事のために、多くの命を犠牲にしたというのですか!?」
「犠牲ではない。礎となるべき者たちだ」
怒りと悲しみが入り混じった顔のフレイヤに、エーギスは諭すように語りかける。
彼の眼にはもはや愛国心も理性の色も無かった。あるのは欲望のみ。
エーギスは言った。
「ところで、フレイヤよ。最近日本から来た不埒者と仲が良いそうだな。その者たちへ情報を提供してるそうではないか」
エーギスの言葉を聞いた瞬間、フレイヤの顔色が変わった。
「なんのことでしょう? 私には分かりかねます」
フレイヤは何とかして誤魔化そうとする。だがその言葉とは裏腹に、彼女は動揺を隠せないでいた。額からは汗が流れ落ちる。
エーギスはその様子を冷ややかな目で見つめていた。
「とぼけんでもよい。既に裏は取れておる。彼女のお陰でな」
そう言ってエーギスは背後のカーテンを見た。
そこから出てきたのはフレイヤの護衛騎士であるマルであった。
「マル……!!」
驚愕するフレイヤに対し、エーギスが告げる。
「彼女が全て教えてくれたぞ。お前がニホンの者共と組んでいることを」
フレイヤは絶句する。自分の護衛としていつも傍にいた女が、まさか自分を売っていたとは思いもしなかった。
「マル! どうして……」
「姫様、お許しください。ですが、祖国を救うためにはこうするしかなかったのです」
涙ながらに謝罪をするマルに、フレイヤはかける言葉を見つけられない。
「すでに日本人共のアジトの場所は割れておる。今頃グラ・バルカス軍が向かっているはずだ」
エーギスは満足げに笑みを浮かべた。彼は続ける。
「フレイヤよ。外国勢力と通謀し、国益を損なう行為は重罪である。国家反逆罪で死刑とする。」
エーギスから死刑宣言が下される。フレイヤの周りをグラ・バルカス製の短機関銃を装備した近衛兵が取り囲む。逃げ場は無かった。
フレイヤは膝から崩れ落ちた。
「娘の誼だ。最後に言い残すことはあるか?」
慈悲深い国王のふりをした悪魔が、哀れな少女に問いかける。フレイヤはしばらく項垂れていたが、やがて力無く呟く。それは消え入りそうな声だった。
だが彼女の最後の言葉は確かにエーギスの耳に届いていた。
「お前は必ず報いを受けるぞ。この悪魔め」
その直後、連続する銃声が謁見の間を満たした。あとには血を流して倒れるフレイヤの姿があるのみだった。
「愚かな娘だ。」
そう言ってエーギスは嘲笑を漏らした。
◆◆◆
ハルナガ京、スラム街。汚れた地面と粗末なあばら家が広がる場所を、数十人のグラ・バルカスの野戦服を着た男たちが駆けていく。
「ここが日本のスパイのアジトか」
とある一軒のあばら家の前で集団の先頭を走る男――シーン少佐が言った。彼は口を歪めて笑う。
やっとニホン人どもの隠れ家を発見したのである。シーンはそのアジトを睨んだ。
一見するとどこにでもあるようなあばら家のように見える。
「シーン少佐。包囲完了しました」
部下からの報告を聞き、シーンは命令を下す。
その命令は単純明快なものであった。
突入せよ。ただそれだけの命令。
直後、特殊戦コマンドの隊員たちがアサルトライフルLAG-33を構えながら、次々とドアへ殺到する。
一切の乱れのない、洗礼された動きで彼らは扉を蹴破り、屋内へと侵入した。
だが先頭を往く隊員が細いワイヤーに足を引っかけた直後、爆炎がドアに殺到する彼らを飲み込んだ。
ワイヤーの先にはクレイモア地雷が仕掛けられていたのだ。
爆発に巻き込まれた十名ほど隊員たちは数百のベアリング弾に体を引き裂かれた。
煙が晴れた時、無残な死体が転がるのみであった。
一瞬にして制圧されてしまった光景を見て、シーンは舌打ちをする。
どうやらトラップを仕掛けているらしい。
だが、ここまで来て引き下がるわけにもいかない。
「ひるむな! 突入しろ!」
