日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた   作: まっこーける

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34 終戦

 

 カルカリア市がミリシアルのよる核攻撃を受けたという報はすぐさま帝都のグラルークスの下に届けられた。

皇帝グラルークスは、報告を聞いた後すぐに軍議を開いた。

 

「現在までに分かっている死傷者だけでもおよそ9万人、なお死傷者は増加中であります。また都市やインフラ設備にも甚大な被害が出ております」

 

 カルカリア市の被害について帝王府長官カーツが淡々と報告する。その口調とは裏腹にその顔は苦虫を噛み潰したような表情をしている。

皇帝のグラルークスもまた眉間にしわを寄せ、沈痛な面持ちで報告を聞いていた。彼の右手は強く握りしめられており、かすかに震えている。

 

 皇帝として凛とした振る舞いをする彼であったが、愛する民達の惨状に内心はかなり動揺していた。しかし彼は人前ではそういった感情を表に出すことはない。

 グラルークスの脳裏に民達の姿が浮かび上がるがそれを振り払い報告を続けるよう促す。

 

「現在陸軍第2師団が市内で救援活動を行っています。しかし放射能汚染のため救援活動は難航しております」

 

 グラルークスは目を閉じて、報告を聞いた。そして大きく息を吐くと今後の方針について考える。

 

(なんということだ……これほどの惨状とは!)

 

 心の中でそう嘆くも彼はすぐさま気持ちを切り替える。自分が動揺している姿を部下に見せられないからだ。

 

「わかった。引き続き救援活動を続けろ。あと帝国全土の警戒態勢を強化せよ。……それとカバルの安否は?」

「殿下は無事であります。しかし生存者の救出のためカルカリアで陣頭指揮を執っているそうです」

「そうか……」

 

 グラルークスの顔色が少しだけ明るくなる。それから彼は集まった軍高官を見回した。

 

「さてと……ミリシアルにはどう責任を取ってもらおうか?」

 

 彼は鋭い視線を軍高官たちに向ける。

 

「ミリシアルは一線を越えました。もはや交渉は不可能でしょう」

 

 陸軍長官が口を挟む。彼は頭に血が上っているようだ。冷静だった口調は、段々と熱のこもったものに変わっていく。

 

「ミリシアルを許すわけにはいかん!奴らは必ず報いを受けさせる!」

 

 陸軍長官のその言葉に帝王府長官カーツもまた同調する。

 

「その通りです!彼らは我らグラ・バルカスを本気で怒らせた!後悔させてやらねばなりますまい!!」

 

 他の軍高官たちも口々に声を上げていた。その声は次第に大きくなっていく。

そんな中、グラルークスは静かな声で告げる。その声は軍高官たちの怒号を一瞬でかき消してしまうほど威厳に満ちていた。

 

「もはやミリシアルへの核報復は議論の余地はない。これは決定事項である。攻撃目標の選定はどうだ?」

 

 グラルークスの問いかけに陸軍長官が答える。

 

「はっ!ミリシアルの港湾都市カルトアルパスへグティマウンⅡによる核報復を行います」

「カルトアルパスか……よかろう。カルトアルパスを焼き尽くせ」

 

 陸軍長官は一礼すると会議室から退室した。他の軍高官たちもそれに続き退出していく。そして部屋にはグラルークスとカーツの二人だけが残された。

 

「陛下……やはり報復を行われるのですね?」

 

 カーツが静かに問いかける。彼はグラルークスのことを心の底から尊敬していた。だからこそ今回の決定は苦渋の選択であったと言えるだろう。

 

「ああ、我が国に核攻撃を行った報いを受けてもらわねばなるまい」

 

 グラルークスは強く拳を握り締める。その顔には静かな怒りが浮かんでいた。それを見たカーツは小さくため息を吐くと表情を切り替えた。

カーツは一礼すると足早に部屋を出ていった。一人残されたグラルークスは再び窓の外を見ながら考え込んだ。

 

(ミリシアル……貴様には報いを受けてもらうぞ)

 

 彼は決意を込めた目で窓の外を見つめるのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 数日後グラ・バルカス陸軍航空隊戦略爆撃航空団所属の戦略爆撃機「グティマウンII」1機がミリシアル近海を飛行していた。

 

 帝国本土から飛び立ったグティマウンIIは幾度かの空中給油を受け、カルトアルパスへ向けて飛行する。

空中給油機に空中給油を繰り返すという荒業で帝国本土から長躯カルトアルパスまで到達していたのだ。

 

