日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた   作: まっこーける

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33 コア爆弾攻撃

 

 イルネティア島。ミリシアルの飛行場。

 

 原野のただなかに作られた飛行場にはいくつもの航空機が並んで駐機していた。その中でも異彩を放つ巨大な艦影が3つあった。 

 

 直径260メートル近くもあるそれは航空戦艦パルキマイラである。グラ・バルカス帝国にとって自国を苦しめた悪名高き空中戦艦だ。それが3つも地上に駐機し、その周りを地上整備員が慌ただしく行き交っている。

 

「やれやれ、いつまでこんな場所で待機していればいいのだ?」

 

 パルキマイラ3号機の艦長であるエルアは作業を眺めながら愚痴を漏らす。

 

「待機も任務のうちさ。いずれ俺たちの出番がくる」

 

 その愚痴に同僚であるパルキマイラ4号機艦長のベジモンドが答えた。

 

「なぁ、メテオス。俺たちの任務はやはりレイフォルのグラ・バルカス軍の殲滅かな?」

 

 エルアの言を受けてメテオスは答える。

 

「うーん……何とも言えないなぁ。もしかしたら、グラ・バルカス帝国帝本土を攻撃するのかも知れないな」

 

 メテオスは分からないと言いつつもその可能性が濃厚だと確信していた。

 

「どっちにせよ、俺達にできるのは出撃準備を眺めるだけさ」

 

 ベジモンドがそう言って話を終わらせようとしたその時、ミリシアル空軍の中佐が2人のもとへやってきた。

 

「お三方。こちらへどうぞ」

 

 メテオスたちはその中佐に誘導され、航空機格納庫脇にある天幕へと通される。中には1人の男性が座っていた。対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部部長、ヒルカネであった。

 

「3人とも揃ったな。さっそくだがブリーフィングを始めようか」

 

 ヒルカネは3人に座るように促すと早速本題に入る。

 

「さて、君達にはパルキマイラを以てグラ・バルカス帝国本土を爆撃してもらおうと思っている」

 

その言葉にエルアとベジモンドは愁眉を開くが、メテオスはやはり、と納得した顔をする。

 

「ジビルを搭載して爆撃を行なうのですね」

 

 ベジモンドはそう言うとパルキマイラに搭載可能な兵器、大型爆弾である「ジビル」を思い浮かべる。

 

「いや、パルキマイラにはジビルを搭載しない。代わりに新開発の兵器、コア爆弾を搭載する」

 

「コア爆弾? 古の魔法帝国が保有していたという大規模破壊兵器のことですか? 我が国はそのような兵器は保有してないはずでは?」

「そう。我が国はコア爆弾は保有していない。いや、していなかった。と言ったほうが正しいだろう」

「まさか!? コア爆弾の開発に成功したのですか!?」

 

 エルアは驚愕の表情をする。ヒルカネは静かに首を縦に振る。

 

「な、なんと……でもそのような報告は今まで受けていませんが?」

「当然だ。まだ、機密なのだからな」

 

 その言葉にベジモンドは目を見開いたが、メテオスはコア爆弾の起爆実験を見ていたため特に驚きを見せない。

 

「それで、具体的にグラ・バルカス帝国のどこを爆撃しろと仰るのですか?」

「第一優先目標はここ、グラ・バルカスの首都と思われる場所だ。ここは仮にアルファとする。第二目標はここ、軍港がある都市だ。ここはブラヴォーとする」

 

 ヒルカネはグラ・バルカス帝国の衛星写真を示して、その場所を指し示す。そこは帝国本土の北西部に当たり、大都市が存在する地域であった。 

ヒルカネが首都と思われる、と発言したのはミリシアルはグラ・バルカス帝国の首都の正確な位置を知らないためだ。

爆撃目標の選定に使われた衛星写真は日本からラヴァーナル帝国の兵器の情報と引き換えに手に入れたものだ。

 

 ラヴァーナル帝国の兵器のコピーを使用しているミリシアルにとって手の内を晒すことになるが、グラ・バルカス帝国の地形に関して正確な情報を入手するにはこうするしかなかっので、皇帝の鶴の一声によってなされた苦渋の選択であった。

そしてヒルカネが指し示した位置は、推定首都の確率が高いと思われる地域である。そこは帝国本土でも有数の大都市がある場所だった。

 

「メテオス艦長。コア爆弾を搭載したパルキマイラ2号機で第一優先目標であるアルファ

を攻撃してもらう。ベジモンド艦長。パルキマイラ4号機を以て2号機に先行、アルファ上空の天候観測及びに2号機の援護行え。天候次第では攻撃目標をブラヴォーへ変更する。

エルア艦長。パルキマイラ3号機での投下映像の記録を行う任務を与える。何か質問は?」

 