シーン自ら先頭に立ちLAG-33を乱射しながら室内に突入した。銃弾により家具が砕け散り、壁が削れる。
だが、そこには誰もいなかった。
罠を警戒しながら徹底的に探すが、ネズミ一匹見つからない。
どうやら逃げられたようだ。
「クソッ!! 逃げ足の速い奴等だ!!」
そう言ってシーンは床を踏みつけた。
「探せ! 奴らはまだ遠くには行ってないはずだ!」
そう叫んで彼は再び走り出した。
◆◆◆
一方そのころ、ハルナガ京郊外にて。
小林一尉を筆頭とする特殊作戦群の6人の隊員たちは、グラ・バルカス軍のジープを奪い、ヒノマワリ、ムーの国境へ向けて走行していた。
助手席に座っている小林は、無線機で本隊と連絡を取り、ハンドルを西山が握る。他には狙撃手の鷹見、ドローンオペレーターの多田野、機関銃手の大坊、爆発物担当の氷室が乗っている。
「間一髪だったな」
「ああ、今頃アジトはグラ・バルカス軍によって強襲されているだろう」
もはやヒノマワリ国内での任務続行は不可能と判断。彼らは撤退を決意した。
ジープに乗る彼らの恰好は今、グラ・バルカスの軍服姿である。これでグラ・バルカス兵に変装し、そのまま脱出しようという算段であった。
今、ヒノマワリ王国は混乱の極致にある。グラ・バルカス軍が略奪まがいの徴発を行っているためだ。あちこちで暴動が起き、抵抗するヒノマワリ人は容赦なく射殺されていた。
そんな混沌とした中でグラ・バルカス軍のジープと軍服を調達するのは簡単であった。
しかし、後もう少しでハルナガ京を脱出できるという矢先に彼らのジープを阻むものが現れた。
「グラ・バルカス軍の検問所だ。迂回するか?」
そう言って小林が運転席の西山へ尋ねる。
「いや、時間が惜しい。そのまま進もう」
小林は即座に決断した。
彼らはそのまま検問所へ向かう。近づくと詰めていたグラ・バルカス兵の目がこちらに向けられた。
「止まれ! お前らどこへ行く!?」
グラ・バルカス兵が詰問してくる。それに対し、小林は冷静に返答する。
「国境の前線へ増援として向かう」
「そんな話は聞いていないが? 命令書を出せ」
グラ・バルカス兵は疑わしげな目を向ける。
「急遽、口頭で受けた命令だ。命令書は持っていない」
小林は淡々と答えた。
その言葉を聞いて、詰問しているグラ・バルカス兵が部下を呼びつけ無線で確認するよう指示をだす。
「今、確認中だ。ちょっと待て」
グラ・バルカス兵はそう言うと小林たちの顔を観察した。小林たち、東洋人の顔つきは彼らからすれば珍しいものであった。
グラ・バルカス帝国は多民族国家だ。多数はコーカソイド系だが、少数だがモンゴロイド系の人間もいる。
「お前どこの地方出身だ?」
グラ・バルカス兵が尋ねてくる。
「あー……」
小林が言い淀んだその時、無線で確認していたグラ・バルカス兵が戻ってくる。
「隊長、本部はそんな命令を受けた部隊はいない、といっています」
その報告を聞いた瞬間、グラ・バルカス兵の表情が変わった。
「貴様らぁっ!! 何者だ!?」
その叫び声と同時に、小林たちは一斉に隠し持っていた銃を構え、取り囲もうとするグラ・バルカス兵たちに向けて引き金を引く。
「撃てぇ!!」
小林の一声で、隊員たちが銃を乱射する。各々の銃から放たれた銃弾が、グラ・バルカス兵を蹂躙する。瞬く間に激しい銃撃戦となった。
「西山! 車を出せ!」
西山はアクセルを全開にし、ジープを急発進させる。銃弾が車体を叩き、火花を散らす。
「待てぇ!」
グラ・バルカス兵の怒号が響く。だがジープはスピードを上げながら検問所を強行突破する。
「まずい! 多田野が撃たれた!」
後部座席にいた大坊が叫ぶ。
見ると、彼の隣に座る多田野は脇腹を押さえて苦しげな表情を浮かべていた。