 もちろん途中で発見されれば迎撃されることは間違いなかっただろう。しかし幸いなことにミリシアルのレーダーは貧弱であり、防空態勢も穴だらけだった。

グティマウンIIは8基のターボジェットエンジンを轟かせカルトアルパス上空へ侵入していく。遥か上空を飛ぶ巨人機に気付いたカルトアルパスの住民も少なくはない。

この段になってやっとミリシアル空軍も気付き、迎撃機を上げようとするが、何もかもが遅すぎた。

 

 グティマウンIIは爆弾倉に抱えた大型核爆弾をカルトアルパス上空で投下した。それはまさに世界1位の大国である自分ミリシアルが文明圏外国などに負けるはずがないという慢心、自尊心が招いた油断であったと言えるだろう。そして無慈悲な一撃が放たれた。

 

 閃光と共に空が赤く染まる。それから少し遅れて人口の太陽がカルトアルパスに生まれた。

カルトアルパス市街地に熱と暴風が襲う。衝撃波がガラスを破壊し、家屋が倒壊していく。カルトアルパスは熱と破壊の坩堝と化した。

 

 爆心地には何もなかった。いや正確に言えば"何も残らなかった"である。

爆心地付近の住民や建造物などあらゆるものは全て蒸発してしまったのだ。

その様子を遠目に見たグティマウンIIの搭乗員たちはただただ言葉を失い戦慄していたという……

後には巨大なキノコ雲が屹立していた。それは見る者に畏怖と絶望を与える存在であった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ミリシアル8世はカルトアルパスが核攻撃を受けたとの報を聞きしばし呆然していた。

 

「カルトアルパスは壊滅的な状態であり、現在も市街地は大規模な火災が発生しているため救助活動は難航しております。

また港湾設備も壊滅的な被害を受け、船舶の航行は絶望的です」

 

 報告を聞いているミリシアル8世は憔悴しきっており、顔には生気が感じられない。まるで死人のようだった。

 

「そうか……」

 

 8世は短く返事をすると大きくため息を吐く。

彼は無言のまま椅子に座り込み考え込むように目を瞑るのだった。

 

「……空軍は何をしていた?」

 

 絞り出すような声で彼は報告に来た高官に問いかけた。その声は低く掠れており、まるで死人のようだった。

 

「は……空軍が気付いた時には既に市街地上空に侵入されており……」

「クビだ……即刻空軍司令長官を罷免せよ」

 

 ミリシアル8世の声は静かだが、しかし聞くものを震わすほどの迫力があった。

 

「はっ、はいぃぃ! かしこまりました!」

 

 高官は敬礼すると退出していった。

 

「更なる報復は現実的でなないか。パルキマイラをこれ以上失うわけにはいかん……」

 

 グラ・バルカスとの戦争を通じて運用可能なパルキマイラの5機中3機を喪失している。これ以上の喪失はミリシアルにとっては大きなダメージとなりかねなかった。

そして今後予想される魔法帝国との全面戦争において、パルキマイラを失うことはミリシアルにとって致命的とも言えるだろう。

 

「だからといってこのまま手をこまねいていれば我が国に未来はない……どうするべきか……」

 

 彼は額に手を当てて考え込む。しかし答えは見つからないのかその表情は暗いままであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 一方の日本でも総理を交えた緊急会議が行われていた。

 

 ミリシアル、グラ・バルカスが他国に向けて核兵器を使用したという事実は日本に衝撃を与えていた。

 

「総理、グラバルカス帝国による核攻撃についてどう思いますか?」

 

 国家安全保障局長が内閣総理大臣、常願寺浩二(じょうがんじ こうじ)に尋ねる。

 

「2国間による核報復の連鎖は由々しき自体である。なんとしても止めなければならない。そのための手段を今講じているところだ」

 

 総理の言葉に国家安全保障局長は頷く。

 

「それはどのような?」

「グラ・バルカス帝国に対し核攻撃を行い、さらなる核報復を思いとどまらせることだ」

 

 総理の言葉に全員が言葉を失う。しかしすぐに反論の声が上がる。

 

「総理、異世界でも核戦争を始めるおつもりなんですか!?  地球での過ちを繰り返すつもりですか!!」

「グラ・バルカス帝国にさらなる核攻撃を思いとどまらせるにはそれしかあるまい。 それ以外にこの惨事を防ぐ手立てはないのだ。」

 