 ヒルカネは3人の顔を見回す。

 

「失礼ですが、敵国の首都を破壊するのは戦争終結のための交渉相手がいなくなるかと愚考しますが?」

 

ベジモンドはもっともな質問を投げかける。

 

「それについては政治的な問題になる。貴官らには関係ない。君たちは命令に従って爆撃すればいいのだ」

「了解しました……」

 

 ベジモンドは内心あまり乗り気にはならなかった。だが命令であれば逆らうわけにはいかない。次にエルアが質問を投げかける。

 

「首都をコア爆弾で破壊するということは、そこに住まう住民を巻き込むのでは? いくら敵国の住民とはいえ、無差別な殺傷は少々気が咎めるのですが……」

 

 エルアの考えももっともなものだ。戦争とはいえ、軍人ではない国民を殺めることは避けて通りたいというのが人道的な考えだろう。だが……

ヒルカネはそんなエルアに対して、冷たく言い放つ。

 

「この作戦はミリシアル8世陛下、直々の命令である。疑うのなら正式な命令書を見るがいい。他の者もだ」

 

 ヒルカネはそういって書類を3人に差し出す。確かにそれはミリシアル8世の御璽が押された正式な命令書だった。

 

「それに……」とヒルカネは続ける。

 

「グラ・バルカス帝国は我々の慈悲ある最終通告を拒否したのだ。すでに警告は行ったのだ。その結果をグラ・バルカス帝国は受け入れるべきだろう」

 

 ヒルカネは冷徹な口調でそう言い放つ。ミリシアルの方針は敵国には遠慮しない、ということなのだ。

 

「了解しました」

 

 エルアも納得するしかなかった。

 

「作戦開始は3日後だ。それまで英気よく養うように」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 一方、ニグラート連合軍敗走後、連合軍はラテ・アルマイ要塞を攻めあぐねてその攻略に時間を取られていた。

 

 要塞を目標とした航空隊攻撃や砲撃を連日連夜行うが、どれもいまいち効果が上がらない。空自の地中貫通爆弾やミサイルなどの誘導兵器既は使い切っており、その補給の目途はまだ立っていない。

 

 地上戦も順調とは言い難い。

日本、ムー、ミリシアル連合軍は大規模な機甲部隊を先頭に立てて、昼夜を問わず要塞に攻め立てていた。しかし、グラ・バルカス帝国も頑強に抵抗し、なかなか要塞を陥落 させることができないでいた。まさに一進一退の攻防であった

 

(くそっ! なんとしてもこのラテ・アルマイ要塞は落とさねばならんというのに……)

 

 陸上自衛隊司令官の三浦は今ある戦力の少なさに歯がみした。空自の戦闘機は連日の出撃に稼働率が下がり始めており、要塞への攻撃のみならず、グラ・バルカス軍の補給線を攻撃するために連日連夜戦闘機を飛ばさせていたのだが、それすらも難しくなりつつあるのだ。

 

(何か決定打がなければ……)

 

 三浦は思索にふけるが何も思い浮かばない。

彼は歴戦の司令官だ。地球でも幾度も危機的な状況の中、部隊を率いて乗り越えてきた実績がある。そんな人物でもそう簡単に逆転の一手は出せないものなのだ。

 

(核を使用すれば……)

 

 一瞬、三浦の頭のなかにそんな悪魔的発想がよぎった。確かに核兵器を使用すればグラ・バルカス帝国との戦争を終結に追いやることができるかもしれない。だがそれは……

 

(だめだ! 断じて駄目だ!!)

 

 彼は自らを戒める。地球での惨禍を思い出した。あの惨状をもう一度この異世界で繰り返すことは許されないことだと彼は強く自戒する。

 

 地球での第3次大戦、それに続く第4次世界大戦で核が使用された結果、核兵器の政治的価値は暴落した。そして核の持つ有用性を人々は見直すことになったのだ。

 

 核は政治的恫喝の手段だけでなく、戦場でも使える兵器だ。そう世界の軍事関係者たちは認識しなおしたのだ。だからこそ、核使用はいかなる状況であっても最終手段であるべきだと三浦は考える。

 

 一方ラテ・アルマイ要塞のグラ・バルカスも決定打を欠き、じり貧の状態が続いていた。日本の空爆により要塞への補給は支障をきたしているが、完全に途絶えたわけではない。そのためラテ・アルマイ要塞は未だ機能しており、特に状況は変化していない。

グラ・バルカス軍と日本含む連合軍は要塞線を挟んで睨み合いを続けており、自然と戦線は膠着状態に陥り始めていた。

 