彼の脇腹からは血が流れ出ている。大坊が応急処置をしているが、このままでは長くはもたないだろう。
「小林、さらに凶報だ。燃料タンクも撃たれたみたいだ」
ハンドルを握る西山が告げる。
どうやら先ほどの戦闘で、ジープにも被害が出たらしい。
このままではいずれ動けなくなるだろう。
小林の顔が青ざめる。ジープが動かなくなったら徒歩で逃げなければならない。しかも怪我人を連れて。
「あそこの農村に隠れて救援を呼びつつ敵を迎え撃つ。多田野がこの状態じゃ、俺たちだけで敵を振り切るのは難しい」
西山はそう言って、小さな農村を指した。
◆◆◆
「そうか、日本人共はここを強行突破したのか」
検問所にてシーン少佐はニタリと笑みを漏らした。
「はい、詰問しましたところ、奴らは発砲し、ジープで東へ逃走しました」
「そうか……よし、奴らの逃げた方角を調べろ。まだ遠くには行っていないはずだ」
彼が部下に命令を下そうとしたとき、副隊長のフル・ハートが話しかけてきた。
フル・ハートは先日の戦闘にて負傷していたが、日本人に対する憎悪を燃やし、無理を押し戦線復帰したのであった。
「シーン少佐、近くで乗り捨てられたジープを発見したとの報告がありました。恐らく、日本人らが乗っていたものと思われます。それと車内に血痕が残されていました」
その言葉を聞き、シーンはほくそ笑む。
奴らは負傷者を抱えていることになる。そう遠くへは行けないはず、追撃は容易だ。
「ここらで隠れるとなると……この近くの農村だろう。奴らに目に物を見せてやる」
「ええ!必ず追い込んで見せましょう!」
二人はそう言って笑い合った。
「さあ行くぞ! 奴らを追い詰めるのだ!」
「はっ! お供します!」
こうして二人の復讐鬼と、シータ分遣隊は小林たちの追跡を開始した。
◆◆◆
ヒノワワリ王国、とある農村。
既にこの農村はグラ・バルカス軍の略奪によって荒らされていた。井戸は埋められ、広場には処刑された農民の死体が転がっている。
その農村の一軒の家に、ハルナガ京から脱出した小林たちの姿があった。今、彼らはこの農村に身を潜めていた。
小林たちは負傷した多田野をベッドへ寝かせ、手当てを行う。
その横で、西山は無線機を操作していた。
彼は本隊へ救援を要請していた。
「俺を置いていけ……」
弱々しい声で多田野は言った。彼の顔色は真っ青である。出血量がかなり多いためだ。
「馬鹿野郎! そんなこと言うな。すぐに救援が来る」
小林はそう言うと、包帯を巻き終え、多田野を安心させようと肩に手を置いた。
「小林、こちら大坊。敵さんがすぐ近くまで来てる」
その時、大坊から通信が入る。
「了解。トラップの設置は済んでるか?」
「ああ、問題ない。全部設置済みだ。いつでも爆破できるぜ」
「よし、それならそのまま待機しててくれ。合図があれば起爆してくれ。その後は……特に作戦はない。救援が来るまで粘るだけだ」
小林の言葉に皆がうなずく。
「敵さらに近づく。3方向から接近中」
民家の屋上でmk22スナイパーライフルを構えたまま、鷹見が報告する。
どうやら敵は包囲するつもりらしい。
「さぁ! 派手にやろうじゃないか!」
小林はそう言って笑った。
◆◆◆
フル・ハートは勝利を確信してた。散々辛酸をなめさせられた日本人共を追いつめたからだ。
シータ分遣隊の精鋭揃が、小林たちが潜伏している農家を取り囲むように展開しており、その包囲網は徐々に狭まっていた。
フル・ハート自身も包囲網に参加しており陣頭指揮を取っている。
「あの忌まわしき日本人共は皆殺しにして、その首級を皇帝陛下に捧げてやる」
先日の戦闘で負傷した脇腹はまだ完治していない。だがその痛みすらも心地よく感じる。彼の心には日本人に対する憎悪が渦巻いていた。
「各小隊、散開しつつ前進。奴らを一匹たりとも逃すな」
少し後方で指揮をとるシーン少佐が命じる。