 総理は静かに答える。その目には確かな覚悟が宿っていた。

 

「総理、グラ・バルカスの都市を焼き払うと言うことですか? そんなことは許されません!」

「総理、何をお考えなのですか!?」

 

 官僚や大臣たちは次々に抗議の声を上げる。しかし総理は平然とした表情で答える。その目には強い決意の光が宿っていた。

 

「人口密集地に核攻撃を行うつもりは無い。警告の意味で、グラ・バルカス本土近くの無人島を核攻撃するのだ。防衛大臣、説明を」

 

 防衛大臣が立ち上がる。その表情は至って真面目であった。

 

「はい、攻撃予定地のグラ・バルカス帝国の無人島はおそらく軍の射爆場と推測されます。その島へ核攻撃を行う予定です」

「ムー大陸近海には海自の戦略原潜を待機させております。グラ・バルカス帝国への核攻撃を行う旨の通達の後に攻撃を予定しております」

 

 防衛大臣は淡々と説明し、その説明を国家安全保障局長が補足する。

 

「これで、グラ・バルカス帝国が交渉のテーブルにつくのならよし。もしそうでないのならば、より多くの核攻撃を行う」

「総理、それはあまりにも強硬な手段ではないでしょうか? 私は賛成できません!」

 

 総理の発言に対し他の面々は反論する。しかし総理大臣は首を振り答える。

 

「このまま放置すればグラバルカス帝国とミリシアルが全面核戦争を始めてしまう状況なのだ。魔法帝国復活が迫る情勢下においてそのような事は許されない。そのために必要ならばいかなる手も使う覚悟が必要だ」

 

 総理の言葉に大臣たちは言葉を詰まらせる。

 

「以上で国家安全保障会議を終了する。各自仕事にかかれ」

 

 総理の言葉と共に緊急会議は終了したのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 グラ・バルカス帝国、ニヴルス城は蜂の巣をつついたよう大騒ぎであった。

日本からの核攻撃通達。それを知ったグラルークスは顔を青ざめる。そしてすぐに緊急会議を招集したのだった。

 

「先ほど日本から我が国への核攻撃を行う旨の通達があった」

 

 グラルークスの言葉に全員が凍りつく。一瞬にしてその場が静寂に包まれた。皆信じられないといった表情を浮かべている。

 

「日本は攻撃日時と場所を指定してきていた。それによると、無人島であるアルガス島に対して核攻撃を行うという」

「アルガス島は海軍の射爆場として使われています。そのような場所を核攻撃する意図はなんだというのでしょうか?」

「おそらく我が国に対する警告だろう。これ以上核兵器を使うのなら次は人口密集地を攻撃するとの意思表示だ。」

 

 グラルークスの冷静な分析に会議メンバーはざわつき始める。

 

「日本はどのようにして核攻撃をするつもりなのでしょう?」

「おそらく、弾道弾か長距離爆撃機によるものだろう」

 

 グラルークスはそう推測した。

 

「しかし、日本が長距離爆撃機を保有しているのなら、もっと早い段階で帝国本土を攻撃するはずだ。やらないのは日本が長距離爆撃機を保有して無いか、あるいは政治的理由から使わないのだろう」

 

 グラルークスの推測に全員がなるほどと頷く。

 

「と、なると日本は弾道ミサイルで核攻撃を? 弾道ミサイルの迎撃は至難です」

「うむ、だが……座視しているわけにはいかん。レーダーによる警戒とアルガス島近海に艦艇を派遣しての警戒監視を行うのだ」

「これがブラフという可能性は?」

 

 グラルークスはため息をつくと目を瞑る。そして意を決したように目を開くと話し出す。

 

「その可能性ももちろんある。だが警戒しないわけにはいくまい。我々は日本についてあまりよく知らないのだからな」

「確かにそうですな……」

 

 グラルークスの言葉に会議メンバーたちは頷くしかなかったのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 通達した核攻撃の日。ムー大陸東部海中に1隻の原子力潜水艦が潜航していた。

その艦名は「くろしお」。海上自衛隊にとって、くろしおの名を冠する潜水艦の3代目である。くろしおは核ミサイルを搭載する日本の核戦力の一端を担う戦略原子力潜水艦であり、日本国内において最強を誇る兵器であった。

そのくろしおの艦内は物々しい雰囲気に包まれていた。乗組員たちは戦闘態勢を維持しつつ出撃の時を待っていた。

 