 コア爆弾を搭載したパルキマイラがグラ・バルカス帝国本土へ向けて出撃したのはそんな状況下であった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 巨大な飛行物体3機がグラ・バルカス帝国東方の海上を反重力エンジンの重低音を轟かせながら飛行している。それらは上空から見るとまるでベンツマークの様な形状をしていた。太古の時代に栄えたラヴァーナル帝国の遺産、空中戦艦パルキマイラであった。2号機と4号機は数キロの間隔で飛行し、その遥か後方を3号機が飛行している。

 

 3機のパルキマイラのうち率いる先行する4号機機長であるベジモンドは配下の気象観測員にアルファ上空の天候を尋ねた。

 

「観測員、アルファ上空の天候はどうだ?」

 

 ベジモンドの問いに気象観測員は答える。

 

「はっ!雲量0から1。晴れです」

 

 観測員は気象レーダーで捉えた情報を読み上げる。

 

「うむ、これは好都合だ」

 

 ベジモンドは通信士にパルキマイラ2号機へ報告を行うように指示する。通信士はその通りに行動した。

2分後、4号機から得られた情報がコア爆弾を搭載している2号機へと送られる。その情報はすぐに機長であるメテオスの下へ届けられた。

 

「データによると絶好の投下日和らしいね」

 

 メテオスはデータを確認した後、そう呟く。

 

「ああ、予定通りアルファを爆撃する。よろしく頼むよ」

 

ベジモンドはメテオスへそう声を掛ける。

 

(アルファ上空まで約50分か……)

 

 アルファ上空の気象は観測員が言った通り晴れで、爆撃に最適であった。

 

(嫌な天気だな……)

 

 メテオスはパルキマイラのセンサーによって映し出されている雲1つない空を見上げながらそう思った。

その時電測員が声を上げる。

 

「対空レーダーに感あり! グラ・バルカスの航空機と思われます!」

 

その言葉に全員の空気が一瞬にして変わる。敵地なのだ、当然である。メテオスはその報告をある程度予測していたのか、それほど動揺することもなくむしろ想定の範囲内だと認識して命令を下す。

 

「さっそく来たね。対空戦闘準備」

「メテオス。こっちでも捉えた。5号機のエルアにも援護を頼むか?」

 

 ベジモンドが通信を介して話しかけてくる。

 

「いや、3機同時に攻撃を受けるリスクは避けたい。それに今からでは間に合うまい」

「了解した。援護するからな。必ず奴らの頭の上にコア爆弾を落としてやろうぜ」

 

 ベジモンドはそう言うと通信を一度切った。

 

「機長、敵航空機が見えました!」

 

 電測員の報告でメテオスが前方の空を拡大すると確かにグラ・バルカス帝国の航空機が多数接近してきていた。

 

 プロペラがついていない、鋭角的なシルエットをした戦闘機だ。

 

「新型ってわけかい? お手並み拝見と行こうか」

 

 メテオスは口角をあげ、不敵にそう呟いた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 グラ・バルカス帝国北東部の港湾都市カルカリアではけたたましいサイレンが鳴り響いていた。空襲警報のサイレンだ

 

 久しく聞くことの無かったサイレンに住民は混乱して右往左往するばかりだ。自動車が突然のサイレンに驚いて走り出し、通行人を突き飛ばしたりする。

防空壕へ避難しようとする者もいれば、何をすればいいのかわからず右往左往しているだけの住民もいる。カルカリアはパニックの様相を呈していた。

 

 帝国本土に設置されている防空レーダーが巨大な機影を3機探知

したのだ。帝国本土が空襲を受けるなんて事態異世界へ転移してから初めての事態だったため住民は浮き足立つ。

 

「一体何事だ?」

「殿下! 敵の空襲です。いますぐ避難しましょう! 危険です!!」

 

 皇太子グラカバルも軽く混乱したものの、即座に冷静さを取り戻し近くにいた従兵と共に防空壕へと避難を始めた。

カルカリアの街にカバルが居る理由は、新型駆逐艦の進水式に父の代理として参列するためである。カルカリアは軍港の街なのだ。

 

「わ、わかった。避難するぞ!」

 

 カバルは従兵に抱えられる様にして防空壕へ避難する。

その時カルカリア上空を数機のジェット戦闘機が飛来した。

グラ・バルカス帝国、陸軍航空隊の最新鋭戦闘機トニトルスだ。トニトルスはコントレイルを曳きながら市街地上空をパスし、海の向こうへ飛び去っていった。

 

「おぉ!あれが噂の新鋭機か! すごい!」

 

 カバルはトニトルスを見て感激する。まるで少年のように瞳を輝かせて飛び去っていく戦闘機を見上げていた。

 

「殿下!早く避難しましょう!」

「おお、すまん。あまりに格好良いのでな……」

 