フル・ハート率いる兵士たちは銃を構えながらじりじりと間合いを詰めていく。だがその途上草に紛れて設置されているC4爆弾に気づかなかった。
直後、轟音とともに爆発が起こった。C4爆弾が炸裂し、周囲の人間を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた兵士は地面に叩きつけられ、あるいは家屋の壁に激突し、絶命する。
フル・ハートは運よく難を逃れたが、それでも爆風により転倒し、背中を強く打ってしまう。
精鋭らしくすぐさま混乱から立ち直った彼らだが、さらなる攻撃に見舞われる。
1発の鋭い銃声が響くと同時に、フル・ハートの部下の一人が倒れ伏した。狙撃されたのだ。建物の上で狙撃銃を構える鷹見からの銃撃だ。
フル・ハートはすぐに反撃を命じるが、今度は別の隊員が倒れる。
そしてまた一人、二人と銃撃を受け、バタバタと兵士が死んでいく。
「あそこの建物の上だ!」
グラ・バルカス兵が叫ぶ。どうやら鷹見の居場所を特定したらしい。
フル・ハートはは部下に命じ、建物ごと鷹見を始末することにする。
迫撃砲の要請を行い、指示を待つこと数十秒。上空に砲弾が通過したかと思うと、次の瞬間には凄まじい爆音が響き渡る。
建物が爆炎と瓦礫に包まれ、粉々に砕け散っていく。
だが、鷹見はすでに場所を移動していた。彼は迫撃砲の砲撃が放たれると同時、屋根の上を飛び移ることで難を逃れていたのだった。
村のあちこちで銃声と爆発音が響いている。他の部隊も交戦を始めたようだ。
戦闘はもはや混戦状態と化していた。
◆◆◆
「ポイントFのC4を起爆させろ! 同時にポイントB2とG1のC4も爆破! 敵の動きを止めるんだ」
小林の指示に従い、氷室がC4を起爆する。オレンジ色の爆炎が敵兵を包み込んだ。
続けて西山が手榴弾のピンを抜き、敵兵に向かって投げつける。数秒後、手榴弾は破裂し、大量の破片を周囲へぶちまける。
小林がいる家屋の北側では、大坊がMk 48機関銃を乱射し、敵を薙ぎ払っていた。
南側の家屋では、鷹見がスナイパーライフルによる精密射撃で敵を撃ち抜いている。
「くそ! 迫撃砲をなんとかしないと。このままでは押し切られるぞ!」
小林はそう叫んだ。その直後、鷹見が悲鳴を上げる。
彼がいた家屋の壁が、迫撃砲弾を受けて崩れ落ちたのだ。壁が崩れ落ち、土煙が舞う。
鷹見は崩れた壁の向こうへ飛び出し、遮蔽物に身を隠そうとする。
その刹那、彼のプレートキャリアに銃弾が何発か命中した。
彼は痛みに耐えつつ、身を隠す。
一方、小林は鷹見の危機を察知するとすぐに援護に向かう。
彼はsig mcxを手に取ると、素早く構え、引き金を引いた。鷹見に襲いかかろうとしていた敵兵が銃弾を受けてもんどり打ちながら倒れる。
彼はそのまま走り出すと、鷹見の元へ駆けつける。
鷹見は左肩から出血していた。彼は苦痛に顔を歪めながらも、必死の形相で狙撃を続ける。
小林も鷹見を守るべく、彼のすぐ後ろに立ち迫りくる敵兵を迎え撃った。
二人の奮戦もあり、敵兵は後退を始める。だが、それでもなお彼らは敵兵から執拗な攻撃を受け続けた。
一方のシーン少佐は敵兵の抵抗が予想以上の激しさに困惑していた。
敵は寡兵で、簡単に制圧できると思っていたからだ。
実際、最初は上手くいっていた。
だが、突如として敵が猛然と反撃してきたため、味方は押されつつあった。
「ええぃ! 何をしている! たかが小人数ではないか!」
シーン少佐は苛立ちを露わにする。
「ならば俺自ら奴らを血祭りにあげてくれる!」
シーンはそう言うと、周りの護衛と共に駆け出した。
◆◆◆
小林たちはシータ分遣隊の猛攻の前に後退を余儀なくされ、多田野が寝かされている家屋に立て籠っていた。