「艦長より達する! 本艦はこれよりグラ・バルカス帝国への核攻撃を行う!」

 

 艦長の声が伝声管を通じて艦内に響き渡る。その言葉に誰もが緊張した面持ちとなった。

 

「いいか、これは民間人の殺傷を目的とした攻撃ではない。あくまでこれ以上の核攻撃を抑止するための攻撃だ!」

 

 艦長は語気を強めて言った。その言葉を聞いた乗組員たちは一瞬静まり返るがすぐに気を引き締めた表情となる。

艦長の言葉を聞いた乗組員たちは皆覚悟を決めたようだった。

 

「ではこれより発射準備に入る! 各員配置につけ!!」

 

 艦長の号令で艦内は一気に慌ただしくなる。人員は次々配置につき発射準備を整える。

艦長は副長と同時に金庫へ鍵を差し込み、同時に回すと金庫の扉を開いた。

そこには核発射キーが収められていた。艦長は金庫からキーを取り出すと、それを発射コンソールに差し込むとコードを入力していく。

 

「1145141919」

 

 コードは承認され、コンソールには核発射の準備が完了した旨が表示される。

 

「艦長、発射準備完了しました!」

 

 副長の言葉に艦長は頷く。

 

「1番発射管、撃て!」

 

 艦長の命令を受け、発射管から海上へ飛び出したミサイルはロケットブースターに点火すると一気に低高度軌道へ到達する。

 そして大気圏を脱出するとグラ・バルカス帝国のアルガス島へと飛翔していく。

 

 同時刻、グラ・バルカス帝国でも動きがあった。レーダーに未確認飛行物体が映ったのである。

 

 すぐさま帝国全土に警戒態勢が敷かれ、緊張が走る。

 

「弾道弾らしき物体、我が国上空を飛行中です!」

 

 弾道弾を探知したレーダーサイトは半ばパニック状態に陥った。

 

「着弾地点は?」

「現在追尾中です」

 

 レーダー員の言葉と共に、弾道弾の軌跡が画面上に表示される。その軌跡はアルガス島へと向かっていた。

 

 アルガス島近海の海上には1隻の駆逐艦が遊弋していた。日本からの弾道ミサイルの監視を目的として派遣されていた艦である。

日本の弾道弾が接近する中、その駆逐艦の乗組員たちは緊張感に包まれていた。

 

 そして数分後、ミサイルはアルガス島上空に到達。轟音と共に起爆し巨大なキノコ雲が発生した。

アルガス島は核爆発により消滅したのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 グラ・バルカス帝国。帝都ニヴルス城では、グラルークスが沈痛な面持ちで報告を聞いていた。

 

「日本が放った核ミサイルは、帝国本土上空を横断しアルガス島を消滅させました」

 

 その言葉に会議室内は静まりかえる。誰もが呆然とした表情でグラルークスを見つめていた。

 

「なんということだ……」

 

 グラルークスは頭を抱えた。その表情は絶望感に染まっていた。

日本の核ミサイルが帝国を横切り、本土西側にあるアルガス島に着弾したということは、日本の核ミサイルは帝国全土を射程に収めていることを意味していた。

つまり、日本はいつでもどこでもグラ・バルカス帝国に核攻撃を行うことができるのである。しかもグラ・バルカス帝国に日本のミサイルを迎撃する手段はない。グラルークスは弱々しく呟く。

 

「もはや手詰まりか、この戦争ここまでだな。講和するしかないか……」

 

 グラルークスの言葉に全員が困惑した表情を浮かべる。

 

「しかし陛下、日本やミリシアル、ムーは講和に応じるでしょうか?」

「レイフォル戦線は膠着状し自然停戦状態だ。これ以上戦争を続けるのは彼らにとっても益はないだろう。それに日本はグラ・バルカス帝国がこれ以上の核攻撃をしないのであれば、交渉の用意がある言っている。」

「ですが陛下、日本が約束を反故にする可能性も……」

「そうかもしれんな。だが、日本は警告のための核攻撃をした。本気で日本が帝国を滅ぼするつもりならば、初めから人口密集地への攻撃を行ったはずだ。」

「確かに……」

「それに、ミリシアルもムーもこれ以上の戦争継続は不可能だろう。彼らもそうとう疲弊していると聞く。交渉に応じる可能性は高いだろう」

「では、陛下は交渉に応じるおつもりですか?」

 

 グラルークスは頷いた。その表情には覚悟が表れていた。

 