 カバルと従兵は防空壕へと急ぎ足で急いだ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「目標2機を目視で確認」

 

 カルカリア東部海上にてトニトルス隊8機の編隊長であるレンゲン中佐は高度4000メートルをパルキマイラを迎撃するために飛行していた。

 パルキマイラはその巨体故、遠くからでもレーダーに頼らずとも簡単に目視で発見できた。

 

「奴らカルカリアを爆撃するつもりだな。そうはさせん!」

 

 彼は操縦桿を握る手を強め、武装の安全装置を解除する。

 

「編隊長、あれが噂のミリシアルの空中戦艦って奴ですかね?」

 

 部下からの質問にレンゲンは軽く頷いた。

 

「ああ、間違い無いだろう。攻撃開始だ! 俺たちの実力を奴らに思い知らせてやるぞ!」

 

 トニトルスの編隊はスロットルを開くとパルキマイラに機首を向け、加速する。

 

「で、でかい……」

 

 巨大な空中戦艦が2機並んでいる様子を見てパイロットたちは圧倒されていた。

 

「ひるむな! ミサイルの射程に入り次第攻撃する」

 

 トニトルスは新型の空対空ミサイル、アダーを各機4発ずつ搭載している。これは大型のセミアクティブレーダーミサイルで、ケイン神王国の爆撃機を迎撃するために開発された兵器だ。

 

「各機!ミサイル発射!」

 

 レンゲンの命令により、トニトルスのパイロットたちが次々にアダーの発射ボタンを押す。合計8発のアダーはパルキマイラに襲いかかるべく目標へ向かって飛び去っていく。

 

「敵、誘導弾を発射!」

 

 パルキマイラ4号機の艦橋でオペレーターが叫ぶ。

 

「アトラタテス砲対空モード! シールド出力を最大に! 敵ミサイルを防御しろ!」

 

 ベジモンドは部下へ指示を出す。多砲身魔導機関砲アトラタテス砲がターレットを旋回させ、さらに備えられたシールドジェネレーターの出力が上昇し、ミサイル迎撃の準備を整える。

 

 パルキマイラの周囲に現れたシールドの膜が可視できるほどに輝く。8発のアダーは高速でパルキマイラへ接近する。だがアトラタテス砲がミサイルの接近を感知し、それを撃ち落とすべく砲口が光り輝く。

アダーとアトラタテス砲の光弾が空中で激突する。発射された8発のアダーのうち5発は撃墜され、残り3発はシールドに阻まれ、爆発する。水面の波紋の様な模様がシールド表面に生まれ、幾何学模様を作る。

 

「ぐおっ!」

 

 吸収しきれなかった衝撃がパルキマイラを襲う。コンソールから火花が散り、警報音がけたたましく鳴る。

 

「被害報告!」

 

 ベジモンドがオペレーターに確認する。オペレーターは素早くコンソールを操作し、被害状況を報告した。

 

「エンジン出力92%に低下。シールド出力76%。稼働に支障なし」

 

 その報告を聞き、ベジモンドは安心する。パルキマイラは無事だった。だがまだ敵の攻撃は終わっていない。

 

「敵ミサイル第2波接近! 数8!」

 

 更なるミサイルがパルキマイラへ迫る。

 

「迎撃!!」

 

アトラタテス砲のターレットが必死に動きまわり、接近するミサイルを撃ち落とす。8発のミサイルのうち4発は撃墜に成功した。残り4発はシールドで防ぐ。

 

「シールド出力54%に低下。アトラタテス砲A砲塔とD砲塔がオーバーヒート! 1番通路で火災発生!」

 

 オペレーターが叫ぶ。ベジモンドはすぐさま命令を飛ばす。

 

「 アトラタテス砲のA、D両砲塔の強制冷却装置を作動! 1番通路消火のため応急班を出動させろ!」

「応急班出動させます。」

 

 別のオペレーターが答えた。

 

(このままでは撃墜されてしまう!)

 

 ベジモンドは手汗を滲ませながら事態の対処に当たった。

 

「1番通路火災鎮火!」

「アトラタテス砲冷却機作動。10分後に冷却完了予定!」

 

「エンジンへのエネルギー供給回路再起動!」

 

 一方、トニトルスのパイロットたちもパルキマイラの強大さに焦っていた。

 

「なんて奴だ! 攻撃に耐えやがった!!」

 

 彼らはミサイルを撃った後すぐに離脱し距離をとっていたためアトラタテスに撃たれず無事だった。だがそのパイロットたちですら恐怖を禁じ得ないでいた。

 

「あの空中戦艦はバケモノかっ全く!」

 