シータ分遣隊の兵士たちは小林たちに対し、執拗に銃撃を加えている。
「ちくしょう! しつこい野郎どもだ!」
小林はそう叫びながら、窓から顔を出し、MCXで応戦する。
彼の横では鷹見が肩を押さえつつ窓から拳銃で銃撃を行っていた。
「まずいな……弾薬がもう底をつく」
小林は苦々しく呟く。だが、敵の勢いは衰えない。
シータ分遣隊の兵士たちは、民家を包囲しながら銃撃を繰り返すが、中には突入しては来ない。彼らも小林らの頑強な抵抗に攻めあぐねていたのだ。
そんな状況の中シーンが合流し、フル・ハートに指示を出す。
「フル・ハート。やはり手強い相手だな。一気に畳みかけるぞ」
シーンの言葉にフル・ハートはうなずく。
「少佐、突入は自分たちに任せてください。必ず憎き日本人共のはらわたを引き摺り出してやりますよ」
「すぐには殺すなよ。奴らには苦痛をたっぷりと味合わせてやる」
シーンは残りの部下に、突入する部隊の援護射撃を行うよう命じた。
彼の合図で無数の銃弾が小林たちが立て籠もる家屋へ襲い掛かる。
その隙にフル・ハート含む10人ほどの突入班が吶喊する。
激しい銃撃を受け数人の脱落者を出しつつも、フル・ハートを含む部隊はついに家屋への突入を果たした。
「日本人! 生きて帰れると思うなよ!」
フル・ハートは怒りの声を上げながら、LAG-33アサルトライフルを乱射する。
小林と西野、大坊それぞれの銃器を負けじと撃ちまくるが、フル・ハートの部下たちも銃火を浴びながらも銃撃を緩めない。
「うおおおお!」
フル・ハートが雄たけびをあげながら小林に向けて突進する。
小林は咄嵯にsig mcxを構えて撃つ。だが、銃弾はフル・ハートの耳をかすめるだけだった。
フル・ハートは小林の腹にタックルを食らわせると、そのまま押し倒し、馬乗りになる。
「貴様だけは許さんぞ! !」
フル・ハートは憎悪に満ちた表情を浮かべながら、小林の顔へ拳を振り下ろす。
「このクソがああぁ!」
一方、小林はマウントポジションから逃れようと必死にもがく。
そこに西山が割り込もうとするが、別のグラ・バルカス兵士が彼を拳銃で撃った。
放たれた銃弾は西山のプレートキャリアに命中し、彼は衝撃で転倒してしまう。
さらにこの時後続の兵と共にシーンが突入しきた。数で勝る彼らは瞬く間に小林らを取り囲み殴る蹴るの暴行を加える。
やがて小林たちは力尽き、動かなくなった。
「ふふふふ。愚かな日本人め。それもここまでだ。おい! 連れていけ!」
シーンの命令を受けた兵士らが小林たちを村の中央広場へ連行する。
◆◆◆
奮戦むなしく、中央広場へ引き立てられた小林たちの周りにはシータ分遣隊の隊員が集まっていた。彼らは全員勝ち誇った笑みを浮かべ、勝利の喜びに浸っている。
小林、西山、氷室、鷹見、大坊の5人は体中を傷だらけにして倒れ伏すか、膝をつき、項垂れていた。
多田野は地面にぞんざいに寝かされている。彼らは既に抵抗する力は無いと判断されたのか、拘束されていない。彼らの前にはシーンとフル・ハートが立つ。
「馬鹿な日本人ども。散々我々をコケにをしやがって。だがお前らの命運もここまでだ」
シーンは小林を見下ろしながら言った。
「これから楽しい処刑の時間だ。だが、すぐには殺さないでやる。俺たちの気が済むまでたっぷり拷問してから殺してやるからな。まあ、せいぜい楽しめ。」
シーンの言葉に周りのシータ分遣隊の面々が下卑た笑いを漏らす。
小林は無言でシーンを下から睨みつける。
「なんだ? その目は?」
シーンがそう言って小林の顔を蹴り上げる。
「ぐっ……」
「ははは! いい気味だ! さっきまでの威勢はどうした! ん?」
シーンはなおも執拗に小林を痛めつけた。だがそれでも小林は目から闘志を失わない。
「ちぃ……まだ懲りんようだな。おいフル・ハート。こいつの目が気に食わん。目をえぐれ」