「このままでは核を撃ち合えば我が国は滅亡する。講和するしか道はないのだ」

 

 その言葉に会議メンバーは誰も反論できなかった。自国を存続させるためにはどんな手段でも講じるしかないことを理解していたからである。

 

「カバル。お前を特使に任命する」

「はっ」

 

 グラルークスの言葉にカバルは姿勢を正す。

 

「講和に向けた交渉に臨め」

「必ずや帝国の存続のため、交渉を成功させて見せます。父上」

 

 こうして、グラ・バルカス帝国は日本含む連合国との講和へ向け動き始めるのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 交渉の場に選ばれたのはグラ・バルカス帝国領レイフィルのレイフォリア、統制府。ここが帝国と連合国との講和交渉を行うために選ばれた場所だ。

 

 日本、ミリシアル、ムーはグラ・バルカス帝国からの講和の呼びかけに応じ、ここに集まっている。

テーブルを囲むようにグラ・バルカス帝国の面々と日本、ミリシアル、ムーの各国の代表団が座る。

最初に口火を切ったのはグラ・バルカス帝国のグラカバルだった。

 

「まずは我々の要求を伝える」

 

 グラカバルは机の上に広げられたムー大陸の地図を指し示す。

 

「まず、レイフォルを帝国の領土として認めること、その上で我々には核兵器を使用しないと約束することだ」

 

 グラカバルの言葉に日本国の代表である浅田は渋い顔をする。ムーとミリシアルも複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「グラ・バルカス帝国が言うレイフィル領とは、現在あなた達が実効支配している領域のことか?」

 

 ムーの代表が言葉を返す。その口調には若干のトゲが含まれていた。

 

「開戦前に帝国が支配していた地域を指している」

 

 グラカバルがそう答えると、ムーの代表は鼻を鳴らす。

 

「ムーとしてはそれは認められない。グラ・バルカス帝国のムー大陸全域からの撤退を要求する」

 

 グラカバルは首を横に振る。

 

「それはできない」

 

 グラカバルの答えにムーの代表は怒りを露わにする。

 

「最低でもグラ・バルカス帝国がムー大陸全域から撤退するのが条件だ。再度グラ・バルカス帝国が侵攻するのを阻止するためにもな」

 

「帝国が全領土から撤退するのは、帝国の安全保障の観点からも不可能だ。それではそちらの要求を呑むことはできない」

「貴様!!」

 

 ムー代表が激昂する。しかしグラカバルは涼しい顔だ。その彼へダラスが耳打ちする。ダラスはレイフィルの大地を走破し、レイフォリアまで生きてたどり着いた後、交渉団の一員に加わっていた。

 

「殿下、その調子です。初めに呑めない要求をしておいて、その後の条件交渉で呑める条件を取り付けるのです。それが外交というものです」

 

 ダラスとグラカバルはほくそ笑む。これでペースはグラ・バルカス帝国側へ傾いた。

 

「待っていただきたい」

 

 ムーとグラ・バルカスの議論が白熱する中、朝田が慌てて口を挟む。

 

「我々は一度冷静になるべきだと具申する。この場で言い争っても何も得るものはないだろう」

 

 朝田の言葉に2人は黙り込む。そして少し間を置いて再び口を開いた。

 

「現在、グラ・バルカス帝国と連合国が実効支配している地域を、それぞれの領土として認め、今の前線を国境線とする。そして国境線から数キロに渡り非武装地帯を設け緩衝地帯とする。

この条件ではいかがか?」

 

 朝田はグラ・バルカス帝国にそう提案する。その提案にグラカバルは頷いた。

 

「いいだろう」

 

 グラ・バルカス帝国としてはレイフォルの大部分が帝国領として存続できるから許容範囲内であった。

 

「朝田殿がそうおっしゃるなら、我々も賛成です」

 

 ムーの代表がそういうとグラ・バルカス帝国の面々もそれに同意する。

 

「ではこの条件で異論はないですね」

 

 朝田の言葉に、双方は頷く。次にミリシアル代表が口を挟む。

 

「グラ・バルカスとムーはそれでよいかもしれないが、我々ミリシアルとグラ・バルカスの間にはまだ何も解決されていない。グラバルカス帝国は、我が国の都市にコア爆弾攻撃を行い多くの市民を殺傷した。グラ・バルカスは我が国に賠償と謝罪を要求する」

 

 ミリシアルからの要求にグラ・バルカス帝国の面々は表情を硬くする。しかし、すぐに平静を装った。

 