 彼らは前方を悠々と飛行するパルキマイラに恐怖していた。あの巨大戦艦には自分たちの攻撃が通用しなかったのだ。それどころか自分たちが放ったミサイルの一部すら撃墜されている。これは尋常ではない事態だ。残りのミサイルは各機2発ずつ、仕留めきれるか微妙なところだ。

 

「特殊弾弾頭仕様のアダーを使用するしかないか……」

 

 レンゲンが呟く。

特殊弾弾頭仕様のアダーは弾頭が核なのだ。これならあの空中戦艦を破壊できるかもしれない。だが……。

 

「使用しますか?」

 

 部下からの問いにレンゲンは渋い顔になる。都市近くの空域での使用は放射能汚染のリスクもある。

しかしここで敵を仕留めなければ、カルカリアがやられる可能性がある。撃墜しておかねばなるまい。

 

「……特殊弾頭のアダーを使用する!援護しろ」

「了解しました!」

 

 レンゲンは決断を下す。部下の返答を聞いたレンゲンはすぐさま核アダーの発射準備に取りかかる。

「目標補足!」

 

レンゲンの号令とともに射撃指揮レーダーが照射される。核弾頭の安全装置が解除され、目標固定シーケンスが立ち上がる。

 

「ターゲットロック! 発射!」

 

 1発の核アダー含む、計8発ものミサイルがパルキマイラへ向けて発射される。

 

「きたぞ!」

 

 ベジモンドはミサイルの接近を感知する。すぐさま使用可能なアトラタテス砲へエネルギー供給を開始させ作動させる。魔光による濃密な弾幕が展開される。

 

 数発のミサイルが魔光に捉えられ爆発するが、レンゲンの放った核アダーは弾幕をかいくぐり、パルキマイラへ到達した。

瞬間、まばゆい光と膨大な熱量がパルキマイラを包んだ。

 

「やったか!?」

「まだだ!油断するな!」

 

 黒いキノコ雲が空に形成される。それが晴れるころには半壊し墜落しつつあるパルキマイラの姿があった。

 

「目標の撃墜に成功!」

 

 パイロットの1人がガッツポーズを取る。トニトルス隊も歓声を上げた。

 

「だがまだ終わってないぞ、もう1機は健在だ」

 

 レンゲンは気を引き締めなおすと次の攻撃へ備えた。

核アダーによって生じた爆発で空は黒煙で満たされていた。その黒煙を斬り裂き、メテオスが乗るパルキマイラ2号機が姿を現した。

 

「今のはまさか……コア魔法!?」

 

 メテオスはさきほどの核爆発見て驚きの声を上げる。

 

「4号機応答しろ。ベジモンド!」

 

 半壊し、海上へ不時着したパルキマイラ4号機はあちこちから炎と黒煙を噴き上げていた。ベジモンドら4号機の乗員の生存は絶望的だが、メテオスは一縷の望みをかけ、呼びかけ続ける。

だが無線から返事は返ってこない。

 

「くそッ!!」

 

 メテオスはコンソールを殴りつける。貴重なパルキマイラが……そしてベジモンドら乗員の命が失われたのだ。

 

 2号機のブリッジでは警報が鳴り響いていた。どうやら核爆発の余波で機関部が破損してしまったらしい。エンジン出力が低下し、機体は安定を失い徐々に高度を下げていく。

 

「あとどれくらいで目標上空に到達できそうだ?」

「あと5分ほどで到達」

 

 操舵員の返事にメテオスは決断を下す。

 

「機関一杯! 目標に向けて前進せよ!」

「メテオス艦長! 今引き返せばイルネティア島近くの海上へ不時着出来るかもしれません! 自爆攻撃をなさるおつもりですか!?」

 

 部下はメテオスへ引き返すことを進言するが、それは却下された。

 

「ここで引くわけにはいかない。それにな……生きて帰れる保証はないだろう?」

 

 そう言ってメテオスは笑って見せた。だがその顔はどこか悲しげで、そして何かを諦めたような力無い笑顔だった。部下たちは何も言えなくなってしまった。

 

「……」

 

 ブリッジを沈黙が支配する。聞こえてくるのは各種警報の音と、パルキマイラのエンジン音だけだった。

 

「やりましょう! グラ・バルカスの奴らに、我々の恐ろしさを思い知らせてやろうではありませんか!!」

 

 そんな中1人の若い乗員が叫んだ。他の乗員もそれに続く様に雄叫びを上げる。全員の目には闘志が燃え滾っていた。グラ・バルカスと刺し違える、彼らの心は今1つだった。

そんな彼らにメテオスは少し面食らった表情になるが、すぐに笑顔を浮かべ部下たちを励ますのだった。

 

「そうだな……皆行くぞ!! 」

「おおッ!!」

 