シーンの指示に従い、フル・ハートは小林の前に立つと胸倉を掴み、持ち上げる。そして懐からナイフを取り出し、逆手に持った。
「少佐、お任せを。目の次は耳を削いでやりましょう!」
フル・ハートはそう言うと、小林の目へじりじりとナイフの切っ先を近づけていく。その時だった。
「くっくっくっくっ」
小林が不敵な笑みを浮かべたのだ。
「何がおかしい」
フル・ハートが問うと、小林は答えた。
「いや、あんたらがあまりに間抜けすぎてね。つい笑ってしまったんだよ」
「なに!?」
「間抜けな悪役というはどうして殺す前にべらべらとおしゃべりするんだ? そういう決まりでもあるのか?」
「貴様あぁ!!」
フル・ハートが激昂し、小林の右目を突こうとした瞬間、どこからともなくヘリのローター音が聞こえてきた。シータ分遣隊の兵士らは驚き周囲を見回す。
すると、シータ村の上空に2機のヘリコプターが現れた。特殊戦用のステルスブラックホークである。
「少佐! あれはいったい!?」
兵士たちは驚愕の声を上げる。
「バカな! 一体いつの間に!」
シーンは自分の迂闊さを呪った。シータ分遣隊が小林たちに気を取られている隙に、村に接近してきていたのだろう。突然現れた黒塗りのステルスヘリに、シータ分遣隊の誰もが呆然としている。
「撃て! 撃ち落とせ!」
フル・ハートが怒鳴るが、時すでに遅しであった。2機のステルスヘリはドアガンから機銃掃射を開始した。GAU-19ガトリングガンの12.7mm弾が小林たちを包囲するシータ分遣隊に降り注ぐ。
たちまち、シータ分遣隊の将兵たちは血まみれになり、絶命していく。
シータ分遣隊の残存兵は慌てて散開し、遮蔽物に隠れようとするが、次々とただの肉塊と化す。
「なん……だと……」
フル・ハートは小林の胸倉を掴んだまま、目の前で繰り広げられる光景を眺めることしかできなかった。愕然とするフル・ハートだが唐突に顎の下に冷たい感触を感じ我に返る。
彼の顎の下には銃口があった。銃を構えているのは小林だ。フル・ハートのホルスターから自動拳銃を抜き取り、彼に突きつけている。
その顔にはさっきまでの怯えの色はない。彼は冷徹な戦士の顔をしていた。
一瞬交差する両者の視線。
次の瞬間、小林は引き金を引いた。
銃声が響き、フル・ハートの頭は吹き飛び脳梁が飛散した。
「小林! こっちだ」
西山が呼びかける。彼はどさくさ紛れ奪ったLAG-33アサルトライフルで血路を拓いていた。
鷹見と大坊、氷室も奪った武器でそれに続く。
小林は倒れてる多田野を肩で担ぐと、着陸したヘリの方へ駆け出す。
シータ分遣隊の生き残りたちはヘリの銃撃を受けつつも、反撃を行おうと試みるが強力な銃火に阻まれ、近づくことすらできない。
「逃がさんぞぉ!日本人めぇ!」
シーンの怒号が響く。彼は自動拳銃を抜き放ち、多田野を担いで走る小林へ銃口を向ける。
小林もそれに気づき振り向きざまにフル・ハートから奪った拳銃をシーンへ向ける。
両者は同時に発砲。互いに相手の頭部を狙った銃撃だ。
しかし、小林の方が僅かに早く撃ったため、シーンの放った弾丸は小林の頬をかすめただけだった。
一方、小林の放った弾丸はシーンの左目をかすめた。
「ぎゃあああああ!」
シーンの視界が真っ赤に染まり、目を押さえて悶絶する。小林はそれ以上彼に構わず、ヘリに乗り込む。多量の銃弾をばら撒きながら2機のヘリは戦場から離脱を図る。
後にはシータ分遣隊の屍の山と目から血を流し、憤怒の形相で立ち尽くすシーンだけが残された。
「うおおおおお! コバヤシ! お前の名は覚えたぞ! いつか必ず殺してやる! 」
シーンは絶叫しながらヘリが去った方向へ狂ったように銃を乱射する。
だが、小林を乗せたヘリはすでに豆粒のように小さくなっていた。