「我が帝国はミリシアルに対し謝罪も賠償も行わない」

 

 グラカバルの言葉に、今度はミリシアル側が表情を変える番だった。

 

「なに?」

 

 ダラスがグラカバルへ耳打ちする。

 

 「そうです殿下、ここで賠償や謝罪を行ってはいけませんよ」

 

 その言葉にグラカバルは頷く。

 

「貴国は我が帝国に対して先制核攻撃を行った。それに対して当然の報復

を行ったまでだ。貴国も我が国に対して核攻撃を行い多くの市民を殺傷した。これはお互い様だ」

 

「先進11か国会議で卑劣な奇襲攻撃しておいて何を言うか! 被害者面をするなっ!そもそも、お前たちが戦争を始めたのだろうが! それを棚に上げて、ふざけるなっ!!」

 

 ミリシアル代表が激昂しテーブルを拳で叩きながら立ち上がった。一方のグラカバルも椅子から立ち上がり言い返す。

 

「先進11か国会議の件については、卑劣な奇襲などではない。宣戦布告をしたではないか。それにあの時は目標を戦闘用艦艇や軍事施設に絞り攻撃を行った。貴国がカルカリアに対して行った攻撃は民間人の殺傷を意図的に狙った無差別攻撃だ。同列にして語るのはやめていただこう」

 

「fuck you!! ぶち殺すぞヒューマン!!」

 

 ミリシアル代表が暴言を吐き、場が殺気立つ。

 

「双方とも落ち着いてください。今は喧嘩している場合ではないでしょう」

 

 朝田が間に入り、その場を収める。朝田は席に着き話を続けた。

 

「グラ・バルカス、ミリシアル双方の核攻撃に関してはお互い様ということで不問としましょう。お二人も核の投げ合いによる絶滅戦争は避けたいでしょう」

 

 朝田の言葉にミリシアルの代表者が口を開く。

 

「それでもグラ・バルカス帝国はコア爆弾攻撃した事について謝罪と賠償をするべきだ。これでは遣り得ではないか」

 

 その言葉に朝田は首を横に振る。

 

「ミリシアル代表。あなた方が核……コア爆弾を先制使用したという事実は重い。報復されて当然です。その事実をしっかりと受け止めていただきたい」

「なんだと! お前はどちらの味方なのだ!」

 

 ミリシアル代表は怒り心頭といった表情で朝田を睨む。

 

「日本とミリシアルは同盟関係にはありません。今回の戦争ではたまたま利害が一致したに過ぎない。

ミリシアルがこれ以上の核攻撃を受けないのは我々が抑止しているからなのです。それに、これ以上の事態の悪化は国際社会の一員として看過できません」

「ぐっ……」

 

 朝田の言葉にミリシアル代表は言葉に詰まる。これ以上戦争が続けば不利なのはミリシアル側だった。

 

「わかった。今回の件については不問すとしよう。だが決して忘れないぞ」

 

 ミリシアル代表は不服そうに浅田の言葉を受け入れたのだった。

 

「こちらもそれで良い。」

 

 グラカバルも頷く。

 

「では次に日本からグラ・バルカス帝国へ要求する。グラ・バルカス帝国は撃沈した日本の自動車輸送船「DRIVE NEW WORLD」に対しての謝罪と賠償を要求する。さらに今次戦役の戦費として1兆円を日本に支払うことをここに要求する」

 

 朝田の言葉にグラカバルは即答した。

 

「その要求は呑めない」

 

 グラカバルの言葉に朝田の表情は厳しいものへ変化する。

 

「日本は24時間いつでも貴国の都市へ核攻撃を行える。そのことを踏まえたうえでの回答か? 1兆円支払うか、それとも数百万の人命か? どちらかを選ぶといい」

 

 朝田の言葉に、グラカバルは怒りの表情を向ける。

 

「貴様っ!交渉団とは名ばかりか?脅迫するつもりかっ!」

 

 グラカバルの怒声に、しかし朝田は平然とした表情だった。

 

「聞きたいのは『はい』か、『いいえ』だ。返答を聞こう」

 

 グラカバルは顔を青くし、苦虫を噛み潰したような顔で答えた。

 

「分かった……要求を呑もう」

 

 グラカバルがそう言った瞬間、場はざわめき立つ。

 

「殿下、よろしいのですか?」

 

 ダラスはグラカバルの耳元で囁く。グラカバルは小さく頷いた。

 