 当然まだ飛び続けるパルキマイラ2号機を黙って見ているほどトニトルス隊ではない。残りのミサイルを果敢にパルキマイラへと撃ち込んでくる。

空に白煙の筋が幾条も描かれ、魔光が乱舞する。いくつかのミサイルがパルキマイラ2号機に命中するが、それでもメテオスらは飛び続けた。

 

 そして2号機はカルカリア市街地上空へ到達する。

 

「今だ! コア爆弾投下!」

 

 2号機から投下された巨大なコア爆弾はカルカリアの市街地に着弾し眩い閃光と爆炎を振りまく。まるで太陽が地上に生まれ落ちたような輝きと熱量がそこから発生する。

無形の衝撃波が市街地を駆け抜け、灼熱の爆風が人や建物を薙ぎ払い、すべてを灰燼へと変える。

 

 カルカリア市街地は一瞬で炎の海と化す。もはやそこは瓦礫と死体の山しかないただの焼け野原だ。

そのあまりの威力にトニトルス隊のパイロットたちは言葉を失った。

 

「ふははははは……あははは! どうだ、思い知ったか!! グラ・バルカス人など虫けら同然だ!」

 

 メテオスは哄笑する。その目は狂気に染まっていた。

 

「このパルキマイラはもう持たない。機関部も逝ってしまったようだ」

 

 メテオスは冷静な口調で言う。そこにブリッジ目掛けてトニトルス戦闘機が30ミリ機関砲を掃射した。

 

「うわああ!」

「ぐはッ!」

 

ブリッジ員たちの悲鳴と肉が弾ける音が響く。もはや3号機のシールドは機能していなかった。コンソールが血に濡れ、あちこちから火花が飛び散り、煙が充満する。

 

「この機はもう終わりだな……」

 

メテオスは諦めの言葉を呟くと、後方のパルキマイラ4号機へ連絡をとる。

 

「こちらパルキマイラ2号機メテオス。目標へのコア爆弾攻撃は成功したものの、こちらは機関の損傷が限界で墜落する。」

 

その連絡を受け、3号機から通信が入る。

「こちらパルキマイラ3号機エルアだ! 2号機の状況は? 無事なのか!?」

「コア爆弾は命中した。ただこちらの機関もそろそろ限界だ……。あと1分以内に墜落するだろう……」

 

 エルアは絶句し言葉を失う。2機の空中戦艦を同時に失い彼も混乱の極みにあった。

 

「これが最後の通信になる。エルアは本国へ帰還せよ。あとは頼む!」

 

 メテオスは通信を切る。そしてすぐに脱出口へ向かうと、非常用ハッチを開放する。

 

「私はまだ死なんぞ! 」

 

 メテオスは自分に言い聞かせるかのように呟くと、そのまま空へ身を投げた。彼の体は重力に引かれ落ちていく。メテオスは空中でパラシュートを展開し減速しながら地上へ降り立つ。その途中パルキマイラは空中で爆発し木端微塵になる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 メテオスは肩で息をしながら見渡す。彼の視線の先には燃えさかるカルカリア市街地が広がっていた。上空から見たときは炎の照り返しで眩しいほどだったが、地上の惨状を目の当たりにするとそんな感情は吹き飛んだ。それはまさに美しい地獄だった。

 

 メテオスはその光景を見て笑みがこぼれた。自分がここまでやったことに対しての満足感と勝利に対する高揚感がこみ上げてくるのだ。

 

「ふははははは!……ざまあみろ。私の勝ちだ!!」

 

 彼は狂ったように笑い声を上げる。その姿は地獄の中を歩む亡者のようであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「なんだこれは!……」

 

 シェルターから出たグラカバルは一変したカルカリアの市街地を見て絶句した。美しい街並みが燃えて、街の中央は焼け野原になり、黒々としたキノコ雲が立ち昇っていた。その破壊力にただただ呆然とするしかない。

カバルの従兵の1人が口を開く。

 

「まさか核攻撃!? バカな!! 」

「ミ、ミリシアルが核を使ったというのか!?」

 

 カバルは信じられないといった表情で思わず叫ぶ。ミリシアルの暴挙に恐怖すら覚える。これではまるでユグドでの悪夢の再現ではないか! カバルは心の中で吐き捨てる。

すると笑い声が聞こえてくる。カバルはその笑い声のする方へ足を運ぶ。するとそこには狂ったように笑う1人の男がいた。グラ・バルカス帝国では見ない服装をしており、変な仮面をつけている男だった。

 

「そこの男! なぜ笑っている! 」

 

 カバルはその男に向かって声を掛ける。しかし男は笑い続けるばかりで返答がない。仕方なく彼は男を連行しようと近づいた瞬間、突然その男は叫んだ。

 

「この素晴らしい光景を見ろ!!我々の力を思い知ったか!!」

 

 彼はメテオスだ。彼は高らかに笑い声をあげ続けていた。

 

「なに……?」

 

 カバルは眉をひそめる。

 

「この光景を見ろ!まさに芸術だと思わないか!? 虫けら同然のグラ・バルカス人に相応しい末路だ!!」

「お前が核を使ったのか!!」

 

 カバルは怒りに任せて叫んだ。彼を知る者なら誰もが驚くであろう凄まじい声量だった。彼はメテオスに歩み寄ろうとしたが、足元で突然爆発が起きる。それはメテオスの魔法攻撃であった。爆炎がカバルの視界を覆いつくす。その衝撃にカバルは咄嗟に横へ跳び回避する。

 

「おっとここにも、虫けらがいたな……」

 

 メテオスはニヤリと笑うと、手のひらをカバルへ向ける。その手の平が光り輝くと一筋の光が射出された。光はそのままカバルの胸を貫くかと思われたが、間一髪のところで回避する。

 

「貴様何者だ?」

 

 カバルは腰の剣を抜き放ち、メテオスへ向ける。彼の全身から闘気が溢れ出てくる。その怒気に呼応するかのように空気が張りつめたものとなる。

だがそれでもメテオスは薄ら笑いをやめない。よほど自分の勝利に自信があるらしい。

 

「神聖ミリシアル帝国。魔帝対策省古代兵器戦術運用対策部運用課部長……メテオス」

「グラ・バルカス帝国皇太子。グラカバル 」

 

 両者の間で激しい視線がぶつかり合う。どちらも一歩も引くことなく、そして自分の勝利を確信していた。

 

「おや、皇太子殿下でしたか……これは失礼いたしました」

 

 メテオスは慇懃無礼な態度で話す。しかし全身から漂う空気は自信に満ち溢れていた。

 

「どうやら皇太子殿下は私との決闘を御所望の様子……ならばお相手して差し上げましょう」

「ミリシアルの蛮行により大勢の無辜の人々が傷つき、犠牲となった。決して許されるものではない」

 

 カバルは怒りと憎しみを隠そうともせずメテオスへぶつける。

 

「この剣には犠牲になった人々の無念が、憎しみが込められている。メテオス、お前をこれから斬る!」

「ふっ……たかだか一介の皇太子に何が出来ると? 」

 

 メテオスは小馬鹿にするような口調で言う。そこには絶対の自信があった。その余裕の態度がカバルをさらに苛立たせた。

 

「そういう貴様こそ、これから俺に成すすべなく倒されるのだ!覚悟せよ!!」

 

 カバルは地面を蹴ると一気に間合いを詰める。剣を上段に構え、そのまま真っ直ぐ振り下ろした。カバルは一撃のもとに斬り伏せるつもりでいた。

 

 しかしその瞬間にメテオスの掌から衝撃波が放たれる。凄まじい威力の衝撃波だ。その衝撃をカバルはまともに受けてしまう。

そして後方へ吹き飛ばされ地面を転がる。あまりの勢いにそのまま地面を滑っていく。その衝撃に彼の全身の骨が悲鳴を上げていた。

それでも剣を手放してはいないのはさすがだと言えるだろう。カバルはすぐに体勢を立て直すと再び剣を構える。

 

 その様子を見てメテオスは嘲笑するかのような笑みを浮かべる。

まるでもう勝ったかのような態度だ。カバルはその態度に怒りを覚えるが、今は冷静さを保つことが重要だと思いグッと堪える。

 

(落ち着け……怒りに身を任せるな。冷静になれ……)

 

 カバルは自分にそう言い聞かせるように心の中で呟く。そして呼吸を整えると再び剣を構える。その様子を見たメテオスは余裕の笑みを浮かべながら口を開く。

その態度にますます怒りが込み上げてくるが、必死に耐えるカバルだった。

 

「ほう、これに耐えるとは並みの人間なら今ので終わっていましたよ? さすがは皇太子殿下だ。次はこちらからいきますよっ!」

 

 メテオスも腰の細身の剣を引き抜くと正眼に構えると、間合いの外で下から振り上げた。

 

「魔神剣!」

 

 遠い間合いで何を?とカバルが訝しんだ瞬間、剣から青白い衝撃波が発される。その衝撃波は空を切り裂き、カバルへ迫る。

 

「チッ!」

 

 舌打ちをしつつ回避行動をとるが、避けきれずに脇腹に切り傷を負う。痛みで顔が歪むが幸いなことに致命傷ではないようだ。そのままメテオスから距離をとる。

 

「躱すとはやりますねぇ。さぁどんどんいきますよ! 散沙雨!」

 