「金さえ払えば日本は許してやると言っているのだ。1兆円がグラ・バルカスの通貨に換算してどれほどの額か知らぬが、支払えない金額ではあるまい。1兆円で日本の気が済むなら安いものだ」

「確かにそうでしょうが……」

 

 グラカバルはダラスを手で制す。そしてグラ・バルカス帝国側の出席者へ語りかける。

 

「我々としてはこの要求を受け入れるしかないだろう」

 

 グラカバルの言葉に、他の出席者も頷くしかなかった。

 

「では当協議の内容をまとめる。

1.グラ・バルカスと日本、ムー、ミリシアルの3国は、レイフィルにおける戦闘を停止し、現在実効支配している地域を領土とし、国境線に非武装地帯を設ける。

2.グラ・バルカス帝国は、日本へ1兆円を支払うものとする。

3.グラ・バルカス帝国とミリシアルが双方に対して行った核攻撃については、双方謝罪と賠償はしないものとする。

以上の内容で合意するということでよろしいか?」

「異存はない」

「こちらもだ」

 

 朝田の確認に各国代表は頷いたのだった。中央歴1943年11月11日、ここに4国による講和条約が締結されたのであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 会談終了後、朝田は建物の屋上で1人風に吹かれていた。夕日が水平線

へ沈みつつあり、海面を真っ赤に染めていた。まるで今回の戦争の犠牲者の血潮のように見える。

沈みゆく夕日を眺める浅田へ1人近づく人物が居た。

 

「何の用だ?」

 

 朝田は振り返りながらその人物へ問いかける。やって来たのはダラスだった。

 

「お前と決着を付けに来たのさ」

 

 2人は距離を取りながら対峙する。朝田の側には護衛の兵はいない。この2人の戦いに割り込む勇気のある者など、この世界にはいなかった。

 

「戦争は終わった。もう戦う必要はないはずだが?」

 

 朝田は肩を竦めてみせる。

 

「確かに戦争は終わった。最後は個人的な決着をつけようではないか」

 

 ダラスは不敵な笑みを浮かべながら答えた。朝田もそれに頷く。

 

「そうだな……俺もお前との決着を付けなければならないと思っていた」

「では、始めようか」

 

 夕日をバックに2人の男は向かい合い、対峙する。2人の殺気によって空気が張り詰め、心地よい緊張が2人を包む。

先に動いたのは朝田だった。彼は懐からP220拳銃を取り出すと連続して発砲。

弾倉内の9発全部がダラスの胴体にめり込んだ。

 

 倒れるダラス。勝利を確信し朝田は笑みを浮かべた。しかし、次の瞬間ダラスは何事も無かったかのように立ち上がる。

 

「くっくっくっ。朝田、せっかくの決闘に銃器を持ち込むなんて無粋だぞ」

「ば、ばかな…」

 

 朝田の顔が驚愕に染まった。

9発の弾丸を食らいながらも平然としている目の前の男に対して恐怖を覚える。

 

「貴様、本当に人間か?」

「俺はただの外交官だ。そして超グラ・バルカス人だ。銃弾程度では死なん。鍛え方が違うんだよ」

 

 ダラスの胸板にめり込んだ弾丸がポロポロと地面に落ちる。どうやら銃弾は強靭な筋肉に阻まれて止まっていたようだ。

 

「次は俺の番だ!」

 

 ダラスは腰を落とし、右拳を握り締めると朝田に向かって殴りかかった。

迫り来る剛腕に対し、朝田は咄嵯の判断で身を屈めることで回避に成功する。

朝田の頭上スレスレを通り過ぎるダラスの腕。もし朝田が避けていなければ確実に頭部を吹き飛ばしていたことだろう。

 

「今の一撃を避けるとは、やるな!だがこれは避けられるか!?」

 

 ダラスは力を溜めると全身に気を廻らせていく。そして廻らせた気を両腕に集中させる。

 

「うぉおおおっ!! 喰らえ奥義! 空覇烈風拳!(スカイ・バースト)」

 

 ダラスは技名を叫びながら朝田に向けて渾身のパンチを放った。

放たれた拳は大気を引き裂き衝撃波を発生させ、床面に大きな亀裂を走らせる。

その威力たるや、衝撃波のみで小動物なら殺せるほどであった。

 

「グワーッ」

 