 メテオスは地面を蹴り一気に間合いを詰めると連続で突きを繰り出す。カバルはその攻撃を次々と捌く。

 

「防ぐだけでは勝てませんよぉ! 流星剣!」

 

 今度は横薙ぎに剣を振り払うと、衝撃波が放たれる。カバルはその衝撃波も回避しようと試みるが避けきれずに体に衝撃が走る。それはまるで鉄球をぶつけられたような威力だった。

あまりの威力に一瞬意識を失いかけるが踏みとどまり反撃の機会を窺う。そしてメテオスが再度間合いを詰めようとした瞬間を見逃さずカバルは斬りかかる。

 

「舐めるなぁ!!」

 

 その攻撃をメテオスは細身の剣で受け止めようとするが、あまりの勢いに受けきれず後方へ吹き飛んでしまう。

 

「ぐっ……」

 

 メテオスは地面に叩きつけられる前に受け身を取ると素早く立ち上がる。しかしその表情は苦悶に満ちていた。脇腹の傷からは血が滴っている。あのカバルの攻撃で受けたダメージは決して軽くなかった。

それでも彼は笑みを浮かべると剣を構え直す。

 

「ほう……今のを防ぐとはさすがは皇太子殿下だ。ではこれはどうです!」

 

 メテオスは地面に掌を当て魔法を発動する。その瞬間、地面に凍気が走りカバルの足元を氷が覆う。その氷に足を取られカバルは身動きが取れなくなってしまう。

 

「くそっ!」

「動けないでしょう? これから楽に逝かせてあげますよ!」

 

 メテオスはニヤリと笑うと冷気魔法で手に氷でできた槍を作り出す。

 

「アイスジャベリン!」

 

 メテオスは手に持った氷の槍を動けないカバルの心臓へ目掛けて放つ。氷の槍が命中するかと思われたが、カバルは投げられた槍を手で掴むとそのままメテオスへ投げ返した。

メテオスは驚きつつも飛んできた槍を紙一重で躱すが、肩へダメージを負ったようで苦悶の表情を浮かべる。

 

 そしてカバルも足元にある氷を破壊して自由を取り戻す。二人は間合いを取り睨み合った。

二人とも肩で息をしており、満身創痍であることが分かる。

 

「まさか私の魔法を逆に利用するとは……さすがですね」

 

メテオスは肩を押さえつつ感心するように言う。

カバルは剣をメテオスへ向けつつ、内心焦っていた。

 

(強いな……この俺が押されるとは……)

 

 グラ・バルカス帝国の皇太子である自分がここまで追い詰められるとは思っていなかったのだ。しかしカバルはその焦燥感を悟らせないように笑みを浮かべる。

 

(魔法が使える奴のほうが有利だ。次で一気に片を付ける!)

 

 そして覚悟を決めたかのように、剣を構え直すと一気に駆け出した。メテオスはカバルを迎え撃つため魔力を掌に込める。

 

「飛んで火にいるのは皇太子殿下でしたか。ならばこれをお見せしましょう!ファイアストーム!」

 

 メテオスが魔法を唱えると周界に無数の炎の竜巻が現れカバルに向かって行く。そしてその炎は凄まじい速さで襲いかかってきた。

 

「なにっ!?」

 

突然のことに驚きつつも、躱そうとするが全てを躱しきれずカバルの体を炎が焼かれそうになる。だがそれでも彼は諦めない。

 

「風の力よ!!」

 

 カバルが緑色に輝き、風の力を纏い始める。突如生じた風の力はカバルを守る盾となり、迫り来る炎の竜巻を霧散させた。そしてそのまま一気に間合いを詰める。

 

 メテオスの目の前まで来ると剣を上段に構え全力で振り下ろす。メテオスはそ攻撃を細身の剣で受けようとするが、剣ごと押し切られてしまいそのまま脳天から真っ二つに叩き割られた。

メテオスの体は左右に分かれ倒れ伏し、そのまま物言わぬ骸と化した。

カバルは肩で息をしながらメテオスの屍を見つめる。その顔は勝利の喜びよりも悔しさが滲み出ていた。

 

「……グラ・バルカスの民達よ仇は討ちました……どうか安らかに眠ってください……」

 

 カバルは天を見上げると一筋の涙を流す。彼の瞳には天頂が崩れたキノコ雲が映った。

カバルはそれを見ると怒りで拳を握りしめる。そして大きく息を吐き出すと冷静さを取り戻す。そして従兵たちに号令をかける。

 

「周囲を警戒しつつ生存者の救出を行う!急げ!」

 

 それを聞いた従兵たちは慌てて動き出す。その様子を見ながら彼は呟いた。

 

「ミリシアルよ……いずれ借りは返すぞ!」

 

 彼は冷たい声でそう呟いた。

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