 朝田がダラスの技を受けて吹き飛ぶ。

彼の上着はダラスの拳のエネルギーによって炎上していた。

炎に包まれながら地面を転げ回る朝田。

その顔には苦痛と屈辱の色がありありと浮かんでいた。

 

 一方、ダラスは満足そうな表情で笑う。

自分の放った攻撃が相手を苦しめていることに対する喜びがあった。

 

 

「どうだ朝田? 降参するか?今なら許してやってもいいぞ」

 

 ダラスは炎上する朝田に問いかける。

 

「断る」

 

 そう言って朝田は立ち上がり、燃え盛るワイシャツを脱ぎ捨てる。

朝田の肉体は……否、朝田の体は人間のものではなかった。

 

 燃える炎の下から現れた体は人工的な光沢を持つ金属製のボディだったのだ。

朝田は首から下が全部機械化されたサイボーグであった。

朝田の姿を見てダラスは驚く。

 

「な、なんだそれは? 一体どういうことだ?お前は人間ではないのか?」

「俺は機械化手術を受けた日本生まれの外交官だ。そしてお前を打ち破る男だ」

「面白い! 地球にはそのような技術があるのだな。ますます気に入ったぞ」

 

 ダラスは笑う。彼は地球人の技術力の高さに感心していた。

 

「さぁ続きをしようではないか!最高の肉体を持つ俺、機械の体であるお前。どちらが優れているか決着を付けよう!」

「望むところだ!!」

 

 朝田とダラスは再び対峙した。

2人の体からは闘気が立ち上り、夕日が2人を照らしている。

まるで西部劇の一幕のような光景であった。

 

「行くぞ朝田!」

「来い、ダラス」

 

 2人は同時に動き出す。互いの拳が互いの顔面にめり込み、互いの蹴りが互いの腹筋を貫く。

戦いは互角であった。

2人とも一歩も譲らない。

ダラスの繰り出す技の数々が朝田を襲う。

しかし、朝田も負けじと技を繰り出す。

 

「超電磁迫真空手奥義! 電光石火正拳突き!(ライトニング・インパクト)」

 

 朝田の繰り出した正拳突きがダラスの腹部にめり込む。人工筋肉と超合金で構成された腕から繰り出されるその拳速は音速を優に超えていた。

 

「グワーッ!!」

 

 ダラスは口から血を吐き出す。だが、それでも彼は立っていた。

 

「やるな朝田。この技を受けられるか? 奥義! 殺劇舞荒拳!!(サウザント・ブラッディフィスト)」

 

 嵐のようなそれでいてどこか優雅さを感じさせる連続技が朝田に叩き込まれる。

一撃一撃が必殺の威力を持つ拳が朝田の体を痛めつけていく。

だが、朝田は一歩も引かずにダラスの攻撃を受けきる。

彼の装甲化されたボディは破壊されることはないが、

しかし、それでもダメージは蓄積していく。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ダラスの渾身の一撃が朝田の胸部を捉えた。強固な装甲を打ち破ることは出来ずとも衝撃は内部へと伝わり、人工心臓のモーターを狂わせる。

朝田は青い人工血液を口から吐き出す。

 

 装甲を貫くまでには至らなかったが、ダラスの拳の威力は凄まじかった。

だが、朝田も負けてはいない。すぐさま反撃を繰り出していく。

ダラスの顎にアッパーが炸裂し、その体を宙に浮かせる。

そして朝田は空中で無防備になったダラスの体へ拳を叩き込む。

だが、ダラスもやられてばかりではない。彼の繰り出す技はどれも必殺の威力を持っていた。

2人は満身創痍で息も絶え絶えになりながらも立ち続ける。

 

「朝田ぁ! 次で終わりにしてやろう! 」

「望むところだ!」

 

 2人は同時に駆け出す。そして同時に拳を振り抜いた。

 

「イヤーッ!!」

 

 2つの力が激突し、周囲の空間が歪むような衝撃波が発生する。

それは2人の周囲にあるあらゆる物体を破壊していった。

床や壁が崩れ落ちていく中、朝田とダラスの拳は互いに相手の顔面を打ち据える。

ダラスの拳が朝田の顔をぶち抜き、朝田の拳もダラスの顔を捉える。そして2人は同時に吹き飛んだ。

 

「グワーッ!!」

 

 だが、それでも彼らは立っていた。

 

「やるな……ダラス。いいセンスだ」

「お前もな……朝田」

 

 2人は互いに相手を認め合い、同時に崩れるように倒れる。

 こうして彼らの戦いは終結したのであった。

 

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